法曹と聞いて、まず最初に弁護士などの法律家を思い浮かべる方が多いかもしれません。法曹とは、一般に弁護士、検察官、裁判官のことをいい、「法曹三者」ともいいます。
法曹について、興味を持っている方の中でも、具体的な仕事内容のことや、魅力について知らない方もいらっしゃると思います。
この記事では、法曹とは何か、法曹になるための方法や、法曹の魅力についてご紹介するので、是非参考にしてみてくださいね。
1 法曹とは
法曹とは、一般に法律業務に従事する専門家のことをいい、特に弁護士、検察官、裁判官のことを指します。
これらを総称して「法曹三者」ともいわれます。
ちなみに、法曹に関連する言葉として、「準法曹」もありますが、準法曹には、司法書士や弁理士、税理士、行政書士などが含まれます。
法曹といえば、弁護士、検察官、裁判官のことをいうものと理解すると良いでしょう。
2 法曹になるには
法曹になるまでの流れとしては、
①司法試験に合格する
②司法修習を受ける
③二回試験に合格する
この3つの過程を経る必要があります。
法曹になるためには、まずは、司法試験に合格することが必要になります。
もっとも、司法試験には受験資格が設けられており、誰もが受験できる試験ではありません。
司法試験の受験資格を取得するルートとして、①法科大学院を修了して受験資格を得るルート、②予備試験に合格して受験資格を得るルートの2通りがあります。
ちなみに、令和5年度より、法科大学院在学中でも一定の条件を満たせば司法試験を受験できるようになります。
司法試験の受験資格を取得し、司法試験に合格すると、次は司法修習を約1年間受ける必要があります。
そして、司法修習を経た後は、最後に二回試験といわれる最終試験に合格しなければなりません。
二回試験に合格することで、初めて法曹の資格を取得することができます。
弁護士、検察官、裁判官のいずれを目指す場合でも、上記3つの過程は経ないといけません。
ちなみに、弁護士を目指す多くの司法試験合格者は、司法修習中に就職活動をすることが多いです。
3 法曹の魅力
(1) 弁護士の仕事と魅力
① 弁護士の仕事
法曹のうち、弁護士といえば、法律事務所で一般民事事件や刑事事件、労働事件などを担当するというイメージを持つ方が多いのではないでしょうか。
実際に多くの弁護士は、法律事務所に就職します。
大手法律事務所に勤務する弁護士であれば、企業法務などを担当することも多く、担当する部署も変わってくるので、一般民事を主に担当したいのか、企業法務をメインで担当したいのかなどは、受験生時代に考えておくのも良いかもしれません。
弁護士登録をした後、即時で法律事務所を開業する(即独)という方もいます。実務経験がない中で即独することは、リスクも大きいといえますが、長い社会人経験を経た上で弁護士になる方は即独する傾向にあるようです。また、自分のペースで業務を進めたいという方にとってはおすすめできます。
最近では、企業内弁護士(インハウスローヤー)も人気です。
企業内弁護士(インハウスローヤー)は、弁護士法人を除く一般企業や行政機関などで勤務する弁護士のことをいいます。企業の正社員として働く弁護士にとっては、福利厚生など充実しており、特に育児休暇などが整っているので女性弁護士が多い傾向にあります。
また、企業によっては、弁護士業との兼業を認めているところもあるので、どちらもやりたいという方とってはおすすめできます。
② 弁護士の魅力
弁護士の魅力としては、幅広い業務が取り扱えるという点が挙げられます。
民事事件といっても、離婚案件や相続案件、交通事故案件など、たくさんあります。また、事件だけでなく、交渉に関する業務や、M&Aといった企業法務に関する業務もあります。
さらに上記でもご紹介したように、弁護士業務だけでなく、企業内弁護士として働くという選択肢もあるように、弁護士としての仕事の幅は法曹の中でも最も広いといえるのではないでしょうか。
その他にも、最近では弁護士は女性にとっても魅力的な仕事といえます。
弁護士全体の女性弁護士の割合は、19%(2018年3月31日現在)と、まだまだ女性弁護士の割合が圧倒的に少ないことが分かります。
その要因の一つとして、出産、育児などにより、そもそも受験勉強の時間の確保が難しいことや、弁護士になった後も、弁護士として働きつづけることが難しく、ワークライフバランスの実現ができないといったことが考えられます。
もっとも、最近では育児制度や時短勤務制度を拡充している法律事務所が増えてきており、弁護士としてのワークライフバランスが実現できるようになってきています。
また、女性被害者の多い性犯罪や、DVなどの事件に関しては、女性弁護士の需要が高く、女性弁護士が社会的にも求められていると考えられます。
一度弁護士の資格を取得することができれば、出産などで一時的に弁護士業ができない期間があったとしても、また社会復帰ができるという点も魅力の一つといえます。
(2) 検察官の仕事と魅力
① 検察官の仕事
検事総長・次長検事・検事長・検事・副検事を総称して『検察官』といいます。
◆国家を代表して刑罰権の実現を求める当事者としての地位
◆被疑者や被告人などの利益のために行動すべきという公益の代表者としての地位
これら2つの異なる側面を有しており、検察官の任務がいかに重責であるかがお分かりいただけるのではないでしょうか。
具体的には、警察から送致された被疑者を起訴するか否かを決定する唯一の国家機関であり、その被疑者が本当に罪を犯したのかどうか警察と協力をして捜査を行い、真実を追求していきます。
また、検察官は、法の秩序維持を任務としており、捜査や公訴、公判、刑の執行、刑事手続きなど、すべてにおいて指揮監督するなど重要な役割を果たしています。
② 検察官の魅力
検察官の魅力は、検察官という独立した立場、平等の立場で、事件の解明のために真実を追求することができるという点です。被疑者を起訴するか否かという権限を持っているため、重責を担っていますが、その上で、幅広い捜査活動を行うことが認められています。
また、検察官だけが唯一のキャリアではなく、検察官から弁護士に転身することもできるので、検察官としての経験を経た後、弁護士としてのキャリアに進むこともできるという点は魅力といえるのではないでしょうか。
弁護士に転身しても、検察官としての経験を活かすことができます。
(3) 裁判官の仕事と魅力
① 裁判官の仕事
裁判官の仕事は、各当事者の話をよく聞いて、法律にのっとった公正な立場から判決を下すのが仕事です。
しかし、よく想像されるような判決を下すような仕事はあくまで職務の一つでしかありません。法廷の仕事以外に、訴訟の準備や手続きの認可も行うのです。
訴訟の準備については、訴えが認められるかどうかについて総合的な判断を下していきます。その際、提出された書類は非常に膨大な量となる事も多いですし、その為に残業しないといけない事も多々あります。
その他、手続きの認可も行います。貸した金を返してもらえない場合、無理に取り立てを行う場合、これを認可するのは裁判所です。
ドラマの中でよく刑事が加害者に掲げている、あの逮捕状も許可しているのは裁判官なのです。
この様に裁判官の仕事は多岐に渡るのです。
ちなみに、裁判官は、成績優秀者でごくわずかの者しかなれないというイメージを持つ方も多いのではないでしょうか。
司法試験、司法修習共に成績が上位であることが裁判官になるための明確な基準になっているわけではありませんが、実際には、司法修習での成績が重要視されているといわれています。司法修習では、課題の提出や即日起案だけでなく、現場での取り組み方など、様々な側面から評価されるので、裁判官を目指している方は、司法修習でも気を抜くことなく精進できるよう心掛けたいところですね。
② 裁判官の魅力
裁判官の仕事は、事件ごとに判決を下すことで、当事者の人生を決定づけてしまうほどの影響力のある仕事といえます。非常に責任の重い仕事で、人によっては荷が重く感じてしまうかもしれません。
もっとも、裁判官は司法の頂点に立つともいえる存在です。一般的に、司法の頂点に立つと言うと最高裁判所長官と思われますが、一つ一つの裁判にとって司法の頂点に立つのはその裁判を担当する裁判官なのです。だからこそのやりがいがあるといえます。
実際、司法修習を通じて、当初は弁護士志望だった方が裁判官の魅力を感じて裁判官志望になったといった方もいます。
司法試験に合格した人の中でも、ごくわずかの人しかなれない職業でもあるので、一度きりの人生で経験してみるのも良いかもしれません。
4 サマリー
法曹について紹介してきましたが、法曹を目指したいという方、法曹を目指して受験勉強している方は、是非法曹の仕事と魅力を知って、法曹に向けて更に磨きをかけていってくださいね。
5 まとめ
- 法曹とは、法律業務に従事する専門家のことをいい、弁護士、検察官、裁判官のことを指す
- 法曹になるためには、司法試験に合格した後、司法修習を受け、二回試験に合格する必要がある
- 弁護士の仕事は、民事事件や刑事事件などに関する業務を取り扱うだけでなく、企業法務や企業内弁護士などの業務など、幅広い
- 弁護士の魅力は、幅広い業務を取り扱えることや、女性でもワークライフバランスが実現できること
- 検察官は、警察から送致された被疑者を起訴するか否かを決定する唯一の国家機関として、その被疑者が本当に罪を犯したのかどうか警察と協力をして捜査を行い、真実を追求する
- 検察官の魅力は、検察官という独立した立場、平等の立場で、事件の解明のために真実を追求することができること
- 裁判官の仕事は、各当事者の話をよく聞いて、法律にのっとった公正な立場から判決を下す
- 裁判官の魅力は、司法の頂点に立つ者として重責を担うことができること