予備試験に向けて勉強している受験生の中には、どのくらいの点数をとれば合格できるのかわからないまま勉強している人もいらっしゃるのではないでしょうか。
予備試験の合格を目指すうえで、どの点に重きを置いて学習すべきであるかを知っておくことはとても大切です。
そこで、この記事では、予備試験の採点基準等について解説します。予備試験の合格を目指している方は、是非ご参考になさってください。
1 予備試験の採点方式について
予備試験の合格率は、例年4%ほどでありその難易度はかなり高いものとなっています。
また、予備試験の試験形式は、「短答式試験」「論文式試験」「口述試験」に分かれており、第1段階である短答式試験に合格できなければ次の論文式試験に進むことのできない大変厳しい試験です。
なお、いずれの段階においても合計点で合否判定を行うものとされています。法律基本科、選択科目、実務基礎科目、一般教養科目について最低ライン点(いわゆる足切り点)を定めるか否かは、予備試験の実施状況を踏まえつつ検討することとされています。しかしながら、例年の状況を見ると最低ライン点(足切り点)はないのが現状です。
ここでは、法務省のデータを元にそれぞれの試験方式ごとの採点基準について詳しくみていくことにしましょう。
(1) 短答式試験の採点方式
予備試験の短答式試験の出題形式はマークシート方式です。
試験科目は計8科目(憲法・行政法・民法・商法・民事訴訟法・刑法・刑事訴訟法・一般教養科目)に及びます。各科目の配点は以下のとおりです。
試験時間 | 試験科目 | 配点 |
1時間30分 | 【民事系科目】
民法・商法・民事訴訟法 |
各科目全15問(30点満点) |
1時間 | 【公法系科目】
憲法・行政法 |
各科目全12問(30点満点) |
1時間 | 【刑事系科目】
刑法・刑事訴訟法 |
各科目全13問(30点満点) |
1時間30分 | 一般教養 | 1問3点(60点満点)
※全40問から20問を選択 |
予備試験短答式の直近2年分の結果を見てみましょう。
令和2年度 | 令和3年度 | |
出願者 | 15,318人 | 14,317人 |
欠席者 | 3,952人 | 2,600人 |
受験者 | 10,608人(うち途中欠席58人) | 11,717人(うち途中欠席62人) |
受験率 | 69.3% (注)受験率とは、出願者に占める受験者の割合である。 | 81.8% (注)受験率とは、出願者に占める受験者の割合である。 |
採点対象者 | 10,550人 | 11,655人
|
合格点 | 各科目の合計得点156点以上(270点満点) | 各科目の合計得点162点以上(270点満点) |
合格者数 | 2,529人 | 2,723人 |
合格者の平均点 | 173.7点 | 178.7点 |
日頃から合格点を超えるレベルを目標値として勉強を進めていくことが大切なので、ここは強く意識してください。
(2) 論文式試験の採点方式
令和3年度の論文式試験の結果は以下のとおりです。
受験者数 | 2,633人 |
合格者数 | 479人 |
合格点 | 240点以上(合計500点満点) |
合格率 | 約18% |
次に、各科目の配点を見ていきましょう。
試験時間 | 試験科目 | 配点 |
3時間30分 | 【民事系科目】
民法・商法・民事訴訟法 |
各30点満点 |
2時間20分 | 【公法系科目】
憲法・行政法 |
各30点満点 |
2時間20分 | 【刑事系科目】
刑法・刑事訴訟法 |
各30点満点 |
1時間10分 | 選択科目
※いずれか1科目を選択(倒産法、租税法、経済法、知的財産法、労働法、環境法、国際関係法(公法系)、国際関係法(私法系)) |
各50点満点 |
3時間 | 実務基礎科目
(民事実務基礎・刑事実務基礎) |
各50点満点 |
短答式試験と同じく、論文式試験においても日頃から合格点を超えるレベルを目標値として勉強を進めていくことが大切なので、アウトプット重視の勉強を意識してください。
(3) 口述試験の採点方式
予備試験口述試験の試験範囲は、論文式試験の法律実務基礎科目(民事・刑事)と同様です。法曹倫理は、民事及び刑事の各分野における出題に含まれているとされています。
また、試験形式は、例年「面接形式(受験者1名・試験官2名)」で試験時間は、面接状況により若干の差があるものの概ね15〜30分程度みておけば問題ないでしょう。
令和3年度の口述試験の結果は以下のとおりです。特段の事情がない限り、ほぼ全員が最終合格することができます。
受験者数 | 476人 |
合格者数 | 467人 |
合格点 | 119点以上 |
合格率 | 約98% |
次に、各科目の配点は民事実務基礎、刑事実務基礎ともに同一とされていますが、満点が何点であるかは開示されていません。
試験時間 | 試験科目 | 配点 |
15〜30分程度 | 民事実務基礎 | ※満点が何点であるかは非開示 |
15〜30分程度 | 刑事実務基礎 |
2 採点実感とは?
予備試験には、「出題趣旨」と呼ばれる司法試験委員会からのメッセージのようなものがあり、司法試験には、出題趣旨のほか採点実感と呼ばれるものが存在します。
「採点実感」とは、司法試験考査委員会が「受験生にどのような答案を求めているのか」など、今後の試験対策に参考になることを示したものです。予備試験においては、採点実感と呼ばれるものは存在しません。受験生にとって、この採点実感を分析することは合格のために不可欠な対策といえますが、予備試験ではこれに値する考査委員会の求める答案の指針はないのでしょうか?
ここでは、「出題趣旨」と「採点実感」について詳しくみていきましょう。
■「出題趣旨」・・・司法試験委員会が受験生に求める解答の道筋を示したもの。
ex.
(出題の趣旨) 本問は,地域の歴史的な環境を維持し向上させていくためになされる表現活動 の規制について,憲法第21条等との関連で検討することを求めるものである。 本問の条例案は,歴史的な環境を維持し向上させていくために特に規制が必要な地区である「特別規制区域」について広告物掲示と印刷物配布の規制をするとし ている。 街の美観風致の維持のための屋外広告物法・条例について,大阪市屋外広告物条 例事件判決(最大判昭和43年12月18日)は「公共の福祉」論により簡単に 合憲であるとしたが,・・・・・・・・・(略)
※一部引用抜粋:法務省「令和3年司法試験予備試験論文式試験問題と出題趣旨」
■「採点実感」・・・試験考査委員会が「受験生にどのような答案を求めているのか」など、今後の試験対策に参考になることを示したものであり合格するために分析は必須。
ex.
1. 出題の趣旨,ねらい(既に公表した出題の趣旨のとおり)
2. 採点方針
3. 採点実感等 (各考査委員から寄せられた意見や感想をまとめたもの)
(1) 全体について(2)各設問について(3) その他 (4)答案の水準
4. 法科大学院教育に求めるもの
出題趣旨には、具体的な採点基準は開示しておらず、受験生にとっては頭の痛い問題です。そのため、受験生や予備校の講義では、出題趣旨から「この規範、事実は評価の対象だろう」などと推測し採点基準を想定しているというのが実情です。
それでは、この「出題趣旨」「採点実感」などをどのように活用していけば良いのでしょうか?
3 予備試験の合格力をアップさせる秘訣
「論文式試験を制するものは予備試験を制する」といっても過言ではないほど、論文式試験の難易度は高く誰もがぶつかる壁です。それだけ重要な要となる試験なのですから、並大抵の努力では合格にたどり着くことができないのが現実です。
では、論文の答案スキルをアップするにはどのようにすれば良いのでしょうか?
〈論文答案スキルをアップする方法〉
◆法務省発表の「出題趣旨」「採点実感」を参考にし分析する
◆予備校出版の書籍(再現答案など)、予備校の講座、YouTubeなどを参考に分析する
※優秀な答案、合格ギリギリ答案、不合格答案など種々あるとよい
論文答案スキルをアップさせるためにはアウトプット量の多さ(添削は必須)が合格に直結するので、論文式試験対策にウエイトを置いた勉強を実践することをおすすめします。この時に、上記に挙げた出題趣旨や採点実感、市販の再現答案(解説つき)などを駆使して自分なりに分析をし、苦手部分の洗い出しをしてみましょう。どの部分が苦手なのかを把握し、該当部分については重点的に復習し、早めに習得してしまいましょう。
〜分析のポイント!〜
■さまざまな情報を参考に問題分析を行い、自己答案とのズレを把握し復習する
4 予備試験の論文スキルを磨くなら「資格スクエア」がおすすめ!
予備試験の合格力をアップさせるためには、論文式試験対策(アウトプット中心)にウエイトを置いた勉強法が有効であることがおわかりいただけたのではないでしょうか?
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論文を書く能力を分解してステップアップ化(導入問・基礎問・過去問)することにより、論文式試験合格に必要な能力を無理なく着実に習得することができます。
短答式試験対策の心配をされる方が一定数いらっしゃいますが、あまり心配しなくても大丈夫です。なぜなら、論文式試験対策をしっかりと行っていれば、自ずと短答式試験合格に必要な知識をおおかた備えていることになるからです。
少しでも気になる方は、資格スクエアの受験相談などを積極的に活用してみてはいかがでしょうか?
5 サマリー
予備試験の採点基準や配点は、非開示のものもあり対策する術がないと思われがちですが、そのようなことはありません。出題趣旨やその他資料を参考にし「この規範、事実は評価の対象だろう」などと推測し採点基準を想定しながら分析し自己答案とのズレを把握することが大切です。苦手な部分の洗い出しをし、該当部分の復習をしっかりと行えば合格へ近づくことができます!
6 まとめ
- ・予備試験の試験形式は、「短答式試験」「論文式試験」「口述試験」に分かれており、いずれの段階においても合計点で合否判定を行う(例年の状況を見ると最低ライン点(足切り点)はないのが現状)。
- ・予備試験には「出題趣旨」と呼ばれる司法試験委員会からのメッセージのようなものがあり、司法試験には、出題趣旨のほか採点実感と呼ばれるものが存在する。
- ・予備試験の合格力をアップさせる秘訣|さまざまな情報を参考に問題分析を行い、自己答案とのズレを把握し復習する。
- ・資格スクエア8期予備試験講座は、完全オンライン型予備校でコストパフォーマンスに優れたアウトプット中心のカリキュラム(論文添削数は業界最多の205通!)。