予備試験の勉強をしていて「論文の模範答案ってないのかな?」などと疑問に思われた方も少なくないのではないでしょうか?
自分の書いた答案が正解筋に乗っているのか否かがわからなければ心なしか不安になり、解決しないままモヤモヤした気持ちで勉強を進めていっても効率的ではありませんし、勉強自体の方向性を誤りかねません。
この記事では、「予備試験の論文模範解答」にまつわる事柄を解説していきます。合格レベルの答案作成スキルを身に付けて予備試験の天王山ともいえる論文式試験に合格しましょう!
1 予備試験論文式試験に模範解答はない?
結論からいえば、予備試験の論文式試験の模範解答は存在しません。
なぜなら、法務省から模範解答が公開されておらず、明確な解答例はないからです。
それでは、何を頼りに合格答案スキルを磨けばよいのでしょうか?
目指すべきゴールが見えなければ、合格への道にたどり着くことはできません。
その答えは、「出題趣旨」「採点実感」と呼ばれる法務省発表の資料にあります。模範解答などが明確に示されているわけではありませんので、一般的には、この2点を頼りに勉強を進めていくことが有効であると考えられています。
2 予備試験論文式試験には模範解答ではなく「出題趣旨」がある
予備試験には、「出題趣旨」と呼ばれる司法試験委員会からのメッセージととれるものがあり、司法試験には、出題趣旨のほか「採点実感」と呼ばれるものがあります。
「採点実感・・・実感?!司法試験委員の感想なの?」
「出題趣旨・・・何に使うの?」
と思われた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
「出題趣旨」「採点実感」の2つを頼りに合格レベルの答案作成スキルを磨いていくことが得策といえそうですが、いったい両者にはどのような特徴があるのでしょうか。
■「出題趣旨」・・・司法試験委員会が受験生に求める解答の道筋を示したもの。
ex.
(出題の趣旨) 本問は,地域の歴史的な環境を維持し向上させていくためになされる表現活動 の規制について,憲法第21条等との関連で検討することを求めるものである。 本問の条例案は,歴史的な環境を維持し向上させていくために特に規制が必要な地区である「特別規制区域」について広告物掲示と印刷物配布の規制をするとし ている。 街の美観風致の維持のための屋外広告物法・条例について,大阪市屋外広告物条 例事件判決(最大判昭和43年12月18日)は「公共の福祉」論により簡単に 合憲であるとしたが,・・・・・・・・・(略)※一部引用抜粋:法務省「令和3年司法試験予備試験論文式試験問題と出題趣旨」
■「採点実感」・・・試験考査委員会が「受験生にどのような答案を求めているのか」など、今後の試験対策に参考になることを示したものなので分析は必須。
ex.
1. 出題の趣旨,ねらい(既に公表した出題の趣旨のとおり)
2. 採点方針
3. 採点実感等 (各考査委員から寄せられた意見や感想をまとめたもの)
(1) 全体について(2)各設問について(3) その他 (4)答案の水準
4. 法科大学院教育に求めるもの
では、これらを活用した有効な論文式試験対策とはいったいどのような方法なのでしょうか?他に論文式試験合格レベルの答案作成スキルを磨くためのツールはないのでしょうか?
具体的な対策方法について以下で見ていくことにしましょう。
3 【予備試験論文式試験対策】模範解答がなくても対策できる!
〈合格レベルの論文答案作成スキルを磨く方法〉
◆法務省発表の「出題趣旨」「採点実感」を参考にする
◆予備校出版の書籍(再現答案など)、講座、YouTubeなどを参考にする
模範解答がなくても、合格レベルに引き上げる方法はあります。明確な模範答案がないわけですから、「どうすれば合格レベルの答案に近づけられるのか」を分析する作業が必要となります。近年、SNSなどでも見かけることがありますが「再現答案(合格者の書いた答案)」もその1つです。
まとめると、論文式試験対策に不可欠な“分析ツール”は3つ揃えることができます。
〈分析ツールは3つ〉
■「出題趣旨」
■「採点実感」
■「再現答案」(優秀な答案、合格ギリギリ答案、不合格答案などいろいろあるとよい)
これら3つの分析ツールの活用方法を具体的に見ていきましょう。
(1) 「出題趣旨」「採点実感」「再現答案」などを活用し合格レベル答案に近づける
■さまざまな情報を参考に問題分析をし自分の答案とのズレを把握し復習する
予備試験には、出題趣旨しか公表されておらず、模範解答がないため具体的な採点基準が開示されていません。したがって、「どの規範に何点」「どの事実に何点」が振られているかわからないのが実情ですので、受験生側は正しい採点基準を知る術がないのです。
そのため、受験生は「出題趣旨からこの規範・事実は評価の対象になるだろう」「ここまでは書かなければならないだろう(合格にマストな部分)」などと推測して、採点基準を想定しながら勉強を進めていくことになります。
予備校が出版している「再現答案」の書籍やYouTube配信、講座などを上手く活用して、プロ目線での解説を見聴きしながら「合格レベルの答案」について分析するのが得策といえそうです。
自ら情報収集して分析することも大事ですが、あまりにも時間がかかり過ぎると勉強の方向性を間違いかねません。そのような事態を回避するためには、思い切って予備試験受験対策に精通したプロの解説を頼りにしながら勉強を進めることをおすすめします。
では、合格レベル答案とはどのようなものなのでしょうか?以下で詳しく解説します。
① 制限時間内に「配点要素」をより多く盛り込む
〈配点要素〉
■「条文」 原則・例外、要件・効果、趣旨・目的
■「判例」 規範・理由、射程・事実評価の傾向
■「事実」 摘示・評価(あてはめ)
■「学説」に関する規範・理由・射程・事実評価の傾向 など
上記の配点要素に関しても、法務省から具体的に開示されているわけではありませんので、あくまで推測の範疇です。しかしながら、予備試験は、法律適応能力を問う試験ですので、「条文・判例・事実・学説」などに対しては点数が振られているでしょう。
また、上記に配点があるということを前提として、再現答案(合格答案)と自分が作成した答案を比較・分析しましょう。この時、「自分の答案と合格答案との間にどの程度の乖離があるのかを把握し、どの点に気をつければ合格答案に近づくことができるのか」を意識しながら復習することが大切です。合格にマストな部分であるにもかかわらず、自分で書いた答案で抜け漏れがあるところは重点的に復習しましょう。
② 答案用紙2行ごとに配点要素を1つ入れる意識
〈結論〉
◆答案用紙2行ごとに配点要素を1つ入れる意識で書く
予備試験の論文式試験は、1科目50点満点ですから、配点要素が各1点だと仮定すると、配点要素は50個あることになります。これらを全て時間内に盛り込み答案を作成すれば50点満点が取れる可能性が高まりますが、制限時間などの観点からは現実的ではありません。
予備試験の論文式試験の答案用紙は、1ページ22行・全4ページ88行あります。50要素を全て盛り込もうとすると1〜2行の間に1要素盛り込まなくてはならない計算になります。
しかしながら、一般的には多くの方が試験時間(70分)以内に4ページを書ききれないことがほとんどですし、70分の中には、答案の骨組みとなる答案構成の時間も含まれています。答案構成には、通常15〜20分ほどは必要ですので、1ページを仮に15分で書けたとしても残り50〜55分で3ページほど書ければ良い方といえます。
必ずしも50点満点を取らなければ合格できない試験ではありませんので、あくまで推測の域を出ませんが、30点〜33点(30〜33要素)ほどを目標値として目指すことが現実的に無理のないラインだと思われます。
そもそも、前提となる配点が、1配点要素1点かどうかという問題があり、確実性に書ける点は否めませんが「答案用紙2行ごとに配点要素を1つ入れる」という意識は有効ですし、日頃から演習の際にその点を意識して積み重ねていくことが、本番で功を奏するといっても過言ではありません。
4 サマリー
予備試験の論文式試験の模範解答はなく、「出題趣旨」「採点実感」「再現答案」などと自分の作成した答案を比較・分析することが大切であるということがお分かりいただけたのではないでしょうか。合格レベルの答案作成スキルを磨き上げ、予備試験の天王山ともいえる論文式試験に合格しましょう!
5 まとめ
- 予備試験の論文式試験の模範解答はない
- 予備試験論文式試験には模範解答ではなく「出題趣旨」がある
- 〈合格レベルの論文答案作成スキルを磨く方法〉|◆法務省発表の「出題趣旨」「採点実感」を参考にする◆予備校出版の書籍(再現答案など)、講座、YouTubeなどを参考にする