四大事務所は、法曹界の中で、弁護士の数の多い法律事務所のことを指します。全国の中でも圧倒的に弁護士の数の多い大手法律事務所といわれていますが、採用人数も毎年多く、年収も比較的高いことから、多くの受験生にとって人気の就職先となっています。
この記事では、四大事務所について、また四大事務所に入るなら予備試験を目指すのが良い理由について解説するので是非参考にしてくださいね。
1 四大事務所とは?
冒頭でもお伝えしましたが、四大事務所は、弁護士数の多い大規模法律事務所のことをいいます。
この4つの法律事務所は、
西村あさひ法律事務所
アンダーソン毛利・友常法律事務所
森・濱田松本法律事務所
長島・大野・常松法律事務所
になります。
これに加えて、最近ではTMI総合法律事務所を含めて「五大法律事務所」と呼ばれることもあります。
四大事務所は、弁護士数が3桁を超えていますが、実は、弁護士数が3桁を超えるのは全国で11軒しかありません(2021年現在)。
全国にある法律事務所の数は約17,000軒(2018年現在)なので、3桁を超える法律事務所がかなり少なく、また大規模であるかがお分かりになるのではないでしょうか。
(1) 西村あさひ法律事務所
西村あさひ法律事務所は、東京を拠点とし、弁護士数が約760名(2021年3月現在)の大規模法律事務所です。
日本だけでなく、バンコク、北京、上海、ドバイ、フランクフルト/デュッセルドルフ、ハノイ、ホーチミン、ジャカルタ、ニューヨーク、シンガポール、台北、ヤンゴン、香港など海外にも拠点があります。
取扱業務分野も多岐にわたります。
M&A、コーポレート、ファイナンス、リアルエステート、事業再生/倒産、争訟、知的財産法/情報法、危機管理、独占禁止法/競争法、税務、労働/人事、消費者法、通商法/投資法、国際関係法務、ウェルスマネジメント、公益的活動、インフラ/エネルギー/資源、アグリフード、IT/メディア/エンタテインメント、ライフサイエンス/ヘルスケア、テクノロジーDX/デジタルイノベーション、アジア、中東、ヨーロッパ、北米、中南米、アフリカ、オセアニア
この業務分野の多さからみても、弁護士が扱える分野のほとんどを占めています。
あまり聞き慣れないものもありますが、弁護士数も多いので、これだけの分野を取り扱えるのでしょう。
(2) アンダーソン毛利・友常法律事務所
アンダーソン毛利・友常法律事務所は、創立65周年と歴史のある総合法律事務所です。
弁護士の数は572名と多いですが、弁護士のほかにも弁理士や行政書士、司法書士など他の有資格者もいます。
取扱業務分野は、
コーポレート、M&A等、規制当局対応・危機管理、キャピタル・マーケッツ、ファイナンス、不動産、人事・労務、知的財産・IT・ライフサイエンス、独禁法・競争法、税務、資源・エネルギー、紛争解決、事業再生・倒産、通商、海外法務
となっています。
一般の法律事務所は、一般民事などを取り扱う紛争解決をほとんど占めるのに対して、四大事務所は企業法務を取り扱っているのが特色といえます。
アンダーソン毛利・友常法律事務所は、毎年数多くの受賞をしており、信頼をおける法律事務所です。
(3) 森・濱田松本法律事務所
森・濱田松本法律事務所は、1971年に設立された、弁護士630名の大規模法律事務所です。
日本には東京のほか、大阪、名古屋、福岡、高松にオフィスがありますが、海外にも拠点を置いており、北京、上海、シンガポール、バンコク、ヤンゴン、ベトナムに海外オフィスがあります。
取扱業務分野は、
M&A、コーポレート・ガバナンス、規制法対応/取引、ファイナンス、インフラ/エネルギー、争訟/紛争解決、事業再生/倒産、危機管理、競争法/独占禁止法、IT/ライフサイエンス/知的財産、ヘルスケア/医療/薬事、税務、ウェルス・マネジメント/相続・事業承継、労働法務、国際業務、通商法、Fintech
となっています。
こうしてみると四大事務所のほとんどが同じ業務分野をカバーしていますね。
森濱田松本法律事務所には、女性スタッフの割合も多く、女性社員のワークライフバランスも考慮した制度が整えられている点が特色の一つといえます。
(4) 長島・大野・常松法律事務所
長島・大野・常松法律事務所は、2000年に設立された、弁護士515名の大規模法律事務所です。
日本にある東京オフィスのほか、海外にはニューヨーク、シンガポール、バンコク、ホーチミン、ハノイ、上海にもオフィスを置いています。
取扱業務分野は、
M&A、コーポレート、ガバナンス、ファイナンス、インフラ/エネルギー/環境、紛争解決、事業再生/倒産、危機管理/リスクマネジメント/コンプライアンス、競争法/独占禁止法、テクノロジー、/知的財産、ヘルスケア/薬事、税務、ウェルス・マネジメント/事業承継、労働法、国際通商/経済制裁法/貿易管理、個人情報保護/プライバシー、消費者関連法、メディア/エンタテインメント/スポーツ
となっています。
当事務所は、案件ごとに最適な弁護士やスタッフによるチームを編成するといった点が特色の一つで、依頼者のための最適なサービスを追求しています。
2 予備試験合格者は四大事務所に就職しやすい?
これまで四大事務所について紹介してきましたが、予備試験との関係性についてお話します。
(1) 四大事務所の予備試験合格者の採用率が高い
予備試験は司法試験の受験資格を得るための試験ですが、四大事務所には、予備試験合格者が多く所属していることをご存じですか?
出典:ジュリナビ
こちらは、ジュリナビの調査結果で、五大法律事務所に就職した71期新人弁護士の出身法科大学院別人数を表したものです。
この統計を見ると、西村あさひ法律事務所と森・濱田松本法律事務所の予備試験出身者が6割を超えています。長島・大野・常松法律事務所も予備試験出身者が約4割を超えており、法科大学院出身者と比べて割合は多くなっています。
これらの統計から分かるのは、四大法律事務所の予備試験合格者の採用率がとても高いということです。
四大事務所の予備試験合格者の採用率が高い背景には、予備試験合格者の司法試験合格率が高いという点があげられます。
令和3年度司法試験合格率ランキング(法科大学院別)
順位 | 法科大学院名 | 受験者 | 最終合格者 | 合格率(対受験者数) |
1 | 予備試験合格者 | 400 | 374 | 93.50% |
2 | 愛知大法科大学院 | 3 | 2 | 66.70% |
3 | 京都大法科大学院 | 185 | 114 | 61.60% |
4 | 一橋大法科大学院 | 110 | 90 | 58.20% |
5 | 慶應義塾大法科大学院 | 227 | 125 | 55.10% |
上記の表をみると明らかですが、予備試験合格者の司法試験合格率が93.5%と、圧倒的な合格率を誇っています。
このことから、採用側である四大事務所からみれば、予備試験合格者は高い確率で司法試験に合格することを見込めるため、早い段階で採用したいという意図があるのでしょう。
また、予備試験合格者は比較的若い世代が多いことから、若い人を雇いたいというのもあるのあるのかもしれません。
出典:ジュリナビ
こちらもジュリナビの調査結果になりますが、五大法律事務所の71期予備試験経由者の割合は48.5%と、ほぼ半数を占めています。
法科大学院修了者は、上記の表のとおり、東京大学法科大学院、慶應義塾大学法科大学院、京都大学法科大学院など、司法試験合格率上位の法科大学院修了生の割合を大きく占めていることからすると、学歴は就職において重要な要素になるものといえます。そして、予備試験合格も、東大や京大などと並んだ一つのブランドといえるかもしれません。
(2) 四大事務所の予備試験合格者を対象とする採用活動が早い
四大事務所は、予備試験の最終合格発表後から、予備試験合格者を対象とする採用募集を始めます。
そのため、予備試験合格者にとって、就職活動は他の受験生に比べて非常に有利といえます。
また、予備試験合格者の多くは、司法修習前に内定を得ることができるため、司法修習中には、修習に専念し、友人との交流などを積極的に行うことができます。
3 サマリー
四大事務所は、業務分野も多く、まだ優秀な弁護士も多いため、受験生にとってとても魅力的な法律事務所ですよね。四大事務所に就職したい受験生の方は、予備試験合格を目指すのも一つの選択肢なので、是非予備試験に向けて頑張ってください。
4 まとめ
- 四大事務所は、弁護士数の多い法律事務所をいい、西村あさひ法律事務所、アンダーソン毛利・友常法律事務所、森・濱田松本法律事務所、長島・大野・常松法律事務所のことを指す
- 四大事務所においては予備試験合格者の採用率が高い
- 四大事務所において予備試験合格者の採用率が高い理由としては、予備試験合格者の司法試験合格率が高いため、予備試験合格段階で内定を出すこともあることや、予備試験合格者の年齢層が若いことなどが推察できる