予備試験は、司法試験の受験資格を取得する方法として、近年では多くの方が受験しています。
特に学生にとっては、最短で法曹が目指せるルートとして、在学中に予備試験を受験する方も増えてきていますが、予備試験も司法試験に並ぶ難関試験なので、在学中に目指すことができるのか、不安な方もいるのではないでしょうか。
この記事では、予備試験はまさに学生から目指せる試験であること、学生から目指す場合の学習方法を解説します。
1 学生が予備試験を目指すことのメリット
(1) 予備試験ルートの司法試験合格率が圧倒的No.1
下記の表は、令和3年度司法試験合格者の法科大学院別(予備試験合格者を含む)合格率を表したものになります。
この表を見ると一目瞭然ですが、各法科大学院の司法試験合格率と比較して、予備試験合格者の司法試験合格率が93.5%と、合格率が最も高いことが分かります。
法科大学院出身者の司法試験合格率の中で最も高かったのが愛知大学法科大学院ですが、愛知大学法科大学院でも合格率が66.7%なので、予備試験合格者の司法試験合格率がズバ抜けて高いのです。
それでは、司法試験に合格した予備試験合格者の内訳はどうなっているのでしょうか。
令和3年度司法試験合格者のうち、予備試験合格者の内訳
年齢別 | 最終合格者(人) |
19歳以下 | 1 |
20〜24歳 | 224 |
25〜29歳 | 57 |
30〜34歳 | 35 |
35〜39歳 | 20 |
40〜44歳 | 14 |
45〜49歳 | 8 |
50〜54歳 | 11 |
55〜59歳 | 2 |
60〜64歳 | 2 |
65〜69歳 | 0 |
職種別 | 最終合格者(人) |
公務員 | 18 |
教職員 | 0 |
会社員 | 31 |
法律事務所事務員 | 3 |
塾教師 | 0 |
自営業 | 9 |
法科大学院生 | 105 |
大学生 | 153 |
無職 | 44 |
大学院生 | 1 |
その他 | 10 |
最終学歴別 | 最終合格者(人) |
高校在学中 | 1 |
高校卒 | 2 |
大学卒業 | 61 |
大学在学中 | 155 |
大学中退 | 2 |
法科大学院修了 | 25 |
法科大学院在学中 | 105 |
法科大学院中退 | 10 |
法科大学院以外の大学院修了 | 12 |
法科大学院以外の大学院在学中 | 0 |
法科大学院以外の大学院中退 | 0 |
その他 | 1 |
出典:法務省
まず、年齢別のデータをみると、20歳〜24歳の合格者が374人のうち224人と、圧倒的な割合を占めています。
また、職種別の統計をみると、大学生が153人で他の職種の中で最も多く、その次が法科大学院生で115人でした。
これと最終学歴別の統計を併せると、大学在学中の合格者が155人なので、大学生に絞ると155人の大学生が予備試験経由で司法試験に合格したことが分かります。
さらに上記の年齢別データを併せると、20歳~24歳の合格者のほとんどが学生層であることが推測できます。
これらのデータから分かることは、大学生の予備試験合格者がとても多いことと同時に、司法試験にも合格しているということです。
大学生は他の職種に比べて比較的勉強に時間を割くことができることや、法学部であれば法律を学べることなどから、予備試験を目指しやすい環境にあることがいえます。
(2) 最短で法曹を目指せる
令和3年度予備試験では、なんと、最年少である17歳の高校生が予備試験に合格しました。高校在学中に予備試験に合格したことは、画期的なことですが、法曹を目指す多くの方々に希望を与えたといえるのではないでしょうか。
17歳で予備試験に合格し、仮にその翌年に司法試験に合格することができれば、最短で20歳で法曹になることができます。
これまでは法科大学院に進学し、修了してから司法試験を受験するという道のりが通例でしたが、予備試験制度ができたことで、若い年齢から法曹を目指すことができるようになったので、是非学生の方は、予備試験から目指していただくことをおすすめします。
(3) 予備試験の学生合格率が高い
学生から予備試験を目指せるといっても、実際に予備試験も司法試験と同様に難関試験で簡単に合格できないのではと思う方もいると思います。
実際に学生の予備試験合格率はどうなっているのでしょうか。
下記の令和3年度予備試験合格者の職種別合格率をご覧ください。
職種別 | 受験者 | 最終合格者 | 合格率(%) |
公務員 | 1.018 | 19 | 1.87 |
教職員 | 110 | 0 | 0 |
会社員 | 2,374 | 35 | 1.47 |
法律事務所事務員 | 240 | 4 | 1.67 |
塾教師 | 107 | 1 | 0.93 |
自営業 | 511 | 6 | 1.17 |
法科大学院生 | 1,058 | 99 | 9.36 |
法科大学院以外大学院生 | 28 | 2 | 7.14 |
大学生 | 3,508 | 252 | 7.18 |
無職 | 2,371 | 44 | 1.86 |
その他 | 392 | 5 | 1.28 |
出典:法務省
令和3年度予備試験の合格者は467人で、全体合格率は、3.99%でした。
上記の職種別合格率の内訳を見てみると、最も合格率が高かったのが法科大学院生で9.36%でしたが、その次に高かったのが大学生で7.18%と、全体の合格率のおよそ2倍と、とても高いことが分かります。
ちなみに法科大学院生は、法科大学院を修了してから司法試験を受験するというルートと並行して予備試験も受験しているものと考えられます。
大学生の方は、予備試験に合格することにまずは集中して受験勉強をする方が多いかもしれませんが、将来的には法科大学院に進学することも見据えながら、予備試験の受験勉強をするのが良いでしょう。
司法試験の受験資格を得るという視点から考えると、仮に在学中に予備試験に合格できなくても、法科大学院に進学することができれば、引き続き予備試験の受験勉強を並行して行うことができるのでおすすめです。
2 学生から予備試験を目指すための学習方法
では、学生から予備試験を目指すには、どのように学習していけば良いのか、ご紹介します。
まず、学生には、春休みや夏休み、冬休みといった長期の休みがあります。それと同時に、社会人に比べて、時間が管理しやすいといった点も学生の特徴をもっています。
そこで、学生には、追い込み型の学習をおすすめします。
例えば、2023年に予備試験に合格することを目標に掲げて、現時点が2021年7月頃とします。
最初は勉強を習慣化することは難しいかもしれませんが、1日1時間、2時間でも良いので、少しずつ勉強時間を増やしていきましょう。
2022年4月から新学期が始まりますが、4月から勉強に本腰を入れていき、できれば夏休み前に7科目全部を1周終えることができれば、上出来といえます。
また、論文を書くという癖を夏休みあたりでつけることが重要になります。論文の勉強は慣れるまでかなり大変なので、1日1通でも論文を書くペースができれば、早い段階で論文を習得することができます。
そして、2023年に入った段階で、短答強化期間に入ります。
1月から3月は、短答を強化していき、5月から7月は論文に集中していきましょう。この段階では1日10時間ほど勉強を継続していきましょう。
ただ、1日10時間の勉強を毎日継続していくことは実際のところ、とても大変なことです。
それまでは1日数時間しか勉強していなかったところから、急に10時間に増やすことは困難なので、勉強時間を増やしていく努力をしていき、習慣化することができれば、予備試験直前期に一気に追い込むことができます。
3 法科大学院ルートとの比較
学生から法曹を目指すなら予備試験から目指そうと紹介してきましたが、他にも司法試験の受験資格を得るルートとして、法科大学院を修了するというルートもあります。
実際にどちらのルートが良いのか、気になりますよね。
予備試験に合格することで受験資格が得られる予備試験ルートについては、メリットはたくさんあります。
まず、法科大学院ルートでは高額な授業料がかかってしまいますが、予備試験ルートではそのような費用がかからないという点です。
仮に予備校を利用するとしても、約100万円で受けられる予備校が多いため、法科大学院の授業料に比して安いといえます。
また、予備試験と司法試験は科目や形式が共通しているため、予備試験対策がそのまま司法試験対策にも活きます。
さらに、法科大学院に入学すれば、授業や課題など時間の拘束がありますが、予備試験ルートでは、予備試験対策を自分のペースで進めることができるため、可処分時間が足りない社会人の方にとっては最適なルートになります。
学生にとっても、授業やサークルなどと並行しながら時間管理することができる点は大きいといえます。
上記でもお伝えしましたが、学生であれば、予備試験ルートと法科大学院ルートの両方を見据えることもできる点が強いといえます。
大学生であれば、在学中は予備試験の受験勉強に専念し、合格することができなかった場合には法科大学院に進学するといったこともできます。
法科大学院に進学しても予備試験は受験できるので、最短で合格したいという方にとっても特に不都合はないでしょう。
以上のような予備試験ルートのメリットとデメリットを比較して、自分にあった選択をしてみてくださいね。
法科大学院とは?法科大学院のメリットデメリットや選び方について徹底解説!
4 サマリー
学生は年齢も若く、体力もあるので、法曹を目指すなら、是非在学中に予備試験に挑戦してみてください。
これまでご紹介してきたように、学生の予備試験合格率は高く、予備試験に合格することができれば、司法試験にもかなり高い合格率で合格することができます。
最初は法律という学問を理解するまで大変かもしれませんが、毎日諦めず地道に勉強を継続していけば、必ず合格に近づくことができます。
学生の方は、是非最短合格を目指して頑張ってくださいね!
5 まとめ
- 学生が予備試験を目指すことのメリットとしては、①予備試験ルートの司法試験合格率が圧倒的No.1、②最短で法曹を目指すことができる、③予備試験の学生合格率が高いこと
- 学生から予備試験を目指す場合の学習方法としては、1日の勉強時間を徐々に増やしていき、直前期には1日10時間程度の勉強量を確保すること、受験する前の年の夏休みには論文を強化、受験する年の春休みは短答を強化する
- 法科大学院ルートは、学費や時間が拘束されるのに対して、予備試験ルートは学費がかからず、自分のペースで勉強することができるという点で学生にとっては予備試験ルートがおすすめ(もっとも、法科大学院ルートも見据えながら予備試験の勉強をすることもできる)