予備試験の合格者はどんな人?合格者の属性データを徹底分析

予備試験

この記事では司法試験予備試験の合格者数や予備試験合格者の司法試験合格者数の推移を具体的なデータとともに紹介しています。

予備試験や司法試験は難関国家試験といわれていますが、実際としてどれくらいの人数が合格しているのか、そして難関である予備試験に合格した者は司法試験にどれほど強いのかという点は気になる人も多いと思います。

ぜひ今回の記事を司法試験や予備試験の受験の検討材料にしてみてください。

1 司法試験予備試験とは

司法試験予備試験(以下、予備試験と略します。)の合格者数についてみていく前に、予備試験とはそもそもどのような試験なのかという点について説明します。

予備試験とは、ズバリ司法試験の受験資格を得るための資格試験です。

現在、司法試験を受験するには、①法科大学院を修了するか、②司法試験予備試験に合格することが必要となります。

予備試験の受験においては年齢制限はないため、予備試験に合格すれば誰でも司法試験を受験することができます。なお、前者の法科大学院ルートにおいては令和5年から一定条件のもと法科大学院在学中でも司法試験を受験することができるようになります。

試験は、①短答式試験、②論文式試験、③口述試験の3段階の試験から構成され、毎年1回、5月〜11月ほどにかけて行われます。

2 予備試験の合格者は?

(1) 予備試験合格者数・合格率の推移

法務省のデータによると予備試験の合格者数・合格率の推移は、以下のようになっています。

受験者数 合格者数 合格率
平成23年 6,477 116 1.79%
平成24年 7,183 219 3.05%
平成25年 9,224 351 3.81%
平成26年 10,347 356 3.44%
平成27年 10,334 394 3.81%
平成28年 10,442 429 4.11%
平成29年 10,743 444 4.13%
平成30年 11,136 433 3.89%
平成31年 11,780 476 4.04%
令和2年 10,608 442 4.17%
令和3年 11,717 467 3.99%

 

(2) 考察

以上のように、予備試験合格者は年々やや増加しています。ただし、この変化は受験者数の増加にも比例しているため、合格率としては4%前後を維持しています。したがって、合格者が増えたからといって、合格が容易になったわけではありません。

また、予備試験の受験者数は増加傾向にあるため、今後も予備試験合格者は増加すると思われます。その場合でも、これまでと同様、合格率は4%前後という状態が維持される可能性があります。

3 出身大学別合格者数・合格率ランキング

予備試験合格者にはどんな大学出身者が多いのでしょうか?

以下では、令和3年の予備試験の大学別の合格者数と合格率のランキングを示しています。

(ランキングには既卒や中退者も出身者として含みます。)

(1) 合格者数ランキング

第1位 東京大学 99人
第2位 慶應義塾大学 50人
第3位 早稲田大学 29人
第4位 中央大学 26人
第5位 京都大学 22人
第5位 一橋大学 22人
第7位 同志社大学 9人
第7位 大阪大学 9人
第9位 神戸大学 5人
第9位 名古屋大学 5人
第11位 明治大学 4人
第12位 東北大学 3人
第12位 千葉大学 3人
第14位 北海道大学 2人
第14位 九州大学 2人
第14位 立命館大学 2人
第14位 法政大学 2人
第14位 大阪市立大学 2人
第14位 広島大学 2人
第14位 東京外国語大学 2人
第21位 青山学院大学 1人
第21位 日本大学 1人
第21位 上智大学 1人
第21位 立教大学 1人
第21位 関西大学 1人
第21位 創価大学 1人
第21位 成蹊大学 1人
第21位 熊本大学 1人
第21位 香川大学 1人
第21位 新潟大学 1人
第21位 國學院大学 1人
第21位 信州大学 1人
第21位 大阪電気通信大学 1人
第21位 ハーバード大学 1人
第21位 明海大学 1人

(2) 合格率ランキング

令和3年 受験者数 最終合格者数 最終合格率
第1位 大阪電気通信大学 2人 1人 50.00%
第1位 ハーバード大学 2人 1人 50.00%
第1位 明海大学 2人 1人 50.00%
第4位 東京大学 765人 99人 12.94%
第5位 一橋大学 175人 22人 12.57%
第6位 信州大学 9人 1人 11.11%
第7位 東京外国語大学 25人 2人 8.00%
第8位 京都大学 312人 22人 7.05%
第9位 名古屋大学 72人 5人 6.94%
第10位 慶應義塾大学 782人 50人 6.39%
第11位 新潟大学 17人 1人 5.88%
第12位 大阪大学 157人 9人 5.73%
第13位 広島大学 38人 2人 5.26%
第13位 香川大学 19人 1人 5.26%
第15位 熊本大学 24人 1人 4.17%
第16位 千葉大学 74人 3人 4.05%
第17位 神戸大学 124人 5人 4.03%
第18位 早稲田大学 732人 29人 3.96%
第19位 同志社大学 234人 9人 3.85%
第20位 成蹊大学 29人 1人 3.45%
第21位 大阪市立大学 60人 2人 3.33%
第22位 創価大学 35人 1人 2.86%
第23位 中央大学 939人 26人 2.77%
第24位 國學院大学 38人 1人 2.63%
第25位 東北大学 116人 3人 2.59%
第26位 九州大学 110人 2人 1.82%
第27位 北海道大学 138人 2人 1.45%
第28位 明治大学 284人 4人 1.41%
第29位 法政大学 154人 2人 1.30%
第30位 青山学院大学 82人 1人 1.22%
第31位 立教大学 83人 1人 1.20%
第32位 上智大学 90人 1人 1.11%
第33位 立命館大学 192人 2人 1.04%
第34位 関西大学 122人 1人 0.82%
第35位 日本大学 169人 1人 0.59%

4 年齢別合格者数

(1) 令和3年の結果

令和3年の予備試験合格者の年齢構成は以下のようになりました。

下の表を見ればわかる通り、予備試験の受験者数は幅広い年代の方が受験していることがわかります。

年齢別 出願者 受験者 短答合格者 論文合格者 最終合格者
19歳以下 162 151 9 4 4
20〜24歳 4,281 3,952 884 318 313
25〜29歳 1,536 1,274 236 60 60
30〜34歳 1,382 1,063 218 31 31
35〜39歳 1,385 1,057 279 20 18
40〜44歳 1,268 941 268 20 17
45〜49歳 1,215 898 243 11 10
50〜54歳 1,105 844 223 8 8
55〜59歳 804 638 168 4 4
60〜64歳 584 440 114 2 2
65〜69歳 327 256 50 1 0
70〜74歳 203 150 27 0 0
75〜79歳 35 31 3 0 0
80歳以上 30 22 1 0 0
合計 14,317 11,717 2,723 479 467

また、合格者の最低年齢や最高年齢、平均年齢は以下のようになりました。

令和3年度 令和2年度
最低年齢 17歳 18歳
最高年齢 64歳 59歳
平均年齢 26.28歳 25.89歳

参照:法務省「司法試験予備試験の結果について」

(2) 直近3年の傾向

また、直近3年の傾向は以下のようになりました。

令和3年 令和2年 令和元年
年齢別 受験者 最終合格 合格者割合 受験者 最終合格 合格者割合 受験者 最終合格 合格者割合
19歳以下 151 4 0.86% 100 3 0.68% 107 1 0.21%
20~24歳 3,952 313 67.02% 3,573 299 67.65% 3,791 324 68.07%
25~29歳 1,274 60 12.85% 1,200 62 14.03% 1,372 60 12.61%
30~34歳 1,063 31 6.64% 962 33 7.47% 1,079 32 6.72%
35~39歳 1,057 18 3.85% 908 14 3.17% 1,036 24 5.04%
40~44歳 941 17 3.64% 899 10 2.26% 1,006 17 3.57%
45~49歳 898 10 2.14% 810 9 2.04% 992 11 2.31%
50~54歳 844 8 1.71% 769 9 2.04% 817 2 0.42%
55~59歳 638 4 0.86% 616 3 0.68% 692 4 0.84%
60~64歳 440 2 0.43% 388 0.00% 434 1 0.21%
65~69歳 256 0.00% 211 0.00% 281 0.00%
70~74歳 150 0.00% 129 0.00% 120 0.00%
75~79歳 31 0.00% 30 0.00% 31 0.00%
80歳以上 22 0.00% 13 0.00% 22 0.00%
11,717 467 100.00% 10,608 442 100.00% 11,780 476 100.00%

(3) 考察

以上のように、予備試験合格者の7割近くを20〜24歳の受験生が占めています。

この結果は、20〜24歳の受験生は大学や大学院に在籍している場合が多く、勉強時間の確保や勉強環境の整備が他の年代に比べて容易であることが理由と考えられます。

また、表を見ると19歳以下の合格者が合格者全体に占める割合も増加傾向にあることがわかります。

この傾向は、司法試験予備校や教材の充実を受けて高校生であっても予備試験の対策を行うことが容易になってきたことが理由であると考えられます。

5 性別と合格者数

令和3年の予備試験合格者の性別構成は以下のようになりました。

令和3年
性別 合計
出願者 14,317人 10,941人 3,376人
受験者 11,717人 8,941人 2,776人
短答合格者 2,723人 2,279人 444人
論文合格者 479人 373人 106人
最終合格者 467人 365人 102人
最終合格率 3.99% 4.08% 3.67%

6 職種別合格者数

(1) 令和3年の結果

令和3年の予備試験合格者の職種構成は以下のようになっています。

最終合格者の中で『大学生』が占める割合が高いことがわかります。

職種別 出願者 受験者 短答合格者 論文合格者 最終合格者
公務員 1,368 1,018 267 21 19
教職員 148 110 27 0 0
会社員 3,117 2,374 469 37 35
法律事務所事務員 288 240 64 4 4
塾教師 137 107 29 1 1
自営業 711 511 138 6 6
法科大学院生 1,211 1,058 267 101 99
法科大学院生以外

大学院生

34 28 9 2 2
大学生 3,831 3,508 733 255 252
無職 2,936 2,371 625 45 44
その他 536 392 95 7 5
総計 14,317 11,717 2,723 479 467

(2)直近3年の傾向

また、直近3年の予備試験合格者の職種構成は以下のようになっています。

令和3年 令和2年 令和元年
令和3年受験者 令和3年最終合格者 令和3年合格者割合 令和2年受験者 令和2年最終合格者 令和2年合格者割合
職種別 受験者 最終合格者 合格者割合 受験者 最終合格者 合格者割合 受験者 最終合格者 合格者割合
公務員 1,018 19 4.07% 925 22 4.98% 998 19 3.99%
教職員 110 0 0.00% 97 2 0.45% 101 0.00%
会社員 2,374 35 7.49% 2,064 24 5.43% 2,197 33 6.93%
法律事務所事務員 240 4 0.86% 234 2 0.45% 253 4 0.84%
塾教師 107 1 0.21% 110 2 0.45% 147 4 0.84%
自営業 511 6 1.28% 449 12 2.71% 544 2 0.42%
法科大学院生 1,058 99 21.20% 1,064 95 21.49% 1,265 115 24.16%
法科大学院以外大学院生 28 2 0.43% 34 0.00% 33 2 0.42%
大学生 3,508 252 53.96% 3,141 243 54.98% 3,340 250 52.52%
無職 2,371 44 9.42% 2,116 32 7.24% 2,475 40 8.40%
その他 392 5 1.07% 374 8 1.81% 427 7 1.47%
11,717 467 100.00% 10,608 442 100.00% 11,780 476 100.00%

(3) 考察

直近3年のデータをみると、大学生の合格者数が占める割合が一番大きく、全体の50%程を推移しています。

また、会社員の受験者数も増加傾向にあり、合格者の割合も増加しています。

一方、法科大学院の受験者数は年々減少傾向にありますが、合格者の割合は増加傾向にあります。法科大学院を修了することで司法試験を受験することができるようになりますが、その腕試しとして受験する法科大学院生の存在がうかがえます。

7 最終学歴と合格者数

(1) 令和3年の結果

令和3年の予備試験合格者の最終学歴の割合は以下の通りとなりました。

最終学歴別 受験者 最終合格者 合格者割合
大学卒業 4,139 60 12.85%
大学在学中 3,552 252 53.96%
大学中退 225 3 0.64%
法科大学院修了 1,230 21 4.50%
法科大学院在学中 1,095 100 21.41%
法科大学院中退 242 3 0.64%
法科大学院以外の大学院修了 717 16 3.43%
法科大学院以外の大学院在学中 37 2 0.43%
法科大学院以外の大学院中退 69 0 0.00%
短期大学卒業 31 0 0.00%
短期大学在学中 1 0 0.00%
短期大学中退 3 0 0.00%
高校卒業 198 5 1.07%
高校在学中 34 1 0.21%
高校中退 29 2 0.43%
その他 115 2 0.43%
11,717 467 100.00%

(2)直近3年の傾向

令和3年 令和2年 令和元年
最終学歴別 受験者 最終合格者 合格者割合 受験者 最終合格者 合格者割合 受験者 最終合格者 合格者割合
大学卒業 4,139 60 12.85% 3,668 57 12.90% 4,116 60 12.61%
大学在学中 3,552 252 53.96% 3,209 242 54.75% 3,402 251 52.73%
大学中退 225 3 0.64% 207 2 0.45% 232 3 0.63%
法科大学院修了 1,230 21 4.50% 1,201 21 4.75% 1,353 32 6.72%
法科大学院在学中 1,095 100 21.41% 1,089 97 21.95% 1,300 116 24.37%
法科大学院中退 242 3 0.64% 213 4 0.90% 237 3 0.63%
法科大学院以外の大学院修了 717 16 3.43% 582 12 2.71% 672 8 1.68%
法科大学院以外の大学院在学中 37 2 0.43% 36 0 0.00% 40 2 0.42%
法科大学院以外の大学院中退 69 0 0.00% 55 0 0.00% 60 1 0.21%
短期大学卒業 31 0 0.00% 33 0 0.00% 44 0 0.00%
短期大学在学中 1 0 0.00% 1 0 0.00% 0 0 0.00%
短期大学中退 3 0 0.00% 4 0 0.00% 4 0 0.00%
高校卒業 198 5 1.07% 153 4 0.90% 182 0 0.00%
高校在学中 34 1 0.21% 28 1 0.23% 21 0 0.00%
高校中退 29 2 0.43% 29 0 0.00% 27 0 0.00%
その他 115 2 0.43% 100 2 0.45% 90 0 0.00%
11,717 467 100.00% 10,608 442 100.00% 11,780 476 100.00%

(3)考察

令和3年の傾向を見ると大学在学中の合格者が合格者全体の50%以上を占めることがわかります。直近3年間の傾向としても同様に合格者の50%以上が大学生です。

また、法科大学院在学中の合格者は全体の20%ほどでした。

このように、合格者全体の約7割を学生が占める結果となりました。

 

そして、令和元年から令和3年にかけて高校生の受験生が増加していることがわかります。

令和2年には高校在学中の合格者が誕生しました。

近年は司法試験予備校の普及もあり、高校生などの若年層も法律を学習しやすくなったことが背景にあると考えられます。

8 司法試験の受験経験と合格者数

令和3年の予備試験合格者の司法試験の受験経験の割合は以下の通りとなりました。

過去の司法試験の受験経験 出願者 受験者 短答合格者 論文合格者 最終合格者 最終合格率
受験したことがない 9,816人 8,322人 1,648人 433人 426人 5.12%
旧試験のみ受験したことがある 2,790人 2,119人 621人 22人 20人 0.94%
新試験のみ受験したことがある 649人 487人 141人 7人 7人 1.44%
両方とも受験したことがある 1,062人 789人 313人 17人 14人 1.77%
合計 14,317人 11,717人 2,723人 479人 467人 3.99%

9 予備試験経由の司法試験合格者は?

(1) 予備試験経由の合格者数・合格率の推移

以下のグラフと表は直近5年間の予備試験経由で司法試験に合格した合格者数の推移と合格率を表したものです。

受験者数 合格者数 合格率
令和3年 400 374 93.50%
令和2年 423 378 89.36%
令和元年 385 315 81.82%
平成29年 400 290 72.50%
平成30年 433 336 77.60%
平成28年 382 235 61.52%

(2) 考察

以上のように、予備試験経由の司法試験合格率は令和3年度で9割に達するなど非常に高い合格率となっています。

この理由として、予備試験と司法試験の出題形式の同一性が挙げられます。

どちらの試験においても短答式試験・論文式試験が課されており、予備試験の勉強内容が司法試験の勉強と重複しています。

問題の難易度は違うにせよ、司法試験で求められる基本的な答案の書き方や短答式試験の知識などが予備試験段階で問われているため、予備試験に合格した人は司法試験に合格しやすいといえます。

また、短答式試験についても、予備試験では短答式試験の試験科目に基本7法が含まれているところ、司法試験短答式試験は3科目であるため予備試験合格後は短答式試験において負担が少ない状態で論文式試験の勉強を進めることができる点も理由の1つです。

なお、予備試験では令和4年度より、論文式試験の試験科目に倒産法・租税法・経済法・知的財産法・労働法・環境法・国際関係法〔公法系〕・国際関係法〔私法系〕から1科目選択する選択科目が一般教養科目に置き換わって導入されます。

この選択科目はもともと司法試験では試験科目となっていましたが、予備試験では試験科目になっていなかったため、予備試験経由で司法試験合格を目指す受験生は予備試験後から翌年度の司法試験のために、少ない時間の中選択科目の勉強を進めるという状態が続いていました。

しかし、上記の制度変更により、予備試験受験の際に選択科目まで勉強することとなり、さらに予備試験の勉強と司法試験の勉強がリンクすることとなります。よって、予備試験経由の司法試験合格者・合格率は今後増加する可能性もあるでしょう。

 

10 サマリー

いかがだったでしょうか。今回の記事にもあったように、確かに予備試験は合格が非常に難しい試験ではあります。しかし、予備試験に合格できれば司法試験の合格へは近いところにいるといえます。これからも受験者の増加は見込まれますが、大学生や社会人などで司法試験の合格を目指している方は費用や時間のかかる法科大学院ルートよりまずは予備試験の受験を考えてみることをおすすめします。

11 まとめ

  • 予備試験に合格すれば司法試験の受験資格を得ることができる。
  • 予備試験の最終合格率は毎年4%前後で非常に難関。
  • 予備試験の合格者の約7割は20〜24歳。令和2年からは高校在学中の合格者も現れ、合格者の若年化傾向が見られる。
  • 予備試験合格者の司法試験の合格率は非常に高い。令和3年には9割を超えた。
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