2021年(令和3年度)予備試験結果発表!気になる結果に関するデータを紐解くと?

予備試験

1 予備試験の合格発表の方法と日程

令和3年度(2021年)の予備試験の合格発表日は次のとおりです。

・短答式試験:令和3年6月3日(木)

・論文式試験:令和3年10月7日(木)

・口述試験 :令和3年11月5日(金)

論文式試験と口述試験はいずれも,午後4時頃に法務省ホームページにおいて発表されます。

法務省敷地内及び各試験地での掲示発表並びに官報公告は行われません。

なお,電話による合否の問合せには一切応じませんので注意してください。

2 2021年(令和3年度)の予備試験は例年と比べてどうだったの?

法務省のデータを元に予備試験の結果を分析していきますので、是非ご参考になさってください。

(1) 令和3年度・令和2年度 予備試験 短答式試験の結果

令和2年度 令和3年度
出願者 15,318人 14,317人
欠席者 3,952人 2,600人
受験者 10,608人 11,717人
受験率 69.3% (注)受験率とは,出願者に占める受験者の割合である。 81.8% (注)受験率とは,出願者に占める受験者の割合である。
採点対象者 10,550人 11,655人 
合格点 各科目の合計得点156点以上(270点満点) 各科目の合計得点162点以上(270点満点)
合格者数 2,529人 2,723人
合格者の平均点 173.7点 178.7点

令和3年度短答式試験の受験者数は 11,717人であり、令和2年度の10,608人から増加しています。また、受験率も本年度は81.8%となっており、令和2年度の69.3%と比較すると、大幅に受験率が上昇していることが分かります。この数字は、令和2年度はコロナウィルスの影響を大きく受けたといえます。

 

 

令和3年度の短答試験の合格点は270点中162点でした。令和2年度の合格点は156点だったので、6点も上がった事になります。しかしながら、平成25年〜27年度は170点、平成28年度は165点、平成29〜令和元年度は160点であった事を考慮すると、令和2年度がコロナウィルスの影響を受けたイレギュラーな年であり、本年度は、言わば例年のレベルに戻ったと言っても過言ではありません。

令和3年度の採点対象者全体の平均点は、132.0点でした。令和2年度の採点対象者全体の平均点は 128.8点だったので、本年度は3.2点上昇しています。

また、合格者の平均点については令和3年度は178.7点でした。一方、令和2年度の合格者平均点は 173.7点であり、本年度の合格者平均点は5点上昇していることになります。

 

合格率をみると、令和3年度は 23.2%でした。これは令和2年度の 23.8%よりも0.5%下がっています。ですが、大きくとらえてみると、合格率は20%台前半だという傾向は変わりません。

次に、司法試験の短答式試験の合格率をみてみます。令和3年度の司法試験の短答式試験の合格率は78.7%でした。司法試験と比べると予備試験は明らかに「落としにきいている」といえるでしょう。

 

 

【考察:短答式試験の得点傾向】

令和3年度は、公法系科目のうち憲法・行政法の平均点が大幅に下がる結果となりました。本年度の憲法の平均点は16.7点となっており、令和2年度は21.5 点でした。実に5点ほど下がっています。また、行政法の平均点に関しても、令和3年度は10.7点というギリギリ2桁をキープしているような結果となりました。令和2年度は14.4 点でしたので、およそ4点ほど下がっており、実際の受験生からも「難しかった」という声も聞かれており、難化傾向にあるのかもしれません。また、民法の令和3年度の平均点は17.3点であり、令和2年度は12.7点でしたので、およそ5点も大幅に上昇しました。ますます、基本的な知識を確実に押さえておく事の重要性が見て取れる結果となりましたね。

 

(2) 令和3年度・令和2年度 予備試験 論文式試験の結果

①合格者数など

  令和2年度 令和3年度
受験者数 2,439人 2,633人
採点対象者 2,428人 2,619人
合格点 230点以上 240点以上
合格者数 464人 479人
合格率

(受験者数に対する割合)

19.0% 18.2%

 

法務省のデータによれば、令和2年の予備試験論文式試験受験者数 2,439人に対して令和3年度は194人(受験者数2,633人)増加しています。採点対象者数においては、令和2年度(2,428人)に比べて令和3年度(2,619人)は191人増加しています。受験者数、採点対象者数ともに増加していることが分かりました。

合格点については、令和2年度( 230 点以上)に比べ、令和3年度(240点以上)10点ほど上昇しています。

合格率をみると、令和2年度は(19.0%)であるのに対して、令和3年度は(18.2%)若干低くなっていることが分かります。ちなみに、平成31年度の合格率は19.1%、平成30年度は18.0%、平成 29 年は 21.3%という結果となっています。

例年、短答式試験を突破しても、論文式試験に合格できるのは5人に1人ほどの狭き門であるとも言えます。反対解釈をすれば、しっかりと対策を行えば5人に1人は合格できる試験でもあると言えますので、後者のようにポジティブに捉えて勉強を進めていきたいところです。

②採点対象者の最高点等

  令和2年度 令和3年度
最高点 358.94点 351.14点
最低点 28.72点 11.31点
平均点 192.16点 197.54点
合格点 230点以上 240点以上

採点対象者の最高点等については、近年5〜10点ほど振れ幅があります(参考:平成30年度240点以上、平成29年245点以上)。

(3) 令和3年度 予備試験 口述式試験の結果

受験予定者数 479人
受験者数 476人
合格点 119点以上
合格者数  467人 
合格率(受験者数に対する割合) 98.1%

令和3年度の口述試験合格率は98%を超えました。これまでの短答式試験や論文式試験に比べると合格率はかなり高く、論文式試験をクリアすればほぼ合格できるといえるでしょう。

とはいえ油断は禁物です。口述試験は予備試験独自のものですから、試験本番で実力を発揮できずに涙を飲むことがないように、ここはしっかり事前準備を万全にしておきたいところです。例えば、予備校の実施している口述模試などを積極的に活用して対策をしておくことをおすすめします。

(4) 令和3年度 予備試験合格者の年齢、性別その他の構成

①合格者の性別構成 

性別
比率(合格者) 78.16% 21.84%

合格者の割合は、男性がおよそ8割を占める結果となりました。この割合は、例年大きな変化はありません。

②合格者の年齢

最低年齢 17歳
最高年齢 64歳
平均年齢  26.28歳

令和3年度最年少合格者は17歳の高校生でした。逆に、最年長合格者は64歳となっています。このように、予備試験は合格者の年齢層が幅広いことも特徴の一つと言え、予備試験の合格に年齢は関係ありません。

しかしながら、合格者のボリュームゾーンは主に20代の学生が多くを占めていることも事実です。

③職種別

 

出願者 受験者 短答合格者 論文合格者 最終合格者
公務員 1,368 1,018 267 21 19
教職員 148 110 27 0 0
会社員 3,117 2,374 469 37 35
法律事務所事務員 288 240 64 4 4
塾教師 137 107 29 1 1
自営業 711 511 138 6 6
法科大学院生 1,211 1,058 267 101 99
法科大学院生以外

大学院生

34 28 9 2 2
大学生 3,831 3,508 733 255 252
無職 2,936 2,371 625 45 44
その他 536 392 95 7 5
総計 14,317 11,717 2,723 479 467

職種別で見ると「大学生」「法科大学院生」が突出して多いことがお分かりいただけるのではないでしょうか。しかしながら、社会人合格者も多く合格していることが見て取れます。

学生に比べて時間的に不利とも言える社会人受験生にとっては、励みとなる結果なのではないでしょうか。

3 予備試験合格後にまずやること

兎にも角にも司法試験対策です。

予備試験に合格したら、めでたく司法試験の受験資格を得ることができます。11月に予備試験の合格発表があった後、次の年の5月の司法試験を受験することになります。わずか半年の間に司法試験の準備をしなければなりません。

とはいえ、臆することはありません。予備試験を突破していれば司法試験も恐れているほど合格が難しい試験ではありません。というのも、東大や慶應の法科大学院より予備試験合格者の方が合格率が高いというデータがあります。これには2つの理由があると考えられています。

1つ目は予備試験の勉強をすることで、結果として予備試験合格時点で司法試験合格に限りなく近い実力がついているからです。予備試験実施当初から変わらずこの傾向です。

2つ目は予備試験で課されることが司法試験で出題されることとかなり重なっているので改めて勉強する範囲が少ないという点が挙げられます。

司法試験の場合、短答式試験の科目数は憲法、民法、刑法の3科目のみです。さらに論文式試験の科目も大幅に重なっています。司法試験の試験科目は以下のとおりです。

(1) 短答式試験

科目

問題数

得点

憲法

20~25問

50点

民法

30~38問

75点

刑法

20~25問

50点

憲法、民法、刑法の3科目ともマークシート方式で行われます。短答式試験の各科目の問題数と配点は上の表のとおりです。短答の合計点は憲民刑あわせて175点となっています。民法がもっとも重い配点となっているので民法の攻略がカギです。

ただし、司法試験には足切りがあることに注意してください。予備試験と違って、すべての科目で40%以上の得点を取る必要があります。万一、1科目でも40%未満の科目があると、他の科目がどれだけ高得点でも合格できません。予備試験は一部の科目の点数を引き上げて突破することが可能ですが、司法試験ではその手が通じないという違いに気を付けてください。これは論文試験でも同様です。

(2) 論文式試験科目

科目

得点

公法系

憲法,行政法

200点

民事系

民法,商法,民事訴訟法

300点

刑事系

刑法,刑事訴訟法

200点

選択科目

100点

論文試験は必須科目7科目(憲法、行政法、民法、商法、民事訴訟法、刑法、刑事訴訟法)と選択科目1科目の計8科目です。各科目100点満点で配分されており、満点は800点となります。予備試験の勉強をしていれば新たに勉強する分野はほとんどありません。適切な対策をすれば、特に問題なく突破することができます。

選択科目についてです。選択科目は以下の8科目より1科目を選んで解答します。

・倒産法
・租税法
・経済法
・知的財産法
・労働法
・環境法
・国際関係法(公法系)
・国際関係法(私法系)

選択科目の選択は出願時に行います。ですから願書を出す時にはどの科目を受験するか決定する必要があるのです。

(3) 司法試験の合格率

司法試験は例年24%前後で合格します。見てのとおり、かなり低い合格率となっているのです。受験資格を得るのに法科大学院を修了するか、予備試験に合格する必要があるということを考えるといかに難しいのかがよくわかるでしょう。

ただ、先ほども書いたように予備試験合格者の合格率は平均合格率を大きく上回っています。つまり予備試験を合格すれば司法試験の合格も夢物語ではないのです。

(4) 勉強方針

司法試験に向けて簡単に勉強方針を示します。先ほどから言っているように予備試験と司法試験の出題範囲はかなり重なっています。ですから、これまでの勉強を継続していくことで司法試験突破の可能性を高めていくことができます。

それに加えて、選択科目の勉強を開始する必要があります。予備試験の合格発表から司法試験の出願まで時間がありません。選択科目は出願時に届けなければいけませんから速やかにどの科目を選択するか決めて勉強に取り組んでいく必要があります。

また、短答試験についても注意が必要です。科目は憲法、民法、刑法の3科目しかありませんが、1科目でも4割未満の点数だとその時点で不合格となります。まんべんなく勉強する必要があります。

論文にかんしてはいままでやってきた内容をもう一度そう復習するところから始めてみましょう。予備試験と司法試験の出題は似通っていますからいままでの勉強を活かすことができます。

(5) 司法試験の受験手続

令和4年司法試験受験願書の交付等については次のようになります(参照:法務省「令和4年司法試験の実施について」)。

①交付期間

令和3年11月8日(月)から同年12月1日(水)まで

②出願期間

令和3年11月17日(水)から同年12月1日(水)まで

出願は12月1日(水)までの消印有効となります。余裕をもって入手してください。

③法科大学院を通じて交付を受ける場合(1名1部ずつ)

通学する法科大学院又は法科大学院の課程を修了した当該大学院に交付を申し出てください。司法試験委員会から各法科大学院に対し、交付開始日までに受験願書を送付します。

④郵送による場合(1名1部ずつ)

郵送による交付を希望する場合は,表に赤字で「司法試験受験願書 」と記載して裏に差出人名を記載した適宜の封筒に角形2号の返信用封筒に205円分の切手を張り付けて司法試験委員会宛てに請求してください。上記交付期間内に必着 です。返信用封筒がない場合は郵送されませんので注意してください。

請求先 は次のとおりです。

〒100-8977 東京都千代田区霞が関1-1-1(法務省内) 司法試験委員会

⑤来庁による場合(1名1部ずつ)

Ⅰ 交付場所 :法務省1階東玄関(日比谷公園側)

「受験願書交付場所」案内図のとおり

Ⅱ  交付時間 :10:00~18:00(土曜日,日曜日及び祝日等の休日を除く )。

⑥令和4年司法試験の出願について

出願時に,各市区町村から配布された「住民票コード(11桁) 」が必要となります。ただし、住民票の提出は不要です。

4 サマリー

いかがだったでしょうか?司法予備試験の傾向を押さえることはできたでしょうか?

そして、予備試験を突破した次はいよいよ司法試験です。司法試験の科目数は予備試験よりも限られています。予備試験の通過者は司法試験の合格率も高いです。予備試験を突破できたなら、あとは臆することなく学習を続け、司法試験合格を勝ち取ってください。

5 まとめ

    • 令和3年度の予備試験短答式受験者数は昨年度より増加したが、およそ例年通り(令和2年度はコロナウィルスの影響を受け一時的に下がったと推測)
    • 令和3年度の予備試験短答試験の合格者数は2,723人(合格率23.2%)であり例年とほぼ同水準で推移している
    • 令和3年度は、憲法(16.7点)・行政法(10.7点)の平均点が大幅に下がる結果となり難化傾向にあると推測
    • 令和3年度の民法の平均点は17.3点であり(令和2年度は12.7点)昨年度よりもおよそ5点も大幅に上昇(故に、基本的な知識の確実性が求められる)
    • 令和2年の予備試験論文式試験受験者数 2,439人に対して令和3年度は194人(受験者数2,633人)増加している
    • 令和3年度の口述試験合格率は98%を超え短答式試験や論文式試験に比べると合格率が高く論文式試験をクリアすればほぼ合格できる
    • 令和3年度最年少合格者は17歳の高校生、最年長合格者は64歳
    • 職種別で見ると「大学生」「法科大学院生」が突出して多いが、毎年社会人合格者も多く誕生している!

 

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