予備試験に1年で合格することは可能?その現実的な考え方を徹底解説

予備試験

「予備試験に1年で受かりたい、けどどうやって勉強していけばいいのかわからない。」 このような悩みをお持ちではないでしょうか?予備試験は合格率4%の難関試験です。毎年約1万人が受験して合格するのは400名前後。たった1年で合格するのは難しいと思いますよね。

でも、1年間の勉強で一発合格した人がいるのも事実です。そこでこの記事では、どのような人が1年で予備試験を合格できたのか紹介します。予備試験に合格するのにどうすればいいのかわからなくて困っている方は、どのようなスケジュールで勉強すれば1年で予備試験を突破できるのかを紹介しますので、ぜひこちらの記事をご活用ください。

1 予備試験とはどのような試験なのか?

(1) 予備試験とは司法試験を受ける資格を得るための試験

予備試験とは「法科大学院修了程度の知識・能力があるかを判定する試験」です。一般的に司法試験を受験するためには法科大学院を修了しなければなりません。

ですが、法科大学院に通うには費用、時間的な制約があります。法科大学院には一応飛び級もあります。ですが、大学を卒業していることが入学条件となっているのと卒業までには2年か3年の期間が必要になるという条件があるのです。したがって、司法試験の受験資格取得にかかる期間が長く、高い学費も払う必要があります。

このような費用的、時間的な制約のために法科大学院に通うことができないひともいるでしょう。そこでそんなひとのための救済措置が予備試験なのです。予備試験に合格すれば、法科大学院に通う必要がないため、経済的、時間的な負担もなく司法試験を受験することができます。それに予備試験は受験資格がないのでだれでも受験することができるという点でも法科大学院にはない利点となっています。

これを裏付けるように、20代の受験者が最も多くなっています。つまり、大学生や法科大学院生が予備試験を受験していることを示しています。また、人数だけでみると社会人のほうが多いことから時間的な制約で法科大学院に通えないひとも多く受験していることがわかります。予備試験に合格すると、法科大学院を修了していなくとも、司法試験の受験資格を得ることができるからです。法科大学院に通っていない、あるいは通えない人にとって、法曹になるためには避けて通れないのが予備試験というわけです。

(2) 試験の時期、科目、問題数、合格数などの詳細

予備試験は年に1回実施されます。現行の司法試験と違って受験回数、受験資格に特に制限はありません。試験の内容はつぎのとおりです。

  • 短答式試験:5月下旬
  • 論文式試験:7月上旬
  • 口述式試験:10月下旬

論文式試験は短答試験の合格者だけが受験することができます。口述式試験は論文式試験の合格者だけが受験できるようになっています。それぞれについて細かくみていくことにしましょう。

① 短答式試験

Ⅰ 短答式試験の概要

短答式試験は、選択式の試験です。ここで大多数の受験生がふるいにかけられます。試験科目は全部で8科目で、憲法、民法、刑法、商法、民事訴訟法、刑事訴訟法、行政法と一般教養です。短答式試験では六法の持込は認められていないので注意してください。

Ⅱ 短答式試験の難易度

合格率は毎年20%程度であり、予備試験の最初の関門といえます。生半可な勉強をしたくらいではすぐに不合格になってしまう難易度です。短答式試験の点数は一般教養が60点、法律7科目は各30点となりますので、合計270点満点ということになります。合格点は、165点から170点程度であり、だいたい6割程度の点数を取ることができれば突破できる試験となっています。ちなみに直近平成29年度、平成30年度は160点以上が合格点でしたので合格点は下がってきているといえるかもしれません。

予備試験の出題形式は、正誤問題が大半を占めています。正誤問題といっても、いろいろと種類があり、全ての選択肢の正誤がわからなければ正解できない問題と、一部の選択肢のみ分かれば正解を導ける問題があります。このなかから「間違ったもの」を選ぶというトリッキーな問題もみられます。

正誤問題だけではなく、司法試験でおなじみである、各学説からどんな結論が導きだせるかについて答える論理問題や、解答欄のかっこのなかに入る語句を選択肢のなかから選択させる問題も出題されるので気を付けてください。試験範囲は各科目の全ての範囲からまんべんなく出題されます。商法や民事訴訟法などのマイナー分野からの出題もありますので気を抜けません。短答式試験を突破するには、試験範囲を網羅的に勉強しなければならないのです。

② 論文式試験

Ⅰ 論文式試験の概要

論文式試験は実際に記述して解答する試験です。A4の白紙4枚に解答を書いていく形式となっています。ここまでの分量の記述量を経験してきたひとはそうそういないでしょう。この論文式試験こそが予備試験最大の山場となっています。事実上論文試験に受かるかどうかによって予備試験の命運は決まってくるといっても過言ではありません。それくらい重要な試験なのです。

ですから普段の勉強でも、この試験を突破することに全力を割く必要があります。科目数は憲法、民法、刑法、商法、民事争訟法、刑事訴訟法、行政法に加えて、実務基礎科目(民事・刑事)という予備試験独自の科目と一般教養もあります。合計で10科目もあるとてもヘビーな試験です。

Ⅱ 論文式試験の難易度

合格率は短答式試験と同じ20%程度です。一見簡単そうにも思えますがそれが落とし穴です。そもそも論文試験を受けるのは短答式試験を突破した人たちです。短答試験の段階ではまだ記念受験や単純に実力、勉強不足の人も混ざっていたと考えられます。

ですが、論文試験ではそのふるいを突破したひとたちが受験するわけです。そしてその中で20%に入る必要があります。必然的に短答式試験よりも難しいということになるのです。この論文試験で多くの法曹志願者が涙を呑みます。いつまでたってもこの論文試験に合格できないというひともいるのです。予備試験合格の最大のポイントは、この論文式試験突破にあるというべきでしょう。

予備試験の論文式試験の形式は次のようなものです。まず、A4用紙1枚から長いと数ページにわたる事例を読みます。この事例というのはこういう時になにがどうなってどういうことが起きた、というようなものです。そしてその事例を読んだ上で、設問に答えていくという形式になっています。論文式試験の特徴としては、出題される範囲が短答式試験に比べると限定されているということです。場合によっては同じ論点が何度も何度も繰り返し出題されることもありますので過去問をしっかりと研究することが大切となってきます。

③ 口述式試験

Ⅰ 口述式試験の概要

口述式試験は予備試験独自の試験です。形式としては試験官2名が口頭で問題を出し、これに答えていくものとなります。試験科目は、民事実務と刑事実務の2つです。民事実務は民法と民事訴訟法が、刑事実務は刑法と刑事訴訟法が土台となっている、予備試験独自の科目です。

これは論文試験と共通のものです。そして、そんな口述式試験に合格すると、めでたく予備試験の最終合格ということになります。

Ⅱ 口述式試験の難易度

合格率は9割を超えています。これも一見簡単かと思われがちですが、論文式試験の合格者のみに課される試験である以上、レベルは非常に高いです。口述試験のやっかいなところは、論文式試験の合格発表から口述試験の試験日まで 2週間しかないことです。ここで落ちてしまうとまた来年短答試験から受けなおしとなってしまうので、油断せず、しっかりと対策をする必要があります。

さきほども触れましたが、予備試験の口述式試験は、主査・副査の2名がいて、その2名との問答をとおして行われるという形式です。主に主査からの質問が多く、副査は補助的な質問を行う場合が多いと言われています。口述式試験では2日間かけて刑事実務基礎科目・民事実務基礎科目の2科目の試験が実施されるのです。刑事実務基礎科目では、主に刑事訴訟の手続,犯人性などが、民事実務基礎科目では、民事保全・執行、要件事実などが出題されます。

④ 予備試験の合格率

例年、予備試験の最終合格率は概ね3%〜4%しかありません。令和元年度の予備試験も、受験した11,780名のうち、最終の合格者は476名で、最終合格率は4.04%でした。ここからみても非常に難易度の高い試験であるということができます。

とはいえ、ここ4年間で、予備試験の合格者数は増加傾向にあり、予備試験合格の可能性は十分にあるといえるでしょう。

2 予備試験に合格するためにはどのくらい勉強する必要があるのか?

では、そんな予備試験に合格するためにはどれくらい勉強する必要があるでしょうか?実は予備試験に合格するには標準的には、3000~8000時間の勉強が必要だと言われています。仮に毎日8時間勉強したとしても、2年以上はかかる計算になります。5000÷8=625日というくらいですね。

よくやりがちな話として、ひたすらインプットをしてしまうということがあります。ただただ条文をよんだり、基本書を一から読んでいくような話ですね。ですが、予備試験は試験範囲が膨大なので基本書で一からすべてインプットしようとするといつまでたってもインプット作業が終わりません。おまけに範囲が広すぎるので、1冊読み終わったころにははじめのほうにやった内容を忘れてしまいます。そこで、インプットよりもアウトプットに時間を使うことが効率的となってきます。

特に論文試験対策に多くの時間をさく必要があります。なぜならもっとも難しいからです。また、論文試験対策をすることで短答試験対策にもなります。短答試験は知識が身についたかどうかをアウトプットするイメージで勉強すると効率的です。

逆に口述試験は、他の2つよりも勉強時間は短くても大丈夫になります。9割は受かる試験ですし、必要な知識はこれまでの勉強内容で十分だからです。

3 予備試験を1年で合格するための勉強のコツとは

(1) 勉強方針の概要

予備試験を1年で合格する心構えとして、1年でやりきるという決意が重要となります。勉強期間が長引けば長引くほどモチベーションが下がっていってしまいます。 

参照:【目指せ1年合格!!】予備試験の勉強期間はどれくらい必要なの?|司法試験最短合格の道!資格スクエア「ハンパないチャンネル」vol.233

勉強する順番も重要な要素の一つです。まずは基本書、基礎講座を学び全体像をつかむことが大事になってきます。ここで多くの人がつまづいてしまいます。この段階で時間をかけすぎないようにしましょう。全体像をつかんだら次はさっそく演習をするようにしましょう。問題集を説いたり過去問を解くなど実践的な演習を積んでいく段階になります。

この時、本を買って、計画的に進めれば独学でも可能です。逆に、時間を節約したりモチベーションを保つために予備校を使うことを検討するのもいい手でしょう。

論文試験対策の答練などは、時間を区切って書いて、フィードバックを得られると効果的に勉強することができます。

(2) 短答式試験の対策

① 毎日コツコツ解くことが一番の短答試験対策

毎日コツコツと問題を解くのが短答式試験突破の近道です。

短答式試験は選択式だから余裕などと油断してはいけません。予備試験は範囲が広すぎて試験直前になって慌ててつめこんでも現実的に間に合わないです。毎日コツコツと問題を解いていくことが一番の短答式試験対策です。遅くとも短答試験の半年くらい前から問題演習を開始する必要があります

② ひたすら過去問演習

予備試験の特徴として、同じような問題も何度も出題されているというものがあります。試験範囲が広いとはいえ、過去問演習が有効なのです。また、仮に初めて出題された知識であったとしても、過去問の知識を使えば解答可能な問題も多いので必要以上に恐れる必要はありません

したがって過去問を何度も何度も繰り返し繰り返し解くことが特に選択式の短答試験では大切なのです。とりあえず平成23年以降の全ての予備試験と平成18年以降の過去問をすべて解き、何度も解きなおしを行うと良いでしょう。

③ 過去問の出来具合によって問題を選別しよう

ここまでみてきたように、短答式試験対策に過去問演習は必須です。とはいえ、毎回全ての問題を解きなおしていると時間がいくらあっても足りません。

そこで、問題を見た瞬間に答えられたような問題は、次回以降の演習から除外するほうがいいです。こうすることで、次回以降の問題演習の時間が短縮化され、自分がわかっていない問題や箇所を集中して勉強することができます

(3) 論文試験対策

① 論文試験も過去問が大事

過去問演習は論文式試験対策でも有効です。その理由は2つあります。1つは過去問を解くことで試験の傾向を掴むことができることです。やみくもに判例100選や重要論点を読み込むよりも過去問演習をして頻出範囲を押さえてから判例100選などを読んだ方が効率的です。

2つ目はアウトプットを重ねることで、知識の定着率がよくなるという点です。最初は答案の書き方がまったくわからず、手も足も出ないかもしれません。それでも、答案例を参照しながらでも論文を書いていくとよいでしょう。そうしていくと少しずつ書くことができるようになっていきます。

② いい論文を書くのに大事なのは知識の多さではない

多くの人が誤解していることですが、論文式試験の勉強をするときに必要な知識はそんなに多くはないのです。多くの知識を持っているよりも、自分が持っている知識でいかにかくかがポイントとなってきます。

実際、予備試験に上位合格した人の答案は必ずしもレベルの高い知識がちりばめられている答案ではありません。少ない知識をいかに正確にかつわかりやすく表現できているかのほうがはるかに重要です。

③ インプットと並行して答案を書こう

短期合格を目指す場合、知識を頭にいれるのと同時に論文試験対策を行う必要があります。具体的には、遅くとも各分野の内容を一通り終えた段階で、答案を書き始めるのです。最初は答えを模写することからはじめてもいいでしょう。

知識のインプットと同時並行で問題演習をすることで、知識の定着を図るとともに、論文試験対策に十分な時間を確保することができます。まずは知識をインプットして、それから論文対策をしようと考えていては、1年合格は難しいでしょう。

(4) 口述試験対策

① 必須の分野をマスターしよう

口述試験の難しいところは、民事保全法や民事執行法、要件事実など、いままでの試験でほとんど問われなかった分野を質問されることです。口述式試験の合格率は9割と非常に高いですが、だからこそ知識に抜け漏れがあると、一気に低評価になってしまう可能性があります

② 対策は論文試験対策終了後から

口述式試験のやっかいなところは対策に充てられる期間の短さです。論文試験の合格発表後、まもなく口述試験がはじまります。だからといって、あまりにも早くから始めてしまうとそれはそれで不都合が生じます。まずは論文・短答試験に受からなければ意味がないからです。

民事実務基礎科目は民法・民事訴訟法、刑事実務基礎科目は刑法・刑事訴訟法の知識が必要となります。まずは論文式試験対策に集中することでこの2科目の基礎を固めるほうがいいでしょう。

③ 正確な知識が必要

口述試験対策のためには、問われた瞬間に知識をパッ、とアウトプットできる必要があります。口述式試験は緊張しながら行われますから、知識があやふやのままだと、最悪何も言えずに終わってしまったといった事態にもなりかねません。

いままでの学習で積み重ねてきた内容を今一度復習してラストスパートしてください。

▼こちらの記事も合わせてご覧ください。
【司法試験予備試験】論文式・口述式試験の試験科目は?

4 予備試験1年合格の理想的なスケジュールは?

予備試験は、毎年5月に短答式試験、7月に論文式試験、10月に口述試験があります。ここから逆算して計画をたてる必要があります。 

10月

11月

12月

1月

2月

3月

4月

5月

6月

7月

8月

9月

10月

11月

試験スケジュール

願書受付開始

願書締め切り

短答式試験

論文式試験

口述試験

最終合格発表

論文試験

インプット

過去問演習

短答式

インプット

過去問演習

口述式

演習

5 サマリー

予備試験は司法試験を受けるためのルートの一つとなっています。法科大学院ルートと比べると時間的、経済的に余裕がでます。また受験制限もないので大学を卒業していない人でも、社会人でも受験可能です。ただし、その分難易度も高く、生半可な勉強では合格できません。

試験は全部で3つあります。短答試験論文試験口述試験です。これら3つともそれぞれ特徴と難しさがあります。しかしながら、予備試験を突破すると司法試験に挑戦することができるので法曹志望者はぜひとも受験することをおすすめします。

6 まとめ

  • 予備試験は4%しか合格しない難関試験。
  • 合格に必要な標準的な時間は8000時間。毎日8時間でも2年以上かかる
  • アウトプット重視で効率的な勉強が重要
  • 論文式試験に時間を割くのがおすすめ
  • 各科目の試験時期を逆算して計画的に学ぶことで1年合格も夢ではない
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