予備試験短答は誰でも合格できる?失敗しない勉強法とは

予備試験

予備試験の短答式試験に合格するためには、どのような勉強をすれば合格できるのでしょうか?

一見、「六法の丸暗記が有効なのでは?」と思われがちですが、結論からいえばそのようなことはありません。広範に及ぶ試験科目の条文を丸暗記することは不可能ですし効率が悪すぎます。

この記事では、予備試験の短答式試験に合格するための勉強法について解説して参りますので、是非ご参考になさってください。

1 予備試験の短答式試験とは?

予備試験の「短答式試験」とは、3段階のステップ方式で行われる予備試験のうち、最初の関門となる試験のことです。

予備試験の第一関門となる短答式試験に合格しなければ、予備試験の天王山といえる論文式試験を受験することはできません。また、翌年免除されるというような、いわゆる免除制度はありません。

なお、予備試験の実施日程が令和5年から変更されますので注意が必要です。例年は、短答式試験においては5月中旬に実施されていましたが、およそ2ヶ月後ろ倒しの日程となります。その他、詳細情報については、こちらの記事をご確認ください。

2 予備試験短答式試験の難易度について

予備試験に合格するためには、絶対に合格しなければならない重要な試験であることはおわかりいただけたかと思いますが、短答式試験は、いったいどのくらいの難易度なのでしょうか?

法務省のデータによれば、下表のとおり短答式試験の合格率は、例年20%前後であり、およそ5人に1人が合格できる試験です。知識が不十分では到底合格できる試験ではありません。

年度 年度 受験者数 合格者数 合格率
平成23年 2011 6,477 1,339 20.67%
平成24年 2012 7,183 1,711 23.82%
平成25年 2013 9,224 2,017 21.87%
平成26年 2014 10,347 2,018 19.50%
平成27年 2015 10,334 2,294 22.20%
平成28年 2016 10,442 2,426 23.23%
平成29年 2017 10,743 2,299 21.40%
平成30年 2018 11,136 2,661 23.90%
令和元年 2019 11,780 2,696 22.89%
令和2年 2020 10,608 2,529 23.84%
令和3年 2021 11,717 2,723 23.24%
令和4年 2022 13,004 2,829 21.75%

参照:法務省「司法試験予備試験の結果について」

次に、短答式試験の合格点等についてですが、下表のとおり合格点と合格者の平均点には、15点前後の乖離があることがわかります。

合格点 満点 得点率 合格者平均点 最高得点 得点率
平成23年 165 270 61.11% 184.7 240 88.9%
平成24年 165 270 61.11% 184.1 233 86.3%
平成25年 170 270 62.96% 185.3 241 89.3%
平成26年 170 270 62.96% 185.7 235 87.0%
平成27年 170 270 62.96% 187.5 244 90.4%
平成28年 165 270 61.11% 181.5 230 85.2%
平成29年 160 270 59.26% 174.9 225 83.3%
平成30年 160 270 59.26% 177.7 233 86.3%
令和元年 162 270 60.00% 177 233 86.3%
令和2年 156 270 57.78% 173.7 244 90.4%
令和3年 162 270 60.00% 178.7 229 84.8%
令和4年 159 270 58.89% 175 232 85.9%

参照:法務省「司法試験予備試験の結果について」

直近のデータによれば、例年、合格点は160~170点前後です。合格者の平均点や得点率を見ると80%台半ば〜90%台と高い水準となっていますが、大事なことは高い得点で合格することを目指すのではなく、「合格点=合格水準(およそ160~170点)」を超えることを目指した勉強です。

では、合格水準を超えるためには、どのように勉強すればよいのでしょうか?短答式試験に合格する方法については、次章をご覧ください。

3 予備試験短答式試験に合格するためにすべきこと

予備試験の短答式試験に合格するためには、短答知識を内包している論文主体の勉強を行うことが基本的な勉強方法となりますが、ここでは、短答式試験で合格点を取るための具体的な方法について解説いたします。

(1) 高得点での合格を目指すのではなく「合格点=合格水準」を目指した勉強をする

短答式試験対策は、勉強する範囲を絞り(合格に必要な知識)深追いしすぎないようにしましょう。

なぜなら、徒に勉強範囲を広げてしまうと正確な知識を身につけるのに膨大な時間を費やしてしまうため非効率だからです。その時間を後に控えている論文式試験対策に充てた方が効率がよく、合格への近道となります。

(2) 過去問演習中心の勉強をする

予備試験の短答式試験に合格するためにすべきこととして最も重要な勉強法は、過去問学習を主軸とした勉強方法です。

中高、大学などの受験や各種資格試験対策においても過去問の重要性は謳われていますが、予備試験においても同様です。

過去問演習は、1冊の問題集に絞り繰り返し行うことが大切です。また、知識の定着を図るコツとしては、自信をもって解けた問題については演習対象から外し、苦手部分や分からない問題に絞って演習を行うことをおすすめします。

具体的には、根拠をもって解けた問題(肢)には◯、正解はしたものの自信がない、間違えた問題には×などの目印を付けて、それ以降は×のついた問題のみを解きます。これを繰り返すことで、自分の苦手な部分(問題)を把握することができ復習するべき部分が明確になります。

短答式試験と論文式試験で問われる判例や条文知識は重複していますので、過去問演習で間違えた箇所や知識があやふやな部分については、基本書や条文に戻り1つずつ潰していきましょう。

短答式試験の勉強とはいえ、論文式試験の勉強と結びつけるような意識で勉強することで量試験の相乗効果が期待できます。

(3) 短答式試験ではどのようなことが問われるかを把握する

また、短答式試験ではどのようなこと(どのような知識、いわゆる頻出論点・知識)が問われるか傾向を把握しておくことも欠かすことができません。

例えば、条文知識で解ける問題はどの範囲なのか、毎年のように出題される頻出論点はどこなのか、など過去問演習を繰り返し行っているうちに把握できるようになります。

特に、頻出論点や条文知識で解ける問題については、他の受験生も対策をし得点源としていますので落とすわけにはいきません。何度も繰り返し必ず得点できるようにしておきましょう。

(4) 苦手科目・分野の克服をする

過去問演習を繰り返し実践していると、自分の苦手な部分が見えてきますので、合格点に近づけるためには1つでも多くの苦手科目・分野の克服をすることが大切です。

短答式試験全体の得点を上げるコツとしては、科目の分野ごとに自分なりに「得意、普通、苦手」などを整理しておき、戦略的に問題を解くことも実践的には重要です。

苦手な科目については、少しでも点数を上げる努力を惜しまないようにしましょう。

なお、受験生全体のデータからは、得意科目・苦手科目の傾向もみてとることができます。短答式試験の科目ごとの平均点や平均得点率をまとめた直近2年分のデータは以下のとおりです。

【令和3年度】

得点 最高点 最低点 平均点 平均得点率
合計得点(270点満点) 229 18 132.0
科目別得点 憲法(30点満点) 30 1 16.7 55.67%
行政法(30点満点) 27 0 10.7 35.67%
民法(30点満点) 30 0 17.3 57.67%
商法(30点満点) 30 0 16.0 53.33%
民事訴訟法(30点満点) 30 0 14.6 48.67%
刑法(30点満点) 30 0 17.3 57.67%
刑事訴訟法(30点満点) 30 0 14.6 48.67%
一般教養(60点満点) 57 0 24.9 41.50%

 

【令和4年】

得点 最高点 最低点 平均点 平均得点率
合計得点(270点満点) 232 8 127.9
科目別得点 憲法(30点満点) 30 0 19.8 66.00%
行政法(30点満点) 29 0 12.8 42.67%
民法(30点満点) 30 0 15.2 50.67%
商法(30点満点) 30 0 10.9 36.33%
民事訴訟法(30点満点) 30 0 15.1 50.33%
刑法(30点満点) 30 0 17.1 57.00%
刑事訴訟法(30点満点) 30 0 15.9 53.00%
一般教養(60点満点) 57 0 21.2 35.33%

参照:法務省「司法試験予備試験の結果について」

行政法や商法は、イメージしにくい科目なので苦手とする受験生が多いということがわかります。一方で、憲法や民法、刑法は比較的多くの受験生が得意としている科目です。

短答式試験に合格するためには、得点源となる科目は落とさず、苦手な科目を作らないようにする努力が大切です。

(5) 短答プロパーといわれる知識の補充をする

基本的な知識を正確に理解した後は、手薄になりがちな法改正部分の知識や条文知識など「短答プロパー」といわれる細かな知識の補充も忘れずに行う必要があります。予備校の情報や答練などを活用して漏れのないように対策しましょう。

短答プロパー知識の補充は、優先順位的には高くありませんので、直前期に行う受験生も一定数います。あくまでも合格点に必要な知識の定着が最優先であることを忘れないでください。

4 予備試験の短答式試験に合格する人・落ちる人の違い

予備試験の短答式試験に合格する人と落ちる人の違いはどのような点なのでしょうか?

試験当日のコンディションなど特別な事情を除けば、まず第1に勉強の方向性を間違えずに正しい勉強方法を継続しているか否かが分かれ道となります。正しい勉強方法とは、スケジュールの立て方やインプット・アウトプットの配分、合格(点)に必要な知識に絞ったカリキュラムを実践することなどです。

第2に、アウトプット量の差が合否を分けてしまうという点が挙げられます。

インプットに関しては、完全に理解が及ばなくてもできるだけ早く1周してしまうことが得策です。過去問を解きながら解説や基本書、条文に戻り知識を定着させる作業をコツコツ行うことがとても大切です。

1周目は正答率が悪くても気にする必要はありません。2周目、3周目と回数を重ねるうちに時間も短縮することができ、徐々に知識が定着していることを実感できるようになります。その際は、単に正解するだけではなく「理由」についても正確に答えられるようにしましょう。

ある程度周回した後は、ランダムに解くなど工夫をしてみてください。解く順番が異なると正答率が落ちることがありますが、その状態ではまだ完全に知識が定着しているとはいえません。

このように、苦手な部分を抽出して徹底的に潰していくことで合格の2文字が見えて来ます。

5 サマリー

予備試験の短答式試験は、合格するまでに大変な努力をしなければなりませんが、天才しか合格できない試験ではありません。合格から逆算した無理のないスケジュールを立てたうえで正しい勉強法をコツコツと実践すれば合格することができる試験です。

6 まとめ

  • 予備試験の「短答式試験」とは、3段階のステップ方式で行われる予備試験のうち、最初の関門となる試験のことである。
  • 令和5年の予備試験短答式試験の日程は、令和5年7月16日(日)。
  • 予備試験の短答式試験の合格率は、例年20%前後であり、およそ5人に1人が合格できる試験である。
  • 予備試験の短答式試験に合格するためには、高得点での合格を目指すのではなく「合格点=合格水準」を目指した勉強をする。
  • 予備試験の短答式試験に合格するためには、短答式試験ではどのようなことが問われるかを把握する。
  • 予備試験の短答式試験に合格するためには、苦手な科目については、少しでも点数を上げる努力を惜しまない。
  • 予備試験の短答式試験に合格するためには、基本的な知識を正確に理解した後は「短答プロパー」といわれる知識の補充をする。
  • 予備試験の短答式試験に合格する人は、勉強の方向性を間違えずに正しい勉強方法を継続している。
  • 予備試験の短答式試験に合格する人は、アウトプット量が豊富である。
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