予備試験の論文式試験の対策とは?試験の特徴・勉強法を解説

予備試験

「予備試験の論文がまったく書けない・・・。どうやって対策すれば良いのか分からない。」

このような悩みを抱えている受験生は少なくありません。合格者であれば、誰もが通る道ともいえるのではないでしょうか。

対策が難しいといわれる予備試験の論文式試験対策についてまとめてみました。おすすめの勉強方法から、受験生がしてはいけない3つのことなどを解説していきます。

1 予備試験とは?

“予備試験合格は法曹への最短ルート”です。

司法試験予備試験(以下「予備試験」)とは、例年の合格率がわずか4%ほどの難関国家試験であり、予備試験に合格すれば法科大学院を修了していなくても司法試験の受験資格を得ることができます。

◆予備試験に合格する(予備試験ルート)

◆法科大学院を修了する(法科大学院ルート)

 

法曹三者(裁判官、検察官、弁護士)になるためには、司法試験に合格する必要があります。どちらかのルートを経て、初めて司法試験の受験資格を得ることができます。いずれのルートも、司法試験を5年間で5回まで受験することができます。(予備試験ルートは予備試験合格後の最初の年の4月1日から5年間、法科大学院ルートは法科大学院修了後の最初の年の4月1日から5年間)。

また、法務省のデータによれば、令和2年度の最年少合格者は、19歳以下で3人、最高齢合格者は55~59歳で3人という結果となりました。予備試験は、このように幅広い年齢層の方が毎年合格を果たしていることも大きな特徴の一つです。

2011年(平成23年)から始まり、その歴史はまだ浅いものの、毎年多くの優秀な人材が高い合格率で(令和2年度はおよそ9割)司法試験合格を果たしています。

2 予備試験 論文式試験の特徴

司法試験予備試験のしくみ

予備試験の試験形式は、『短答』『論文』『口述』と3つの試験で構成されています。例年、短答は5月、論文は7月、口述は10月に実施されますが、すべての試験に合格しないかぎり予備試験に合格することはできません。

3つの試験はそれぞれ出題形式も問題の難易度も異なりますが、例年7月に行われる論文式試験は、まさに天王山といっても過言ではなく、合格するためには要となる試験であることに間違いありません。

次に、科目や実際の試験スケジュールについても見ていきましょう。

(1) 予備試験 論文式試験の科目は10科目

予備試験の論文式試験は、10科目が出題されます。

憲法・民法・刑法・商法・民事訴訟法・刑事訴訟法・行政法・民事実務・刑事実務・選択科目(労働法、倒産法、知財法、租税法、経済法、国際私法、国際公法、環境法の8科目から1科目を選択)で、すべて50点満点で採点されます。

選択科目は、2022年度試験からの新しい科目で、21年度まであった一般教養の代わりに導入されました。対策をしっかり行って挑みましょう。

(2) 予備試験 論文式試験は2日間にわたり行われる

論文式試験は、10科目について2日間にわたり行われることとなります。知力だけではなく体力勝負の試験であるともいえます。体調を万全に整えて試験当日を迎えましょう。

        試験時間 試験科目
1日目 9:30〜11:50(2時間20分) 憲法・行政法
13:15〜15:35(2時間20分) 刑法・刑事訴訟法
16:30〜17:30(1時間) 一般教養科目(2021年度まで)

※2022年度からは「選択科目」に移行

2日目 9:30〜12:30(3時間) 法律実務基礎科目(民事・刑事)
14:00〜17:30(3時間30分) 民法・商法・民事訴訟法

 

1科目につきおよそ70分の試験ですので曖昧な知識では到底太刀打ちすることができないことは言うまでもありません。しっかりと論文対策中心の学習計画を整えて予備試験の天王山である論文式試験の合格を掴み取りましょう!

 

3 予備試験の論文式試験が難しい理由

そもそも、なぜ予備試験の論文式試験は難しいといわれているのでしょうか?

 

理由(1) 勉強量の多さ

予備試験の難易度の1番の要因は、やはり勉強量の多さでしょう。10科目に及ぶ膨大な法律知識を「原則・例外・再例外」「要件・効果」「判例」「学説の対立」「立法趣旨」などの基本的な知識はもちろんのこと、それらをベースとした上で法的思考を駆使して問題文上から論点・事実を丁寧に拾い上げて論述しなければなりません。

六法を丸々暗記するような勉強法とは毛色が異なりますからあまり意味がありませんので、ここは一つ覚悟を決めてコツコツと反復学習を繰り返しましょう。このコツコツとした努力が合格への近道ですので頑張っていきましょう!

「社会人の私には無理なんじゃ・・・。」

などと諦めてはいけません!実際に、社会人の方でも仕事と両立しながら見事合格を果たしている方が毎年多く誕生しています。合格のためには勉強のスケジューリングにコツがあります。合格するための勉強法については後述します。

理由(2) 優秀な母集団との競争

予備試験の論文式試験が難しい理由の2つ目は、第一関門を潜り抜けて来た優秀な受験者との競争です。

予備試験の短答式試験では、論文式以上に広範な知識が問われます。いわゆる短答プロパーといわれる、主に「条文知識」も必須の基礎知識に含まれます。予備試験は、法科大学院を修了したのと同程度の法的素養が身についているかどうかを判定する試験ですから、その短答式試験に合格する実力のある受験生は非常に優秀というわけです。

 

4 論文式の採点基準は? 

「試験委員へのラブレターって聞いたことがあるけれど、受験生はどんな答案を書けば評価されるの?」

「論文式答案の採点基準ってどうなってるの?」

このような疑問を感じたことがある方は少なくないのではないでしょうか?なかなか点数が伸びなくて悩んでいる受験生にとっては悩みの種ですよね。

予備試験の論文式問題については、司法試験予備試験考査委員会が採点方針の概要を公開しています。概要によれば、予備試験論文式の答案は内容に応じて「優秀」「良好」「一応の水準」「不良」の4つに分類されてます。それぞれ「何点を配点するか」「全体の答案数のうちどのくらいの割合とするか」について、あらかじめ決められています。

以下は、採点方針です。

  配点 割合
優秀 50〜38点 5%程度
良好 37〜29点 25%程度
一応の水準 28〜21点 40%程度
不良 20〜0点 30%程度

予備試験の論文式試験に合格するためには、500点満点のうち50%程度を取れればOKというのが、ここ数年の傾向です。

つまり、必ずしも優秀答案、良好答案を書かなければ不合格になってしまうということではありません。

すべての科目で「一応の水準」の上位50%程度の答案が書ければ、全体の上位50%に滑り込むことが可能となります。50%と聞くと少し油断してしまいそうですが、ここは少し注意が必要です!

なぜなら、「1科目でも不良答案があると、ただちに全体の50%未満に陥落する」というリスクがあります。これらを踏まえた上で、ベストな対策を立てていかなければなりません。いったいどのような対策を立てるべきなのでしょうか?

 『一応の水準の上位20%ほど=全体の40%以内に評価されるような答案をかけるレベル』ということになります。自分の実力をこのレベルまで引き上げることが必須ということです。

 

5 論文式試験に合格するための勉強法は?

それでは、予備試験の論文式試験に合格するためにはいったいどのように対策すれば良いのでしょうか?

予備試験の論文式試験対策は「受験生の数だけある」といっても過言ではありません。

この記事では、学習の初期段階で効率的に“スタートダッシュ”をきるための『最低限やっておくべきこと』を合格へのコツとして4つご紹介しますのでご参考になさってくださいね。

 

(1) “合格”から逆算した学習スケジューリングが功を奏す!

10科目分の試験範囲を試験日から逆算して割り振った時に、1日当たりどのくらいの分量をこなさなければならないのか明確に把握することが大切です。

スケジューリングを間違えてしまうと、試験日ギリギリになってもインプットが終わらないなどという最悪の事態を招きかねません。特に、初学者の方は短答式試験対策と論文式試験対策の比重やインプットとアウトプットの比重に悩まれることが多いです。

また、それらを自力で対策することは、調べるだけでもかなりの時間がかかり、スケジューリングについてだけでも相当悩まれることになってしまい兼ねません。

短期合格を目指すのであれば可能であれば、予備試験合格のために研究し尽くされたカリキュラムとスケジュールが備わっている予備校を利用して試験対策をすることをおすすめします。

資格スクエアの予備試験講座では、学習継続を目的とし、合格ロードマップやレベル別学習シートを用いて「何を」「どのくらい時間をかけて」「どの順番で」「どの教材を使って」学習を進めるのかを明確に指定します。

これにより無理なスケジュールを回避し合格への最短ステップを形成することができます。
また、専任スタッフが定期的にフォローアップを行い学習進捗を客観的に評価しアドバイスを行い受講生の学習をサポートします。

(2) 論文答案をとにかくたくさん書く!

論文式試験の合格への近道は、実際に答案を書くことです。

実際に合格者の43%以上が200通以上の答案を作成しています(資格スクエア2019年度予備試験論文式試験合格者アンケートより)。

それほどアウトプット量は合格に直結する要素と言えるでしょう。

では具体的にどのような方法で勉強を進めれば良いのかお伝えします。


① 解答例は見ずにまずは自力で答案構成をする

② 基本書(テキスト)は見ながらでもまずは論文を書いてみる

③ 自力の答案と解答例を見比べてズレを確認し修正(復習)する

 

答案構成とは、論文式試験において自分の論証展開を効率良く答案に落とし込むために必要なプロセスです。あくまでもメモ書き程度のものですので、自分にさえわかれば良く字の丁寧さが求められるような性質のものではありません。答案構成が的確にできていれば、論点の拾い漏れなども回避できますし、時短にも繋がります。

資格スクエアの予備試験講座では、アウトプットを重視し早期から論文演習を組み込んだカリキュラムを提供しています。論文添削は業界最多の200通にも及びます。

(3) 過去問を繰り返し解く

過去問は実際に出題された試験問題です。
つまり、「こういうレベルの問題を出すから、解答できるようしっかり勉強してくださいね」という試験委員からのヒントがぎっしりつまっています。

過去問を解くことで自分のレベルを把握し対策や勉強の方針が立てやすくなります。
また一つの指標にもなりますので過去問を繰り返し解くことで実力を身に着けることができます。

平成23年(2011年)から始まった予備試験の歴史は、まだ日が浅く、過去問自体も10年ほどの分量しかありません。これらを徹底的に反復して自分のものにしてしまいましょう。また、余裕があれば、旧司法試験の問題にもチャレンジしてみると良いでしょう。

 

6 受験生が「してはいけない」3つのこと

これまでは、合格するための勉強法について見てきましたが、反対に、受験生が「してはいけないこと」とはどのようなものなのでしょうか?もし、今のご自分に心当たりがあるようでしたら要注意です。合格するためと割り切って、この機会に改善してみてはいかがでしょうか?

(1) 勉強の方向性を間違える

予備試験の論文式試験対策の要は、先にも触れたとおり『実際に答案を書くこと』です。ここに関しては、こなしてきた数が結果に直結するといえます。よくある失敗例として挙げられるのですが、「論文がまったく書けないのはインプット不足だから」と思い、インプットに戻ってしまい論文に着手できない、もしくは、実際に書いた論文の数が圧倒的に少ないということです。

論文式試験対策は基本的な知識が定着していなければ解くことができませんので、短答式試験対策も兼ねていることになります。勉強当初から短答式試験対策を本格的に行うことは効率が良いとは言えません。

資格スクエアの予備試験講座では、論文の基礎力を徹底的にマスターしたうえで短答式試験の対策を行うため、論文が書けるようになる頃には短答式試験を突破できる実力を身に付けることができます。

(2) スキマ時間を活用できていない

予備試験に合格するまでは、は長く苦しい道のりです。

特に社会人受験生の場合は、勉強に使える1日の可処分時間が限られていることもあり苦戦を強いられてしまいます。途中で挫折してしまう受験生も少なくありません。

机に向かって勉強する時間ももちろん大事なのですが、通勤や何となく過ごしてしまいがちなスキマ時間を有効活用することで1日数時間は確保することができるかもしれません。

また、自分自身の生活リズムを見直すことも大切です。合格者の中には早起きをして勉強時間を捻出している方が一定数いらっしゃるのも事実です。生活リズムを受験に適応させることも試験対策の一環となるでしょう。

昨今では、スマホ1つですべて完結するオンライン予備校もあります。通学型とは異なり、いつでもどこでも学習することが可能です。

(3) 勉強のツールを広げ過ぎる

なかなか成績が上がらないことや学説の対立などの特定の論点を深入りしすぎてしまうことが要因で、いろいろな基本書や参考書に手を出し、そのどれもが中途半端なまま本番を迎えるという受験生も少なくありません。

情報は出来る限り一元化し、学習ツールを増やしすぎないようにしましょう。

予備校利用者であれば、予備校で用意された教材以外には手を出さずにひたすらその教材だけを使い込むことをおすすめします。

オンライン予備校の資格スクエアではデジタル教材を用いて学習ができるので、スキマ時間を活用できるだけなく、質問機能からいつでも質問をすることができます。

また、重い教材を持ち運ぶことなくスマホ一つに教材が集約されているので情報が散在することなくワンストップで学習が可能です。

7 予備試験論文式試験過去問一覧

実際に出題された問題と出題趣旨を研究することも対策のひとつになります。

そこで参考資料として、予備試験論文式の全過去問と出題趣旨を紹介します。

平成23年 憲法・行政法 刑法・刑事訴訟法 民法・商法・民事訴訟法 法律実務基礎科目(民事・刑事) 一般教養科目
平成24年 憲法・行政法 民法・商法・民事訴訟法 刑法・刑事訴訟法 法律実務基礎科目(民事・刑事) 一般教養科目
平成25年 憲法・行政法 民法・商法・民事訴訟法 刑法・刑事訴訟法 法律実務基礎科目(民事・刑事) 一般教養科目
平成26年 憲法・行政法 民法・商法・民事訴訟法 刑法・刑事訴訟法 法律実務基礎科目(民事・刑事) 一般教養科目
平成27年 憲法・行政法 民法・商法・民事訴訟法 刑法・刑事訴訟法 法律実務基礎科目(民事・刑事) 一般教養科目
平成28年 憲法・行政法 民法・商法・民事訴訟法 刑法・刑事訴訟法 法律実務基礎科目(民事・刑事) 一般教養科目
平成29年 憲法・行政法 民法・商法・民事訴訟法 刑法・刑事訴訟法 法律実務基礎科目(民事・刑事) 一般教養科目
平成30年 憲法・行政法 民法・商法・民事訴訟法 刑法・刑事訴訟法 法律実務基礎科目(民事・刑事) 一般教養科目
平成31年 憲法・行政法 民法・商法・民事訴訟法 刑法・刑事訴訟法 法律実務基礎科目(民事・刑事) 一般教養科目
令和2年 憲法・行政法 民法・商法・民事訴訟法 刑法・刑事訴訟法 法律実務基礎科目(民事・刑事) 一般教養科目
令和3年 憲法・行政法 民法・商法・民事訴訟法 刑法・刑事訴訟法 法律実務基礎科目(民事・刑事) 一般教養科目

8 まとめ

  • 予備試験とは、例年合格率が4%ほどの難関国家試験であり合格すれば法科大学院を修了していなくても司法試験の受験資格を得ることができる
  • 予備試験 論文式試験の特徴①論文式試験の科目は10科目②論文式試験は2日間にわたり行われる
  • 予備試験の論文式試験が難しい理由①予備試験自体の難易度がとても高い②優秀な受験生との競争が必要
  • 予備試験 論文式試験に合格するための勉強法は①学習ススケジュール②論文答案を書く③過去問を解く
  • 受験生がしてはいけない3つのこと①インプットを重視しすぎる②スキマ時間を活用できていない③勉強のツールを広げ過ぎる
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