予備試験の勉強を始める上で、テキスト(教材)選びは、とても重要な過程になります。特に予備校を利用しない方にとっては、市販で売られている多数のテキストの中から、何を選べばいいのか、様々な口コミや評判をネットで探してみても、本当にその情報が信頼できるものなのか不安ですよね。
この記事では、予備試験において、どのようにテキストを選んだらよいのか、実際に多くの合格者が利用しているテキストもご紹介しながら解説します。是非参考にしてみてくださいね。
1 予備試験対策におけるテキストの選び方
予備試験におけるテキストの選び方には、入門の段階から、試験直前期まで、異なります。究極的には、それぞれ自分に合ったテキストを選ぶのが最も良いということになってしまいますが、初学の段階では、自分に合ったテキストなのかも分からないことの方が多いですよね。これから予備試験を勉強する方も、既に勉強を始めているが、思うように理解が進まず、テキストが合わないという方にとっても、この記事を読むことで少しでも自分に合ったテキスト選びができるように、解説していきます。
(1) 出版年に注意
法律系資格試験において、市販で売られているテキストや教材の出版年には、特に注意する必要があります。なぜなら、法律は改正されると、それに伴い、学問的な部分においても変更があり得るからです。
最近では、民法が2020年に改正されました。この改正は大幅な改正のため、これまでのテキストでは、補うのが難しいといえます。改正についての解説本を買うこともおすすめできますが、基本書については、知識が網羅されており、体系的な理解ができる書物なので、大幅な改正がされた科目については、改正に対応されたテキストや教材を買うことをおすすめします。
(2) 周りの情報に惑わされず、自分にとって本当に必要かどうか吟味しましょう
周りの受験生が使用しているテキストや、定評のあるテキストは、「自分に読んでおいた方が良いのでは?」と思う方も多いのではないでしょうか。みんなが使用しているテキストを買わないと、不安な気持ちになることもあると思います。
ただ、そういうときこそ、今手元にあるテキストで十分足りているのではないか、今一度確認してみて、本当に必要だと分かった場合に限り、購入することをおすすめします。
実際にテキストを買って一度も読まなかった、ということは受験生あるあるで、買って満足してしまうパターンもあります。
特に学習者の方は、新しいテキストや教材が年々増える中で、「この先生の本がいいよ」「この本は最新の情報が載っている」などと、様々な情報が飛び交っていると思います。
ただ、合格者全員が同じテキストを読んで合格しているわけではないので、周りの情報に惑わされないことも重要になります。
2 予備試験テキストの選び方~入門編~
これから予備試験の勉強を始める方は、特にどのようなテキストを選んだらよいのか、迷うと思います。
最初の入門の段階では、知識が網羅されている基本書を買う方も多いと思いますが、基本書を買う場合にはいくつか注意点があります。
まず、基本書というのは、学者が書いている書物になります。学者は、その分野のエキスパートといえるので、知識も学問的にとても深く、それ自体とても興味深いのですが、予備試験を合格するために必要以上のことが書かれていることがあります。特に初学者の方は、最初の段階で、何が合格のために必要な知識なのかは分からないので、最初に基本書を読み始めてみても、書いてあること一言一句全てを一生懸命理解しようと時間をかけてしまう恐れがあります。
これに対して予備校で配布されるテキストは、重要な部分を強調して装飾してくれたりと、初学者にとってはわかりやすくなっています。
実は、基本書は、一定程度学習が進んでから読んで見ると、一気に理解できることがあります。初学の段階では全く理解できなかったのに、学習が進んでから基本書を読み始めると理解できなかったところがすいすいと理解できるようになります。
最近では、予備試験や司法試験向けに作成された基本書もあり、昔に比べると、読みやすくコンパクトにまとめられた基本書も多数販売されています。基本書を選ぶ際には、最初はコンパクトにまとめられたテキストを選び、法律の外観がある程度理解できた段階で、厚めのテキストを選ぶのもおすすめです。
3 予備試験テキストの選び方~論文過去問編~
予備試験の勉強では、過去問を解くことはとても重要な過程になります。一定程度学習が進んできたら、過去問を解き始めると思いますが、過去問のテキストとしては、何を基準に選んだらよいのか、最初は分からないかもしれません。
過去問については、短答・論文の問題文は法務省のページで確認することができます。また、短答については、解答と配点、論文については、出題趣旨が法務省で掲載されているので、これだけで学習することも可能です。
もっとも、解説は法務省には掲載されていないので、最初の段階では、なぜこのような解答になったのか、その過程がわかるようなテキストが必要になります。
特にここでは、論文の過去問集に関するテキスト選びについて、ご紹介します。
論文の過去問においては、再現答案といわれる、合格者が本番で書いた答案を後日再現したものがとても重要になります。なぜなら、その答案が実際に合格ラインにのったポイントがどこなのかがリアルに把握することができるからです。再現答案を分析しながら、自分が書いた答案を見比べて、どこが良くてどこが悪いのかを知ることができます。敗因分析ができるということですね。
予備試験は相対評価試験なので、毎年合格基準も変わります。自分が書いた答案が合格点なのかを正確に把握することはとても難しいのですが、再現答案があれば、自分のレベルがどのくらいなのかを一定程度知ることはできます。正確な合格点は分かりませんが、再現答案が載っているテキストの方が比較ができるので、学習を進める上でとても有益な情報になります。
また、参考答案が載っているものもおすすめできます。法務省に載っている出題趣旨だけでは、具体的に答案としてどのように書けば良いのかわからないので、参考答案を見て、自分が書いた答案と見比べることができます。
実際に市販で売られているテキストとしては、辰已法律研究所のぶんせき本は、解説が載っているだけでなく、参考答案が載っているので、とてもおすすめです。
4 予備試験テキストの選び方~直前期編~
予備試験の直前期は、受験生にとって最も大事な時期となります。緊張も高まる中、試験本番に間に合うのか、日々不安になる方も多いと思います。この時期では、あまり新しい勉強に手を広げすぎず、これまで勉強してきたことを再復習したり、曖昧な部分を正確に理解することが重要になってきます。
(1) 短答について
短答については、試験に近づくにつれて、8科目分全てを満遍なく学習したいところですが、実際には時間の制約や、苦手分野を重点的に学習したりと、なかなか難しいかもしれません。
そこで、有効なのが集約ツールになります。集約ツールがあれば、効率よく勉強をすることができ、短い時間でも全体を見渡しながら学習を進めることができます。また、集約したものがあれば、あれこれと勉強に手を広げすぎずに済むことも大きなメリットの一つといえます。
集約ツールとしては、判例六法や択一六法がおすすめです。判例六法は、判例付きの六法で、択一六法は、条文に加えて趣旨や定義など、知識がより詳しく書かれているテキストになります。短答の集約ツールとしては、例えば過去問を解き、間違えた肢が条文であれば、条文のところにしるしや付箋をつけたり、何度も繰り返し出題される条文にマークするなど、様々な活用方法があります。後に条文の素読の勉強をする際にも、「この分野は出題されやすいからしっかり読もう」「ここは何度も間違えてるからしっかり復習をしよう」などと、見返すことができます。
直前期は、特に時間もなくなり、気持ちも焦るので、日々このように集約しておくことが重要になります。また短答の学習を始める段階で購入しておくことをおすすめします。
(2) 論文について
論文についても、短答と同様に、集約ツールがとても有効です。例えば、論証をまとめたものや、定義をまとめたものなど、一定程度暗記が必要となる部分は、直前期に見返したいですよね。受験生の中には、自分でまとめノートを作成する方も多いと思いますが、実際に作成に要する時間を考えると、あまり効率的ではないかもしれません。特に社会人の受験生は、時間が限られた中で勉強をしているので、集約ツールも、市販で売られているもの、予備校で配布されているものを活用していきましょう。
市販で売られているテキストとしては、アガルートの合格論証集や、辰巳法律研究所の趣旨規範ハンドブックがおすすめです。ただ、これに関しては、どのテキストが良いという判断よりも、既存のものをいかに自分のものとしてカスタマイズできるかが重要です。学習を始める段階で用意しておくことをおすすめします。
ここで注意したいのは、これらのテキストをそのまま暗記するものとして使うのではなく、実際に答案を書くときをイメージし、答案に反映できるように装飾していくことが重要です。例えば、テキストに書いてある論証が長過ぎる場合は、自分なりに短い論証を書いてみたり、より分かりやすい文章に書き換えてみたりと、自分なりに考えながら使うことが重要です。テキストにメモや付箋をつけて、自分用のノートを作りましょう。
5 サマリー
テキスト選びといっても、予備試験に合格するための過程に過ぎないので、あまり悩みすぎないことが大事です。一度買ってみたけど、合わなかった、分かりづらかったという経験をもった合格者もたくさんいます。そういうときは、潔く別のテキストを買ってみる方が良いかもしれません。実際にテキストを使ってみないと、分からないことや気づかないこともたくさんあると思うので、これまでご紹介してきたことをもとに、是非一度テキストを買って学習を進めてみてください。
6 まとめ
- テキストを選ぶ際の注意点として、出版年は必ず見るようにしましょう(改正対応か判断するため)
- 周りの情報に惑わされず、自分にとって本当に必要かどうか吟味しましょう
- 予備試験をこれから勉強する方は、基本書よりも、予備校が配布しているテキストがおすすめ(重要な箇所の判断が分かりやすい、基本書は学者が書いたもので、予備試験のための書籍でないことがある)
- 過去問のテキスト選びとしては、参考答案や再現答案が載っているものがおすすめ
- 短答については、集約ツールとして判例六法や択一六法がおすすめ
- 論文については、論証をまとめたものや、趣旨・規範が書いてあるテキストを、自分なりにカスタマイズして利用しましょう