弁護士になるには4つのステップが必要!司法試験に合格するだけでは弁護士になれない?!

予備試験

司法試験に合格すれば、すぐに弁護士になれるのでしょうか。

答えは、「No」です。弁護士になるためには、4つのステップを踏む必要があります。

この記事では、司法試験に合格してから弁護士になるまでのステップについて説明していますので、是非、参考にしてください。

また、この記事では、弁護士に向いている人の特徴を6個あげています。いくつあてはまるか確認しながら、この記事を読んでみてください。

1 弁護士になるまでのステップ

⑴ 司法試験の受験資格を得る

現行の司法試験では、誰でも受験できるわけではありません。

司法試験を受験するためには、法科大学院を修了するか、もしくは、予備試験に合格する必要があります。

尚、令和5年から法科大学院在学中に一定条件のもとで司法試験を受験することができますがこの方法で司法試験に合格した場合でも司法修習へ行くためには法科大学院修了が必要です。

① 法科大学院ルート

法科大学院ルートは、法科大学院を修了することによって司法試験の受験資格が得られるルートを指します。

法科大学院には既修コース(2年)と未修コース(3年)あります。既修コースは一般的に入学前から法律の学習をしている方を対象に、未修コースは初学者を対象に設置されたコースです。

初学者を想定した未修コースで司法試験に臨む場合、最短でも3年かかる計算になります。

法科大学院では、法律の学問を深められる場としては最適であり、また司法試験を目指す仲間ができるという意味ではとてもおすすめできるルートです。

一方で、法科大学院は法曹育成を目的とした教育機関であり、予備校ではないので、司法試験に合格するためのノウハウを学べる場所ではありません。例えば、答案の書き方を教えてもらえるわけではないので、司法試験のための勉強は自分で進めていく必要があります。

ただ、中には法科大学院に在学しながら予備試験に挑戦する方もいるので、予備試験ルートと並行するという選択肢もあります。

② 予備試験ルート

予備試験ルートは、予備試験という試験に合格することによって司法試験の受験資格が得られるルートです。

「司法試験を受ける前に別の試験に合格しなければならないんだ、、」と思ってしまうかもしれませんが、実は予備試験と司法試験は共通している点がいくつもあり、予備試験の受験勉強はそのまま司法試験にも活きます。

大きく共通しているポイントは、いずれも法律科目に関する試験であるということです。予備試験では最大10科目、司法試験は8科目から法律科目が出題されます。予備試験の出題科目は司法試験の科目の全てをカバーしているので、予備試験に合格することができれば、司法試験の受験勉強を一から始めるということも必要ありません。

もっとも、論述式試験については、司法試験の方が問題の量が多く、解答用紙も予備試験では4枚であるのに対して司法試験では8枚あるので、司法試験の過去問を解くなどしっかり対策しておく必要があるでしょう。

予備試験は、短答式試験、論文式試験、口述式試験のそれぞれを段階的に合格する必要があり難易度は大変高い試験ではありますが、予備試験ルートからの司法試験合格率は90%を超えるため司法試験合格への最短ルートと言っても過言ではないでしょう。

 

⑵ 司法試験に合格する

司法試験の受験資格を得られれば、司法試験を受験することが可能となります。

そして、弁護士になるには、この司法試験に合格する必要があります。

① 司法試験の概要

司法試験の受験資格が得られると、次はいよいよ司法試験の挑戦が始まります。

司法試験は、毎年1回行われ、令和5年は7月に実施が予定されています。

令和3年度司法試験の日程・科目

試験の日程 試験科目
7月12日(水) 【論述式】選択科目、憲法、行政法
7月13日(木) 【論述式】民法、商法、民事訴訟法
7月15日(土) 【論述式】刑法、刑事訴訟法
7月16日(日) 【短答式】民法、憲法、刑法

試験科目は全部で8科目あります。試験は4日間にわたって行われ、最終日は短答式試験が行われます。

論述式試験は科目によって試験時間も異なりますが、1日目の公法系科目の試験時間の合計は、全科目含めて7時間と、長丁場の試験になります。

中1日を挟んで5日間にわたって行われるので、相当な体力と集中力が必要になります。  

② 司法試験の合格率と難易度

司法試験は最難関の国家試験といわれますが、実際にどれくらい難易度が高いのか、合格率の統計をもとに見てみましょう。

司法試験の合格率は、最も低いものだと22.95%(平成28年)ですが、その後は上昇傾向にあり、令和3年度の司法試験合格率は41.5%と、過去最高の合格率になっています。

合格率が上がっている要因としては、受験者数が毎年減少傾向にあることと、政府の法曹養成制度改革推進会議が司法試験合格者数を年間1500人程度以上とする方針を出していることが関係しているようです。

毎年1500人以上の合格者を出さなければならない一方で、受験者数は毎年減っているので、合格率が上がるという現象が起きています。

数字で見ると、合格率が上がっている今がチャンスだともいえます。

一方で、難易度も落ちているのでは?と思われるかもしれませんが、合格率が上がっている=難易度が落ちている、と安易に決めるのは危険かもしれません。

司法試験は相対評価試験なので、受験生相対のレベルが上がっていれば、それだけ合格するのも難しいのが現状です。

気を抜かずに司法試験の勉強をしっかり行いましょう。

③ 予備試験ルートと法科大学院ルートの合格率の比較

令和3年度 司法試験 法科大学院別 合格者 合格率

こちらのグラフをみると、法科大学院ルートの司法試験合格率は、20%台~30%台であるのに対して、予備試験ルートの司法試験合格率は、60%台~90%台と、明らかに予備試験ルートの司法試験合格率が高いことが分かります。

特に、令和3年度の統計では、予備試験ルートの司法試験合格者の合格率が93.5%と、これまでの統計の中で合格率が最も高くなっています。

参照:法務省

このことから、合格率が約4%の予備試験を突破することができれば、司法試験に合格することも夢ではありません。予備試験ルートは、2つの大きな試験を突破しなければならないという意味では、とてもハードルが高く、茨の道ですが、予備試験の学習は司法試験の学習に活きるので、どちらのルートを選択しても、予備試験に挑戦してみることは大きな価値があります。

⑶ 1年間の司法修習を受ける

司法試験に無事、合格しても直ちに弁護士になることはできません。

司法試験に合格すると、次は司法修習を1年間受ける必要があります。

司法修習では、法曹として、実務の場で必要となる知識や技術を身につけるための研修を1年間受けます。

司法修習の特徴としては、司法試験に合格さえすれば、司法修習を受けるタイミングを自由に決められるということです。例えば、司法試験の合格した後、一般企業に就職し、何年間か働いた後に司法修習を受けることができます。中には留学に行って語学力を身につけてから司法修習に行く方もいます。

このように司法修習はすぐ受けなければならないものではないので、受験生の方は、司法試験に合格した後どのようなステップで法曹になりたいかを考えてみるのも良いかもしれません。

▼こちらの記事も合わせてご覧ください。
司法修習とは?司法試験合格後に受ける研修制度について解説

⑷司法修習生考試(二回試験)に合格する

司法修習では、最後に、「司法修習生考試(二回試験)」が行われます。この「二回試験」に合格すれば、晴れて弁護士になることができます。

司法修習の卒業試験のようなもので、法曹になるための最後の試験です。

試験科目は、民事裁判、刑事裁判、検察、民事弁護、刑事弁護の5科目です。

1日1科目ずつ、計5日間にわたって試験が行われるという、超耐久レースになっています。

試験内容は起案で、100ページ程度の実際にあった事件の記録を読み、文書作成を行います。

司法修習では何度も起案を行うので、そのときの知識や記憶を総動員して取り組むことになります。

試験時間は昼食も含めて7時間30分にも及びます。

しかしこれでも時間が足りないくらいで、ほとんどの受験生は昼食をとりながら起案をしています。

合格率は98%程度で、ほとんどが合格する試験です。

しかし、司法試験合格者のみが受験するのでレベルは非常に高く、問題の難易度は最も高いといえます。

また、体力・精神的にもかなり厳しい試験といえます。

2 弁護士の日常

⑴ 弁護士の使命

弁護士は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とします(弁護士法1条1項)。

⑵ 弁護士の扱う事件

① 民事事件

一般的な法律相談の多くは、民事事件に該当します。

例えば、金銭トラブルに関する事件、離婚に関する事件、相続に関する事件等が、民事事件に該当します。

弁護士は、これらの事件について、依頼者の代理人として、交渉や裁判を通じ、法律問題を解決していきます。

② 刑事事件

刑事事件では、逮捕された被疑者や、起訴されて裁判を受ける被告人のために活動を行います。

被疑者事件では、接見を通じて被疑者に取調べのアドバイスをしたり、被告人事件では、被告人の無罪を証明するために、検察官と争ったりします。

⑶ 弁護士の働き方

① 法律事務所

多くの弁護士は、法律事務所で働いています。

新人弁護士は、ボス弁や先輩弁護士から事件をもらい、共同又は単独で業務をこなし、経験を積んでいきます。

また、事務所事件とは別に、個人で事件を受任することを許可されている法律事務所もあります。こういった法律事務所では、事務所事件だけでなく、自分でも営業を行い、事件を獲得することも可能です。

② 企業内弁護士

近年では、弁護士資格を生かして、企業の法務部で勤務する方も多くなりました。

企業内に弁護士が入り、契約のチェックを行うことで、事前に紛争を予防することが期待されます。

③ 自治体内弁護士

弁護士の働き方が多様化してきている昨今においては、任期付きの職員として弁護士を採用している地方自治体も増えてきました。

市役所や県庁の職員として弁護士が関与することで、適切な行政活動が行われることを推進させる役割を果たすことが期待されます。

3 弁護士の魅力


弁護士の仕事は、非常に魅力的です。

詳しくは、こちらの記事を参照ください。

▼弁護士の魅力とは?! 4つのポイントから紐解くリアルな実情▼

4 弁護士に向いている人

⑴ 論理的に物事を考えることができる人

争いは、感情的な対立から発生することが多いです。

依頼者や相手方本人は、感情的になっている場合がありますが、紛争を解決する手段は法律です。そして、法律を適用して解決するのが弁護士の仕事です。そのため、弁護士には、感情的にならずに、依頼者の話を法律に適用して解決することが求められます。

このように、当事者の主張を法律に適用して解決できる弁護士になるには、論理的に物事を考えることができる人が向いています。

⑵ 見通しが立てられる人

弁護士は、常に相手方の動きを予想して、動いていく必要があります。

交渉や訴訟でも、相手方の動きを予想することができれば、先を見据えた弁護活動を行うことができ、依頼者に有利な結論に至るための強力な武器となります。

依頼者に有利な結論へと導ける弁護士になるには、見通しが立てられる人が向いています。

⑶ 臨機応変に対応できる人

弁護士の仕事は、日々、予想外のことが発生します。

いくら事前に準備をしていたとしても、ハプニングはつきものです。また、全然勉強したことのない法分野についての相談や事件を扱うこともあるでしょう。この場合には、自分が知らない未知の問題について、対応する必要があります。弁護士の仕事は、予想外の出来事が発生したり、知らない問題に直面に出会った場合であっても、その壁を乗り越えていく必要があるのです。

このような予想外の出来事や、知らない問題を解決できる弁護士になるには、臨機応変に対応できる人が向いています。

⑷ 精神的にタフな人

弁護士の仕事は、人の不幸を扱う事件が多いです。そのため、弁護士は、相手方本人や、時には依頼者から感情をぶつけられる立場にあります。ゆえに、弁護士は、ストレス性の高い職業であるといえ、弁護士として生きていくためには、このストレスと上手く付き合っていく必要があります。

このようなストレスと上手く付き合っていく弁護士になるには、精神的にタフな人が向いています。

⑸ 人の話を聞くことができる人

依頼者は、自分の主張を弁護士に聞いてもらいたくて、相談にやってきます。

そのため、弁護士は適切なアドバイスをするだけでなく、依頼者の話をしっかりと聞くことも求められます。弁護士が依頼者の話を十分に聞かないと、依頼者は不満が残り、弁護士に対して、信頼を寄せることもないでしょう。依頼者と信頼関係が構築できないと、適切な弁護活動を行うことができません。

依頼者と信頼関係を構築できる弁護士になるには、人の話を聞くことができる人が向いています。

⑹ スケジュール管理ができる人

弁護士は、多数の案件を抱えており、同時並行で事件を処理していかなければなりません。

そのため、ひとつひとつの事件について、管理がきちんとできていないと、書面の提出期限が遅れる等、適切な業務を行うことが出来ません。このように、適切な業務を行うことが出来る弁護士になるには、スケジュール管理ができる人が向いています。

5 サマリー

この記事では、弁護士になるために必要なステップについて、段階を踏んで説明しました。また、弁護士の日常についても触れました。弁護士の仕事内容について、イメージがわかない方も多いと思います。この記事を読んで、弁護士のリアルを体感してください。

弁護士は他人の紛争を解決する仕事であり、法律知識だけではない能力も必要となります。ここに記載した特徴にひとつでもあてはまる方は、弁護士として必要な能力が備わっています。是非、弁護士を目指してみてください!

6 まとめ

  • 弁護士になるためには、①法科大学院を修了または予備試験に合格して、②司法試験に合格した上で、③1年間の司法修習を受け、④二回試験に合格する必要がある。
  • 弁護士の業務は、主に、民事事件と刑事事件に分類できる。
  • 法律事務所に勤務するだけでなく、企業や官公庁で働く弁護士も増えている。
  • 当事者の主張を法律に適用して解決できる弁護士になるには、論理的に物事を考えることができる人が向いている。
  • 依頼者に有利な結論へと導ける弁護士になるには、見通しが立てられる人が向いている。
  • 予想外の出来事や、知らない問題を解決できる弁護士になるには、臨機応変に対応できる人が向いている。
  • ストレスと上手く付き合っていく弁護士になるには、精神的にタフな人が向いている。
  • 依頼者と信頼関係を構築できる弁護士になるには、人の話を聞くことができる人が向いている。
  • 適切な業務を行うことが出来る弁護士になるには、スケジュール管理ができる人が向いている。
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