宅建試験に合格するための勉強法は、大きく分けて独学、通信講座、予備校の3種類あります。宅建試験の勉強を始める前に、まずは自分に合った勉強法を知っておくことが、スムーズに学習を進めるカギです。本記事では、3種類の勉強法のメリット・デメリットに加え、合格に役立つ効率的な勉強法と心構えをご紹介します。ぜひ試験勉強の参考にしてみてください。
1 宅建の難易度を理解しよう
試験勉強を始める前に、まず宅建の難易度を理解することが大切です。ハードルの高さを知ることで、努力の方向性などにも大きく影響します。
ここでは「宅建試験の難易度」と「宅建試験合格に必要な努力量」についてご紹介します。試験勉強の学習計画を立てる際の参考にしてみてください。
(1) 国家試験の中では比較的易しい
宅建試験は、国家試験の中では比較的簡単な試験だと言われています。その理由は主に以下のとおりです。
・特別な受験資格が定められておらず、年齢・性別・学歴など関係なく受験できる
・宅建試験は相対評価であり、勉強不足の受験者が含まれていたとしても、例年合格率は15%〜17%ある(令和2年度宅建の合格率は17.6%)
・過去問の類題が他の国家試験に比べて多く出題される傾向にある
・4肢択一のマークシート形式
こうした背景があり、宅建の難易度が他の国家試験と比べ比較的簡単と言われています。受験を検討しているのであれば、難しいと諦めず積極的に合格を狙いにいきましょう。
(2) 独学で取得する場合の勉強時間は約300時間~350時間
宅建試験が他の難関国家資格よりも比較的易しいとはいえ、相応の努力は必要です。独学の場合は、勉強時間の目安として約300時間~350時間必要だと言われています。しかし、300時間~350時間といっても実際にどれくらいなのかよくわからないのではないでしょうか。
たとえば会社員や主婦がすきま時間で1日2時間勉強したとすると、300時間を確保するには150日必要です。つまり、1日2時間の勉強を約5ヶ月間続ける必要があるという計算になります。
しかし実際のところ、忙しい日々の中で毎日勉強できるかはわかりません。そこで余裕をもって学習計画を立てることが大切です。できれば6〜7ヶ月前には試験勉強を始めることをおすすめします。
また、詳細な宅建の難易度や詳しい学習計画の立て方は別の記事で解説していますので、そちらも併せて参考にしてみてください。
2 宅建を取るための3種類の勉強法とメリット・デメリット
冒頭でもご紹介しましたが、宅建試験の勉強法は大きく以下の3種類にわけられます。
・独学
・通信講座
・宅建の予備校・学校
上記の中から、自分に合った勉強法を選択することが重要です。ここでは、3種類それぞれの勉強法のメリット・デメリットをご紹介します。
(1) 独学
宅建試験を独学で合格することは不可能ではありません。法律系の国家資格の受験経験者や不動産業で働いている方には、独学をおすすめします。特に不動産業で働いている方は、仕事で馴染みのある内容なので、比較的スムーズに学習を進めることが可能です。
しかし通信講座や予備校と比較すると、総合的に見て非効率になるのは否めません。第三者から教わる機会がないので、すべて自分でやり遂げる必要があります。そのため、あまり時間をかけたくない人には適さない勉強法といえるでしょう。
①メリット
宅建試験を独学で勉強するメリットは主に以下の4点です。
・必要な費用はテキストと問題集代程度で、ほとんど費用がかからない
・自分の好きなタイミングで学習を始められる
・自分に合ったペースで勉強が進められる
・時間や場所を選ばず学習できる
中でも大きなメリットは、他の勉強と比較して学習費用がさほどかからない点です。費用を抑えて勉強したい方におすすめの勉強法になります。
②デメリット
宅建試験を独学で勉強するデメリットは、主に以下の4点です。
・分からない所があっても質問できない
・挫折しやすい
・相当な時間が必要
・法改正などの対応が難しい
自分だけで勉強していると、不明点があっても自分で答えを探さなくてはなりません。知識の確実な定着にはつながるかもしれませんが、相当な時間が必要になるでしょう。
時間を有効活用して短期間で学習したいに方は、他の2つの勉強法をおすすめします。
(2) 通信講座
宅建試験を通信講座で勉強するのは、費用面と効率面どちらをみてもバランスの良い勉強法です。そのため、費用を抑えつつ効率の良い学習をしたいという方に向いています。
ただし、勉強スタイル自体は独学に近いため、モチベーションが保てるかどうかが合否の分かれ道になります。したがって、通信講座で勉強する際は、モチベーションを維持する工夫が必要です。
①メリット
通信講座で勉強して宅建試験合格を目指すメリットは、主に以下の4点です。
・オンライン講座が発達しているため、場所を選ばず学習できる
・合格のためのノウハウを教えてくれるので効率的な学習が可能
・分からない所は質問できる講座が多い
・自分のペースで学習が可能
独学と予備校、双方のメリットを併せ持っているのが特徴です。バランス良く学習が進むでしょう。独学で合格する自信はないけれど、予備校に通うための学費が高額だと感じる方におすすめです。
②デメリット
通信講座で勉強して宅建試験合格を目指すデメリットは、主に以下の2点です。
・独学よりは費用がかかる(数万~数十万)
・予備校よりモチベーションの維持が難しい
独学よりコストがかかるのは致し方ないものの、モチベーションの維持に問題ない方にはおすすめの勉強法だといえます。
(3) 宅建の予備校・学校
宅建の予備校や学校(以下予備校)のメリット・デメリットは、独学のメリット・デメリットの逆とも言い換えられます。つまり、効率が良く学習できる反面、安くない講義料金が必要です。
したがって、多少コストがかかっても、必ず合格したいと考える方に向いている勉強法でしょう。一方で、お金を極力かけたくない方には向きません。
①メリット
予備校に通って宅建合格を目指す際のメリットは、主に以下の4点です。
・直接講師の授業を受けることができて、分かりやすい
・分からない箇所はすぐに質問して解決できるため、学習効率が良い
・一緒に宅建試験を受ける仲間ができるため、モチベーションの維持がしやすい
しっかりとカリキュラムが組まれているため、自分で学習計画を立てる必要がない
自分だけで勉強するより、はるかに充実した学習が期待できるのは間違いありません。絶対合格したい理由がある方は、予備校に通う方法がおすすめです。
②デメリット
予備校に通って宅建合格を目指す際のデメリットは、主に以下の6点です。
・近隣に予備校がない地域に住んでいる方は通うことが難しい
・移動するための時間やコストが必要になる
・3つの勉強法の中で最も高額
・自学をしなくなる恐れがある
・原則、決まった曜日の決まった時間に通う必要がある
講座を受けるための料金の高さは、大きな弱みだといえます。そもそもお金をかけずに勉強したい方には向かないでしょう。
3 科目別の効率的な勉強法
宅建試験を受験する場合、科目ごとの特徴を理解したうえで学習することが非常に重要です。その理由には、科目ごとに出題数や求められる内容も変わってくる点が挙げられます。そのため、以下の科目ごとで勉強方法を変えることが必要です。
・宅建業法
・民法等
・法令上の制限
・税・その他
ここでは、科目別に効率的な勉強法をご紹介します。試験勉強の際に、ぜひ参考にしてみてください。
(1) 宅建業法
宅建業法は、4科目の中で最も難易度が低く、かつ50問中20問と出題数は最も多いのが特徴です。そのため、合格を目指すには最も重要な科目といえるでしょう。しっかり準備をし、満点に近い点数を狙ってください。
そんな宅建業法でおすすめの勉強法は、過去問を繰り返し解くことです。宅建業法では「35条書面」や「37条書面」といった重要なポイントを、何度も繰り返し出題する傾向にあります。そのため、過去問を繰り返し勉強することで高得点に近づくことが可能です。
ただし、近年では法改正の問題も出題されており、満点を目指すには法改正もチェックしておく必要があります。
(2) 民法等
民法等は、「民法」「借地借家法」「不動産登記法」「区分所有法」から出題されます。非常に範囲が広く、苦戦する人が最も多い科目です。しかし50問中14問と出題数も多く、他の受験生と差をつける最高のポイントでもあります。
民法等のおすすめの勉強法は、徹底して理解することです。よく暗記科目が多いと言われる宅建試験ですが、民法等だけは理解を問われる問題が多く出題されます。そのため、分かりやすいテキストを使用し、理解することに徹してください。その結果、知識の土台となる「基礎問題」が解けるようになっていきます。確実に基礎問題を解き、14問中8問程度正解できれば、合格点に届く可能性がぐっと高まります。
(3) 法令上の制限
法令上の制限では、簡単に言うと土地を使用したり建物を建築したりする際の規制について出題されます。出題範囲は「建築基準法」「都市計画法」「宅地造成規制法」「農地法」などです。多くの人に馴染みのない科目かもしれませんが、暗記科目であり、しっかり対策すれば得点することは難しくありません。
法令上の制限を勉強するためのおすすめの方法は、実際の取引を想像しながら、流れに沿って理解することです。法令上の制限は馴染みがない分、取引の流れを理解することで、意外とすんなり覚えることができます。
(4) 税・その他
税・その他は、「税法」や「最新の統計」のように他の3つの科目に当てはまらない問題が出題されます。そのため、出題範囲が非常に広いのが特徴です。しかし、出題数は50問中8問と少ないため、そこまで多くの時間をかけずに勉強を進めていきましょう。
過去10年間の過去問をひと通り解いて、基礎問題に対応できるようにしておくだけで十分です。ただし最新の統計(統計問題対策)だけは、試験前に必ず確認するようにしてください。
また、宅地建物業に就業している方は、登録講習を受講するだけで最後の5問を免除される制度があります。該当する方は、積極的に利用することがおすすめです。
4 宅建に最短で受かるための勉強法と心構え
宅建試験に最短で合格するためには、以下の3つの勉強法と心構えが重要です。
・計画性をもって勉強に取り組む
・出題傾向をつかんで重要部分に力を入れる
・教材を絞る
最短で合格するためには、いずでも必要不可欠な方法です。以下で詳しく解説します。
(1) 計画性をもって勉強に取り組む
宅建試験に最短で合格するには、効率的に勉強する必要があります。そして、効率的な勉強をするためには、学習計画を綿密に立てることが必要不可欠です。
例えば、独学に必要な時間を各教科の重要な順に割り振っていきます。おすすめは、以下の表のようなイメージです。
宅建業法 | 100時間 |
民法等 | 80時間 |
法令上の制限 | 40時間 |
税・その他 | 30時間 |
上記の表は、科目ごとの重要性だけを考慮した、あくまで目安となるものです。得意・不得意によって最適な時間配分は変わります。しかし、時間を割り振っただけでも勉強するための道筋が見えてきたはずです。このように、計画性をもって勉強に取り組むことで、最短で確実に合格できる可能性が高まります。
(2) 出題傾向をつかんで重要部分に力を入れる
宅建試験では、出題傾向をつかむことがとても重要です。その理由は、宅建試験では過去問の類題が頻繁に出題されることにあります。そのため、過去問を繰り返し解いて出題傾向をつかむことが必要不可欠です。言い換えれば、最短で宅建試験に合格する人ほど、過去問を繰り返し解いているのです。
一方で不合格になる人は、細かい部分までしっかり覚えようとします。しかし、宅建試験は出題範囲が莫大なので、全て覚えるのは非常に難しいでしょう。そのため、挫折するか勉強が間に合わず不合格になってしまうというケースが多いです。
(3) 教材を絞る
最短で宅建試験に合格するためには、使用する教材を絞ることも重要です。一見、多くの種類の教材で勉強するのは余念がないように思えます。しかし、教材はそのシリーズだけで合格できるように作られているため、多くの内容は重複してしまうのです。結果的に二度手間になってしまい、非効率だといえます。
いろいろな出版社・著書の教材を併用するよりも、1つのシリーズの教材に絞り、勉強時間を集中して勉強する方が、効率よく学ぶことができます。
また、宅建の勉強時間については別の記事で詳しく解説しています。そちらをぜひ参考にしてみてください。
5 まとめ
宅建試験に合格するためには、自分に合った勉強法の選択が必要不可欠です。自分に合っていない勉強法を選択してしまうと、ストレスがたまり挫折の原因になりかねません。
本記事では、宅建試験における3種類の勉強法のメリット・デメリットと併せ、合格に役立つ効率的な勉強法と心構えをご紹介しました。何となく、自分に合った勉強法が見えてきたのではないでしょうか。是非、試験勉強の参考にしてみてください。