宅建試験に出題される民法では、債務を連帯して負担する、連帯債務について定めています。
その連帯債務者の中の1人に、「絶対的効力を生じる事由」があると他の連帯債務者に影響を与えることになります。
絶対的効力を生じる事由には、請求、更改、免除、相殺、混同、時効があります。
*平成32年施行の改正民法では請求、免除、時効の効力は相対的なものとなります。
1. 請求
債権者は、連帯債務者の誰か1人にでも請求すれば、その時点で全員に請求したものとしてみなされます。
請求が完了すれば全員の債務の消滅時効が中断しますし、全員が履行遅滞になるのです。
しかし分割債務の場合には、分割債務者の1人に請求してもその1人だけが時効の中断または履行遅滞となります。
2. 更改
更改契約とは内容の変更をする契約で、旧債務を消滅させて新しい債務を生じさせるというものです。
債権者が1人の債権者との間で更改契約をした場合には、債権は全ての連帯債務者の利益のために消滅します。
5,000万円の建物を売却した売主Aさんと連帯債務者B・C・Dさんがいたとして、Bさんが5,000万円相当のマンションの所有権をAさんに移転することによって、5,000万円の債務が消滅したとします。
AB間でなされた更改契約により、CさんとDさんの連帯債務は消滅しますが、Bさんがそれぞれの負担割合に応じて求償することもあります。
3. 免除
債権者が連帯債務者の1人の債務を全額免除した時には、免除された人の負担部分を連帯債務額から引いた分の連帯債務を他の連帯債務者が負います。
4. 相殺
相殺とは、連帯債務者のうち1人と売主の間に同じだけの債権・債務がそれぞれあることです。
5,000万円の建物を売却した売主Aさんと連帯債務者B・C・Dさんがいます。
しかしAさんは同時に、Bさんに対して5,000万円の債務を負ってもいるのです。
この場合、わざわざ5,000万円を行き来させるのは無意味であるため、同等の債権によってお互いの債務を相殺させるというわけです。
AさんとBさんが相殺すれば連帯債務は消滅しますが、Bさんが負担割合に基づく求償をCさんとDさんにすることもあります。
また、Bさんが相殺していない間であれば、CさんまたはDさんは、Bさんの代わりにBさんの反対債権による相殺が可能です。
しかしそれはBさんの負担部分に限り、残りの連帯債務は全額からBさんの負担部分をひいた分になります。