同じ法律系難関国家資格である「司法試験」と「予備試験」ですが、どのような違いがあるのでしょうか?
結論からいうと、司法試験と予備試験は全く別物の試験であり司法試験の受験資格のひとつが「予備試験の合格」です。
受験資格や試験科目、傾向と対策など数え上げればキリがありませんが、どちらの試験においても合格を目指す際に共通していえることは、自分の置かれている環境に合った適切な学習環境やスケジューリングをすることが不可欠です。
この記事では、司法試験と予備試験の違いを比較しながら、どちらのルートで司法試験の合格を目指せば良いかについて解説していますので、是非ご参考になさってくださいね。
1 司法試験を受けるために必要な要件とは?
司法試験は、誰でも自由に受験できる試験ではありません。司法試験を受験するためには、前提となる資格が必要であり、以下のいずれかの「受験資格」を取得しなければなりません。
■法科大学院修了者(※注)
■予備試験合格者
法科大学院は、既習者コースまたは未習者コースに分かれており、卒業するまでに2〜3年かかります。また、法科大学院に入学するための条件として一般的には大学を卒業していなければ受験することができない点も押さえておきましょう。
一方で、予備試験は、年齢や学歴に関係なく誰もが受験することが可能な試験です。毎年多くの社会人合格者が輩出されており、その背景には、現代社会における複雑多様な問題に対応できる社会人経験豊富且つ優秀な人材に法曹への門戸が開かれているといえます。予備試験は、現役高校生から社会人に至るまで幅広い年齢層が毎年チャレンジし合格していることも特徴の一つです。
自分がどちらのルートを選ぶべきか悩まれる方が少なくありませんが、合格までにかかる年数や将来設計などをよく検討して最善の選択をしましょう。
(※注)
令和5年より、一定の条件を満たすことにより法科大学院在学中においても司法試験を受験することが可能となります。詳細については、法務省等のホームページを随時ご確認ください。 参照:法務省「司法試験法の一部改正等について」 文部科学省「法曹コースとは」 |
2 司法試験と予備試験の試験概要を比較
結論からいえば、司法試験と予備試験の試験科目はほぼ重複しています。以下の表をご覧ください。
予備試験科目 | 司法試験科目 | |
試験日(例年) | ・短答式試験 5月頃
・論文式試験 7月頃 ・口述試験 11月頃 |
・短答式試験及び論文式試験
5月中旬に中1日を挟み5日間実施 (※注2) |
合格率(例年) | 4%ほどを推移 | 30%ほどを推移
〈参考:令和3年度〉 ・予備試験合格者の合格率93.5% ・法科大学院修了者の合格率34.6% |
短答 | 憲法 | 憲法 |
民法 | 民法 | |
刑法 | 刑法 | |
商法 | ー | |
民事訴訟法 | ー | |
刑事訴訟法 | ー | |
行政法 | ー | |
一般教養 | ー | |
論文 | 憲法 | 憲法 |
民法 | 民法 | |
刑法 | 刑法 | |
商法 | 商法 | |
民事訴訟法 | 民事訴訟法 | |
刑事訴訟法 | 刑事訴訟法 | |
行政法 | 行政法 | |
選択科目【倒産法・ 租税法・ 経済法・ 知的財産法・ 労働法・ 環境法・ 国際関係法(公法系)・ 国際関係法(私法系)】※いずれか1科目を選択 | 選択科目【倒産法・ 租税法・ 経済法・ 知的財産法・ 労働法・ 環境法・ 国際関係法(公法系)・ 国際関係法(私法系)】※いずれか1科目を選択 | |
口述 | 法律実務基礎科目(民事・刑事) | ー |
(※注2)
令和5年より司法試験の日程が、5月中旬から7月中旬へと変更、予備試験の日程が、5月中旬から7月中旬(短答式)となりますので、試験情報については、最新情報の収集等をされることを忘れずに行ってください。
参照:法務省「司法試験委員会会議(第168回)議事要旨」
表からもご覧いただけるように、ほとんどの科目が重複しています。短答式試験については、予備試験では8科目あるのに対して司法試験では3科目と少なく、司法試験には口述試験がありません。「試験科目が減る分簡単なのでは?」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、司法試験の論文式試験が大きな壁となり多くの受験生が苦戦します。
なぜなら、論文式試験は、予備試験においても高難易度であることに違いはありませんが、予備試験よりも司法試験の論文式試験の方が問題の量が膨大であるほか求められるものも少し異なります。
例えば、予備試験の論文式試験では問題文の事情を解答に活かせる反面、司法試験の問題では膨大な問題文から事実を取捨選択をする思考が問われます。これは、実務家としての資質を判定するともいえる司法試験なので、ある意味然るべき試験の傾向ともいえます。
3 司法試験を予備試験ルートで受験することをオススメする理由
司法試験と予備試験の違いについて見てきましたが、どちらのルートが自分に合っているのかイメージできたでしょうか?
もし、迷われているようでしたら「予備試験ルート」で司法試験合格を目指されることをオススメします。
なぜなら、法律をより深く学べて勉強仲間ができやすいという法科大学院ルートならではのメリットも魅力的ですが、時間的・経済的な面から考えると予備試験ルートの方がメリットが大きいからです。法曹三者に至るまでの大きな壁となる司法試験の合格率の高さも予備試験特有の試験傾向の賜物といえます。つまり、殆どの科目が重複している予備試験向けの学習が司法試験の合格対策を兼ねているということに違いありません。これは、法務省のデータからも明らかです。
そして、近年では現役大学生や法科大学院生、高校生が予備試験合格を果たしており「予備試験ルート」が若い世代のトレンドとなっています。また、予備試験の大きな特徴として社会人受験生・合格者の健闘も見逃すことができません。
4 サマリー
司法試験と予備試験の違いについてご理解いただけたでしょうか?司法試験の受験資格を得るためには「法科大学院ルート」「予備試験ルート」の2つがあり、どちらを選択するかは、時間的・経済的な側面を検討することははもちろんのこと、ご自分の環境に合ったルートを選択することが合格への近道となります。
5 まとめ
- 司法試験の受験資格を得るには「法科大学院修了者(法科大学院ルート)」「予備試験合格者(予備試験ルート)」のうちどちらかを取得しなければならない
- 司法試験と予備試験の試験科目はほぼ重複しており、論文式試験の問題文の分量や傾向が異なる
- 時間的・経済的な面、合格率などから考えると「予備試験ルート」で司法試験合格を目指すのがオススメ!