法務省のデータを見ると、大学在学中に司法試験に合格している方が多くいらっしゃることが見て取れます。忙しい大学生が司法試験に合格するメリットと具体的な対策はどのようなものなのでしょうか?
この記事は、法曹三者を目指す現役大学生(高校生)とご家族の皆様の素朴な疑問に加え法曹へのルートをわかりやすく解説して参ります。
ご参考になれば幸いです。
1 司法試験とは?
司法試験は、裁判官、検察官または弁護士となろうとする者に必要な学識及びその応用能力を有するかどうかを判定することを目的とする国家試験です(司法試験法 第1条 司法試験の目的等 より)。例年5月中旬に中1日を挟んだ5日間に及ぶ試験(「短答式試験」と「論文式試験」)が年に1度実施されます。(※令和5年から試験制度の変更により実施時期が異なります。)
そして、裁判官・検察官・弁護士のことを「法曹三者」と呼びます。
近年では、法曹三者のうち、たとえば弁護士の働き方も多様化しており、インハウスローヤーとして一般企業で働く人も増えています。
法曹三者は、激務で休みがないというイメージが強いのが一般的ですが、ワークライフバランスを実現できる仕組みづくりは裁判所や検察庁、弁護士事務所問わず徐々に進められています。
そして、社会的地位が高く高収入が見込め、重い責任が伴うもののとてもやり甲斐のある仕事です。これから法曹を目指そうと考えている大学生(高校生)の皆さんも法曹三者に憧れを抱くきっかけとなることが、少なからずあるのではないでしょうか?
実際、法曹人の中には、自分や家族が弁護士に助けてもらったことがきっかけとなっていたり、テレビや映画に出てくる主人公に憧れを抱き夢を成し遂げている人がいるのも事実です。
今の自分の気持ちを大切にして、まずは、法曹三者への第一歩となる簡単なリサーチから踏み出してみましょう。
2 司法試験を受験するために資格は必要?
法曹三者になるためには、司法試験を受験し合格しなければなりません。では、司法試験は誰でも自由に受験することができるのでしょうか?
答えはNOです。司法試験を受験するためには、前提となる「受験資格」が必要なのです。
【司法試験の受験資格を得るルートは2つ】
◆法科大学院修了(※注)
◆司法試験予備試験合格
(※注1)
令和5年より、一定の条件を満たせば法科大学院在学中においても司法試験を受験することが可能となります。詳細については、法務省等のホームページを随時チェックしましょう。
参照:法務省「司法試験法の一部改正等について」
文部科学省「法曹コースとは」
司法試験は、制限なく誰もが受けられる試験ではありません。
前提となる司法試験の受験資格を得るには、上記2つのルートがあります。法科大学院修了(以下 法科大学院ルート)または、予備試験合格(以下 予備試験ルート)のどちらかを経なければ司法試験の受験をする資格を得ることができません。
3 法科大学院ルートと予備試験ルートどちらを選ぶべき?
これから進学を考える現役の学生(大学生・高校生)の方は、どちらのルートを選ぶべきか悩まれることが多いのですが、結論からいえばどちらがベストとは言い切ることができません。なぜなら、法科大学院ルート、予備試験ルートどちらも一長一短といえるものがあるからです。
法科大学院は、学費が高額になる傾向があり、修了するまでに2~3年かかりますが、修了さえすれば司法試験受験資格が得られます。また、勉強仲間とともに切磋琢磨しながら司法試験に向けた勉強ができ、モチベーションの維持がしやすい点がメリットといえます。課題なども豊富にある学校が多いので、より深く法学を学ぶことができるのは法科大学院です。
一方、予備試験ルートは時間的・経済的負担を抑えながら受験資格を得られることがメリットです。とはいえ、独学で予備試験合格を目指すことは至難の技といえますので「予備校」の利用は欠かすことができません。スキマ時間やオンライン受講(予備校による)などを最大限活用することができますので社会人受験生・合格者が多いのも予備試験ルートの特徴の一つです。
そして、注目すべきは近年の「司法試験受験資格取得ルート」のトレンドです。
大学在学中に予備試験ルートで司法試験に合格している方が増加しています。この背景には予備試験ルートの司法試験合格率が圧倒的に高いため(令和3年 93.5%)人気のルートである、と推察しても差し支えないでしょう。時間的・経済的メリットも含め魅力的であることがおわかりいただけるのではないでしょうか?
4 現役大学生(高校生)が司法試験を目指すメリット
司法試験の勉強を始めるのに適した年齢は、大学生頃をイメージされる方が多いのではないでしょうか。しかしながら、現実的には少し違います。法務省データによれば、例年20〜24歳が最も司法試験合格者の多い年齢層となっています。さらに、このデータを紐解くと令和3年度の司法試験においては、予備試験ルートでの大学在学中合格者が全体の40%ほどを占めています。大学卒業後ではなく在学中に司法試験に合格している方が多いことがわかり、そのために大学1、2年生、人によっては高校生から勉強を開始していることが推察できます。
なぜ、大学在学中に司法試験合格を目指している方が多いのでしょうか?どのようなメリットが考えられるのかをここで押さえておきましょう。
■時間的・経済的負担を抑えることができる
■将来の選択肢を広げることができる
■早期合格で好きな活動に打ち込むことができる
法科大学院ならではのメリットも多数ありますが、現実問題として、時間的・経済的な負担が本人だけではなく、支える家族にとっても大きな問題となるのも事実です。
一方で、大学在学中に予備試験ルートで司法試験に合格することができれば、予備校費用(50万円台〜100万円ほど)だけで済みます。決して安い費用ではありませんが、法科大学院の授業料等と比較すれば経済的ですよね。
また、「大学在学中に予備試験ルートで司法試験に合格する」いわゆる早期合格することができれば、就職面において将来の選択肢が広がります。
なお、大学在学中の合格者は法学部生だけではありません。法学部以外の合格者も多く誕生していますので、自分の得意な分野に磨きをかけて他者との差別化を図ることも可能となります。
早期合格を叶えた後は、大学生活をより充実したものにすべく、例えば、留学をしたり企業のインターンやさまざまなアルバイトなどを経験してみることも有益です。これらの経験は、実務に出た時に必ず役に立ちますので、学生時代にしかできない経験をたくさん積んでおくことをおすすめします。
5 現役大学生(高校生)が司法試験を目指すための具体的な対策
◆在学中の予備試験ルートがオススメ
◆予備試験対策には予備校が不可欠
先にも触れたように、現役大学生(高校生)が司法試験に合格するためには、前提となる資格が必要です。令和3年度の司法試験では現役高校生が合格を果たしていますので、現役高校生の方でも司法試験を目指すことは可能です(予備試験は年齢・学歴制限なし)。
大学(高校)在学中に効率良く司法試験の合格を目指すのであれば、司法試験合格率が高い予備試験の学習をすることが効率的でありおすすめです。
なお、予備試験対策には予備校の利用が不可欠となりますので、予備校の事前リサーチは入念に行いご家族と一緒に納得のできる予備校選びをされることをおすすめします。各予備校が無料で行っている相談会などを積極的に利用されてみてはいかがでしょうか。
6 法曹三者になるまでの流れ
司法試験に合格することは、法曹三者としての入り口の少し手前にようやく立ったことにほかなりません。なぜなら、法曹三者としての資格が付与されるためには、およそ1年間にわたる「司法修習」で研修を重ね、最後に「司法修習生考試(いわゆる2回試験)」に合格しなければならないからです。
法曹三者になるまでには、司法試験合格前後においていくつもの大きな壁が立ちはだかります。人の人生を左右してしまうほどの重責を担う法曹三者の前に立ちはだかる壁は、誰もが簡単に乗り越えられるようなものではないことはある意味当然ともいえるのかもしれませんね。
7 サマリー
大学在学中に司法試験にチャレンジするメリットについて少しはご理解いただけたでしょうか?端的にいえば「早期合格は未来へのアドバンテージが大きい」ということです。達成するまでは、思うように勉強が捗らないこともあるでしょうし、成績に伸び悩むこともあるでしょう。ですが、それらを乗り越えるのならさまざまな面でサポートを受けられる大学生のうちが圧倒的に有利です。この機会に、親子でじっくり話し合われる機会を作ってみてはいかがでしょうか。
8 まとめ
・司法試験は、裁判官、検察官または弁護士となろうとする者に必要な学識及びその応用能力を有するかどうかを判定することを目的とする国家試験
・司法試験の受験資格を得るためには「法科大学院修了」「司法試験予備試験合格」のいずれか2つのルートがある
・一概にはいえないが、予備試験ルートは時間的・経済的負担を抑えながら受験資格を得られること、司法試験合格率が高いことがメリット
・大学在学中に司法試験を目指すメリットは?|時間的・経済的負担を抑えることができる、将来の選択肢を広げることができる、早期合格で好きな活動に打ち込むことができる
・在学中の予備試験ルートがオススメであり、予備試験対策には「予備校」が不可欠
・司法試験合格後に「司法修習」で研修を積んだ後「司法修習生考試」に合格しなければ法曹三者の資格は付与されない