司法試験の試験科目の中には、選択科目といい、受験者が自由に一つの科目を選択することができる科目があります。受験生の中では、選択科目を何にするか悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
予備試験においても選択科目が受験科目にあるため、予備試験受験生は、選択科目を早く決定しなければなりません。
今回は司法試験の選択科目の中でも、人気である労働法について紹介します。
選択科目を何にするか悩んでいる方は是非ご覧ください。
1 司法試験の試験内容とは
(1) 試験科目
司法試験の受験科目は、論文式試験が、選択科目、公法系科目(憲法・行政法)、民事系科目(民法・商法・民事訴訟法)、刑事系科目(刑法・刑事訴訟法)、短答式試験は、憲法、民法、刑法の三科目です。
(2) 選択科目
選択科目は、次の8科目とされています(司法試験法施行規則第1条)。
倒産法 ・租税法 ・ 経済法 ・ 知的財産法 ・ 労働法 ・ 環境法 ・ 国際関係法(公法系) ・ 国際関係法(私法系)
2 労働法とは
労働法の特徴、勉強方法について紹介します。
(1) 労働法の特徴
① 受験者数が多い
令和3年度の選択科目別受験者の人数
選択科目 | 人数(割合) |
倒産法 | 483人(12.87%) |
租税法 | 313人(8.34%) |
経済法 | 702人(18.70%) |
知的財産法 | 527人(14.04%) |
労働法 | 1,113人(29.65%) |
環境法 | 171人(4.56%) |
国際関係法(公法系) | 53人(1.41%) |
国際関係法(私法系) | 392人(10.44%) |
参照:法務省より
以上のように、労働法は、全受験者の約3割が選択している、司法試験の選択科目の中でも最も選択している人が多い科目です。
そして、受験者数が多いからこそ、基本書や演習所が充実しているといわれ、勉強がしやすい科目でもあるといえます。
②イメージがしやすい
労働法は、労働者と会社との関係を問題とするものです。
社会人経験がある方やアルバイトの経験がある方などは、実際に会社と雇用契約や社会保険の加入等の契約を結び、労働者がどのような立場にいるか身をもって体験しており、そのような方にとって労働法は身近な存在です。
したがって、事例問題もイメージがつきやすく、また、どのような点が問題となるか、どのような結論が妥当であるかについて、ある程度予測が可能であり、勉強がしやすい科目であるといえます。
③実務でも重要である
企業法務や一般民事を取り扱う弁護士はもちろん、裁判官も、労働審判や労働事件の訴訟を取り扱うため、労働法の知識は実務で必要となる可能性は高いです。
労働法を選択し、あらかじめ理解を深めておくことは、今後の法曹となった際も役立つものといえます。
(2) 労働法の勉強方法
労働法の問題は大きく個別的労働関係法と集団的労使関係法に関するものに分けられます。
個別的労働関係法では、労働者個人の権利を守るための法に関するもので、労働基準法などが中心となります。
集団的労使関係法では、労働者が組織を作り、使用者と対等な立場で戦うための法に関するもので、労働組合法などが中心となります。
個別的労働関係法の問題は、労働者個人の事案が多く、事案の概要がつかみやすいですが、集団的労使関係法の問題は、事案も把握や労働法の制度概要の把握が比較的難しいことが難点として挙げられます。
どちらの問題についても、判例を基礎とした問題が出題されます。
そして、労働法は制度の概要や定義等、覚えなければいけない知識が多く、選択科目の中でも、習得に時間がかかる科目になります。
判例をおさえるとともに、問題演習を通して、問題慣れをするとともに、テキストや基本書で知識を詰め込むことが大切です。
3 労働法受験者の司法試験の結果について
選択科目の司法試験の足切り人数について以下まとめました。
令和3年 | 令和2年 | 令和元年 | |
選択科目 | 54人 | 81人 | 52人 |
倒産法 | 7人 | 9人 | 13人 |
租税法 | 6人 | 1人 | 3人 |
経済法 | 10人 | 22人 | 7人 |
知的財産法 | 19人 | 13人 | 4人 |
労働法 | 4人 | 28人 | 20人 |
環境法 | 5人 | 1人 | 1人 |
国際関係法(公法系) | 1人 | 1人 | 2人 |
国際関係法(私法系) | 2人 | 6人 | 2人 |
参照:令和3年司法試験の採点結果、令和2年司法試験の採点結果より
以上のように、労働法選択者が最も受験者数が多いことからすれば、労働法の足切りの人数割合はそれほど高いとは言えません。
特に、令和3年度は、最も受験数が多い科目であるにもかかわらず、足切りとなった人数は4人です。
受験生にとって、足切りの人数は、重要な問題ですので、この点も、労働法選択の利点であるといえます。
4 サマリー
いかがだったでしょうか。
労働法は選択科目の中でも、最も人気のある科目です。
実務上でも使うことができ、司法試験での足切りも少ないことからも、選択科目をどれにしようか悩まれている人は是非候補に入れて考えてみてください。
ただ、労働法は覚えなければいけない知識が多く、選択科目の中でも、習得に時間がかかる科目であるため、自分自身の目標と合わせて、慎重に考えてみてください。
5 まとめ
- 司法試験の選択科目は、倒産法 ・ 租税法 ・ 経済法 ・ 知的財産法 ・ 労働法 ・ 環境法 ・ 国際関係法(公法系) ・ 国際関係法(私法系)である。
- 労働法の特徴としては、受験者数が多いこと・事例のイメージがしやすいこと・実務でもよく使われることがあげられる。
- 労働法の勉強は、判例学習と問題演習が大切である。
- 司法試験の労働法の足切り人数の割合は、他の科目と比べても高くない。