司法試験に合格して憧れの検察官を目指す!予備試験ルートのススメ

司法試験

とある予備試験受験生から聞いた話によれば、その方がパラリーガルとして勤務していた法律事務所の弁護士の中には、木村拓哉さんが主演されたテレビドラマ『HERO』に憧れたことがきっかけとなり、法曹三者を目指したといいます。

組織や保身にとらわれず、事件の大小にかかわらず、人一倍の正義感を持ち破天荒ながらもクレバーな仕事ぶりは憧れずにはいられませんよね。

また、テレビドラマ『99.9%』は、刑事専門の弁護士が主人公のドラマです。0.1%の可能性にかけて徹底的に真実を追求し、事務所スタッフとともに自ら検証していく過程や司法試験になかなか合格することができない個性的なパラリーガルとのやり取りも記憶に新しいのではないでしょうか。

「検察官」「弁護士」「裁判官」

同じ法曹人であっても、その役割は大きく異なります。

今回は、『検察官』にスポットを当てて少し深掘りしていきたいと思います。是非、ご参考になさってくださいね。

 

1 検察官とは

 

検事総長・次長検事・検事長・検事・副検事を総称して『検察官』といいます。

◆国家を代表して刑罰権の実現を求める当事者としての地位

◆被疑者や被告人などの利益のために行動すべきという公益の代表者としての地位

 

これら2つの異なる側面を有しており、検察官の任務がいかに重責であるかがお分かりいただけるのではないでしょうか。

具体的には、警察から送致された被疑者を起訴するか否かを決定する唯一の国家機関であり、その被疑者が本当に罪を犯したのかどうか警察と協力をして捜査を行い、真実を追求していきます。

また、検察官は、法の秩序維持を任務としており、捜査や公訴、公判、刑の執行、刑事手続きなどすべてにおいて指揮監督するなど重要な役割を果たしています。

続いて、気になる検事の採用実績などに関して少し深掘りして見ていきましょう。

参照:検察庁「検察官の種類と職務内容」

(1) 検事の採用実績は?

毎年どのくらいの人数が検事に任官されているのでしょうか?

法務省のデータで確認していきましょう。

任官者数 任官者の平均年齢 最年長者/最年少者
平成23年度 71人 27.3歳 33歳/23歳
平成24年度 72人 26.8歳 30歳/24歳
平成25年度 82人 27.2歳 35歳/25歳
平成26年度 74人 26.8歳 33歳/23歳
平成27年度 76人 26.8歳 34歳/24歳
平成28年度 70人 27.3歳 41歳/24歳
平成29年度 67人 26.8歳 36歳/24歳
平成30年度 69人 27.2歳 38歳/24歳
令和元年度 65人 27.2歳 38歳/24歳
令和2年度 66人 26.7歳 37歳/23歳

参照:法務省「最近における検事の採用実績」

 

際の数字を一例に挙げてみましょう。裁判所のデータによれば、令和元年の司法修習生採用人数は1,482人(司法試験合格者数1,525人)であり、考試不合格者数は10人という結果となりました。つまり1%を切っており、不合格者となることはかなりのレアケースといえますね。

また、例年、法務省では法科大学院修了者や司法試験合格者を対象として説明会を実施しているようですので、気になる方はホームページをチェックしてみてくださいね。

 

(2) 検事に向いている人とは?

「正義感に溢れている人?!」

「組織の中でうまくやっていける人?」

重責を担う検事に向いている人とは、どのような人なのでしょうか?

 

“検察の使命は,厳正公平・不偏不党を旨として,基本的人権を尊重しつつ,刑事事件の事案の真相を明らかにし,刑罰法令を適正かつ迅速に適用実現することにあります。

検事総長 林 眞琴 一部引用抜粋:法務省「検事を志す皆さんへ」

 

検事になれたからといって、もう勉強しなくて良いわけではありません。昨今では犯罪もボーダーレス化しており、時代の移り変わりとともに法改正が成されます。つまり、知識のアップデートは必須であり向学の精神は継続しなければなりません。組織の一員ではありますが、何らかの圧力に屈して真実を曲げることなど許されません。検察官が行使することのできる検察権は『独任制』であり、各検察官がそれぞれ自らの名で行使します。

これらのことからも、検察官には、高度な専門性だけではなく公平かつ強い精神力も必要なのかもしれませんね。

また、検事は国家公務員であり、国民に奉仕する立場でもあります。正義感に溢れ、向上心をもって仕事に向かうことのできる人は検事に向いているのではないでしょうか。

 

2 検察官になるには司法試験合格が必須

検察官になるには、以下のようなルートがあります。

                      

・司法試験に合格した後、司法修習を終えた者

・裁判官(判事・判事補)

・弁護士

・3年以上特定の大学において法律学の教授又は助教授の職にあった者

・3年以上副検事の職にあって、検察官特別考試に合格した者

引用:検察庁

 

ここでは、司法試験経由で検察官になるルートに着目して見ていきたいと思います。

司法試験に合格し、司法修習を経て考試(いわゆる2回試験のこと)に合格すると裁判官・検察官・弁護士のいずれかになる資格を得ることができます。また、検事については、任官志望者の中から総合的に判断(能力・適正・人格・識見など)され採用が決定します。

 

「若くないとダメなんじゃない?」

「女性は不利なのかな・・・。」

「学歴が高い方が有利なんじゃない?」 など

目指してみたいと思っていても、このような不安をお持ちではないでしょうか?

そこで、ここでは客観的なデータを用いて紐解いていきたいと思います。

是非、ご参考になさってくださいね。

 

(1) 検察官の女性比率|主婦でもなれる?!

一昔前は、「女性の社会進出が・・」などといわれていましたが、昨今ではそのようなフレーズが古く感じてしまうほど、女性の社会進出は当たり前になってきましたね。法曹の世界においても珍しくなく、ワークライフバランスを保ちながら活躍している女性はたくさんいらっしゃいます。

たとえば、弁護士のケースでは、女性ならではの視点や相談のしやすさなどから、離婚分野や相続分野を得意とする女性弁護士は相談者からの支持を得やすい傾向にあります。

しかしながら、検察官のケースではどうでしょうか?女性検察官が活躍している姿を日常生活の中で実際に目にする機会は少ないので、いまいち実感が湧かないのではないでしょうか。

ここでは、客観的なデータで見ていくことにしましょう。

任官者数 女性 任官者に占める女性の割合
平成23年度 71人 24人 33.8%
平成24年度 72人 22人 30.6%
平成25年度 82人 31人 37.8%
平成26年度 74人 29人 39%
平成27年度 76人 25人 32.90%
平成28年度 70人 26人 37.10%
平成29年度 67人 24人 35.80%
平成30年度 69人 21人 30.40%
令和元年度 65人 28人 43.10%
令和2年度 66人 24人 36.40%

参照:法務省「最近における検事の採用実績」

 

なんと、令和元年度の任官者に占める女性の割合が4割を超えています。つまり、たとえ主婦であっても司法試験に合格すれば検事になれる可能性があるということです。法曹界においてもますます女性の活躍が期待されますね。

令和3年度は、何人の女性検事が誕生するのでしょうか?!楽しみですね。

 

 

(2) 検察官になるためには年齢制限はあるの?

“年齢については特段の制限はありません。なお,検察官の定年は63歳(検事総長のみ65歳)となっています。  (検察庁ホームページより一部引用抜粋)

 

検察庁のホームページによれば、年齢制限については特段制限のないことが分かりました。

では、実際の任官者の平均年齢や最年長者、最年少者は何歳くらいなのでしょうか?近年の採用実績を見ていきましょう。

任官者数 任官者の平均年齢 最年長者/最年少者
平成23年度 71人 27.3歳 33歳/23歳
平成24年度 72人 26.8歳 30歳/24歳
平成25年度 82人 27.2歳 35歳/25歳
平成26年度 74人 26.8歳 33歳/23歳
平成27年度 76人 26.8歳 34歳/24歳
平成28年度 70人 27.3歳 41歳/24歳
平成29年度 67人 26.8歳 36歳/24歳
平成30年度 69人 27.2歳 38歳/24歳
令和元年度 65人 27.2歳 38歳/24歳
令和2年度 66人 26.7歳 37歳/23歳

 

参照法務省「最近における検事の採用実績」

 

表からもお分かりいただけるように、社会人の方にとっては最年長者の年齢が励みになるのではないでしょうか?かつて一度夢を諦めたとしても、『社会人経験を経てから検事という夢に向かって再起奮闘!』というケースも決して多くはないものの、実際に目指している方はいらっしゃいます。一方で、最年少者の年齢にも注目したいですね。23〜25歳ほどの非常に若い年齢で検事に任官しており、大学在学中または予備試験ルート、もしくは大学に通いながら予備試験ルートで早期に司法試験に合格しているということが見て取れます。

司法試験は、難関国家試験であることは周知の事実ですし避けては通ることはできません。いったい司法試験に合格するためには、どのような対策を行えば良いのでしょうか?

下記で、詳しく見ていきましょう。

 

3 司法試験に合格するには

◆法科大学院修了(法科大学院ルート)

◆予備試験合格(予備試験ルート)

 

法科大学院ならではのメリットもたくさんありますが、時間的・経済的なことを考慮すると最短かつコストパフォーマンスの高い『予備試験ルートで司法試験の合格対策を行うことをおすすめします。

 

なぜなら、法科大学院は2年〜3年通わなければならず、司法試験の受験資格取得にかかる期間は予備試験よりも長くなります。又、学費もかなりの高額となることは避けることができません。

 

一方で、“予備試験合格は法曹三者への最短ルート”といわれている予備試験ルートで合格すれば、時間的・経済的にも負担が少なくメリットが大きいといえます。特に、忙しい社会人の方におすすめです。

 

メリットがあるのは社会人だけではありません。例えば、大学生(非法学部)であれば、在学中に予備試験に合格することで法科大学院に進むことなく司法試験受験資格を得ることができますので、大きなメリットとなります。また、予備試験合格者の中には現役の法科大学院生も多数含まれています。(下表参照)法科大学院は、司法試験の合格対策を行いませんので、別途試験対策を行わなければなりません。そこで、法科大学院生が予備試験の勉強を行うことで、大学院の勉強の予習復習効果だけではなく司法試験の合格対策も兼ねることになるのです。「まさに一石二鳥!いや一石三鳥?!」となる可能性があるのです。

いったいなぜなのでしょうか?

 

“予備試験受験生の司法試験の合格率はおよそ90%!!”

 

法務省のデータによれば、令和2年度の予備試験受験生の司法試験合格率はおよそ90%でした。予備試験に合格すれば、司法試験にほぼ合格することができるといっても過言ではありませんね。さらに、予備試験合格者は就職活動においても有利なことから「プラチナチケット」ともいわれています。このようにメリットがたくさんあるので、現役の大学生や法科大学院生の予備試験受験者数・合格者数が多いのも頷けますよね。

実際の数字で見ていきましょう。

 

 【令和2年度 予備試験結果 職種別】

職種別 出願者 受験者 短答合格者 論文合格者 最終合格者
公務員 1,431 925 255 25 22
教職員 155 97 17 3 2
会社員 3,274 2,064 423 25 24
法律事務所事務員 322 234 53 3 2
塾教師 167 110 36 2 2
自営業 752 449 117 13 12
法科大学院生 1,502 1,064 241 100 95
法科大学院生以外

大学院生

50 34 9 ー 
大学生 3,997 3,141 707 247 243
無職 3,084 2,116 574 36 32
その他 584 374 97 10 8
総計 15,318 10,608 2,529 464 442

引用元:法務省 令和2年司法試験予備試験

 

この表からもお分かりいただけるように予備試験受験者の属性はさまざまです。確かに学生の受験者・合格者が多いのですが、一方で、社会人受験者・合格者も多いのことが特徴です。

つまり、受験制限のない予備試験ルートであれば、年齢や学歴問わず検察官を目指すことが可能なのです。予備試験制度は、社会人経験を経た優秀な人材に門戸が開かれていますので、今からでも遅くはありません!

『検察官』という夢を実現できるチャンスがあるのですから、積極的にチャレンジしてみてはいかがでしょうか?!

 

資格スクエアの予備試験講座は、1.5年合格目標となっており、学生や社会人の方でも無理なく進めることができます。大手予備校に比べてコストパフォーマンスにも優れているのでおすすめですよ。

 

4 司法試験合格~検察官になるまで

◆最短で検事を目指すのなら予備試験ルート!

 

司法試験合格〜検察官になるまでの流れを見ていきましょう。先にも触れたように、司法試験の受験資格を得るには2つのルート(法科大学院修了or予備試験合格)があり、どちらかを選択しなければなりません。

 

資格スクエアメディア_司法試験合格から検察官になるまで    

(検察庁ホームページを参考に作図)

 

「1日も早く検事になりたい!」と思われたなら、やはり予備試験ルートがおすすめです。時間的なことをいえば、先にも見てきたとおり、法科大学院は司法試験の合格対策は行いませんので更に時間を要することは避けられません。また、予備試験に独学でチャレンジすることもあまり現実的ではありませんので、予備校を活用することが合格への近道となります。

▼こちらの記事も合わせてご覧ください。
司法修習とは?カリキュラムや二回試験など詳しく解説!

検事になった後の働き方・キャリアパスについて

余談ではありますが、検事になった後の話を少ししていきたいと思います。

検察庁のホームページによれば、全職員のワークライフバランスを推進するための取り組みを行っているといいます。たとえば、フレックスタイム制度や早出・遅出勤務制度の利用などを始め、男女問わず家事・育児・介護などをしながら活躍できる職場環境の整備などが挙げられます。年齢とともに家庭環境や自身を取り巻く環境は変わりますのでとても心強いですよね。

また、捜査・公判の能力を磨き経験を積み、その適正や能力に応じて法務省や他省庁、海外勤務などのキャリアパスの道も開かれているようです。検事という職責は非常に重いものである一方で、非常にやり甲斐がある仕事であるということがお分かりいただけたのではないでしょうか。

 

5 サマリー

検察官になるためには司法試験に合格しなければならず、そのハードルは決して低いものではありません。しかしながら、誰もが受験することができる予備試験ルートで司法試験の受験資格を得ることができれば検察官になる道も開けることがお分かりいただけたのではないでしょうか?予備試験合格者の司法試験合格率は、およそ90%と驚異的な数字を叩き出しています。経済的・時間的にもメリットの大きい予備試験ルートで憧れの検察官への道を切り拓いてみてはいかがでしょうか?!

 

6 まとめ

  • 検察官とは『検事総長・次長検事・検事長・検事・副検事』の総称であり検察権を持つ唯一の国家機関
  • 検察官は、法の秩序維持を任務としており、捜査や公訴、公判、刑の執行、刑事手続きなどすべてにおいて重要な役割を果たしている。
  • 検察官になるには、司法試験に合格しなければならない
  • 司法試験合格を目指すには「法科大学院ルート」「予備試験ルート」のうちどちらかを選択する必要がある
  • 「1日も早く検事になりたい!」と思ったら、最短ルートである予備試験ルートがおすすめ!
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