『何年も何年も勉強なんてできないよ』と司法試験を諦めてませんか?
司法試験は日本の国家資格の中でも最難関のものの一つです。
そのため、何年も何年も勉強して、それでも合格できないという人がいるのも事実です。
一方でたった1年間の勉強で司法試験に合格してしまう人がいるのもまた事実です。
この差はなんでしょうか?
単なる能力の差でしょうか?
いいえ、短期合格者の勉強法には誰でも真似できるメソッドが隠されています。
本記事では、司法試験に短期間で合格するための受験資格の取得方法や勉強のコツについて解説していきます。
司法試験への挑戦を検討するかたは是非ご覧ください。
1 司法試験に合格するまでの時間は9000時間ってホント!?
もしも、法律について全く予備知識がない人が司法試験の合格を目指す場合、どのくらいの時間がかかるでしょう?
例えば、法科大学院の未修者コースという法律初心者向けのコースに入学して司法試験の合格を目指す場合、様々な見方がありますが勉強時間は9000時間必要になると言われます。
一日あたり約8時間半勉強する生活を3年間毎日休みなく続けた場合にやっとこの9000時間に達することができる計算です。
しかも、この9000時間という数字はあくまで目安であり、これだけの時間勉強しても司法試験に合格できない受験生も当然います。
一方で、司法試験に特化した予備校を利用したり、効率的に勉強を進めることで、この勉強時間を大幅に短縮することも可能です。
司法試験合格までの勉強時間は個人の事情や能力ごとにバラバラと言えます。
しかし、『効率よく勉強して短期間で司法試験に合格する方法』には共通点があります。
以下では、その共通点について解説していきます。
2 知ってた? 短期間で法曹になるための方法
司法試験は誰でも受けられる試験ではありません。
司法試験を受けるには、二つの方法があります。
一つは法科大学院を修了するコースです。
もう一つは司法試験予備試験という試験に合格するコースです
また、令和5年から一定の条件のもと、法科大学院在学中でも司法試験を受験できるようになります。
法科大学院修了コースは、入学時に選択するコースでさらに二つに別れます。
大学などで法律を学習したことがある人を中心とした既修者コースと、法律学習の初心者を中心とした未修者コースです。
この二つのコースは修了までの期間が異なります。
未修者コースは修了までに3年かかるのに対して、既修者コースは2年で修了することができます。
司法試験の受験資格をどのコースで取得するかによっても司法試験に合格するまでの期間が異なるので注意しましょう。
(1) 予備試験コースは法曹になるための最短ルート
司法試験合格までの期間を短くしたい人には司法試験予備試験に合格するコースがおすすめです。
予備試験には受験資格がなく誰もが受けることができます。そして、合格すれば法科大学院に通うことなく、司法試験の受験資格を得ることができます。そのため、大学生のうちに司法試験に合格したい受験生や、仕事を続けながら司法試験の合格を目指す受験生にとって人気のコースです。
予備試験に合格して司法試験の受験資格を得るコースは法科大学院を経由するコースに比べて勉強時間を短くすることが可能です。
法科大学院に通った場合、その授業内容には模擬裁判などの法曹としての実務的なスキルを学ぶ授業やアカデミックな授業など、司法試験の合格とは直接関係のない授業も多々あります。また、司法試験の試験科目の法律の授業でも、必ずしも試験対策に特化した授業をするわけでなく、授業の予習復習とは別に司法試験の形式に慣れるための対策をする必要があるようです。
一方で予備試験コースの場合、アカデミックな知識などを学ぶ必要がなく、予備試験の科目の勉強だけに時間を費やすことができます。
さらに、予備試験と司法試験の科目はほとんど共通です。そして出題傾向や出題形式も類似点が多々あります。そのため、予備試験に合格すれば司法試験の対策もほぼ終了していると言えます。事実、司法試験予備試験に合格した受験生の司法試験合格率は毎年70%を超えています。これは司法試験の平均合格率の約2倍です。
司法試験平均合格率 | 予備試験合格者の合格率 | |
2017年 | 25.9% | 72.5% |
2018年 | 29.1% | 77.6% |
2019年 | 33.6% | 81.8% |
2020年 | 39.2% | 89.4% |
2021年 | 41.5% | 93.5% |
(参照:法務省)
このように、予備試験の対策は司法試験の対策と親和性が高く、予備試験合格は法科大学院修了に比べて司法試験までの期間を短縮できるのです。
もっとも、予備試験コースにはデメリットもあります。
それは、予備試験の難易度がとても高いことです。
予備試験の最終合格率は毎年4%と極めて高いです。
そのため、司法試験の最短合格を目指したものの、予備試験合格まで結局何年もかかってしまったという結果になることもあり得ます。
予備試験コースは法科大学院コースと比べて勉強する科目の範囲が限られていますが、効率的に勉強しないと法科大学院に行った方が良かったという結果になりかねません。
予備試験受験者数 | 最終合格者数 | 予備試験合格率 | |
2017年 | 10,743人 | 444人 | 4.10% |
2018年 | 11,136人 | 433人 | 3.90% |
2019年 | 11,780人 | 476人 | 4.00% |
2020年 | 10,608人 | 442人 | 4.20% |
2021年 | 11,717人 | 467人 | 4.00% |
(参照:法務省)
(2) じっくりと学びたい人は法科大学院コースもおすすめ!
法科大学院コースにもメリットがあります。
確かに法科大学院の授業では司法試験とは直接関係ない勉強をする必要があります。
しかし、研究者や実務家から直接指導をしてもらえる数少ないチャンスであり、法科大学院で得た知見は司法試験に合格した後、法曹として活躍する際に生かすことができます。
また、法科大学院で得た人脈が就活や仕事をしていく上で役に立つこともあるようです。
さらに、仮に司法試験に合格することができなくても、最近では『法科大学院修了者』の法的素養を見込んで優遇して採用する企業もあるようです。
法科大学院は修了までの2年または3年の間にじっくりと法律を学ぶことができます。
しかし、たくさんの授業の予習復習に加えて、司法試験の対策もする必要があるので意外にも忙しいのが特徴です。法科大学院に進学したとしても勉強を効率的に進めることが必要と言えます。
3 勉強時間はアウトプットを中心に配分するのが鉄則!
勉強時間を効率的に使うにはどうしたら良いでしょうか?
限られた勉強時間で効率的に司法試験に合格するには、勉強時間の配分をアウトプット中心にすることがおすすめです。
受験生は勉強するとき、基本書を読んだり講義を聞いたりして知識を覚える『インプット』の勉強と、覚えた知識を使って問題集や過去問を解いたりする『アウトプット』の勉強の2種類の勉強をします。
司法試験に短期間で合格するにはこのアウトプットを重視して勉強しましょう。
司法試験は受験生が具体的な法律を使って法的な問題に対処することができるかどうかを試す試験です。
そのため、基本書を丸暗記するようなインプット中心の勉強法では到底太刀打ちできません。
また、法律の知識は抽象的のものが多くて理解が難しいことも多いため、実際に問題を解いてみて具体的な場面で考えた方が記憶に残りやすいです。
しかし、知識を完璧にインプットしてから問題対策をしたい、という人もいるでしょう。
ですが、この勉強方法は司法試験対策には向きません。
学んだ知識は実際に使ってみないと、いつまで経っても使えるようになりません。
また、実際に問題を解いてみないことには、どんな分野が司法試験対策上、重要なのかを知ることもできません。時間をかけてしっかり対策すべき分野とそうでない分野がわからないことには、インプットの時間は何千時間あっても足りないでしょう。
したがって、司法試験の対策をする際はインプットの勉強が一通り終わったらアウトプットを中心とした勉強をすることが大切です。
4 勉強時間を短くする裏ワザ 5選!
次に司法試験の対策をする際に効率よく学習をするポイントをご紹介します。
(1) 最初はわからなくても答案を書いてみよう!
勉強時間をインプットよりもアウトプットを重視して配分することが大切ということが分かっても、いきなり論文式試験の過去問を解くのはハードル が高いですよね。
そんなときにおすすめなのが、問題文を読んでわからなかったら、すぐに模範解答を見て、模範解答を考えながら書き写してみることです。
試験本番までに模範解答のようにポイントを押さえた答案を書けるようになることが受験生の目標ですから、模範解答から学ぶことはたくさんあります。
実際に、模範解答を写すことで、『どのような書き出しをしたら良いのか』『どのようにナンバリングをしたら良いのか』といった形式面や、『講義で習った知識をどのように活かすのか』『問題文のどの事情を重要視するのか』を知ることができます。
こう言った知識は一人で悩んでいるだけでは決して手に入らないので是非模範解答を写すことで吸収してみてください。
ここで、模範解答を読むだけではダメなのか、と思う受験生もいるでしょうが、実際に手を動かして書き写すことをおすすめいたします。
というのも、書いている間はただ読むだけでは読み落としてしまうような細部にも集中できますし、実際に手を動かすことで記憶を定着させることもできます。
こうして模範解答を写すことで得た知識をもとに、今度は何も見ずに答案を書くことで、答案を書く実力を伸ばすことができます。
(2) 同じ問題を繰り返し解こう!
司法試験の対策を効率よく進めるために同じ問題を何度も解くこと、とりわけ司法試験の過去問を何度も解くことがおすすめです。
受験生の中には色んな出題形式に対応しようと思って闇雲に色んな問題集に手を出す方もいますが、これはあまり得策ではありません。
まず、過去問で問われたことが何年か後の司法試験で再び出題されることはよくあります。
司法試験で問われる事項とは出題者が『法曹を目指す者はこのことを知っていて欲しい』と思っている事項でもあります。
法曹志望者に求められる知識が数年で変化してしまうことは、まずあり得ません。そうすると過去に問われた事項が再び問われることも何ら不思議ではありません。
もし、過去問で問われた事項が再び出題されたとき、その過去問の理解があやふやだった場合、周りの受験生に一気に差をつけられてしまいます。
また、司法試験形式の問題を1回解いただけで、その問題から得られる知識を使いこなせるレベルで吸収するのは非常に難しいことです。
たくさんの問題を1回ずつ解いて、使いこなせもしない中途半端な知識をたくさん持って合格できるほど司法試験は甘い試験ではありません。
まずは、司法試験の過去問や信頼できる問題集の問題を何度も何度も繰り返し解いてみましょう。
1回目で上手く思い出せなかった論証も2回目ならきちんと書けるかもしれません。
2回目で読み飛ばしてしまった問題文の事情も3回目なら拾えるかもしれません。
繰り返し繰り返し問題を解いて答案の完成度をあげることで、一歩ずつですが確実に実力を伸ばすことができます。
(3)自己満足ではダメ!書いた答案を他人に見てもらおう!
ある程度答案が書けるようになったら、自分の書いた答案を他人に見てもらうこともおすすめです。
司法試験は試験官に自分の考えを説得的に伝えることが求められる試験です。
ところが、自分で問題を解いて、自己採点をするだけでは、自分の答案が他人に伝わるように書けているのかチェックすることは難しいです。
『このように書けば読者もわかってくれるだろう』と思って書いても、客観的に見れば内容が伝わりにくかったり、誤解を与えてしまう言い回しを使っている場合もあります。
どれだけ頑張って勉強しても伝わらなければ意味がありません。
ある程度の法律知識のある知人や予備校が主催する答練を利用して自分の書いた答案を見てもらう機会を作りましょう。
(4) 自分が1時間にどれくらい勉強できるのか把握しよう!
効率的に勉強を進めるために自分が1時間でどれだけ勉強ができるかを把握することも大切です。
司法試験の過去問は1科目解くのに2時間かかります。(選択科目なら3時間です。)
解説を読んだり復習したりする時間を取ったらもっと時間がかかるでしょう。
そんな過去問を何題も解くことを考えると、司法試験本番まで1年〜3年あったとしても時間的余裕はたっぷりあるとは言えません。
そこで、自分が試験までに残された時間で何をするのか計画を立てる必要があります。
ところが、せっかく計画を立てても、達成できなければ所詮、絵に描いた餅です。
達成可能な計画を立てるために、自分が1時間あたりにどのくらい勉強できるか把握する必要があるのです。
例えば、問題集を解く際は必ず、1時間で何問学習できたのかをメモするようにしてください。次にその問題集を復習する際に1冊終えるのにどれだけ時間かかるのか知ることができます。
(5) 隙間時間を活用しよう!
効率よく学習を進めるために隙間時間の活用は欠かせません。
1日5分の隙間時間を活用できれば、1年間で約18時間にもなります。
これは試験本番までに1日9時間勉強する日が2日分増えることを意味します。
隙間時間を活用すると言っても、難しいことをする必要はありません。
よく耳にするテレビCMのフレーズは特に覚えようとしなくても自然と覚えますよね。
同じことを司法試験対策でもやってみましょう。
例えば、家の廊下やトイレ、洗面所に覚えたいことを紙に貼っておくことも有効です。
1日に何度も目にする場所なので、知らず知らずのうちに覚えることができます。
また、論証集やテキストの覚えたい箇所、間違えてしまった短答式試験の過去問などをスマホのカメラで撮影することも有効です。
スマホさえあれば、移動中の電車の中でも、食堂で注文した料理が運ばれるのを待つ間でも、写真フォルダを開けばすぐに復習することができます。
覚えたい事項を写真に取ってスマホの待ち受け画面に設定してしまうという方法もあります。
(筆者は受験生時代にスマホの待ち受け画面を正当防衛の成立要件にしていました。)
ご自身で、『このちょっとした時間をどう工夫したら勉強時間にできるだろう?』と考えるのもいいかもしれませんね。
そこで生まれたアイデアが周りの受験生と差をつけるきっかけになる場合もありますから。
5 サマリー
いかがだったでしょうか?
司法試験に合格するまでの勉強時間は個人によってバラバラですが、短期間の勉強で合格する方法には共通点があります。まずは、司法試験の対策として無駄がない予備試験合格ルートで受験資格を得ること、そしてインプットよりもアウトプットを重要視した勉強で早期に論文を書ける力を身につけること。
『9000時間も勉強できないよ……。』と諦めてしまう前に、今回ご紹介した方法で短期間で司法試験合格を狙ってみるのはいかがでしょうか?
6 まとめ
- 司法試験の勉強時間は9000時間とも言われるが、短縮することも可能。
- 短期合格を狙うなら司法試験予備試験に合格して司法試験の受験資格を取得しよう。
- インプットよりもアウトプットを重視して勉強しよう。答案を書く練習をしないといつまでたっても書けるようにならない。
- 同じ問題を繰り返して『使える知識』を増やそう。
- 隙間時間をちょっと工夫して周りの受験生と差をつけよう。