司法修習とは?司法試験合格後に受ける研修制度について解説

司法試験

法曹三者になるためには司法試験に合格するだけでなく、司法修習に参加し、二回試験と言われる試験に合格する必要があります。また、この司法修習期間中に就職活動をする人も多くいます。本記事では、司法修習の申し込みから修了考査までの流れや、就職活動、費用などについて解説していきます。司法試験合格後の具体的な流れを調べている方は是非本記事をご覧ください。

1 司法修習とは

司法試験に晴れて合格したからといって、直ちに裁判官・検察官・弁護士のような法曹になれる訳ではありません。
法律実務に対応する能力を身につけるために、一定の研修を経る必要があります。
それが「司法修習」です。司法修習について、裁判所のホームページでは、以下のような説明がされています。

司法修習は,法科大学院で学んだ法理論教育及び実務の基礎的素養を前提として,法律実務に関する汎用的な知識や技法と,高い職業意識や倫理観を備えた法曹を養成することを目的としており,法曹養成に必須の課程として置かれています。司法修習の最終試験(司法修習生考試)に合格して司法修習を終えることにより,判事補,検事又は弁護士となる資格が与えられます。(出典:裁判所ホームページ

要するに、法曹として実務に出ていく上で必要とされる知識や倫理観などを学ぶための制度になります。
司法試験を通して得た知識を実務ではどのように使うのかということを司法修習で学ぶことができるということになります。

司法修習の期間は1年間です。また、修習場所は本人の希望に基づき全国各地で行われます。

以下では、司法修習の具体的なカリキュラムを解説します。

2 司法修習の特徴

司法修習の特徴としては、法曹三者(裁判官、検察官、弁護士)のそれぞれについて、先輩の法曹や司法研修所の教官から直接指導を受けながら実際に事件を体験的に学ぶことができます。生の事件を目の前にして、法曹としてどう立ち向かうのかを実際に体験できることはとても貴重な経験になると思います。

また、後にご紹介する導入修習や集合修習では、司法研修所に修習生全員が集い、講義を受けたり、グループワークを行ったりするため、この間に同じ司法修習の仲間と仲良くなることができます。学生に戻ったような感覚になるという方もおり、司法修習で出会った仲間と1年間密度の濃い時間を過ごすので、司法修習はそのような意味においても貴重な1年間になるでしょう。

3 司法修習のカリキュラムとは?

(1) 導入修習

導入修習は、例年、埼玉県和光市にある司法研修所で、司法修習生が全員集まり、先輩の法曹による講義、グループワーク、課題などを約3週間行うものになっています。

全国各地から司法修習生が集まるので、司法研修所付近にある寮に入寮することもできます。

導入修習は司法修習の最も初めに行われる修習なので、同期の修習生が一同に会する貴重な機会であることが特徴として挙げられます。後述する集合修習でも同期が集まりますが、集合修習は二回試験目前で忙しい人が多いため、同期の友人を作るには導入修習期間中が狙い目です。

(2) 分野別実務修習

分野別実務修習は、司法修習の中でも最も長い期間を占める重要な修習になります。分野別実務修習では、大きく4つの分類、「刑事裁判」「民事裁判」「検察」「弁護」に分けられ、それぞれ約2か月間にわたって実務を学びます。

導入修習が終わると、司法修習生は全国各地にある修習地で、分野別実務修習が開始されます。また、ここからは少人数単位で修習を受けることになります。
修習地については後に詳述します。

① 刑事裁判

刑事裁判修習では、裁判官の指導の下、事件記録などを検討しながら、刑事裁判の傍聴を通して刑事裁判の実務を学びます。
この間に課題もいくつか課されるので、起案を提出する必要があります。指導担当の裁判官とこの間に事件について密にコミュニケーションをとることができるので、裁判官としての倫理観など学べることがたくさんあります。

② 民事裁判

民事裁判修習は、上記刑事裁判の民事事件バージョンになります。民事事件といっても多様な種類の事件があるので、興味深い事件に遭遇できるとまた違った面白さを体験できるかもしれません。

③ 検察

検察修習では、検察庁に送致されてきた被疑者の取調べや供述調書の作成、起訴・不起訴の判断など、検察官としての一連の手続きについて、実際に行います。初めて被疑者を目の前にして取調べなどを行うのは、とても緊張感がありますが、検察官志望の方は実際に生の事件を体験できる貴重な機会になります。

④ 弁護

弁護修習では、司法修習生が直接法律事務所に訪問し、先輩弁護士の指導の下、当該事務所で取り扱われている事件を経験する内容になります。
多くの場合、司法修習生は一人ずつ法律事務所にあてられます。基本的には決まった業務があるわけではなく、法律事務所によって課題の量や修習内容が変わります。

司法修習生の多くは弁護士志望なので、実際に法律事務所での働き方を体験することができ、有意義な修習になるでしょう。

(3) 選択型実務修習

選択型実務修習では裁判所、検察庁、弁護士会が提供する修習に関するプログラムを司法修習生が自らの興味関心に合わせて自主的に選択する制度です。

上記の分野別実務研修の修習を終えた後に行われ、分野別実務研修の深化と補完などを目的としています。

プログラムとしては、例えば、法テラス、各配属地の裁判所・検察・弁護士会が設置しているプログラムなどがあります。自己開拓プログラムといって自分でやってみたい研修先と直接交渉を行うことで参加可能な研修もあります。

(4) 集合修習

集合修習は、司法修習の中で最後の修習であり、導入修習の時と同様に和光の司法研修所で受けます。
導入修習は、修習のスタートでもあり、その後に行われる分野別実務修習や選択型実務修習に向けてのガイダンスの要素があるのに対して、集合修習では、二回試験といわれる最後の大きな試験に向けて、これまでの修習の総復習をするような内容になっています。

したがって、起案の数も増え、即日起案という、1日中起案をする日もあります。

二回試験に向けた準備期間にもなるので、司法修習生にとっては、緊張感が高まる重要な修習になります。

(5) 二回試験

司法修習を修了するには、最終試験である司法修習生考試(二回試験)に合格する必要があります。

これは、司法修習の卒業試験のようなもので、法曹になるための最後の試験です。

試験科目は、民事裁判、刑事裁判、検察、民事弁護、刑事弁護の5科目です。

1日1科目ずつ、計5日間にわたって試験が行われるという、超耐久レースになっています。

試験内容は起案です。
起案とは事件記録などを読み問題に対する回答を文書として作成することを指します。具体的には100ページ程度の実際にあった事件の記録を読み起案を行います。

司法修習では何度も起案を行うので、そのときの知識や記憶を総動員して取り組むことになります。

 

試験時間は昼食も含めて7時間30分にも及びます。しかしこれでも時間が足りないくらいで、ほとんどの受験生は昼食をとりながら起案をしています。

この二回試験は例年12月に不合格者の受験番号が発表されます。合格率は98%程度で、ほとんどの受験者が合格する試験です。
しかし、司法試験合格者のみが受験するのでレベルは非常に高く、問題の難易度は高いといえます。また、仮に不合格となれば法律事務所等への内定に影響が生じる可能性がある点で合格率は上記のように高いといえどもそれがゆえに不合格となることのできない大きなプレッシャーを伴う試験です。

4 司法修習地

司法試験に合格すると、司法修習に向けて様々な手続きが始まりますが、その中でも合格者が最も重視するのが、司法修習地になります。

導入修習が終わると、司法修習生は決められた修習地に行き、集合修習までの期間、そこで過ごすことになるので、どこの修習地に行くかは悩みどころでもあります。

合格者は、司法修習地を選ぶ際に、第1希望から第6希望まで選択できるようになっていますが、実際に希望地が選ばれるかは分からず、また、希望地に選択していない修習地が決まることもあります。

多くの合格者は大都市を第1希望として選択するため、希望地が通らないという話も多く、反対に地方を選択すると希望が通りやすいという話もあります。まだ行ったことのない場所で、観光もたくさんしてみたいという理由で、あえて地方を選ぶ方もいるので、司法修習地を選ぶ際はじっくり悩んで選んでくださいね。

 

5 司法修習における修習給付金・兼業について

司法修習生は、修習給付金という、給付金が給付期間ごとに13万5千円が給付されます。この給付金だけでは毎月の生活が困難という方にとっては、修習専念資金の貸与(無利息・原則的に月額10万円)もあるので、検討してみてください。

また、司法修習生には司法修習に専念しなければならないという「修習専念義務」が課せられます。そのため原則的には兼職・兼業が原則として禁止されています。もっとも、例外的に受験指導等の業務においては兼業を申請の上、許可されることもあります。

6 司法修習を受ける時期は自由に決められる!

これまで説明してきた司法修習ですが、実は、司法修習を受けるか否かは、そしていつ司法修習に行くのかという点は個人が自由に決めることができます。

司法試験に合格しても、司法修習を受けずに民間企業に就職する方もいれば、今働いている会社でしばらく働いてから法曹になりたいという方は、司法修習を受ける時期を後に伸ばすこともできます。

司法試験に合格したらすぐに司法修習を受けるという必要はないので、ライフプランやキャリアプランに合わせて司法修習の時期を決めることができます。

7 司法修習申し込みの手順

司法修習の申し込み手順は『登録申請書の入手』と『登録申請書の提出』の二段階となっています。それぞれの注意点も合わせて解説します。

(1) 申込書を入手する

司法修習生になるためには、以下の方法で修習登録の申請書を入手する必要があります。

・最高裁判所のサイトからのダウンロード

・最高裁判所または高等裁判所(大阪、名古屋、広島、福岡、仙台、札幌、高松)へ来庁

・郵送での取り寄せ(返信用封筒を最高裁の担当部署に郵送の上請求)

なお、令和3年度75期の入手方法は最高裁判所のサイトからのダウンロードのみでした。
※最新の申込書の入手については最高裁判所のサイトをご確認ください。

例年、司法試験の合格発表は9月10日前後であり、司法修習の申し込み開始は9月下旬であることから、合否の発表後すぐに申請の必要があります。

(参照:裁判所 令和3年度司法修習生採用選考要項

(2) 申込書を提出する

司法修習の申し込みの際には、複数の種類の書類を提出する必要があります。

学校の成績証明書や、証明写真、住民票など揃えるのに時間のかかる書類もあります。

司法試験の合格は発表から書類の提出期限まで、あまり日数がないことから、この期間にはなるべく他の予定を入れないことをお勧めいたします。

書類は過不足なく最高裁判所の担当部局へ提出してください。

以下、必要な提出書類を一覧でご紹介します。(なお、変更される場合もありますので実際にご記入の際は裁判所のHPで確認することをお勧めいたします。)

 

  1. 司法修習生採用選考申込書(署名・押印・写真貼付)
  2. 司法試験合格証書のコピー
  3. 戸籍抄(謄)本又は住民票の写し
  4. 学校の成績証明書
  5. 学校の卒業(退学)年月を証する書面
  6. 退職証明書
  7. 資格の登録抹消証明書等
  8. 健康診断票
  9. 実務修習希望地調査書
  10. 身上報告書2部・カラー写真5枚(縦4㎝×横3センチ)

 また、司法研修所での修習の際に、入寮希望者は以下の書類も必要となります。

  1. 入寮許可願
  2. 84円相当の切手を貼付した返信用封筒

(参照:最高裁判所司法研修所

8 令和5年司法試験の日程変更に伴う令和6年司法修習のスケジュール

令和5年司法試験は、令和4年司法試験までの5月開催とは異なり、7月の中旬に行われることとなります。これに伴って合格発表等の時期が遅れことや、および同じく令和5年司法試験から一定の条件の下での法科大学院在学中の司法試験受験が可能となることから、令和6年司法修習では、司法修習の開始時期を含めたスケジュールが変わる可能性があります。

司法修習の具体的な開始時期はまだ公式に発表はなされていません。しかし、今のところの令和6年司法修習の開始時期は令和6年の3月20日となる可能性が高いです(参照:司法試験委員会会議議事要旨

特に令和5年司法試験を受けることとなる方(現在の法科大学院2年生の方や令和4年司法試験予備試験を受験する方)は上記変更の影響は大きいのではないでしょうか。

こちらについての公式な情報を随時チェックすることをおすすめします。

9 サマリー

いかがだったでしょうか。今回の記事で説明したように、司法修習は、司法試験後に行う実務法曹になるための研修のことです。1年間と長い期間の研修ですが、法律実務に触れることができる点で充実した司法修習生活を送る方もいるようです。みなさんも司法試験後の姿を想像しながら、司法試験の合格を目指して頑張ってください!

10 まとめ

  • 司法修習とは司法試験合格後に法曹資格を得るための研修のこと。
  • 司法修習のカリキュラムとしては、導入修習、分野別実務修習、選択型実務修習、集合修習がある。
  • 司法修習の最後には、二回試験と呼ばれる最終試験に合格しなければならない。
  • 集合修習までの修習地は全国に及び、希望自体はできる。
  • 司法修習中は修習給付金を受けられ、それでも足りなければ修習専念資金の貸与を受けることもできる。
  • 司法修習生の兼業は原則できない。一定の業務であれば例外的に兼業許可を受けることができる。
  • 司法修習は、法曹になるためには必ず受けなければならないが、受ける時期は自由に決められる。
  • 令和5年司法試験の日程変更等に伴い、同年の司法試験合格者は令和6年3月20日から修習を開始することになる可能性がある。
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