ドイツの司法試験制度とは?ドイツで弁護士になる方法を解説

司法試験

現在法律関係の仕事をされている方であれば、一度は転職やキャリアアップのために海外留学をしたり、海外の弁護士資格を目指したりすることを考えた方も多いのではないでしょうか。

日本では司法試験を受けて合格したら弁護士になれますが、少し海外に目を向けてみると日本とは異なるその国独自の司法試験制度が実施されています。

今回は、そんな海外の国のなかでもドイツの司法試験制度と弁護士になる方法を解説します。

言語の壁もあるため、留学や弁護士資格を取得するのであれば英米系の国を選ぶ方が多いですが、ドイツ法は日本と同じ大陸法ということもあり、日本である程度法律を勉強されている方であればとっつきやすいかもしれません。

ドイツに興味があって、もし海外に留学するならドイツに行ってみたいという方は、ぜひ参考にしてみてください。

1 ドイツの司法試験制度

ドイツでは日本と同様、裁判官、検察官、弁護士の法曹三者がすべて同じ司法試験を受けます。

 

そして、イツで法曹資格を得るためには、原則として大学の法学部で4年間勉強し、一次試験に合格したら、2年間の司法修習を経て、二次試験に合格する必要があります。

 

日本でも法曹資格を得るためには司法試験に合格した後に司法修習を経て二回試験に合格しなければならないので、日本の制度とも似ていますね。

 

なお、ドイツでは、裁判官、検察官、弁護士の法曹三者のほかにも、日本でいう国家公務員や、大学教員などになる場合もこの法曹資格を取得しなければならないとされています。そのため、ドイツで法曹というと日本よりも広い範囲の職種を指していることになります。

2 ドイツで弁護士になるには?

ドイツで弁護士になるには、以下の3ステップを経る必要があります。

(1) ステップ1:大学法学部4年+一次試験

①法学部4年

ドイツで弁護士になるためには、まず原則として大学の法学部で4年間勉強する必要があります。例外的に2年に短縮することも可能なようですが、最低でも2年間在籍していることが一次試験の受験資格の要件となっています。

 

ドイツでは入学試験はなく、大学の入学資格さえ取得できれば誰でも法学部に入ることができます。

 

必修科目は、民事法、刑事法、公法、訴訟法、法学、法哲学、法史学、法社会学の基礎となっており、これらに加えて、各大学が設定している重点領域科目から選択して履修する必要があります。

 

また、外国語で法学講義を受けなければならないなど、語学も重要視されています。さらに、交渉術や弁論術、尋問技術など、実務的なスキルを身につけるための科目もあるようです。

②一次試験

大学の法学部で4年勉強すると、一次試験を受験することができます。

 

一次試験は、州が必須科目の試験を実施し、大学が重点領域科目の試験を実施します。州の必修科目の試験の配点が70%、大学の重点領域科目の試験の配点が30%となっており、両方の試験に合格しなければなりません。

 

合格率は、州の必修科目の試験で70~75%程度大学の重点領域科目の試験で94%程度となっているようです。

 

出題形式は筆記試験と口述試験、レポートの提出など、筆記試験だけの日本の司法試験とはやや違った形式となっています。

 

また、ドイツでは、合格者数を制限することは憲法上認められないと考えられていることから、試験の採点基準を満たせば合格となります。

 

一次試験は受験回数が2回までと受験回数の制限がシビアです。

 

受験回数が2回しかないことや、試験の成績が実務修習の採用や就職などに影響することから、受験の受け控えも懸念されています。ただ、この受け控えに対しては、大学の第8学期終了までに受験を申し出れば、成績に満足できなかったり不合格となったりした場合には受験回数にカウントされず、再受験できるという制度が設けられています。これは受験生にとって嬉しい制度ですね。

(2) ステップ2:司法修習

一次試験に合格すると、司法修習生として採用され、2年間司法修習を行います。

 

司法修習先としては、以下のように裁判所、検察局、行政官庁、弁護士事務所などがあります。日本の司法修習と似ていますが、検察局と刑事裁判所の選択になっていたり、行政官庁が入っているというのがドイツの司法修習の特徴的なところです。

 ・民事裁判所 最低3ヶ月

 ・検察局または刑事裁判所 最低3ヶ月

 ・行政官庁 最低3ヶ月

 ・弁護士事務所 最低9ヶ月

 ・選択修習

 ・講義 3ヶ月

 

ドイツの民事裁判修習は判決起案を主に行なうようですが、裁判官に代わって証人尋問をすることもあるそうです。日本の民事裁判修習でも判決起案は行いますが、修習生が法廷で発言することはないので、この点はドイツの特徴的なところですね。

 

また、日本の検察修習では修習生が実際に取調べを行いますが、ドイツの検察局での修習は起案がメインとなっており、取調べは行われないようです。

 

行政官庁と弁護士事務所での修習先は、修習生が自分で受け入れ先を探すことになります。

弁護士事務所では、日本と同じように契約書や準備書面などの起案、リサーチを行ったり、法廷に出たりもするようです。

(3) ステップ3:二次試験

実務修習を終えると二次試験を受験します。

二次試験の科目としては、民法、刑法、公法となっていますが、手続法が重視されるようです。

 

二次試験は州ごとに実施されるので、試験の内容も州ごとに異なります。

 

二次試験の受験回数も一次試験と同じく2回までとなっており、合格率は、80~85%程度です。

 

そして、この二次試験に合格すると晴れて弁護士になることができます。二次試験合格者のうち、成績優秀者が裁判官、検察官、国家公務員に任命されることになります。

3 日本とドイツの比較

ドイツの司法試験制度は日本の司法試験制度とよく似ています。しかし、日本とは異なるところもあるので、以下で日本との比較をまとめてみました。

(1) 難易度

ドイツでは州ごとに難易度が異なるものの、一次試験は70〜75%の合格率、二次試験は80〜85%の合格率となっています。

 

他方、日本の司法試験の合格率は20%〜40%程度、司法修習後の二回試験の合格率は98%程度です。

 

ドイツは一次試験も二次試験も合格率が高いというのが特徴的です。

(2) 受験回数

受験回数は、ドイツでは一次試験も二次試験も2回までです。

 

他方、日本では司法試験は5回まで、二回試験も3回まで受験することができます。

 

ドイツでは成績に満足できなかったり、不合格になった場合には受験回数にカウントされないという制度もあるので一概には比較できませんが、受験回数だけをみるとドイツの方がシビアです。

(3) 司法試験の形式

日本の予備試験では口述式試験も取り入れられていますが、司法試験は筆記のみです。

他方、ドイツでは筆記のほかに口述式やレポートなどの形式もあり、試験の形式は多様です。

(4) 司法修習

日本の司法修習は1年ですが、ドイツの司法修習は2年となっており、実務修習が充実しています。

しかし、日本では弁護修習先は弁護士会がアレンジしてくれますが、ドイツでは自分で弁護修習先をみつけなければななりません。

 

さらに、一次試験の合格者数よりも修習の受け入れ人数の方が少なくなっているため、一次試験に合格してもすぐに修習に行くことができず、修習に行くまでに待機期間が生じてしまうことがあるようです。ドイツでは一次試験の成績優秀者から司法修習に採用されるため、一次試験の成績が重要となっています。

 

また、修習生は国から給付金として月1,000ユーロ程度もらえるようです。これは日本円にしておよそ13万円程度なので、現在日本の司法修習でもらえる給付金と同程度ということになります。

なお、弁護修習期間中は、受入れ先事務所から給与をもらえるケースもあるそうです。日本では修習専念義務があり、アルバイトは許可制となっていますが、ドイツでは、修習期間中のアルバイトも認められているようです。

4 サマリー

ドイツの司法試験制度は日本と似ており、弁護士、裁判官、検察官がすべて同じ試験を受けます。

そして、ドイツで弁護士になるには、法学部卒業後一次試験に合格し、その後2年間の司法修習を経てさらに二次試験を受験して合格する必要があります。

ドイツの司法試験は日本よりも合格率が高いものの、一次試験、二次試験ともに受験回数は2回までと少なく、成績が司法修習生としての採用にかかわってくるため、試験へのプレッシャーが大きいことには変わりがないといえそうです。

5 まとめ

  • ドイツの司法試験制度は日本と似ている
  • ドイツで弁護士になるには法学部→一次試験→司法修習→二次試験合格が必要
  • ドイツの司法試験は日本よりも合格率が高いが回数は2回まで

※当記事は日本弁護士連合会の法曹養成対策室報No.5(2011)を参考にしております

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