司法試験と公認会計士試験を比較!司法試験合格者が会計士を目指すメリットも含めて解説

司法試験

文系最難関資格として有名な司法試験と公認会計士試験。国家資格に挑戦したいけどどちらの資格が自分に合っているか迷っている方も多いのではないでしょうか。

また、最近では弁護士資格と公認会計士資格の両方を取得した『ダブルライセンス』保持者として活動する人もいます。

本記事では司法試験と公認会計士試験の違い、各試験の合格後の流れ、そして、ダブルライセンスの魅力についてまとめました。国家資格への挑戦を真剣に検討している方は、是非記事をご覧ください。

1 司法試験と公認会計士試験の違い

(1) 受験資格

司法試験と公認会計士試験の違いとして、まず重要なのは受験資格の有無です。

①公認会計士試験

公認会計士試験は受験資格がなく誰もが受験することができますそのため大学在学中に公認会計士試験に合格する人も多く、合格者の約40%は大学生です(参考:公認会計士・監査審査会)。

②司法試験

一方で、司法試験には受験資格が必要です一般的な受験資格の取得方法は法科大学院を修了することです。この方法で司法試験を受験する場合、大学卒業から最短でも2年の時間が必要です(なお、令和5年司法試験から一定の条件もと、法科大学院在学中の司法試験受験が可能となります。)

また、司法試験予備試験という試験に合格すれば法科大学院を卒業したのと同等とみなされ、司法試験の受験資格を得ることができます。

司法試験予備試験には受験資格が不要なので早期に合格すれば司法試験に大学在学中にチャレンジできますが、司法試験予備試験は合格率3〜4%の難関試験です。そのため、大学在学中に司法試験に合格する人は少数にとどまります。

(2) 試験内容

① 公認会計士試験

公認会計士試験に最終合格するには短答式試験と論文式試験の両方を突破する必要があります。

短答式試験は年2回(12月、5月)、論文式試験は年1回(8月)行われています。
そして、短答式試験に合格した者は、その後2年間は短答式試験が免除され、論文式試験のみに合格できれば公認会計士試験に合格したものと扱われます。

短答式試験では企業法、管理会計論、監査論、財務会計論という4科目が試験科目として課せられ、財務会計論(いわゆる簿記)の配点が大きいのが特徴です

短答式試験合格者が受験する論文式試験は監査論、租税法、会計学、企業法、選択科目(経営学、経済学、民法、統計学の中から受験者が予め選択する一科目)を3日間で受験します。ここでも会計学の中の財務会計論の配点が大きいのが特徴です
論文式試験では、合格した科目のうち、一定以上の成績を収めたものについては2年間免除を受けることができる場合もあります。

さらに、短答式試験に合格すると、2年間は短答式試験が免除されるほか、大学教授、博士学位取得者、司法試験合格者のほか、一定の専門資格者(税理士)、一定の企業などにおける実務経験者、専門職大学院の修士(専門職)の学位修得者に対して、試験科目の一部を申請により免除する制度もあります。

② 司法試験

司法試験に合格するには4日間にわたる試験(論文試験及び短答試験)を受けて、これを突破する必要があります。

論文式試験は憲法、行政法、民法、商法、民事訴訟法、刑法、刑事訴訟法、選択科目(労働法、経済法、知的財産法、国際法(私法)、国際法(公法)、環境法、租税法の中から一科目)を受験します。

また、最終日に実施される短答式試験では憲法、刑法、民法の3科目を受験します。

司法試験の特徴として、足切りがあり「短答式試験で合格点に達しないと、論文式試験を採点してもらえない」ということがあります。
つまり、短答式試験合格者だけが論文式試験を受験できる会計士試験と違って、
司法試験の場合には、せっかく論文式試験を受けたのに、採点されないということもあるのです。

 

また、司法試験の場合、短答式試験に合格して論文式試験に落ちた場合に、次回から短答式試験の受験が免除されるという制度もありません。

さらに、司法試験においては、他の資格を有していることで特定の科目が免除になることもありません。

(3) 合格率

公認会計士試験の最終合格率は10%前後です参考:公認会計士・監査審査会)。

司法試験の合格率は20%~35%です(参考 : 日本弁護士連合会 弁護士白書2019年版 )。

司法試験の方が合格率は高いですが、受験資格に差があるのでこれだけを見て各試験の難易度を単純に比べることはできません。

ちなみに、公認会計士試験と同じく受験資格に制限がない司法試験予備試験の最終合格率が3〜4%であることから、どちらの試験も難易度はかなり高いと言えます。

(4) 試験合格後、資格取得までの流れ

どちらの試験も合格してすぐに公認会計士や法曹になれるわけではありません。

① 公認会計士試験

公認会計士になるには、試験合格の他に次の3要件を満たす必要があります。

まず、1つ目が公認会計士や監査法人などの業務を2年間補助すること
この業務補助は試験合格の前後を問いません。公認会計士志望者の多くは試験合格後に監査法人に就職することで、この要件をクリアしています。

2つ目が、実務補習所』という機関に週1〜2回程度講義を受け単位を得ること。この単位取得には通常3年間かかります。
多くの人は監査法人で働きながらこの実務補習要件をクリアします。

3つ目が、実務補習所の修了考査に合格すること

この3つの要件を全てクリアして初めて公認会計士の資格を得ることができます。

② 司法試験

法曹になるためには、司法試験合格後、1年間の司法修習を受けて、修了試験(いわゆる二回試験)に合格する必要があります

司法修習では全国各地の裁判所、検察庁、法律事務所に配属され、実務家から指導を受けながら実際の事件の処理を学ぶとともに、司法研修所という機関で実務教育を受けることで法曹としてのスキルを養います。

公認会計士との違いは、司法修習中は準国家公務員として修習専念義務が課せられ、兼業禁止です。

その代わりとして、修習給付金として毎月13万5千円が国から支給されます。

2 ダブルライセンスのメリット

難関資格である公認会計士と法曹ですが、近年、弁護士資格と公認会計士資格の両方を取得し、『ダブルライセンス』保持者として活躍する人が出てきました。このダブルライセンスの魅力を紹介します。

(1) 公認会計士の試験科目が一部免除される

上述のとおり、公認会計士試験の試験制度として、司法試験の合格者は、試験科目が免除されるため、試験のための勉強量が少なくて済むというメリットがあります。
具体的には、司法試験合格者は、短答式試験が免除されます(公認会計士法9条第4号)。そして、論文式試験については、企業法及び民法の試験が免除されます(公認会計士法10条第2号)
したがって、論文式試験の会計学、監査論、租税法の3科目の試験対策をすればよいこととなり、集中的に対策を行うことが可能です。

(2) 『法律×会計』の組み合わせによって企業法務分野で活躍できる

企業向けの法律サービスを提供するのが企業法務分野です。
企業法務分野ではビジネスに絡んだ問題解決が求められることもあり、法律知識だけでなく高度な会計知識が求められることも少なくありません。
例えば、

・破産、事業再生

・税務訴訟

・事業承継

・ファイナンス

・訴訟の損害論の部分

など、企業法務のメジャーな業務でありながら、会計知識が役立つ分野であり、公認会計士という会計、税務のプロフェッショナルスキルを有していると有利に業務が進められます

(3) 他の資格取得者に一歩リードできる

かつて、司法試験合格者は年間500人前後でした。ところが、制度の変更もあり令和3年度の司法試験の合格者は1,421人とおよそ3倍に増えています。
一方で訴訟の件数はそこまで増加していません。

このことから、弁護士同士の仕事をめぐる競争が激化するという見方もあります。

そんな中、弁護士と公認会計士のダブルライセンスを有する人はまだまだ少なく、他の弁護士資格取得者との差別化を図ることができます。

 

3 司法試験合格者が公認会計士を目指すには?

(1) どのタイミングで目指すか?

では、ダブルライセンスを目指す場合、公認会計士の勉強はいつ始めるべきでしょうか?

① 司法試験と同時並行

司法試験の対策をしながら公認会計士試験の対策を並行するのは得策とは言えません。

どちらも難関試験であり、同時並行の対策は共倒れの危険があります。司法試験受験生時代は司法試験に専念するのが良いでしょう。

② 司法修習時代

司法修習生時代に公認会計士対策を行うのは可能ですが、いかに勉強時間の確保をするかが重要になってきます。

まず、科目免除があると言っても、対策すべき科目は一から学ぶ場合が多く、その対策にはそれなりの労力を要します。

一方で、司法修習は平日9時から17時までフルタイムで行われ、公認会計士の勉強時間を確保するのは難しいです。

また、公認会計士の論文式試験は例年8月に行われます。これは司法修習が始まる12月からわずか9ヶ月ほどしかないことを意味します。

 

以上から、司法修習中に公認会計士を目指す場合、対策時間の確保を工夫する必要があります。

また、司法修習中は法曹として現場で活躍する先輩方から指導を受けられる貴重な機会であるとともに、修習同期と横の繋がりを作る重要な時期でもあります。ダブルライセンスは一旦置いておいて、修習に専念するのも良い選択肢と言えます。

③ 弁護士資格取得後

ダブルライセンスを目指す上でおすすめなのが弁護士資格を取得して実務に出た後です。

弁護士実務において、司法修習とする分野によっては高度な会計知識が求められることがあります。自分の専門分野を見極め、会計知識が必要と感じた時に公認会計士資格を目指すのは業務を進める上で有用と言えます。

もちろん、弁護士実務は忙しく、時間の確保を工夫する必要があるのは上述の通りです。

司法修習時代に簿記2級程度をとっておくと実務に出て公認会計士試験を受ける際にスムーズに勉強を進めることができます。

(2) 勉強法は?独学?予備校?

司法試験合格者におすすめの勉強法は予備校に通うことです。司法試験合格者向けのコースを設置している予備校もあり、科目免除のおかげで一般受講生に比べてかなりの値引きがなされている場合が多いです。

また、独学で公認会計士試験の対策をする場合も、予備校の出版するテキストを参考にするのがおすすめです。予備校のテキストは初学者を意識して構成されている場合が多く、また、租税法などの法令改正にもしっかりと対応している場合が多いからです。

4 サマリー

いかがだったでしょうか。今回の記事で説明したように司法試験と公認会計士試験は、法律と会計というやや異なる職業分野に関する資格試験ではありますが、このダブルライセンスを目指すことには司法試験合格者に対する試験科目の一部免除や業務範囲が広くなるなど様々なメリットがあります。そのメリットを享受できるよう、気になった方は学習を頑張ってください!

5 まとめ

  • 公認会計士とは、監査及び会計の専門家のことをいう。
  • 法曹になるための司法試験には受験資格に制限あり。公認会計士試験には制限なし。
  • ダブルライセンス取得によって企業法務分野で活躍できる貴重な人材になれる。
  • 司法試験合格者が公認会計士を目指すメリットは、試験科目が一部免除される・業務内容を拡張することができる、希少性より他の有資格者に一歩リードできる点にある。
  • 司法試験合格者が本格的に公認会計士の対策をするのは弁護士資格取得後がおすすめ。
  • 公認会計士対策では予備校をうまく活用する。
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