司法試験の選択科目は8法もあるので、どれを選べばいいかわからないという方も多いのではないでしょうか。司法試験の選択科目の中でも比較的人気なのが経済法です。
そこで、この記事では、司法試験の選択科目を選ぶ際にチェックしたいポイントと、司法試験の選択科目としての経済法の特徴、そして経済法を選択科目として選ぶメリットとデメリットについて解説します。
司法試験の選択科目ってどれを選べばいいんだろうと悩んでいる人や、司法試験の選択科目として経済法ってどうなんだろうと思っている方は、ぜひ参考にしてみてください。
1 司法試験の選択科目を選ぶ際のチェックポイント
司法試験の選択科目を選ぶ際のチェックポイントとしては、①暗記量がどのくらいか、②受験生がどのくらいいるか、③実務で使う可能性があるか、④科目の特徴が自分に合っているか、⑤興味を持てる分野かという5つが挙げられます。
(1) 暗記量がどのくらいか
司法試験では主要7科目の勉強だけでも大変なので、選択科目の負担はできる限り減らしたいところです。
そのため、選択科目として選ぶ際には、暗記量が多くないかどうかをチェックするとよいでしょう。
この点経済法は他の科目と比べると覚えることはそれほど多くないため、経済法の勉強にかける時間はそこまで必要ありません。経済法で勉強する内容としては、独占禁止法で規制されている行為類型がメインとなりますが、この行為類型の数は少ないので、インプットの量はその分少なく済みます。
もっとも、経済法は具体的な事案についてあてはめが勝負となる科目です。そのため、判例をベースとして具体的事案の処理に慣れておく必要はあります。
(2) 受験者数がどのくらいいるか
司法試験の選択科目では、受験者数が多いとその分参考書が充実している傾向にあり、対策を立てやすくなります。
ここ最近では経済法の受験者数は増えてきており、令和3年度司法試験では労働法に次いで2番目に受験者数が多くなっています。
経済法の受験者数が増えるにつれて経済法を効率よく勉強する方法を発信する人も多くなるため、こういった意味でも経済法は勉強しやすい科目といえるでしょう。
(3) 実務で使う可能性があるか
選択科目を選ぶにあたっては、実務で活用できる可能性を考慮することも重要です。
司法試験合格を経て実務に出るということを見据えると、同じ勉強をするのであれば少しでも将来役立ちそうな科目の方が有用です。
この点、経済法については、独占禁止法を扱う法律事務所はそこまで多くはなく、労働法や倒産法などと比べると一般的には将来実務で活用できる可能性はあまり高くないといえるでしょう。
他方、独占禁止法を取り扱っている法律事務所や企業への就職を考えている方であれば、経済法で勉強したことを活かすチャンスがあるため、選択科目として経済法を選択するのもおすすめです。
(4) 科目の特徴が自分に合っているか
司法試験の主要7科目にそれぞれ特徴があり、得意科目と苦手科目で分かれるように、選択科目にもそれぞれ特徴があるので、自分と合っているかどうかも考慮する必要があります。
経済法の特徴としては、ある経済活動が規制対象となる行為類型に該当するかどうかについて検討するため、刑法に似た要素があるほか、条文選択が重要となり、条文選択を間違うと点数がつきづらいこと、あてはめが重視されることから、憲法に似た要素もあります。
そのため、憲法や刑法が得意な人であれば経済法は向いているといえるでしょう。
(5) 興味を持てる分野か
いくら司法試験の科目としては勉強量が少なくて済むからといって、自分の全く興味のない分野を勉強しなければならないのは苦痛が伴います。
そのため、最終的には司法試験の選択科目を選択するにあたっては自分が興味を持てる分野であるかどうかということも考慮しておきましょう。
経済法は、企業の事業活動がテーマとなるため、ビジネスや企業法務に興味があるという方には向いています。
2 経済法の特徴
司法試験の選択科目における経済法では、主に独占禁止法が出題されます。
独占禁止法は、特定の事業者に利益が過度に集中することを防止して、公正かつ自由な競争を促進することを目的としています。そして、事業者は事業者間の競争によってより安く、より優れた商品を提供しようとするため、一般消費者がこれによって利益を受けることができるだけでなく、事業活動が盛んになって最終的に国民経済の発展を促進することも目的としています。
この独占禁止法では、私的独占、カルテルや入札談合などの不当な取引制限、不公正な取引方法などの行為類型が禁止されています。
司法試験の問題においても、具体的な事業活動がこれらの独占禁止法による規制の対象となるかどうかということが問われることになります。
ある事業者の事業活動が独占禁止法で禁止される行為類型に該当するといえるためには、①各条文に規定された行為に該当すること、②市場の競争機能に悪影響を及ぼす効果を有することという2つの要件を満たす必要があります。
①は行為要件、②は効果要件と呼ばれています。
①行為要件については、刑法でいう構成要件該当性の判断と似ていて、それぞれの行為要件の意義を判例をもとに学習していくことになります。
②効果要件は、まず市場はどこにどのような形で存在するのかを明らかにした上で、事業者の事業活動がその市場の競争機能にどのような悪影響を及ぼすかを検討することになります。
3 経済法を選択するメリット
経済法を選択する一番のメリットは、覚えることが少なくて済み、少ない労力で点数を稼ぐことができるという点です。
経済法はあてはめ勝負なので、具体的事案においてどのような判断がなされているのか判例などに基づいてあてはめ能力を養っていく必要はありますが、覚えなければならない事項は少なくなっています。
司法試験では主要7科目の勉強だけでも大変なので、選択科目についてはできる限り少ない労力で点数を稼ぐことができる科目を選択したいところです。
経済法はまさにこれにあてはまる選択科目といえるでしょう。
4 経済法を選択するデメリット
経済法を選択するデメリットは、条文選択を間違うと大幅な失点となりやすいという点です。
そのため、普段から憲法など条文選択のセンスが問われる科目で適切な条文選択をするのが苦手、条文を外しやすいという方には経済法はあまりおすすめできません。また、経済法はあてはめ重視の科目となるため、憲法のようなあてはめが苦手という方には向いていないでしょう。
さらに、独占禁止法は実務ではあまり扱わないという点もデメリットとなりうるでしょう。
5 サマリー
司法試験の選択科目を選ぶ際には、勉強量や科目の特徴、将来の有用性などの観点から、それぞれメリットとデメリットを考慮して選びましょう。
経済法を選択する主なメリットは、比較的勉強量が少なくて済むという点です。他方、主なデメリットとしては、条文選択を間違うと大幅な失点となりやすいという点です。
憲法や刑法が得意で条文選択の読みは外れにくいという方には向いているでしょう。
6 まとめ
- 司法試験の選択科目は勉強量や科目の特徴、将来の有用性などを考慮して選ぶ
- 経済法のメリットは比較的勉強量が少なくて済むこと
- 経済法のデメリットは条文選択を間違うと大幅な失点となる可能性があること
- 経済法は憲法や刑法が得意な人には向いている