司法試験合格といっても、どのくらいの点数をとれば合格できるのかわからないまま勉強している人が多いのではないでしょうか。
司法試験の合格を目指すうえで、何を重点的に学習すべきであるかを知っておくことは大切です。
そこで、司法試験の配点・足切り等について、ご紹介いたします。
司法試験を目指している方は、是非記事をご覧ください。
1 司法試験とは
司法試験とは、裁判官、検察官又は弁護士となろうとする者に、必要な学識・応用能力が備わっているかどうかを判定するための国家資格です。受験資格は、法科大学院課程の修了者及び司法試験予備試験の合格者に与えられています。
(1) 受験科目
司法試験の受験科目は、論文式試験が、選択科目、公法系2科目(憲法・行政法)、民事系科3目(民法・商法・民事訴訟法)、刑事系2科目(刑法・刑事訴訟法)、短答式試験は、憲法、民法、刑法の三科目です。
(2) 日程
令和4年の司法試験の実施日程です。
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司法試験は、例年、2日間の試験の後に1日休みがあり、その後2日間試験を受けるという日程になっています。
2 短答式試験の科目・配点等
司法試験の短答式試験の試験科目・配点・足切り等について紹介します。
(1) 短答式試験の試験科目・配点・足切り
試験科目は、憲法,民法,刑法の3科目です。
配点は、憲法50点、民法75点、刑法50点
短答式試験の各科目の合計点をもって同試験の合格に必要な成績を得た者の判定を行います。しかし、短答式試験において最低ラインに達していない科目が1科目でもある者については、それだけで不合格となります。
短答式試験における最低ラインは、各科目における満点の40%です。
つまり、民法が30点、憲法・刑法が20点、が最低ラインとなります。
(2) 令和3年の短答式試験の結果
短答式試験の合格点 | 各科目の合計得点が99点以上 |
受験者数 | 3,424人 |
採点対象者数 | 3,392人 |
各科目足切り点を達した者 | 3,095人 |
合格に必要な成績を得た者 | 2,672人(約78.77%)(合格者/採点対象者数) |
出典元:法務省「令和3年短答式試験結果」より
(3) 各科目足切りの人数
憲法 | 75人 |
民法 | 189人 |
刑法 | 147人 |
3 論文式試験の科目・配点等
次に、論文式試験の試験科目・配点・足切り等について紹介します。
(1) 論文式試験の試験科目
法務省によると、試験科目は以下の通りです。
公法系科目(憲法及び行政法に関する分野の科目をいう。)
民事系科目(民法,商法及び民事訴訟法に関する分野の科目をいう。)
刑事系科目(刑法及び刑事訴訟法に関する分野の科目をいう。)
専門的な法律の分野に関する科目として法務省令で定める科目のうち受験者のあらかじめ選択 する一科目(選択科目)
選択科目は,次の8科目とされています(施行規則第1条)。
倒産法 ・ 租税法 ・ 経済法 ・ 知的財産法 ・ 労働法 ・ 環境法 ・ 国際関係法(公法系) ・ 国際関係法(私法系)
(2) 論文式試験の配点・足切り
- 配点
公法系科目 | 200点 |
民事系科目 | 300点 |
刑事系科目 | 200点 |
選択科目 | 100点 |
公法系科目(第1問・第2問)・民事系科目(第1問・第2問・第3問)・刑事系科目(第1問・第2問)は各問題100点の配点となります。
選択科目は、問題が2つ出題され、問題1問につき、50点が基本ですが、傾斜配点もあります。(60点配点の問題1問、40点配点の問題1問等。)
- 足切り
論文式試験における最低ラインは、各科目の満点の25%点。
最低ラインに達しているかの判定は、民事系科目・公法系科目・刑事系科目・選択科目ごと判定する。
民事系科目は、合計300満点であり、25%は75点。
公法系科目・刑事系科目は、各合計200点満点であり、25%は50点。
選択科目は、合計100点満点であり、25%は25点。
(3) 令和3年の論文式試験の結果
合格点 短答式試験の得点と論文式試験の得点による総合点755点以上が合格点
短答式試験の合格に必要な成績を得た者の数 2,672人
合格者数 1,421人
各科目最低ライン点未満実人員
公法系科目 | 47人 |
民事系科目 | 178人 |
刑事系科目 | 61人 |
選択科目 | 54人 |
以上のとおり、最低ライン点未満実人員が短答式試験は合計が411名、論文式試験は340名であること(複数科目足切りになったケースを考慮せず単純計算した場合)、短答式試験の民法の189人が最も多いことから、足切りに関して最も不安要素であるのは、短答式試験であるといえます。
不合格者を見ていても、短答式試験で不合格になる人は、論文式試験も考慮してもらえれば受かっていたのではないかという人も多く、司法試験において、短答式試験の知識の詰込みの重要性がわかります。
4 予備試験の科目・配点
予備試験とは正式名称を司法試験予備試験といい、法科大学院を修了した者と同等の学識を有するかどうかを判定する試験であり、合格すると司法試験の受験資格を得ることができるものです。予備試験は、短答式試験、論文式試験、口述試験の順で、それぞれの試験に合格した者のみが次の試験を受けることができ、口述試験に合格して初めて、予備試験合格となります。
以下、司法試験との比較もかねて、予備試験の試験科目、配点についてもご紹介します。
(1) 短答式試験の科目・配点
① 試験科目
民法・商法・民事訴訟法
憲法・行政法
刑法・刑事訴訟法
一般教養科目
② 配点
法律科目が各30点、一般教養科目が60点、計270点満点
(2) 論文式試験の科目・配点
① 試験科目
憲法・行政法
刑法・刑事訴訟法
一般教養科目(令和4年からの予備試験では、一般教養科目は廃止され、倒産法、租税法、知的財産法、労働法、環境法、国際関係法(公法系)及び国際関係法(私法系)のうち受験者のあらかじめ選択する1科目(以下選択科目)が試験科目として追加されます。)
法律実務基礎科目(民事・刑事)
民法・商法・民事訴訟法
② 配点
憲法・行政法・刑法・刑事訴訟法・一般教養科目・民法・商法・民事訴訟法は、各50点満点。
法律実務基礎科目については、民事及び刑事につきそれぞれ50点とし合計100点満点。
(3) 口述試験の科目・配点
① 試験科目
法律実務基礎科目(民事・刑事)
② 配点
口述試験は、民事・刑事60点を基準として、加減方式で採点されます。
5 サマリー
いかがだったでしょうか。司法試験を目指すうえで、配点・足切り等について知り、ゴールを知っておくことは大切であるといえます。
司法試験の試験科目、配点、足切りを知ることで、過去問を解くうえでもどの程度を目安とすればよいかがわかってきます。
また、受験生にとって一番の不安要素としては、足切りとなってしまうことであると思います。他の科目の成績が良くとも、人科目でも足切りとなってしまうと不合格となってしまいます。
ご覧いただいたように、各科目足切りでは、短答式試験の足切りが最も不安な要素であるといえます。特に、短答式試験の民法による足切りが多く、民法改正後、択一試験の合格点が下がっていることからも、民法の短答式試験については、今後も対策が必要であると考えられます。
まとめ
- 司法試験は、選択科目、公法系2科目、民事系3科目、刑事系2科目の計8科目の論文試験と、憲法、民法、刑法、計3科目の短答式試験により合否を判断するものである。
- 短答式試験の配点は、憲法50点、民法75点、刑法50点であり、足切りは各科目における満点の40%未満。
- 論文式試験の配点は、公法系科目200点、民事系科目300点、刑事系科目200点、選択科目100点であり、足切りは、各科目における満点の25%未満。
- 令和3年の司法試験の結果では、短答式試験の民法で足切りとなってしまった人が最も多い。
- 短答式試験の知識の詰込みが重要である。