司法試験の合格率が高い大学・法科大学院は?大学別のデータから紐解きます

司法試験

司法試験の合格率は年々上昇傾向にありますが、具体的なデータをみると、法科大学院ルートと予備試験ルートで合格率は大きく異なります。また、出身大学や出身法科大学院別にみても、有名校の合格率が高いなど、様々なことが分かります。

この記事では、様々なデータから、どちらのルートがおすすめなのかなどを解説するので、是非参考にしてみてください。

1 司法試験に合格するには

司法試験には、受験資格が設けられています。大きく分けて、①予備試験ルートと、②法科大学院ルートになります。
※令和5年より一定条件のもとで法科大学院在学中でも司法試験を受験することができるようになります。

(1) 予備試験ルート

予備試験ルートは、予備試験に合格することで受験資格を得るルートになります。

予備試験とは、法科大学院の修了と同等の知識と能力を確かめるための試験です。そのため、予備試験に合格すると司法試験の受験資格が与えられます。

予備試験には受験制限がありません。

したがって、外国籍の人でも高卒の人でも誰でも受験できる試験です。

予備試験では、短答式、論文式、口述の3つの試験にそれぞれ合格する必要があります。

予備試験は、科目が司法試験と共通していますが、合格率が約4%と、非常に難易度の高い試験になります。

もっとも、司法試験合格者の内訳をみると、予備試験合格者の合格率が最も高いため、予備試験ルートは人気のルートになっています。

(2) 法科大学院ルート

こちらは、法科大学院を修了することで受験資格を得るルートになります。

法科大学院とは、法曹人材の育成に特化した専門性の高い大学院のことです。

法科大学院を修了することで、司法試験の受験資格を得ることができます。大学の延長線上にあるイメージが強い大学院ですが、これまで法律を全く勉強してこなかった人はもちろん、社会人でも入学することが可能です。

大学で既に法律の基本を勉強してきた人は2年間(既修コース)、法律を全く勉強してこなかった人は3年間(未修コース)を費やして法律を学習し、卒業するのが一般的です。

卒業後は確実に司法試験の受験資格を獲得することができるので、安全かつ確実なルートといえますね。
ただし法科大学院はあくまで学問としての法を修める場であり、「司法試験対策」を目的とした場ではありませんので、ある程度自力での試験対策が求められます。その点覚えておいてください(詳しくは(6)で解説します)。

法科大学院ルートに関しては、令和5年度から、一定の条件の下で、法科大学院在学中に司法試験を受験できるようになるので、ご注意ください。

2 司法試験の合格率

司法試験の合格率は以下のようになっています。

この統計をみると、司法試験の合格率は、2016年頃から年々上昇しており、2021年には合格率が41.5%と初めて40%台に突入しています。合格率が上がっている今が、まさに合格する大きなチャンスといえます。

3 大学別予備試験ルートの予備試験合格率

超難関の予備試験。大学生で合格を勝ち取るなんて到底無理だと思っていませんか?しかし、実際には予備試験の受験は大学生のトレンドであり、合格者も多く存在しています。

では、どのくらいの人が、大学生のころから予備試験に挑み、合格しているのでしょうか?

(1) 大学別予備試験合格率

▼令和3年司法試験予備試験受験状況(大学別・全体)

  • 受験者数 7,916人
  • 合格者数 315人(うち既卒60人)
  • 合格率 3.98%

令和3年度予備試験では、全体の受験生が11,717人のうち67%ほどが学生であるという事実があり、合格率も3.98%と大学生なのにもかかわらず高い水準にあります。ひとくちに大学生といえど、当然ながら大学によって受験者数や合格者数にかなりの開きがあります。

では、予備試験合格者を多く輩出している大学とは一体どこなのでしょうか?

▼令和3年度司法試験予備試験受験状況(大学別)

順位 大学名 出願者 受験者 合格者 合格率
1 東京大学 851 765 99 12.9%
2 慶應義塾大学 886 782 50 6.39%
3 早稲田大学 858 732 29 3.96%
4 中央大学 1112 939 26 2.77%
5 京都大学 347 312 22 7.05%
6 一橋大学 196 175 22 12.57%
7 同志社大学 284 234 9 3.85%
8 大阪大学 185 157 9 5.73%
9 神戸大学 145 124 5 4.03%
10 名古屋大学 81 72 5 6.94%

 

この表は令和3予備試験の受験状況を各大学ごとに上位校をまとめたものです。

最も合格者数の多かった東京大学の予備試験合格率は12.9%と、全体の合格率のおよそ4倍と、とても高いことが分かります。

東京大学の他にも、一橋大学や京都大学など、有名大学の予備試験合格率がとても高いことが分かります。

(2) 学年別予備試験合格者

▼令和3年度予備試験合格者(学年別)

最終学歴別 出願者数(人) 受験者数(人) 短答合格者数(人) 論文合格者数(人) 最終合格者数(人)
大学卒業 5,288 4,139 991 62 60
大学在学中 3,893 3,552 736 255 252
大学中退 298 225 53 3 3
法科大学院修了 1,663 1,230 425 24 21
法科大学院在学中 1,255 1,095 273 102 100
法科大学院中退 312 242 32 3 3
法科大学院以外の大学院修了 919 717 148 18 16
法科大学院以外の大学院在学中 46 37 9 2 2
法科大学院以外の大学院中退 96 69 16 0 0
短期大学卒業 51 31 2 0 0
短期大学在学中 1 1 0 0 0
短期大学中退 5 3 0 0 0
高校卒業 264 198 21 5 5
高校在学中 36 34 1 1 1
高校中退 40 29 7 2 2
その他 150 115 9 2 2
合計 14,317 11,717 2,723 479 467

参照:法務省

大学3年生、4年生の予備試験合格者の割合が大きいことが分かります。

おそらく、大学に入学してから、もしくは入学前から予備試験の勉強を開始し、数年で予備試験合格に到達しているのではないでしょうか。

(3) 有名校の予備試験合格率が高い理由

これまで見てきたように、東京大学や京都大学などの有名校の予備試験合格率が高いことがいえますが、こうした有名校の予備試験合格率が高い理由については、いくつか推察できます。

まず一つに、有名校では、予備試験の受験者数が相対的に多いことから、予備試験に関する情報を簡単に入手することができるということが考えられます。

有名校では予備試験や予備校に関するイベントが数多く行われ、同期や先輩など予備試験合格者が多いことから、予備試験について知る機会が豊富にあります。

予備試験合格者から直接答案の添削を受けたり、出題傾向などを教えてもらうこともできるので、試験に関する重要な情報を得られる機会が多いというのは、受験生にとってはとても貴重な機会といえます。

また、受験生が多ければ、一緒にゼミを組んだり、優秀な同期がいれば教えてもらうこともできるため、モチベーション維持にも繋がります。

第二に、有名校には、受験慣れ、試験慣れをしている受験生が多いことが考えられます。

東京大学や京都大学に入学した学生は、最難関の大学受験を経験してきており、大学受験時代に試験を突破するためのノウハウを身につけてきているため、同じ試験対策という意味において、予備試験についても、何をすべきで、どのように対策をすべきか効率的に進めることができます。

以上が考えられる理由ですが、これはあくまでも筆者の考える推察であることをご了承ください。

4 司法試験合格率の高い法科大学院は?

(1) 法科大学院ルートの司法試験合格率

▼令和3年度 司法試験実績(法科大学院別)※合格率順に表示

法科大学院名 受験者数 合格者数 合格率
愛知大学 3 2 66.7%
京都大学 185 114 61.6%
一橋大学 110 64 58.2%
慶應義塾大学 227 125 55.1%
東北大学 39 20 51.3%
東洋大学 2 1 50%
山梨学院大学 4 2 50%
早稲田大学 231 115 49.8%
岡山大学 33 16 48.5%
東京大学 199 96 48.2%

令和3年度司法試験の合格率は41.5%でしたが、法科大学院別の司法試験合格率の上位10校をみると、50%を超える合格率を輩出している法科大学院が多数あります。

また、予備試験合格率の高かった京都大学や早稲田大学なども上位10校にランクインしているのも特徴的です。

5 ルート別の司法試験合格率

こちらは、令和3年度のルート別司法試験合格率の表になります。

令和3年度における法科大学院ルートの司法試験合格率は34.62%だったのに対し、予備試験ルートの司法試験合格率は93.5%と、両ルートの合格率に大きな差が出ています。

なぜ予備試験ルートの司法試験合格率が圧倒的に高いのか、次の項目でご紹介します。

6 なぜ予備試験ルートの司法試験合格率が高いの?

なぜ予備試験に合格した者の司法試験合格率が高いのか、はっきりといえる理由は不明ですが、考えられる理由として、予備試験の対策は、そのまま司法試験の対策にもなるということが挙げられます。

予備試験の科目のほとんどは司法試験の科目と共通しています。

また、司法試験には口述がありませんが、短答式、論文式があるという点はどちらも共通しており、出題形式も共通する部分が多いため、予備試験合格者は予備試験の受験を通して、かなり試験慣れをした状態で司法試験を受けることができます。

予備試験対策に費やしていた時間が、そのまま司法試験対策に費やした時間になるため、これまでの勉強を活かすことができるのです。

これに対して、法科大学院を修了して司法試験を受験するルートに関しては、司法試験とは関係のない科目や勉強を法科大学院の授業で受ける必要があるため、司法試験対策に直結しない時間を費やすことになります。

法科大学院では、例えば、憲法や民法など、試験科目を授業で受けることはできますが、学問として学ぶ場であるため、司法試験対策のための授業はなく、学生は各々で司法試験対策を進めていかなければなりません。

また、法科大学院によっては課される課題の量も多く、朝方まで課題を終えなければならない日が続くことも少なくありません。

司法試験対策のために時間を確保することに苦労している学生も多いのです。

このように、予備試験ルートは司法試験対策の観点をみれば、無駄が少なく、試験対策だけに注力できるため、予備試験ルートの司法試験合格率が高いものと考えられます。

7 どちらのルートがおすすめ?

司法試験の合格率だけをみれば、予備試験ルートが最もおすすめのルートといえます。

もっとも、予備試験ルートも法科大学院ルートも、排他的な関係にあるわけではなく、法科大学院に在学しながら予備試験を受験する学生も多数存在します。

また、個々人の生活や環境により、どちらがおすすめかは異なるともいえます。例えば、社会人で仕事をしながら司法試験を受験したい方は、予備試験ルートの方がおすすめといえます。これから大学に進学する方や、大学生は、予備試験を受験しながら、法科大学院に進学することも視野にいれておくなど、選択肢を広くもっておくことも重要といえます。

法科大学院に進学することを考えている方は、ご紹介した、司法試験合格率の高い法科大学院に進学するのがおすすめです。

8 サマリー

様々な合格率に関するデータをご紹介してきましたが、これから法曹を目指そうと考えている方は、是非参考にしてくださいね。

9 まとめ

  • 司法試験には受験資格があり、予備試験ルートか、法科大学院ルートから受験資格が得られる
  • 令和3年度司法試験合格率は41.5%
  • 令和3年度予備試験の合格者数の多かった大学は東京大学で99人
  • 有名校の予備試験合格率が高い理由として、予備試験に関する情報を簡単に入手することができること、試験慣れしていることなどが考えられる
  • 令和3年度司法試験合格率の高い法科大学院は愛知大学(66.7%)
  • 令和3年度の予備試験ルートの司法試験合格率は93.5%
  • 令和3年度の法科大学院ルートの司法試験合格率は34.62%
  • 予備試験ルートの司法試験合格率が高い理由として、予備試験対策はそのまま司法試験対策に活きることが考えられる
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