司法試験の合格者ってどんな人?合格者の生の声を聞いてみた!

司法試験

はじめに 

司法試験は日本で最難関の試験の一つといわれており、皆さまもこのことをご存知かと思います。

今年の司法試験では5238人もの受験者がいながら、その試験をパスした今年度(2018年度)の合格者は、たったの1525人でした。

合格率を計算すると、なんと29.1%…

これほど難しい試験を攻略できた人たちは、エリートとしての道を歩んできた方が多いに違いない。とお考えの方も多いことと思います。

しかし、本当にそうなのでしょうか?司法試験は、エリートしか突破できない試験なのでしょうか?

司法試験に受かる人物像が気になっているそんな皆様のために、本記事では、司法試験の合格者はいったいどんな人物で、どうやって合格したのかについてお話していきます!

1.司法試験とは?

(1)司法試験とは

ではまず、司法試験とは何かについてからご説明します。

司法試験とは、法律家(裁判官・弁護士・検察官)になるために必ず突破しなければならない国家試験のことです。

一般的には、司法試験は「弁護士になるための試験」という認識が広まってはいますが、実は裁判官や検察官になるためにも必須の試験です。

また、司法試験受けたい!と思っても、すぐに受験できるというわけではなく、受験資格が要ることを忘れてはなりません。

司法試験の受験資格は2つあり、下記のどちらかを満たせば司法試験を受験することができます。

  • 法科大学院を卒業する
  • 司法試験予備試験に合格する

つまり、法律の専門学校を卒業するか、試験の一次審査のようなものに合格するかの二択ということです。

これらについては「2.司法試験を合格するためのルートは2つ!」で詳しく説明します。

(2)司法試験の概要

司法試験には短答式と論文式(記述式試験)があり、毎年5月中旬に行われます。

受験料は28000円で、4日間をかけての試験となります。

下記が主な試験内容です。

  • 短答式(1日間):憲法・刑法・民法の3科目
  • 論文式(3日間):法律基本7科目(憲法・行政法・民法・商法・民事訴訟法・刑法・刑事訴訟法)選択科目(倒産法、租税法、経済法、知的財産法、労働法、環境法、国際関係法)

短答式では、1科目でも最低ライン(満点の40%)に達していない場合は不合格になりますのでご注意ください。

(3)合格水準は?

司法試験に合格するためには、

論文式試験の全科目で素点の25%以上を獲得し、短答式と論文式の点数を合わせて

800~900点の成績が必要といえるでしょう。

一概に「〇点取れれば合格!」と言えないのは毎年合格点が違うからですが、近年では800~900点が合格圏内となっていることが多いです。

また、例年の合格者数は1500~1600人ほどです。

この人数は、司法試験の受験者数が減少していることを受けて、平成27年度(2015年)6月30日に法務省が公開した「法曹養成制度改革」の中で定められました。

この改革の結果、受験者数が減少しているなかで合格者数はキープされているので、徐々に合格率は回復してきています!

(4)司法試験に合格した後は…

「やっとの想いで司法試験に合格。これでやっと法曹だ…!!」

と、お思いの方、誠に残念ながら実はそうではないのです。

9月に行われる司法試験の合格発表のあと、

11月末頃から始まる約1年間の「司法修習」という過程を修了し、最終試験(二回考試)に合格して初めて法曹になる資格が与えられます。

「司法修習」は司法研修所で行われ、法曹に必要な実践的な知識・技法を学んだり、高い倫理観や物事を客観的に見る力を育てます。

謂わば、研修期間のようなものですね。

司法研修所で行われる1つのカリキュラムを修了するだけで、弁護士・検察官・裁判官のいずれかの道に進むことができます。

司法修習を終えればいよいよ自らのキャリアをスタートすることとなります。

2.司法試験を受験するためのルートは2つ!

さて、先ほど少し言及しましたように、司法試験を受験するための前段階として、

法科大学院を修了するか、予備試験に合格するかのどちらかをしなければなりません。

これら2つのルートには、それぞれメリット・デメリットがあるので、ご紹介してまいります。

(1)法科大学院ルート

まず法科大学院とは、法曹養成に必要な教育をする法律の専門学校のようなものです。一般的には、ロースクールなどとも呼ばれていますね。4年制大学を卒業した人のみ受験が可能です。

修業期間は、法学の既修者と未修者によって異なります。

①既修者コース:2年間

各法科大学院によって作成される「法律科目試験」に合格する必要があります。

また、大学で法学を勉強していなくても、既修者として入試に合格すれば

既修者コースで学ぶことができます。

②未修者コース:3年間

「法律科目試験」を受験する必要はありません。

法科大学院に入学したのちに、法学について学び始める方用のコースです。

法学を勉強したことがある人も未修者コースに入学可能です。

法科大学院の大きなメリットとしては、やはり「確実に司法試験の受験資格を獲得できる」ことです。予備試験対策を行う必要がないので、その時間を司法試験の勉強に充てることができます。

また、夜間に開講している法科大学院もあるので社会人にとっては利用しやすいかもしれません。

しかしその一方で、法科大学院に通うためには まとまった時間とお金が必要です。

コースを修了するためには最低でも2年間はかかりますし、年間平均で学費がかなりの負担になってしまう可能性もあります。

国立法科大学院ですと、入学金などを含み年間で約110万円ほど。

公立法科大学院は自治体割引などを採用しているところもありますので、国立法科大学院よりも納入金が安くなる可能性がありますが、それでも約100万円くらい。

私立法科大学院の授業料はそれぞれ違うので一概には言えませんが、平均すると約150万円ほど(入学金含む)です。

3年間通うとなると、最大で約450万円はかかってしまうようですね…

また、日本国内で生徒を募集中の法科大学院は約38校で、過去に約70もの法科大学院が存在していたことを考えると、その数がかなり減ってきていることがわかります。

(2)予備試験ルート

先ほども述べましたように、予備試験は司法試験を受験するために合格必須の試験です。つまり、合格できなければ司法試験の受験資格を得ることができません。

また、法科大学院とは違い、予備試験には受験資格(年齢・学歴・受験回数)は存在しないので、”高校生が予備試験を突破!” なんて話があってもおかしくはありません。

試験は、短答式と論文式と口述式に分けて行われます。

予備試験には最大のメリットは「誰でもお金をかけずに司法試験に挑戦できる」ことです。学費を支払うこともないですし、受かるまで毎年受験することも可能です。

しかし、司法試験にチャレンジする前には必ず予備試験に合格する必要があります。

司法試験の合格率は高くても、予備試験の合格率は4%という狭き門ですので、まずはこの第一難関をクリアしなくてはなりません。

3.司法試験合格者の声

平成29年度司法試験合格者の佐藤さん

宮城県出身・32歳。地元の高校を卒業後、一年間の浪人を経て、2004年に日本大学法学部に進学。
2008年専修大学法科大学院・既修者コースに進学するも、1年目(既修者コース2年次)は留年。3年間かけて専修大学法科大学院・既修者コースを卒業。
最初の司法試験受験時は短答式試験不合格。その後、4000番台・2000番台と着実に順位を上げ、2017年度司法試験で見事合格を果たす。
趣味はフットサル。学生時代はユースチームでプレーし、大学卒業後は社会人フットサルチームで活躍。3人兄妹の長男。

・どんな学生生活を送ってきたのか

中学校時代まではサッカーに熱中していました。

高校時代は、いわゆる”不良”。偏差値は30くらいで、学校の授業にもまとも行かないような、とても不真面目な学生生活を送っていました。

・司法試験に挑戦したきっかけ

両親が法律関係の仕事を影響もあり、大学は法学部を選択しました。

大学卒業後、法科大学院進学を決めるものの、勉強は片手間。

法科大学院に入学して初めて「芦部憲法」の存在を知る、なんていう学生でした。本当に勉強して来なかったんですね。

そんな生活を送っていたので、法科大学院の1年目(既習2年次)では留年。もちろん、1回目の司法試験受験は短答式試験で不合格でした。

・司法試験に本気で向き合った転機

司法試験の勉強を本気で始めたきっかけは、司法試験受験と時季を重ねた母の他界でした。

私を無条件に応援してくれた母に、何も親孝行ができなかったことを心から悔いました。

そして、せめてもの恩返しとして、司法試験に絶対に受かろうと決め、心を入れ替え勉強に没頭しました。

・勉強法を変えるために講座の受講を決意

2回目の司法試験にも失敗し、「勉強法を変えなければいけない」と思った私は、たまたま家の近くで実施された資格スクエアのイベントに参加し、資格スクエアで論文講座を担当していた吉野講師の講演を聞きました。昭和のノリ、とでもいうのでしょうか、講師の熱量・気迫に圧倒された私。「今のままではダメ」という言葉が心に響ました。

・どのように勉強したのか

論文式試験が一番苦手だった私は、論点が複雑に絡み合う司法試験ではなく、一つ一つの論点をしっかりと学ぶため、旧司法試験の問題の演習から行おうと思いました。

具体的には、論文の問題を数分で解き、答案例を見て、講義を聞きました。試験範囲は膨大ですので、ゆっくり講義を聞くことはできません。1.5倍速で講義を受講しました。

資格スクエアの論文講座を通じて、基礎的な論点について正しく三段論法を用いて答案を書く力がついた結果、論文式試験の順位は2,000番以上上がりました。

吉野先生の指摘はとても的確で、自分の答案にそのまま生きるものばかりです。

さらに、講義中から常に、「これを書かないと落ちる」、といったシビアなこと言ってくれるところも貴重です。

オンライン講義でありながら、他の先生では味わえないような緊張感を持って動画を聴くことができたのはとても大きかったです。

・最年少合格者答案の活用方法

最年少合格者答案の一番良いところは、「メリハリ」。

メインの論点については手厚く書いて、瑣末な論点については、軽く流す程度の言及に留める。でも、決して論点は落とさない。

司法試験・予備試験ともに、時間制約が厳しい試験ですが、その短い時間の中でも、減点を抑え、確実に得点できる表現が満載の予備試験最年少合格者答案は、試験対策にとても重宝しました。

・司法試験を終えて

最初の司法試験受験時は短答式試験不合格。その後、4000番台・2000番台と着実に順位を上げて、2017年度の司法試験で無事に合格しました。

・理想の法曹像

今はまだ、司法試験合格を終えたばかりで、具体的には考えられていません。

この数年間の動きが激しすぎて心身が追いついていない、というのが正直なところです。

将来的には、「あの人に任せれば問題ない」「あの人に頼んでダメなら仕方ない」と言ってもらえるような、信頼される弁護士になりたいと思っています。

・司法試験を目指す人へ

司法試験の合格者1,500人のうち、上位のロースクール出身者・中下位のロースクールの上位層で900〜1,000名は占められます。

司法試験は、残りの500席の椅子取りゲームだと思っています。「自分には才能がない」、もし、そう思うのであれば、彼・彼女達以上の努力をしなければいけません。

私は高校時代は偏差値30からスタートし、合格率が低い、いわゆる下位ロースクールの出身ではありましたが、無事、司法試験合格を掴みとりました。

試験勉強は、決して簡単な道のりではありませんでしたが、必死に頑張って、ぜひとも合格を掴み取って欲しいと思います。

4. 法科大学院を卒業すれば司法試験合格は近い?

さて、佐藤さんのインタビューを読んでどのような感想をお持ちでしょうか?

法科大学院に通うことは、果たして本当に司法試験合格への一番の近道なのでしょうか…

確かに、法科大学院に通えば予備試験対策をする必要がないので、司法試験に向けた勉強に集中することが可能でしょう。

しかし、先ほどお話したように、法科大学院に通うためにはたくさんの時間とお金がかかってしまうことも忘れてはなりません。

また、法科大学院修了生全体の平成30年度司法試験の合格率は わずか24.7%で、つまりこれは「法科大学院に進学しても半分近くの人は合格できない」ということを示しています。

順位

出身法科大学院

合格者

合格率

予備試験合格者

336人

77.6%

東北学院大学法科大学院

3人

60.0%

一橋大学法科大学院

72人

59.5%

京都大学法科大学院

128人

59.3%

東京大学法科大学院

121人

48.0%

上記の表で法科大学院ごとの合格率を見ると、東北学院大学法科大学院が60%と合格率は高いように思われますが、予備試験合格者とくらべると、やはりその差は大きいです。

このことから、法科大学院を修了=司法試験に受かる!という式は成立しない可能性が高いことが見受けられます。

また、予備試験に合格することがもっとも司法試験に合格する可能性が高いルートであることも同時に示しています。

5.なぜ予備試験から司法試験が合格しやすいのか?

法科大学院を修了するよりも予備試験に合格するほうが、司法試験合格の可能性が高いことは、先ほど掲載した表からも読み取れますね。

しかし、なぜ予備試験に受かった人は司法試験にも合格できるのでしょうか?

主な理由は、2つあります。

(1)予備試験の難易度が高く設定されているから

皆さまご存知の通り、近年の予備試験の問題は難易度が高く、合格率は約4%というほどです。

予備試験に合格することがかなり困難といえますが、これは裏を返せば、

予備試験に対応できる能力を持っていれば、司法試験にも備えることができる!!ということです。

予備試験に向けて対策している方は、実は気づかぬ間に司法試験への準備も始めているのです。

(2)予備試験と司法試験の、試験や採点の傾向が似ているから

予備試験を控えている方は、おそらく短答式・論文式・口述式試験に向けて日々勉強されていることでしょう。

短答が好き!口述が本当に無理(泣) など、好き嫌いが色々あるかもしれませんが、冒頭でお話しましたように、司法試験でも短答式と論述式での試験が行われます。

司法試験と予備試験では、論文式試験で書かなくてはいけない分量が違うなどの相違点はあるものの、ほとんど同じ形式での試験を受けられる点でとても大きな意味があるでしょう。

場数を踏み、どの部分が重視して採点されるのかを頭の中にいれておくだけで、得点がアップする可能性も十分考えられます。

6.サマリー

さて、ここまで 法科大学院修了後に司法試験に挑むルートと、予備試験を経て司法試験にチャレンジするルートを比較しながら、どんな人が司法試験に受かるのかを見てまいりましたが、いかがだったでしょうか?

佐藤さんにお聞きしたお話や、合格率ランキングから、「法科大学院に通ったとしても確実に司法試験に合格できるとは限らない」ということも考えられますし、やはり、挫折を経験しても、決してあきらめない予備試験合格者のほうが司法試験に合格する可能性が高いと言えるかもしれません。

また、予備試験は”誰でも挑戦ができる”ことがとても魅力的ですし、合格すると就職時にもアピールポイントとして活用できます。

試験問題の出題範囲は広いですが、とにかく早めに予備試験対策を始めれば司法試験合格への近道となるでしょう!

7.まとめ

  • 司法試験に合格できる人は一握りの存在
  • 司法試験に合格できる人は、挫折しても諦めない人
  • 法科大学院に進学したからと言って司法試験に受かるわけではない
  • 予備試験に向けて勉強することが司法試験合格への近道となる
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