では、外国人の人権はどのように保障されるのでしょうか。
予備試験・司法試験の論文では、まず問題となっている利益・権利に言及した上で、外国人に保障されるかと問いを立てることになります。
以下は、短答・論文の必須判例です。
マクリーン事件(最大判昭53.10)
事案
マクリーン(アメリカ人)が在留期間1年として日本に入国し、1年後に延長を求めて更新の申請をしたところ、法務大臣が在留中のデモ活動等の政治活動を理由に更新を許可しなかったので、その不許可処分の取消しを求めた事件です。
判旨
「憲法第3章の諸規定による基本的人権の保障は、権利の性質上日本国民のみを対象としていると解されるものを除き、わが国に在留する外国人に対しても等しく及ぶものと解すべきであ」る。
…「政治活動の自由も、わが国の政治的意思決定またはその実施に影響を及ぼす活動等外国人の地位にかんがみこれを認めることが相当でないと解されるものを除き、その保障が及ぶ」とし、「在留期間更新の際に消極的な事情として勘酌されないことまでの保障が与えられているものと解することはできない。」としました。
では、この判例は何を言っているのでしょうか。
在留期間中の権限
注意が必要なのは、この判例では外国人の在留の権利の有無が争われたのではなく、在留期間更新の際にデモ活動等をしたことを考慮されることが、外国人の政治活動の自由を侵害しないかが争われているところです。
法務大臣の裁量である在留期間を更新の際に、その考慮要素として政治的活動であるデモ活動等をしたことが消極的に事情として斟酌されたことが21条に違反すると主張されたわけです。
まず、判決は外国人の政治活動の自由を肯定しつつも、わが国の政治的意思決定またはその実施に影響を及ぼすことはできないという制約があるとしています(限定保障説)。
そして、在留期間更新の許否の決定にあたり、法務大臣に広範な裁量を認めています。
つまり、政治的活動をやること自体は自由ですが、その活動を後日どう考慮、評価されるかまで21条は保障していない、ということになります。
しかし、政治的活動を保障しておいて、後で国家がその活動を本人の不利益に判断をする、というのは、実際上その活動の制限にならないか、という点で批判の強いところでもあります。
「表現していいよ」といっておいて、「あのとき表現したので、これ以上の滞在は許可しない。」というのは、実際は表現するなといってるに等しいということです。
予備試験・司法試験の論文では、性質説を採用した上で、具体的な事実を評価し、21条で保障される政治的表現について消極的に斟酌することは他事考慮として裁量違反と結論づけることも可能と思われます。