勉強前に知っておきたい「司法試験用語」

司法試験

司法試験の対策をしていると日々様々な法律用語に触れることになります。

法律用語の中には、

『なんとなく普段見聞きしてるけど、細かい意味まではわからないな〜』というものや、

『似たような用語を他でも聞いたけど、どこだったか思い出せない!』というように、

理解が曖昧になっているものもあるでしょう。

本記事では、法律を学ぶ人には最低限しておいて欲しい用語から、紛らわしい用語、そして、法律を学習していないと出会わないような格好良い法律用語まで徹底解説していきます。

1 法律学習者がまず覚えるべき用語5選!

(1) 条文

条文とは憲法21条、民法94条、刑法199条など、法律の文章そのものです。法律の勉強は何はともあれこの条文に沿って進められます。

「司法試験に合格するには、六法全書を全て暗記する必要がある」という人が良くいますが、これは大きな間違いです。

実際の試験では条文の文言の定義・趣旨・要件・効果・解釈を操らなければなりません。

(2) 趣旨

条文にはそれぞれが存在する意義があります。それが趣旨です。

ある事項について条文を読んでも分からない部分がある際には、この趣旨に沿って考えることになります。

(3) 要件・効果

条文に書いてあるのは要件効果です。

要件がそろって初めて、その条文に規定してある効果が発生するというのが法律の基本的なルールです。

要件がすべてそろわなければ効果は発生しません!

(4) 解釈

条文の文言を読んでも分からないときには、その意図をくみ取って解釈する必要があります。これが法律解釈(条文解釈)です。

ここで、皆さんがイメージしやすい刑法の傷害罪について具体的に見ていきましょう。

<刑法204条>「人の身体を傷害したものは、十五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する」

「傷害」とは『人の生理的機能に障害を与えること』と定義されています。

この条文の趣旨(保護法益)は、『人の身体の安全』にあります。

(『』部引用:『傷害罪』,尾崎哲夫,『コンパクト法律用語辞典』,第6版,自由国民社,2002年5月,381頁から382頁)

要件としては「人」(物ではダメ)の「身体」(精神ではダメ)を傷害することが必要で、効果として「十五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金」という刑罰が生じることになります。

「人」に自分自身を加えるかどうかは読んだだけでは分かりませんが、行為者以外の他人を意味するという「解釈」がありますので、自分で自分を傷害する自傷行為は、「人」を傷害したと言えず刑罰の対象とはなりません。

これら条文の解釈や事実の評価について争いがある場合、最終的には裁判所が判断を下すことになります。

こうして作られるのが良く聞く「判例」です。

一般的には最高裁判所の判決等が判例と呼ばれます。

2 答案を書く必須知識!条文各部の名称


論文式試験では、条文を元に文章を構成する必要があります。

そのためには、「今自分は条文のどの部分を論じているのか』を試験官に説得的に説明する必要があります。

そのためには引用する条文の部分毎の名称を押さえて置く必要がありあます。

そこで、以下では法律の条文の各部分の名称をまとめています。

過去問や模試を解く際になんとなく使っていた人は要注意ですよ!

 

(1) 項

』は条文のまとまりの一つです。

『項』は条文の段落であり、文頭に数字が付けられています。

ただし、第1項には算用数字は付けられません。

(参照:独立行政法人国民生活センター『新・優しく解説 法律基礎知識 第4回 法律の読み方②』2022年5月6日閲覧)

例えば、憲法の第14条を見てみましょう。

第十四条 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。

 華族その他の貴族の制度は、これを認めない。

 栄誉、勲章その他の栄典の授与は、いかなる特権も伴はない。栄典の授与は、現にこれを有し、又は将来これを受ける者の一代に限り、その効力を有する。

憲法14条は第1項から第3項までの3つの項から構成されています。

そして、第1項の前に数が付けられていません。

(2) 号

』も条文のまとまりの一つです。

『号』はいくつかの事柄を列記するときに使われます。

(参照:独立行政法人国民生活センター『新・優しく解説 法律基礎知識 第4回 法律の読み方②』2022年5月6日閲覧)

例えば、憲法第7条を見て見てみましょう。

第七条 天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ。

 憲法改正、法律、政令及び条約を公布すること。

 国会を召集すること。

 衆議院を解散すること。

 国会議員の総選挙の施行を公示すること。

 国務大臣及び法律の定めるその他の官吏の任免並びに全権委任状及び大使及び公使の信任状を認証すること。

 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を認証すること。

 栄典を授与すること。

 批准書及び法律の定めるその他の外交文書を認証すること。

 外国の大使及び公使を接受すること。

 儀式を行ふこと。

憲法第7条には天皇の国事行為として第1号から第10号までの10個の号が列挙されています。

(3) 柱書(はしらがき)

柱書とは『箇条書きで列挙した法律の条文のうち、本体部分をいいます

(『』部引用:『柱書』元榮太一郎(監修)『すぐに使える【最新】基本法律用語辞典』,三修社,2012年5月)

先ほどの憲法第7条の『天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ。』の部分が柱書に当たります。

(4) 本文・但書(ただしがき)

法律の条文の部分を示す名称として『本文』と『但書(ただしがき)』という名称があります。

刑法第43条を見てみましょう。

『本文』では原則的なルールを示し、『但書』では例外的な事例を述べるために用いられます。

刑法第43条

犯罪の実行に着手してこれを遂げなかった者は、その刑を減軽することができる。ただし、自己の意思により犯罪を中止したときは、その刑を減軽し、又は免除する。

この条文のうち、『犯罪の実行に着手してこれを遂げなかった者は、その刑を減軽することができる。』の部分が『本文』と言われます。

そして、『ただし、自己の意思により犯罪を中止したときは、その刑を減軽し、又は免除する。』の部分が『但書』と言われています。

(参照:『但書』,元榮太一郎(監修),『すぐに使える【最新】基本法律用語辞典』,三修社,2012年5月)

3 ややこしい!日常用語と意味が違う法律用語!

日常良く使う言葉も法律用語として使う時には意味が異なることがあります。

こうした法律用語を日常用語の感覚で使うと思わぬ落とし穴にハマることがあります。

以下では、初学者が混乱しがちな用語をまとめました。

(1) 善意・悪意

日常用語として、『善意』や『悪意』という言葉を使う際、親切心や邪(よこしま)な心の存在を前提としている場合が多いでしょう。

ところが、法律用語として『善意・悪意』という言葉を使う時は全く異なる使われ方をします。

すなわち、

善意とは知らないことをいい、悪意とは知っていることをいいます

(『』部引用:『善意・悪意』,尾崎哲夫,『コンパクト法律用語辞典』,第6版,自由国民社,2002年5月,461頁)

民法の基本書などで、Xさんという人物について『Xはこの契約の存在につき悪意だった』というような表現を見かけます。

日常用語の感覚だと、この『悪意』という表現について、『Xさんはこの契約の存在について何か良からぬことを考えていたのかな?』と考えてしまいがちです。

ところが、法律用語として理解すると、『Xはこの契約の存在につき悪意だった』という文章は『Xさんはこの契約の存在について知っていた』という意味になります。法律用語の『悪意』になるには、単に契約の存在を知っていれば十分です。

反対に『Xはこの契約の存在について善意だった』だったら、『Xさんはこの契約の存在について知らなかった』という意味になります。

日常用語の感覚と違って、法律用語として『善意・悪意』と使う場合、親切心や邪な考えとは無関係なので注意が必要です。

(2) 第三者

日常用語で『第三者』と使う場合、当事者以外の人や、ある事柄に無関係な人を指すことが多いですよね。

ところが、法律用語として『第三者』と使う場合、より厳格な定義を持って使われる場合があります。

例えば、民法177条の『第三者』とは、

当事者もしくはその包括承継人以外のものであって、不動産に関する物権の特喪および変更の登記の不存在を主張する正当な利益を有する者をいう』(『』部引用:『第三者』,尾崎哲夫,『コンパクト法律用語辞典』,第6版,自由国民社,2002年5月,508頁)とされています。

民法の条文には『第三者』という用語が沢山使われていますが、条文ごとに第三者の意味が異なります。

そのため、日常用語の感覚で『第三者』にあたりそうな人も、法律用語の『第三者』に当たらない場合もあるので注意が必要です。

4 間違えると恥ずかしい!紛らわしい法律用語5選

法律用語の中には同音異義語をはじめとして、似たような法律用語がたくさんあります。

論文式試験の本番で『あれ、どっちだけ?』とならないように漢字と意味を正確に覚えておきましょう。

(1) 『科料』と『過料』(どっちも読みは『かりょう』)

科料 刑罰の一種。

『科料』を科すには刑事訴訟法の手続きによる必要がある。

過料 刑罰ではない。

『過料』を科すには刑事訴訟法の手続きによる必要はない。

どちらも『かりょう』と読み、対象者に金銭的負担を科す科料』と『過料』。

刑法や行政法を勉強する受験生がどうしても混乱してしまいますが、両者は異なる概念です。

『科料』とは『一定額の金銭の納付を命ずる刑罰』です。

(『』部引用:『科料』,尾崎哲夫,『コンパクト法律用語辞典』,第6版,自由国民社,2002年5月,94頁)

一方で、『過料』とは『刑法上の刑罰でなく、行政上の義務違反に対して制裁として

金銭的負担を科するもの』です。

(『』部引用:大橋洋一『行政法Ⅰ 現代行政過程論』,第4版,有斐閣,2009年5月,313頁)

両者の違いとして、『科料』は刑法上の刑罰(刑法9条)ですが、『過料』は刑法上の刑罰ではありません。

そのため、『科料』を科すには刑法や刑事訴訟法の適用を受けますが、『過料』を科す際は、刑法や刑事訴訟法の適用は問題になりません。

また、科料は1,000円以上1万円未満と定められています。(刑法17条)

一方で過料には上限が100万円に及ぶものも存在します(会社法976条など)

(2) 『勾留』と『拘留』(どっちも読みは『こうりゅう』)

勾留 これから刑事裁判を受ける人が逃げたり、証拠を隠滅したりしないようにするための身体拘束。
拘留 刑事裁判を終えて、刑罰が確定した人が刑として受ける身体拘束。

どちらも『こうりゅう』と読み、どちらも刑事訴訟法上、対象者の身体の自由を奪う措置である『勾留』と『拘留』。

まず、『勾留』とは、『被疑者・被告人を拘束する裁判およびその執行のこと』です。

(『』部引用:『勾留』,尾崎哲夫,『コンパクト法律用語辞典』,第6版,自由国民社,2002年5月,250頁)

一方で『拘留』とは『受刑者を拘留場に拘置(こうち)する刑罰』です。

(『』部引用:『拘留』,尾崎哲夫,『コンパクト法律用語辞典』,第6版,自由国民社,2002年5月,250頁)

両者の違いとして、『勾留』は刑罰が確定していない『被疑者・被告人』を拘束するのに対して、『拘留』は刑が確定した『受刑者』が対象です。

わかりやすく説明すると、『勾留』はこれから刑事裁判受ける被疑者や被告人が逃走したり、証拠を隠滅したりすることで、適切な刑事裁判が開けなくなるのを防止するためになされる身体拘束です。そのため、『勾留』は刑罰ではありません。

一方で、『拘留』は刑罰として科されるものです。

『拘留』はニュースで良く耳にする『懲役』や『禁錮』の仲間といえばイメージがつくかもしれません。

これから刑事裁判をこれから受ける人が拘束されるのが『勾留』、

刑事裁判を終えた人が刑罰として拘束されるのが『拘留』と覚えましょう。

(3) 『脅迫』と『強迫』(どっちも読みは『きょうはく』)

脅迫 刑法上の犯罪である『脅迫罪』の実行行為。
強迫 民法上『強迫』に基づく意思表示は取り消すことができる。

刑法で出てくる『脅迫』と民法で出てくる『強迫』はどちらも『きょうはく』と読みます。

まず、『脅迫』とは『恐怖心を生じさせる害悪を告知する』ことを言います。

(『』部引用:『脅迫罪』,尾崎哲夫,『コンパクト法律用語辞典』,第6版,自由国民社,2002年5月,155頁)

相手方またはその親族の生命・身体・自由・名誉・財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した場合、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金が科されます。(刑法222条)

一方で、『強迫』とは、『他人に害悪を示して恐怖心を生じさせ、その人の自由な意思決定を妨げる違法な行為のこと』を言います。

(『』部引用:『強迫』,尾崎哲夫,『コンパクト法律用語辞典』,第6版,自由国民社,2002年5月,154頁から155頁)

民法上、強迫による意思表示は、取り消すことができます。(民法96条1項)

具体的にイメージをしてみましょう。

例えば大男であるXさんがYさんに対して、『この壺を買わなければ、お前とお前の家族を殺すぞ!』とYさんに言ったとしましょう。

Xさんのこの発言が『脅迫』に当たる場合、Xさんには『脅迫罪』が成立します。

また、このXさんの発言によって、Yさんはすっかり怖くなってしまって壺の売買契約を結んでしまいました。

Yさんが結んでしまった売買契約が『強迫による意思表示』に当たる場合、Yさんは、この売買契約を取り消すことができます。そのため、Yさんは壺の代金を払う必要がなくなるのです。

(4) 『被告』と『被告人』

被告 民事訴訟で原告に訴えられる相手方。
被告人 刑事訴訟で検察官に起訴される相手方。

民事訴訟法上出てくる『被告』と刑事訴訟法上出てくる『被告人』も似ているので使い方を混乱しがちですよね。

民事訴訟法上、『訴えを提起する者を「原告」、その相手方を「被告」』と言います。

(『』部引用:三木浩一・笠井正俊・垣内秀介,『民事訴訟法』,第3版,有斐閣,2013年3月,33頁)

一方、刑事訴訟法上、検察官によって『公訴の提起を受けた者(起訴された者)』を言います。

(『』部引用:『被疑者・被告人』,尾崎哲夫,『コンパクト法律用語辞典』,第6版,自由国民社,2002年5月,654頁)

民事訴訟は、私人の間での権利関係の紛争を解決する手続です。

例えば、「お金を貸した相手が期限になっても返してくれない」、

「交通事故によって後遺症を負わされたので加害者に治療費や慰謝料を請求したい」、

などと言った場合に、原告は相手を『被告』として訴えることになります。

刑事訴訟では、ある人が犯罪に当たる行為をしたかどうか、その行為が犯罪として成立するのか、犯罪が成立した場合にどのような刑罰が相当かを決定する手続です。

例えば、XさんがYさんを殺害した疑いがある場合、検察官がXさんの行為が殺人罪に当たるとして、Xさんを『被告人』として起訴することになります。

(5) 『みなす』と『推定する』

『XをYとみなす』 →X=Yとして扱う。
『Xがあれば、Yがあると推定する』 →Xがあれば、一応Yがあるものとして扱う。もし、Yが存在しないと証明されたら、Yは存在しないとして扱う。

条文の末尾によく使われる『みなす』と『推定する』も使い方を間違えやすいので要注意です。

『みなす』とは、『実際は違うが、法律上においては同じであることにする場合に用いる表現です

一方、『推定する』とは、『ひとまずそのように取り扱うものの、証拠を示すことにより覆すことができる場合に』用いられる表現です。

(『』部引用:『看做す/推定』,元榮太一郎(監修),『すぐに使える【最新】基本法律用語辞典』,三修社,2012年5月)

例えば、『XはYとみなす』という法律の条文があったとしましょう。

この場合、実際にはXとYは別物ですが、法律上XとYは同じものとして扱われます。

一方で、『Xという事実があれば、Yという事実があると推定する』という条文があったとしましょう。

この場合、Xという事実が存在すると証明すれば、ひとまずYという事実が存在するとして扱われます。しかし、もし、『Yという事実が存在しない』と証明されれば、Yという事実はないものとして扱われます。

5 (おまけ)思わず使いたくなる!? かっこいい法律用語!

さて、ここまで紛らわしい法律用語の解説が続いて『法律の勉強ってなんて大変なんだ!』と思った方もいるでしょう。

確かに、法律の勉強は大変です。

しかし、法律の勉強をすることでかっこいい法律用語を使いこなせるようになります。

これは法律を学んだ人間の特権ですね。

以下では3つの用語を解説します。

(1) 八月革命説

まずは、憲法から、『八月革命説』という名前の学説をご紹介しましょう。

名前がなんだか格好良いですね。

高校の世界史の授業にヨーロッパで二月革命や七月革命が起こったと習ったことがあるかもしれません。

この学説では、日本において法律上『八月革命』があったとする学説です。

現在の(以下引用)日本国憲法は、形式的には、欽定(きんてい)憲法である明治憲法(大日本帝国憲法)を改正したものとして公布されました。』(引用終わり)

欽定憲法とは君主が制定し国民に与えた憲法のことで、憲法の種類の一つです。

一方で、日本国憲法は前文において主権は国民に存在し、国民によって制定された『民定憲法』と呼ばれる種類の憲法であることを示しています。

ということは、明治憲法と日本国憲法とは本来全く違う種類の憲法であるため、明治憲法を改正することで日本国憲法が公布されることは本来ありえないはずです。

ところが、このありえない事態が現実には発生しています。

(以下引用)『そこで、この矛盾をどう法理論的に説明するかについて、現在学説上有力なのが八月革命説です。

この説は、国民主権体制をとることを要求したポツダム宣言を受諾した時点(1945年8月14日)で、法的に一種の革命があったとみる点に特徴があります。日本国憲法は、実質的にはこの法的な革命の結果制定された新憲法であり、ただ、実際上の便宜のために明治憲法の改正という形式と採用したに過ぎないのであるとします。』(引用終わり)

(『』部引用:『八月革命説』,尾崎哲夫,『コンパクト法律用語辞典』,第6版,自由国民社,2002年5月,642頁)

初めてこの説に触れると『何をいっているのだろう?』と疑問に思ってしまうかもしれませんね。

このように、法律の世界では『形式的には〇〇だけど、実質的には××である』という考え方を頻繁に使います。

(2) 未必の故意

次に、刑法から、『未必の故意』をご紹介しましょう。

刑事ドラマや推理小説が好きな方は聞いたことがあるかもしれません。

未必の故意とは『行為者が犯罪の実現を明確に意図したわけではないが、実現することになるかもしれないことをわかっており、かつ実現してもかまわないと思うことを言います。

(『』部引用:『未必の故意』,尾崎哲夫,『コンパクト法律用語辞典』,第6版,自由国民社,2002年5月,761頁)

刑法上の犯罪が認められる場合には、故意が認められる必要がありますが、行為者が未必の故意しかない場合でも犯罪が成立することになります。

例えば、自動車の運転者が通行人に接触するかもしれないと認識しながら、『まあ、人に接触しても良いか』と認容して、そのままのスピードで方向を変えることなく進行した結果、通行人を負傷させた場合などに未必の故意があると言えます。

(3) 弁論主義第一テーゼ

さて、今まで法律用語を見てきましたが、『法律用語って漢字ばかりだな〜』と感じたかもしれません。

ところが、司法試験のために必要な法律用語に横文字の用語もあるのです。

最後に、民事訴訟法から『弁論主義第一テーゼ』という用語をご紹介しましょう。

まず、弁論主義とは
訴訟の審理のための資料の提出を当事者の権限とする原則』のことです。

(『』部引用:『弁論主義』,尾崎哲夫,『コンパクト法律用語辞典』,第6版,自由国民社,2002年5月,715頁)

民事訴訟は原告と被告の間の権利関係をめぐる紛争を解決するための手続であるため、訴訟の審理に当たっても、当事者の意思を尊重する必要があります。

そこで、裁判の起訴となる証拠資料の提出を裁判所が勝手に調達してくるのではなく、原則として当事者である原告と被告に任せるというルールが弁論主義です。

この弁論主義のおかげで、原告と被告は自分たちの提出した証拠のみによって裁判所に審理をしてもらうことができるので、裁判所による想定外の判決が出されることを防ぐことができます。

そして、弁論主義には『第一テーゼ』から『第三テーゼ』までの3つの具体的なルールがあります。

第一テーゼ:『裁判所は主要事実(争われている法律効果の判断に直接必要な事実)については、当事者が主張した事実に限って判決の基礎とすることができます。つまり当事者が主張していない事実を裁判の基礎にしてはいけません。

第二テーゼ:『裁判所は、当事者間に争いのない事実は、そのまま判決の基礎としなければなりません。

第三テーゼ:『裁判所は当事者間に争いのある事実は、原則として当事者の申し出た証拠にもとづいて認定しなければなりません。

(『』部引用:弁論主義』,尾崎哲夫,『コンパクト法律用語辞典』,第6版,自由国民社,2002年5月,715頁)

弁論主義は司法試験の民事訴訟法の問題でも頻繁に取り扱われるテーマの一つです。

司法試験を受験する方は『弁論主義』を正しく使いこなせるように学習する必要がありますね。 

6 サマリー

いかがだったでしょうか?

司法試験に合格するには法律用語を正しく理解し、使いこなせるようになる必要があります。

法律用語には、日常用語と使い方が異なるものや、紛らわしいもの、意味が非常に難解なものまで様々なものがあります。

一つ一つの言葉の意味や用法を大切にしながら学習を進めて行きましょう!

 7 まとめ

  • 法律の条文を使いこなすには条文の用語の定義や、趣旨を理解する必要がある。
  • 「善意・悪意」、「第三者」など法律用語になると日常用語と意味が異なる場合もあるので注意。
  • 「勾留」と「拘留」、「被告」と「被告人」など、似ているけれど意味が異なる法律用語には注意しよう!
  • 司法試験の対策で出会う法律用語の中には格好良い用語もある。楽しんで覚えよう。
  • 法律用語の意味と用法を押さえて適切に使いこなせるようになろう。

 

 

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