法曹コースとは?法曹コースから法曹を目指すために必要なことを徹底解説!

法科大学院(ロースクール)

 

「法曹コース」と聞いて、まだ聞きなれない方も多いと思いますが、法曹コースは、新しく設置された法曹を目指すためのコースになります。このコースができたことにより、法科大学院に進学し、司法試験を受験するまでの期間が従来よりも早くなりました。

この記事では、法曹コースについて、メリットやデメリット、法曹コースが設置されている大学など、必要な情報を一気にお伝えするので、是非参考にしてみてくださいね。

1 法曹コースとは?

「法曹コース」は、2020年4月に施行された、司法試験の受験資格が緩和された新しいコースになります。

このコースについて、文部科学省のホームページでは、以下のように説明されています。

「法曹コースとは、法学部等(※)を設置する大学が、法科大学院と連携して法科大学院の既修者コースの教育課程と一貫的に接続する体系的な教育課程を編成し、法曹志望者や法律の学修に関心を有する学生に対して、学部段階からより効果的な教育を行うものです。

 ※法曹コースは、授与する学位が付記する分野が法学に関するものである学部において開設が可能です。

 法曹コースの授業は法科大学院未修者コース1年目の内容を代替するものであり、法曹コースを修了し、早期卒業をした者は、法科大学院未修者コースの2年目(既修者コース1年目)に進学し、法曹を目指すことが想定されています。」

出典:文部科学省ホームページ

次の項目でより詳細に解説します。

(1) 法曹コースについて

出典:文部科学省ホームページ

この図を見ると分かりますが、これまでは、大学に入学してから、法曹資格を取得できるまで、最短でも約8年かかりました。

法曹になるまでの道のりとしては、

①大学に進学

②法科大学院に進学

③司法試験に合格

④司法修習を受ける

⑤二回試験に合格する

この5つのステップを経ないといけません。

後の紹介しますが、このステップは法科大学院を修了することで司法試験の受験資格が得られるルートになります。

法曹コースは、大学入学してから法科大学院卒業までに新たに設置されたコースになります。

司法試験の受験資格を得るルートとして、他にも予備試験に合格するというルートもあります(後に紹介)。

従来は、大学を4年で卒業した後、法科大学院の既修コース(2年)を経た後、司法試験を1回目受験で合格できた場合、その後は司法修習を1年間受け、二回試験に合格しなければならないため、最短ルートでも約8年かかります。

これに対し、法曹コースを選択すると大学早期卒業が可能となります。

さらに令和5年から法科大学院在学中に司法試験を受験することができるようになるため、法曹資格を最短で約6年で取得できるようになります。

法曹コースでは、大学を3年生で早期卒業し、更に法学既修者コース(2年間)、在学中の司法試験合格、司法修習(1年間)で約6年で法曹資格を得ることが可能となります。

(2) 法曹コースから法曹になるまでのルート

法曹コースから法曹になるまでのルートは、

①大学を早期卒業(3年)

②法科大学院の既修コース(2年)

③法科大学院在学中に司法試験受験が可能(令和5年以降)

④司法試験に合格

⑤司法修習(1年)

⑥二回試験に合格

⑦法曹資格を取得

となります。

最短で大学に入学してから、約6年で法曹になることが可能となります。

2 法曹コースのメリット

(1) 経済的・時間的負担が軽減

法曹コースのメリットとしては、なんといっても法曹になるまでの期間が短縮されることで、学費などの経済的負担が軽減されること、また時間的負担が軽減されることです。

1日でも早く法曹になることができれば、その分長く働くことができるので、収入も安定しやすくなります。

法科大学院を修了して司法試験を目指す多くの受験生は、多額の授業料がかかり、また奨学金を借りながら勉強をしなければならないため、家族による経済的支援がないと厳しいといえます。

その中で、法曹コースが設置されることで、約2年も早く法曹になることができるので、かなり負担が軽減されるといえます。

(2) 法曹コース→法科大学院は進学しやすい

法曹コースでは厳格な評価基準で評価されます。

きちんと良い評価を得ていれば、指定校推薦のようなかたちで特別選抜枠といわれる、法曹コースから法科大学院に進学する場合の選抜枠として、「5年一貫型」に進学することができます。成績をしっかり取っていれば確実に法科大学院に進学できることは大きなメリットとなります。

(3) 法科大学院を卒業しなくても司法試験を受験できる

何度も繰り返しますが、法曹コースは令和5年から適用されます。

法曹コース生だけに適用されるわけではありませんが、一定の水準の成績を修めた者は法科大学院在学時の最終学年において司法試験を受験することができます。

従来は卒業と共に司法試験受験のチケットをもらえていたことから考えると、非常に期間を短縮できることになります。

3 法曹コースのデメリットは?

(1) 予備試験ルートの方が早期に法曹目指せる可能性がある

冒頭で少しご紹介しましたが、司法試験の受験資格を得る他のルートとして、予備試験に合格するという選択肢もあります。

法曹コースは計6年間の期間で法曹入りが果たせるという制度ですが、一方で予備試験受験者には、1、2年の受験勉強で合格する方もいます。

2年合格と考えても、予備試験2年+司法試験1年+司法修習1年と計4年間で法曹になることができます。

予備試験ルートは、法曹コースに比べてより早く法曹になることができます。

さらにいえば、「方向性×勉強時間」が適正で、かつ、やるべきことをやり切れば誰でも2年間で予備試験に合格することは可能です。

法曹コース→法科大学院で実務家育成の講義を受け計6年の期間を費やすのと、予備試験を2年間で突破し、2年早く実務家デビューするのでは、どちらが実務家としてのレベルが高いかはお分かりになりますよね。

法科大学院に比べて学費もかからず、自分のペースで勉強を進めることができるという点も、予備試験ルートのメリットといえます。

こういった側面から、法曹コース設置が予備試験制度のメリットを凌駕しない限り、制度は失敗に終わってしまうと懸念されています。

これまで法曹コースについて詳しく解説してきました。続いて、各大学の動きを紹介していきます。

4 「法曹コース」を設置している大学は?

文部科学大臣認定を受けた法曹養成連携協定一覧は、以下のとおりです。

令和2年1月認定

番号 申請大学

(連携法科大学院)

協定先大学

(連携法曹基礎課程)

協定の有効期間
1 北海道大学大学院法学研究科法律実務専攻 北海道大学法学部法専門職コース法曹養成プログラム 令和2年4月1日から5年間

(期間満了後は5年ごとに自動更新)

2 北海道大学大学院法学研究科法律実務専攻 北海学園大学法学部法曹養成プログラム 令和2年4月1日から5年間

(期間満了後は5年ごとに自動更新)

3 京都大学大学院法学研究科法曹養成専攻 京都大学法曹基礎プログラム 令和2年4月1日から5年間

(期間満了後は5年ごとに自動更新)

4 大阪市立大学大学院法学研究科法曹養成専攻 大阪市立大学法学部法学科法曹養成プログラム 令和2年4月1日から5年間

(期間満了後は5年ごとに自動更新)

5 上智大学大学院法学研究科法曹養成専攻 上智大学法学部法曹コース 令和2年4月1日から3年間

(期間満了後は5年ごとに自動更新)

6 関西大学大学院法務研究科法曹養成専攻 関西大学法曹コース 令和2年4月1日から5年間

(期間満了後は5年ごとに自動更新)

出典:文部科学省ホームページ

令和2年2月以降の認定を受けた一覧については、文部科学省のホームページをご参照ください。

5 法曹コースと予備試験ルートの比較

法曹コースは、法科大学院在学中に司法試験の受験資格が得られるルート(法科大学院ルート)ですが、法科大学院には進学せずに予備試験に合格することで司法試験の受験資格が得られるルート(予備試験ルート)もあります。

法科大学院ルートについては、上記でメリット、デメリットを紹介したので、ここでは予備試験ルートと比較してみます。

予備試験ルートの最大のメリットは、法科大学院ルートよりも早く法曹を目指せるということではないでしょうか。

予備試験の勉強を開始して1年で合格された方もいます。

もちろん、予備試験は、合格率が約4%と、難易度の高い試験ですが、司法試験と科目が共通しているため、予備試験の勉強はそのまま司法試験にも活きます。

また、予備試験には受験資格がないので、誰でも受験できます。

社会人の方の多くは予備試験ルートを選択しており、仕事をしながら自分のペースで勉強ができるという点も大きいといえます。

もっとも、法科大学院ルートでは、共に勉強ができる受験仲間ができ、先輩の合格者から直接指導が受けられる機会が多いのに対して、予備試験ルートでは、受験仲間を作りづらい環境の中、一人で勉強を続ける必要があるので、モチベーションの維持が難しいなどのデメリットもあります。

それぞれのメリット、デメリットを比較した上で、自分に合ったルートを選択するというのが良いかもしれません。

6 サマリー

法曹コースについて紹介してきましたが、これから法曹を目指したい方で、法科大学院への進学を考えている方は、是非法曹コースから目指すのをおすすめします。これまでよりも早く法曹になることができるので、是非検討してみてくださいね。

7 まとめ

  • 法曹コースは、通常、最短で8年くらいかかる法曹養成制度を6年まで短縮する制度
  • 法曹コースのメリットは、経済的・時間的負担が軽減できること、法曹コースから法科大学院に進学しやすくなること、法科大学院を卒業しなくても、在学中に司法試験を受験することができる
  • 法曹コースのデメリットは、司法試験の予備校依存が進んでしまう危険性があること、予備試験ルートの方が結局は最短で法曹が目指せるという点
  • 法曹コースにより司法試験を目指すルートと、予備試験に合格して司法試験を目指すルートのいずれもメリット・デメリットがあるため、自分に合ったルートを選択しよう
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