法科大学院夜間コースの実態

法科大学院(ロースクール)

法科大学院は、修了すれば司法試験受験資格を得ることができます。
実際に法科大学院はどのようなところなのか、見ていきましょう。

1. 法科大学院の既修者コースと未修者コース

法科大学院には、既修者コース未修者コースの2つがあります。

既修者コースは、実務法律科目を2年間学習し、2年間で修了することが出来ます。
未修者コースははじめの1年間で基礎法律科目を学び、その後2年間実務法律科目を学びます。
そのため、未修者コースは修了までに合計3年間かかります。

既修コース:2年で修了 未修コース:3年で修了

既修者コースの入試では法律科目の試験があります。
一方、未修者コースの入試には法律科目の試験がありません。
どちらのコースも、受験資格は大学を卒業していることです。(例外あり)
法学部出身でなくても、既修者コースに出願できます。 その反対に、法学部出身であっても未修者コースに出願が可能です。
法律の基礎的知識を兼ね備えているか、がコースの分かれ目なのです。

2. 法科大学院の夜間コース

法科大学院に通う多くの学生は、大学卒業後すぐに入学している場合が多いです。
しかし、中には社会人になってから法曹を目指し、法科大学院に通っている学生もいます。
そういった社会人のために、夜間コースが併設されている法科大学院があります。

2018年度に学生の募集を行う大学で夜間コースがあるのは、日本大学甲南大学駒澤大学筑波大学の4つとなっています。
なお、筑波大学は夜間コースのみが設置されています。
社会人の方が働きながら法科大学院に通う場合、この夜間コースが有力な手段となるでしょう。

一般的な昼間のコースは、大学によって違うものの、だいたい9時頃からはじまります。
一方、夜間コースは18時以降に開始され、社会人を配慮した時間割になっています。
また、夜間コースは土曜日に終日授業が行われています。

3. 法科大学院生の1日

では、実際に法科大学院生がどのような1日を送っているのか、見てみましょう。

(1)早稲田大学法科大学院生の場合

早稲田大学の法科大学院に通う学生に、1日の過ごし方、司法試験対策などをインタビューしました。

①1日の過ごし方

講義は、各期10〜12科目ほど履修していました。
講義の時間帯は、1年次(未修1年目)と3年次の必修科目が午前中に、2年次(既修1年目)の必修科目が午後に割り当てられています。
そのため、1年次・3年次は、午前9時(1限)から授業が始まることが多く、朝に弱い人にとっては少しきついものがあります。

講義の空き時間は、自習室で過ごす人が大半です。
早稲田の法科大学院の自習室の中には24時間開放されているところもあり、夜中まで自習室で勉強することができます。
逆に、朝活という形で1限の始まる数時間前から自習室に行って勉強することもできます。
朝早くから夜遅くまで自習室にいる人が多く、かなり刺激になりました。
私自身も、1日平均10時間ほど勉強していました。

しかし、さすがに自習室にずっといると気が滅入ってきますので、勉強の負担とならない範囲でバイトをしたり、大学のジムに登録して(年間登録費数千円程度)通う人も多かったです。
司法試験は体力勝負という部分もあってか、大学のジムでは特に3年生が向かう姿を見かけました。

基本的に日々の予習・復習に追われることとなりますが、空き時間で気分転換をうまくすることで充実した生活をおくることができます

 

07:30~09:00 登校・自習室
1限前に肢別本をやっていました。時間に行けなかった場合は、友達にコーヒーを奢っていました。
09:00~12:10 1・2限の講義
予習をしてから授業に臨みます。集中して話を聞いていました。
12:10~13:30 昼食・休憩
この時間に午前中の講義の話で友達と盛り上がることも多いです。
13:30~16:30 自習室にて授業の復習、明日の予習
復習はまとめノートを作成していました。予習は時間を区切って切り上げるようにしていました。
16:30~18:00 ジム
大学のジムでランニングや筋トレをすることが日課でした。
18:00~19:00 夕食
友達と法律の話をしながら食事をすることも多かったです。
19:00~21:00 自主ゼミ
友人と司法試験の過去問の検討をしていました。
21:00~23:00 自習室
当日設定したタスクを終えるまで自習室にいました。
23:00~01:00 帰宅
風呂に入り、洗濯など最低限の家事をしてから就寝。

②司法試験対策

早稲田大学法科大学院の講義は、他の法科大学院同様、必ずしも司法試験に直結するものではないものが多いです。
実務系の講義が多く開講されていることからもこれがうかがえます。

そのため、自分で司法試験対策を独自に行う必要があります。
自主ゼミで司法試験の過去問を解いたり、自分で起案する時間を確保しておかなければなりません。

とはいえ、普段の講義のレベルが高いこともあり、自主ゼミや起案をしている際に、「あ、これ講義で聞いた内容だ。
あの時はよくわからなかったけどこういうことだったのか。」という気づきが得られます。
したがって、講義をおろそかにしてよいというわけでは当然ありません。
日々の講義を中心に、自分で司法試験対策を独自に行う時間を確保しておけばよいと思います。

(2)法科大学院の夜間コース生の場合

次に、社会人で働きながら、法科大学院夜間コースで司法試験に向けて勉強している方の一般的な1日について紹介します。

①1日の過ごし方

社会人でフルタイム勤務のため、9時から17時までは仕事になります。
残業ができないため、朝8時ごろから会社に行く方も多いそうです。

その後、18時ごろから大学院の夜間コースで授業を受けることになります。
21〜22時まで2コマの授業を受け、その後自習室でその日の復習・次の日の予習をすることになります。
課題などが出た場合は、他の社会人学生と共に熱い議論を交わします。
夜遅くまで議論することも多いですが、同じ境遇で頑張っている仲間は貴重な存在で、多くの刺激を得られます

土曜日は朝から夕方まで授業を受け、夜は自習室で勉強、という勉強尽くしの1日です。
日曜日は授業も仕事も休みですが、授業の予習・復習はもちろん、1週間の終わっていない仕事を片付ける必要もあり、休みとはほど遠いものになることが多いようです。

 

06:00~07:00 出勤前に予習
勉強時間確保のため、早く起きて出勤前に1時間程度勉強します。
08:00~17:00 仕事
もちろんですが、仕事中は勉強できません。残業ができないため集中して取り組みます。
17:00~18:00 移動・夕食
職場から大学院に移動し、その間に夕食も済ませます。
18:00~21:30 授業(2コマ)
夜間コースの授業はこれくらいの時間に行われます。2コマ受講します。
21:30~23:30 自習室
授業後は自習室にこもります。課題や復習をします。他の社会人受験生と熱い議論をすることも。
23:30~00:30 帰宅
だいたい毎日これくらいの時間に帰ります。終電で帰ることもしばしば。
00:30~01:30 就寝
家に着いたらお風呂に入るなど、最低限のことをしてすぐに寝る、という感じです。

②司法試験対策

学期中は仕事と授業、その予習復習に追われ、司法試験対策をする時間はほとんどありません
勉強時間自体、とれて1日に3〜4時間で、他の受験生より圧倒的に少ない学習時間です。
そのため、学期外の時間(夏休みや春休み)に集中的に勉強しなければなりません。

また、夜間コースには長期履修制度があり、通常2年(未修コースは3年)のところを3年(4年)に伸ばして修了することも可能ですが、早期合格は難しい、と言えます。
夜間コースと言えど、社会人として働きながら法科大学院に通うことはかなり大変で、相当の時間と覚悟が必要です。

(3)法科大学院の一般コースと夜間コースの生活の比較

先ほどのお二人の生活を比較すると以下のようになります。
勉強時間の差が一目瞭然ですね。

 

法科大学院生の1日 夜間コース生の1日

4. 予備試験の可能性

社会人として法科大学院夜間コースに通いながら司法試験合格を目指すことはかなり難しい、と述べました。
そのため、働きながら司法試験合格を目指す方には、予備試験ルートをおすすめします。

法科大学院に通う最大のメリットは、修了さえすれば司法試験受験資格を得られることだと思います。
しかし、受験資格を得ても司法試験に合格できなければ意味がありません。
働きながら法科大学院に通うことは、時間の制約が大きく、少なからず司法試験に直結しない勉強もしなければなりません。

一方、予備試験は自分の時間の使い方に合わせて、予備試験合格・司法試験合格に直結する勉強のみをすることができます
そのため、夜間コースに比べて早期合格を目指しやすい、ということができます。

社会人になって法曹を目指される方は一度、法科大学院夜間コースと予備試験の2つを検討されると良いのではないでしょうか。

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