新型コロナウィルス感染拡大のなか、経産省などが次々と設立した補助金申請で活躍を見せた行政書士。行政に提出する書類作成のプロとして知られる、人気の国家資格です。資格がまだなくても、パートとして事務所に入職すれば、実務経験を積むことができます。でも行政書士の場合、パート採用に「補助者」「一般事務」といった明確な区別があるといいます。
この記事では、行政書士事務所でパートがしたいあなたのために、行政書士事務所のパートについて詳しく解説していきます!
1 行政書士としてパートで働く
行政書士には、一般企業に勤めながら働く「副業行政書士」や「週末行政書士」という働き方もあります。その他には、行政書士法人などで働く「使用人行政書士」、そして本記事で扱う「パート」に当たる「補助者」と「一般事務」があります。
(1) パートを始め、行政書士の求人は少ない?
そもそも、行政書士の求人は数が少ないことで有名です。加えて、行政書士資格は持っていないけど、勉強も兼ねて行政書士事務所で働きたいという人もかなりいるでしょう。
実務研修センターのホームページには、数は少ないですが、行政書士事務所の求人情報が掲載されています。このような求人サイトを探してみたり、ハローワークに行ったりするのも有効です。Tipsとして後述しますが、通える範囲の現役行政書士のブログやホームページをブックマークしておいて、求人情報がアップされていないかチェックするのもおすすめです。
(2) 使用人行政書士、補助者、一般事務
先述した通り、パートとして行政書士事務所で働く場合「補助者」か「一般事務」に区別されます(もしかしたら「使用人行政書士」も、パート雇用のケースがあるかもしれません)。三者の雇用形態が等しくパートだとしても、行政書士会への登録の必要性の有無において、異なってきます。
立場 | 登録方法と登録の必要性 | 任される業務内容 |
使用人行政書士 | 行政書士又は行政書士法人の事務所に勤務する行政書士。(行政書士法人の社員ではない) 登録時に勤務先の行政書士又は行政書士法人を記載する。 |
行政書士業務をおこなう。 |
補助者 | 補助者として、行政書士が所属する都道府県の行政書士会に登録が必要。 補助者証を携帯しないと補助者としての仕事はできない。 行政書士は補助者登録はできない。 |
行政書士資格がなくても、行政書士の指示の下で近い仕事ができる。 |
一般事務 | 登録は一切必要なし。 | 雑務などを中心に事務所の業務をおこなう。 |
なお、行政書士資格保有者は補助者にはなれない点に注意しましょう。
(3) 事務所の業務内容を調べる
行政書士といえば「書類のプロ」といわれ、作成することのできる書類は10,000種以上といわれています。これだけ業務範囲が広いのですから、どの事務所も専門分野を立てて経営しています。以下には、行政書士事務所が請け負う業務の代表的なものを挙げました。せっかく行政書士事務所でパートするなら、業務内容が自分の専門にしたい分野や興味と合致する事務所を選びましょう。
各種許可申請業務 | 建設業、古物商、宅建業、産廃、旅客運送業、酒免他 |
役所での調査業務 | 打合せ・書類作成等 |
相続 | 遺産分割協議書の作成、戸籍の収集、遺言書作成など |
建設業 | 経営事項審査・入札参加 |
在留資格 | ビザ申請など |
車両登録手続き | 新規登録申請、移転登録申請、移転登録申請、変更登録申請、抹消登録申請など |
出典:日本行政書士会連合会
2 パートでも行政書士会への登録が必要
先述しましたが、使用人行政書士や補助者で働く場合は、パートでも都道府県の行政書士会への登録が必要になります。
(1) 使用人行政書士
使用人行政書士は、行政書士登録をおこなう必要があり、登録申請書には「事務所の名称」「事務所の所在地」を明記しなくてはいけません。登録後に、事務所所在地のビル名等が変更される場合にも、有償の変更登録申請が必要となります。
行政書士及び行政書士法人の使用人となる場合は、雇用主の行政書士又は行政書士法人の登録内容について、日行連ホームページで確認してから、相違なく記入するようにしましょう。
(2) 補助者
行政書士の補助者とは、行政書士資格がなくても行政書士に近い仕事が任せてもらえる仕事です。補助者の求人は、行政書士としての求人より多いくらいです。パートだけでなく、正社員として採用される補助もいます。
繰り返しますが、補助者は行政書士法に則り、雇い主が所属する行政書士会へ補助者登録しなければなりません。また、登録後発行される補助者証を携帯していないと、補助者として働くことはできません。このとき補助者バッジも渡されるので、身に付けます。補助者は単なる一般事務と異なり、申請書類の作成、官公署への提出、クライアント対応等の業務を、行政書士の責任において補助できます。
なお、行政書士は補助者となれません。行政書士試験に晴れて合格し行政書士名簿に登録すると同時に、補助者を退職することになります。
(3) 一般事務
一般事務は、主に事務所の雑務を担当します。補助者に関しては、雇い主の行政書士は連合会が定めた「行政書士会補助者規則」に則って働かせますが、一般事務にはこのような法の縛りはありません。補助者と一般事務は、明確な区別の下に雇われることとなっています。
3 行政書士事務所のパートを探すコツとは?
最後に、行政書士事務所のパートの求人を探すコツと、パートとして働く心得についてお伝えします。
(1) まずどんな働き方をしたいのか決める
他の士業もそうですが、行政書士事務所は少数精鋭で経営しています。事務仕事だけを担当つもりだったのに、いきなり専門的な仕事をバンバン振られたら、驚いて辞めたくなってしまいますよね?
特に行政書士事務所でパートをする場合は、補助者と一般事務で、処遇が大きく変わってきます。もしあなたが電話受け、お茶出し、お使いだけを担当するパート勤務がしたいなら、補助者採用は避けましょう。補助者採用されると、実務量がかなり多くなるからです。
(2) 行政書士ブログやホームページもチェックしよう
少数精鋭で経営する行政書士事務所には、求人募集にあまりお金をかけないという特徴があります。また、縁故採用が多いのも特徴の一つです。先述しましたが、行政書士事務所でパートがしたいなら、他業界のように求人サイトやハローワークのみに頼るようではまだまだです。
是非日頃から、通える範囲にある行政書士事務所を調べて、ブログやホームページをブックマークしておいてください。そして、新着ニュースに求人情報が出たら、直ぐに応募するようにしましょう。
また、行政書士事務所の中には「募集はしていないけど、良い人材がいれば積極的に採用したい」と考えているところが潜在しているものです。働きたい事務所があったので、電話やメールで積極的に問い合わせてみたら採用された、という話は実際にあります。是非トライしてみてください。
(3) いざ就職したら忙殺されると思って
最後に、少数精鋭の行政書士事務所に入職したら、「仕事は盗んで覚える」くらいの気概が必要であることを付け加えておきます。たとえパート採用でも、使用人行政書士や補助者として採用されたら、間違いなく戦力として当てにされるでしょう。その場合、仕事はぶっつけ本番で覚えていくことになるようです。
行政書士事務所の多くは、大企業のフレッシュマン研修のように、教育にたっぷり時間と労力をかけることはできないでしょう。申請書の作り方、役所への問い合わせ方、過去の書類の控えの調べ方などを、積極的に自分で勉強する姿勢がある人が重宝されるはずです。 今後独立を考えている人にとっては、行政書士事務所で働くことは良い訓練になるはずです。
採用されてから「こんなはずではなかった」と悩まないように、自分に務まる事務所なのかどうかを、就活段階で良く確認するようにしましょう。
4 サマリー
行政書士事務所でパートする場合、補助者と一般事務のどちらを選ぶかで、働き方がだいぶ変わってきます。潜在的な求人はある業界なので、自分自身をしっかりと見極めることができれば、希望にかなうパート先が見つかるでしょう。
5 まとめ
- 行政書士事務所のパートには「補助者」「一般事務」の他、場合によっては「使用人行政書士」も含む。
- 使用人行政書士とは行政書士法人社員ではない、行政書士事務所勤務の行政書士のこと。
- 補助者とは行政書士会に補助者登録して行政書士の下で働く者のこと。
- 行政書士は補助者登録はできず、行政書士登録すると補助者を退職したことになる。
- 「行政書士会補助者規則」が存在し、補助者と一般事務は明確に区別され雇われる。
- 日頃から行政書士事務所のブログやホームページを見て、求人情報が出たら応募する。
- また、潜在的な求人はあるので、積極的にメールや電話でアプローチするとよい。