コンサルタントといえばどんなイメージを持っていますか?「プロフェッショナル」「やりがいがありそう」など、付加価値の高いサービスを提供するイメージですよね。今、そんなコンサルタント業務を専門にしたい行政書士が増えています。行政書士といえば「書類のプロ」ですが、どのようなコンサルティングをおこなうのでしょうか?この記事では、行政書士コンサルタントについて詳しくご紹介します!
1 そもそも行政書士の仕事とは?
行政書士は、官公署に提出する書類の作成・提出を業務とする国家資格です。取り扱うことのできる書類は10,000種類を超えるといわれ、実に広範囲な業務内容を請け負っています。逆にいえば、行政書士の仕事を一言でいうこと自体が困難であり、東京都行政書士会は行政書士の定義についてこのように表現しています。
”「行政書士」の説明を難しくしている原因は、一つには「取り扱う業務の数のあまりの多さと範囲の広さ」、もう一つは、前の言い換えになりますが、「これ、という特定のイメージにつながる、一言で表せるような業務的・場所的な特徴がないこと」です。”
出典:東京都行政書士会
⑴ 独占業務は3つ
広い業務範囲を持つ行政書士ですが、行政書士法で定められた独占業務は、以下の3つです。
①「官公署に提出する書類」の作成とその代理、相談業務
(建設業許可・会社設立・帰化申請・風俗営業許可等)
➁「権利義務に関する書類」の作成とその代理、相談業務
(内容証明郵便・財務諸表・会計帳簿・風俗営業許可申請時に添付する店の配置図等)
③「事実証明に関する書類」の作成とその代理、相談業務
(遺言書・遺産分割協議書・示談書、会社定款等の作成)
行政書士はそもそも「代書屋」と呼ばれる、書類を代わりに書く仕事をルーツとしています。書類を書いたり、提出したりすることが面倒くさい、代わりにやって欲しいといった人々を顧客としながら、書類書き以外にも業務を着々と増やしてきました。
例えば、外国人の出入国関係申請取次業務は、行政書士と弁護士の共管業務ですが、行政書士が参入したのは20年ほど前のことです。行政書士はこのようにして、各所の信頼を勝ち取りながら、取り扱い業務の範囲を広げてきました。
⑵ 法定業務は主に3つ
行政書士はその法律知識を活用して、業務の関する相談を受けアドバイスをすることができます。下表は行政書士の法廷業務をまとめたものですが、この中にコンサルタント業務が含まれています。
① | 書類作成業務 | 書類作成の代理人として、契約書等を作成する。予防法務的視野に立ち、法的問題点が起こらないように作成。
・官公署に提出する書類 ・権利義務に関する書類 ・事実証明に関する書類 |
➁ | 許認可申請 | 作成書類を官公署へ提出する。依頼主に提出を代理し国民と官公署のパイプ役を務めるため、折衝能力が求められる業務。 |
③ | 相談業務 | 書類作成について相談に応じる業務。個人レベルの相談(相続など)から企業へのコンサルタント業務まで幅広くおこなう。 |
2 行政書士のコンサルタント業務
行政書士は、持ち合わせた法律の知識を活用して、独占業務以外にも法律に関するアドバイスをおこないコンサルティング業務も請け負います。
⑴ 「相談業務」のみでも請け負うことが可能に
以前は、行政書士が相談を業務として受けることは、独占業務である書類作成に付随していなければできませんでした。しかし現在は、相談を単体で請け負い報酬を受け取ることが可能となっています。現在は、コンサルタント業務を専門とする行政書士も増えており、法的知識を活かして顧客が抱える問題にアドバイスしたり、帳簿代行業務を通じて財務的なアドバイスをしたりしています。
⑵ 行政書士の具体的なコンサル業務
それでは、行政書士がおこなうコンサルタント業務の内容を具体的に挙げていきましょう。
① 認可申請手続きから派生した業務
行政書士は、以下のような業種の許認可申請手続きを請け負うことで、その業界の専門知識を蓄積しています。
- バス・タクシー・トラック等運送業
- 建設業
- 産業廃棄物処理業
- 飲食店・風俗業開店
- 宅建業
これら許認可申請業務だけでなく、会計や法律に関しての知識を活かしたコンサルティングもおこないます。外国人の在留資格や雇用問題に関しても、専門知識を存分に活用したコンサルティングができます。
➁ 法改正によるアドバイス
近年、コンプライアンス(法令順守)は、個人ももちろんですが、企業にとっては怠った場合のリスクが余りにも大きくなりました。時には、企業の存続が危ぶまれるような危機に発展する場合もあります。法改正についてキャッチアップすることは義務であり自己責任で、「知らなかったから違反してしまった」と言っても言い訳にはなりません。事業主には、日々の業務に忙殺されて法改正にキャッチアップできず、図らずとも法律違反してしまったというケースがあります。そうならないためにも、定期的な行政書士のコンサルティングを受け、リスク管理をすることが大事です。
例えば入管の資格の問題は外国人雇用に関わってきます。法的なラインが変更されれば、ビジネスの内容もそれに準じて整備しなければいけません。法改正にあたって施すべき変更に見落としは無いか、行政書士はコンサルタントとして、第三者の立場からアドバイスすることができます。
③ 経済産業省系の補助金申請に関するコンサルタント
行政書士は、会計記帳の代行を請け負いますが、その御縁から財務的な内容や融資問題、経済産業省系の補助金申請に関するコンサルタント業務に発展することがあります。経済産業省系の補助金は、審査に通れば高額な補助金が受給できますが、その分競争率がかなり高いため、行政書士のコンサルティングでサポートを受けた方が良いでしょう。
3 行政書士がコンサルタント業務もおこなうべき理由
行政書士はその広い業務範囲から、派生的に様々なコンサルタント業務が見込まれるのですが、そもそも行政書士には、コンサルタント業務も精力的におこなった方が良い理由があります。
⑴ 行政書士は付加価値をつける必要がある
繰り返しますが、行政書士は「代書屋」としてスタートしました。煩雑な書類作成と行政とのコミュニケーションを代行することで、商売として成り立ってきたのです。しかし、近年はIT化の流れで、公的書類に関してもオンライン手続きが導入されてきています。確定申告のe-TAXはその一例です。ということは、IT化が行政書士業務を減少させていく可能性があるということです。しかし、事務手続き業務だけでなくコンサルタントもできるようになれば、それは行政書士としての付加価値を向上させるでしょう。
しかし、気を付けなければいけないのは他士業の「独占業務」に接触しないことです。例えば、会計記帳から税理士しかできない税務を請け負ったり、社労士の独占業務である厚生労働省の助成金申請業務を請け負ってしまったりしないようにしましょう。
⑵ 中途半端なコンサルはやらない
行政書士の広い守備範囲を活かして、コンサルタント業務も請け負い専門家として成長できれば、実に希望があります。しかし、コンサルタント業務の界隈はレッドオーシャンで、競争が激しい世界でもあります。
行政書士がコンサルタント業務をおこなうなら、そもそもの専門分野をしっかりとマスターしましょう。一番憂うべきは、コンサルタント業務に着手して、行政書士の法廷業務もコンサルティングもどちらも中途半端になってしまうことです。コンサルタントの世界には、強者が多く存在しますが、そこと張り合うよりも、自らの専門分野において常に精進することに軸を置きましょう。
顧客とは、税理士は税金の専門家、社労士は労務の専門家、行政書士は許認可申請業務などの専門家だから、コンサルティングを依頼してくるのです。もし士業としての能力が低下したら、そもそもコンサルタントまで業務を広げられなくなってしまいます。
本業における精進を忘れず、コンサルタントとしても成長していきましょう。
4 サマリー
行政書士によるコンサルタント業務について、お分かりいただけましたか?専門知識をしっかりと固めつつ、顧客にコンサルタントとしてのサポートも提供できる。そんな行政書士に慣れたら素晴らしいですね。
5 まとめ
- 行政書士の法定業務には「相談業務」があり、書類作成について相談に応じる。
- また、会計や法律に関する知識を活かしたコンサルティングをおこなうことができる。
- 以前は不可能だったが、今は相談を単体で請け負い報酬を受け取ることが可能。
- 法改正にあたって施すべき変更に見落としは無いか、コンサルタントとしてアドバイスする。
- 経済産業省系の補助金申請に関するコンサルタントも請け負う。
- IT化による業務減少の可能性に鑑みると、コンサルタントもできるようになり付加価値の向上を目指すべき。