「社内行政書士」は存在しない?行政書士登録の登録区分や諸経費について、詳しく解説!

行政書士

 

行政書士試験の受験生にとっては、まずは試験に合格することがゴールのはずです。特に、働きながら資格取得を目指す人にとっては、勉強時間の確保だけでも精一杯ではないでしょうか。「合格さえできれば、登録は楽勝」と思っているあなた。行政書士登録にいくらかかるかご存知ですか?また、一般企業で行政書士業務はおこなえないこと、登録時に事務所の内容が問われることについては、いかがですか?

この記事では、意外と難関である「行政書士登録」手続きについて、詳しく解説していきます!

1 行政書士は行政書士会に所属することが定められている

行政書士試験に合格した後、行政書士業務をおこない報酬を得るためには、行政書士会への登録が必要です。

行政書士は日本行政書士会連合会(日行連)と都道府県行政書士会の、両方に所属することを定められています。加えて、都道府県行政書士会には支部会もあり、そこにも所属します。

行政書士登録の概要について、解説していきます。

⑴ 行政書士登録の区分とは?

行政書士登録の際には、以下の3種類の形態から選んで登録をします。

 

個人事業主として登録 独立開業する行政書士
行政書士法人として登録
行政書士事務所の雇われ行政書士として登録 ”使用人行政書士”ともいわれる

 

一般企業に勤めている場合は、行政書士登録していても、その会社の中で行政書士としての独占業務を遂行することはできません。この点は、社会保険労務士(社労士)との大きな違いです。

例えば個人事業主として行政書士登録したにも関わらず、所属する一般企業のなかで行政書士の独占業務をおこなって会社の売り上げにした場合は、どうなるでしょうか。行政書士会の規則違反となり、何と登録が抹消されてしまうため、注意が必要です。

また、将来行政書士として独立開業する考えがないなら、登録の必要はありません。

⑵ 登録自体が拒否されることも

都道府県行政書士会に提出した申請書は、日行連に送達され審査を受けます。ここで審査が通れば行政書士登録が完了します。しかし、残念なことに、以下のようなケースで登録が拒否されてしまう場合もあります。

・事務所の実態がない。

・審査の段階で現地調査が入り、欠格事由に該当してしまう。

・「申請書類の記載に誤り、虚偽がある」「守秘義務が保てない」「職務遂行できない」と判断されてしまう。

⑶ 行政書士登録の事前説明会もある

このように、失格することもある行政書士登録であるため、行政書士会による入会事前説明会が実施されています。下表は、令和2年度実施予定だった東京都行政書士会の入会事前説明会の案内です。残念ながら新型コロナウィルス感染拡大のリスクに鑑み、中止になりましたが、このような内容ですので今後の参考にして下さい。

日時 令和2年3月8日(日) 1:午前10時30分〜午後1時(受付開始は午前10時)

2:午後2時30分〜午後5時(受付開始は午後2時)

定員 午前の部、午後の部ともに120名ずつ
場所 東京都行政書士会 地下講堂
対象 ・試験合格者(合格年度は問いません)で東京での開業を検討されている方

・過去、受講されていない方

参加費 無料
内容 ・東京都行政書士会の概要および現状

・登録・入会手続について

・先輩行政書士の体験談

・質疑応答

東京都行政書士会の資料を基に作表

2 行政書士登録にあたって必要なものは?

次に、行政書士登録をおこなうにあたって必要な手続き等を紹介します。

⑴ 申請に必要な書類とは?

行政書士登録と、都道府県行政書士会等への入会手続きをおこなうためには、相当数の書類を用意しなければなりません。

下表は、主な提出書類をまとめたものです。注意すべきは、行政書士登録をおこなうには必ず事務所が必要である点で、理由は守秘義務の観点から必須だからです。シェアハウス、自宅兼事務所でも問題はありませんが、応接スペースと事務スペースが確保されていることが必須条件です。

 

【行政書士登録の申請書類】

合格証書原本
戸籍抄本
住民票
登記されていないことの証明書 ・成年被後見人にでないことを証明する書類

・法務局の本局で取得

身分証明書 ・破産者でないことを証明する書類

・本籍地の市区町村役場で取得

・事務所の使用権限を証する書面

(賃貸借契約書など)、

・事務所の写真

【賃貸借契約書】

・賃貸借契約期間が1年未満だと事務所としては認められない

・賃貸物件を自宅兼事務所にする場合は賃貸人の許可が必要

【写真】

・独立した応接スペースと事務スペースが無いと事務所にできない(守秘義務の問題から)

・表札や郵便受けに行政書士事務所の表示が必要

(事務所表示がないと行政書士会からの郵便物が届かない恐れがあるため)

⑵ 登録費用・入会費などはいくら支払う?

行政書士登録費用・入会費も相当に高額です。初期費用の全てを合算すると、300,000円程度になります。支払いは一括で、分割払いはできません。費用の内訳は詳しく後述しますが登録料、入会金、月会費、行政書士バッジなどの代金です。

登録料とは、「単位会」と呼ばれる都道府県の行政書士会に支払う費用で、会によって料金は異なります。所属するべき単位会は、どこに事務所を構えるかによって決まります。例えば東京都内に事務所があれば、自宅は埼玉県でも東京都行政書士会の所属になるというわけです。

なお、全ての登録費用は、日行連ではなく、所属する都道府県行政書士会に納付すれば自動的に支払いが完了します。

 

【東京都行政書士会の登録費用・入会費などの例】

登録手数料 25,000円 「事前振込費用」として事前に指定口座に一括払いする。
入会金(①) 200,000円
登録免許税 30,000円 収入印紙
東京都行政書士会会費 18,000円 ・3か月分を前払いする。

・登録手続きの際に、現金を窓口に持参する。

政治連盟会費

※政治連盟への登録はあくまで任意

3,000円
支部会費(②) 10,000円 年会費

東京都行政書士会の資料を基に作表

① 入会金

都道府県の行政書士会への入会金は、単位会ごとに異なります東京都行政書士会の場合は200,000円です。ちなみに神奈川県行政書士会の入会金はさらに高額で、250,000円になります。

② 支部会費(年会費)

「支部」は、都道府県よりも小さな単位です。単位会といわれる都道府県の行政書士会には、さらに「支部」という小さな単位の会が存在します。単位会に所属すると、自分の事務所があるエリアの支部に、強制的に所属させられます。支部を自分で選んだり、所属を断ったりすることはできません。

例えば、東京都なら33の支部があります。支部はより地域密着の活動をおこないますが、例えば、役所などで定期的におこなわれる無料相談会がそれにあたります。支部会員向けの研修会なども、おこなわれます。

支部会費の金額は、支部ごとに決められますが、年会費で6,000円~10,000円くらいが相場です。研修や福利厚生などに積極的な支部なら、おのずと会費が高くなる傾向があります。支部会費を支払わないと、研修に参加できなかったり、支部から仕事の紹介を受けられなかったりといったペナルティが発生することもあります。

③ その他の費用

初期費用として、登録・入会料のほかにも以下のような費用が発生します。

行政書士バッジ 3,000円~ メッキ製:3,000円、純銀製:10,000円くらい
名刺 ~4,000円
職印 5,000円~ 行政書士の印鑑

⑶ 審査を受ける

行政書士会登録の流れは、下図の通りです。都道府県行政書士会に提出された登録申請書類は、自動的に日行連に送達されます。その後、日行連の審査に通れば、行政書士登録が完了するのです。

この審査には、だいたい1か月ほどかかります。

①、都道府県の行政書士会へ書類提出

  

②、都道府県の行政書士会で書類精査

  

③、現地調査(事務所の調査)※現地調査が無いこともある

 

④、都道府県の行政書士会で①~③が終了後、日本行政書士連合会で審査

 

登録完了

 

なお書類提出は予約制になっており、1日に数名しか受理できないので注意が必要です。行政書士試験合格発表後は、特に予約が殺到することを覚えておきましょう。

つまり、予約と審査に時間がかかることを踏まえて、開業スケジュールを立てる必要があります。さもなくば、2、3か月も待たされて仕事を開始できないまま、事務所家賃の支払いだけは発生する事態に陥ってしまうかも知れません。

3 行政書士会に所属するメリット・デメリットとは?

 

先述の通り、行政書士会に所属しないという人もいますが、行政書士として働くつもりなら是非行政書士会に所属しましょう。所属することによって得られるメリットが、たくさんあるからです。

⑴ メリット

行政書士会に所属すると、行政書士会の会報が送られてきます。そこには法改正に伴うマニュアルなど、業務上役立つ様々な情報が掲載されています。

また、会員向けの研修会・勉強会も充実しています。懇親会などの各種イベントでは豊かな人脈を築くことができるため、いずれ独立開業を視野に入れている人にとっては良い機会になります。

⑵ デメリット

独立開業を考えていない場合は、高額な経費の支払いなどは大きな負担になります。

① 高額の経費が発生

例えば、行政書士試験に合格したにも関わらず一般企業に勤める場合は、行政書士登録をしても、社内で行政書士業務に従事することはできません。弁護士の場合は、弁護士職務基本規程の中に「組織内弁護士」の規定があります。社労士には「勤務社労士」という登録区分があります。しかし、日行連の規定にはそういった登録形態がなく、行政書士はあくまでも独立開業することが前提とされています。

一般企業に勤める場合は行政書士業務はおこなえないため、高額な登録費用を払ってまで行政書士会に登録するメリットが無いともいえます。

② 書類作成の手間がかかる

先述のように、行政書士登録を申請するにあたっては、相当数の書類の準備が必要になります。これらを準備するための時間と手間がもったいないという考え方もできます。

③ 事務所調査の手間が大きい

行政書士登録のフェーズには事務所調査があります。調査の目的は、①守秘義務を保てる環境かどうか、②業務を遂行できる環境かどうか、を判断することなのですが、この調査を受けるにも手間がかかります。将来的に行政書士業務を請け負うことがないなら、その時間と手間がもったいないとも考えられるでしょう。

⑶ 会費を払わないとどうなる?

毎月の会費を支払えなくなったり、支払わなくなった場合、どんなペナルティがあるのでしょうか。また、廃業したのに然るべき手続きをおこなわず、会費を払わなくなったらどうなるのでしょうか。

まずは、納付通知が再三送付されます。それでも納付しない場合は、取り立てがおこなわれる場合もありますが、まず行政書士会会員の資格が停止されます。それでも改善しない場合、廃業勧告に進んで行きます。

会員の資格が停止されると、研修などに参加できる資格は喪失しますが、行政書士として仕事をすることは可能です。

5年以上など長期滞納者になると、行政書士をやめよという廃業勧告が発令されます。この時滞納分の会費を全額納付すれば、勧告は解除されます。

4 サマリー

行政書士登録について、分かりやすくまとめて参りました。行政書士として働くには登録が必要ですが、登録はあくまでも独立開業することが前提なのがポイントです。また、事務所なども然るべき質のある労働環境を備えているかがチェックされます。

行政書士としての独立開業を考えている方は、この記事を参考にして、試験合格、登録、業務開始までスムーズに移行できるように備えて頂けると幸いです。

5 まとめ

  • 行政書士は日行連都道府県行政書士会とその中にある支部会に所属する。
  • 登録の形態には個人事業主行政書士法人行政書士事務所の雇われ行政書士がある。
  • 弁護士や社労士と違い一般企業勤務の場合は、社内で行政書士業務を遂行できない。
  • 「申請書類の記載に誤り、虚偽あり」「守秘義務が保てない」「職務遂行できない」と判断された場合は登録が拒否される。
  • 登録申請には戸籍抄本、登記されていない証明、事務所に関する書面など相当数が必要。
  • 行政書士登録費用・入会費など初期費用の全てを合算すると300,000円程度になる。
  • 行政書士会に所属するメリットは会報に業務上役立つ様々な情報が掲載されていること。
  • また、会員向けの研修会・勉強会も充実しており豊かな人脈を築くことができること。
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