行政書士の求人は少ない?合格即開業?求人が少ない理由とそれでも採用されるコツを伝授!

行政書士

今注目の行政書士は、許認可申請をはじめ、行政に申請する書類を作成する国家資格です。コロナ禍の時勢にありますが、政府の新在留資格創設による外国人労働者受け入れ拡大や民泊業務の申請など、行政書士の業務自体も拡大の様相を見せています。

行政書士試験に合格したら最終ゴールは独立開業ですが、その前にどこかに就職して経験を積みたい人は多いはず。しかし、行政書士の求人はとても少ないという話を聞いたことはありませんか?この記事では行政書士の求人の実態や、求人が少ないなかでも採用されるコツについて、詳しくお伝えします!

1 行政書士として働くには?

 

行政書士は会社設立許認可申請業務など、ビジネスのスタートアップに携わる仕事を請け負います。

一方、相続や遺言といった民事法務入管業務もおこなうため、非常に守備範囲の広い仕事だともいわれています。

そんな行政書士は、未経験の独立開業でも成功しやすい資格ともいわれており、これも大きな魅力の一つです。

行政書士登録者の登録区分について見ていきましょう。

⑴ 行政書士事務所は個人事務所の割合が高い

行政書士として働くには、日本行政書士会連合会の名簿に登録を完了し、同連合会の会員になる必要があります。ホームページによると、会員数は令和2年10月1日現在で、50,000人を超えています。

 

個人会員数 49,441
法人会員数 755
合計 50,196

出典:日本行政書士会連合会 

 

「行政書士法人」は、2名以上の行政書士が共同で定款を定めることで設立できます。

令和2年では、50,196人の会員のうちわずか755しか法人登録していません。行政書士事務所は個人事務所の割合が圧倒的に高いことがわかります。

(2) 求人が多い地域は?

同資料を基に、

法人登録した会員数が多い都道府県を挙げていきます。

 

東京都 193 大阪府 81
埼玉県 33 愛知県 50
神奈川県 56 兵庫県 23

出典:日本行政書士会連合会

 

会員数が最も多い東京都でも、個人会員数が7,055人に対して、法人会員数は193に留まっています。ご覧の通り、法人数が3桁なのは東京だけです。

このことからも、行政書士に対する求人を出す母体は、個人事務所の割合が高いことが分かります。

⑶ 「企業内行政書士」という登録区分はない

行政書士の求人が極めて少ない理由の一つに、「企業内行政書士」という登録区分が存在しないことがあります。

具体的に説明すると、中小企業診断士や社労士には企業に雇われて働く「勤務」という登録区分がありますが、行政書士にはありません。

各都道府県の行政書士会の会則は、雇われて社内の行政書士業務をおこなうことを禁止しています。

しかし、会社員として社内の行政書士業務をおこなうことはできませんが、会社から業務を請け負い、給料とは別に「行政書士報酬」を受け取ることは認められています。つまり「副業」としておこなうことは可能なのです。

政府も副業を推奨するようになった現代では、副業の可否を決めるのは勤務先の「就業規則」です。自らの勤務先の就業規則が副業を認めている場合は、週末行政書士のような働き方が可能ですが、役所に赴くのが行政書士の主軸業務なので、平日の日中に稼働できないことはネックになります。しかし今後電子申請化が更に進めば、状況は変わるでしょう。

2 行政書士の求人の種類とは?

「企業内行政書士」の求人がないなら、行政書士の求人にはどのような種類があるのでしょうか。

そもそも、行政書士の求人はその数自体が少ないといいます。いきなり開業はできないから行政書士事務所で働きたいけれど、求人数が少ない上に待遇面も良いものばかりではないといいます。また、行政書士試験合格直後であれば、実務経験など全くない場合も多いでしょう。

 

⑴ 未経験求人

「未経験」であることは、行政書士の求人を探すうえで不利なのでしょうか。

結論からいえば、経験の有無はあまり問題ではありません。むしろ、既成概念なく仕事に取り組める人を探している事務所もあります。しかし、面接では、未経験だからこそ精力的に自ら学ぼうという姿勢を見せることが大切です。

また、行政書士事務所の求人には、実務経験を有する人はそもそもあまり応募してきません。

⑵ 使用人行政書士

独立開業する行政書士は「開業行政書士」として、法人成りした事務所は「行政書士法人」として登録します。

行政書士法人や行政書士事務所に雇用されている場合は、「使用人行政書士」として登録します。

「使用人行政書士」は非常に少なく、全体の1%程度に留まっています。

⑶ 行政書士補助者

未経験者、特に行政書士資格を取得していない人には、行政書士補助者として働くという選択肢もあります。

大手の行政書士事務所では、たくさんの補助者が働いています給与は一般的なサラリーマン程度かそれ以下ですが、行政書士補助者として働くといろいろと学ぶことができます。行政書士補助者は補助者証を持つことが必須ですが、行政書士資格はなくても大丈夫です。

補助者は、書類の下書きや清書、役所への提出、交付申請、顧客のアテンドなど、行政書士のサポートをおこないます。また補助者求人では、運転免許が必須の案件も多いようです。

3 貴重な求人案件に採用されるコツとは?

 

行政書士の求人数は、あまり豊富ではないことが分かりました。それでは、このように数少ない求人に出会い採用されるには、どうすれば良いのでしょうか?

 

⑴ 「採用側が求めていること」は何かを考える

行政書士で求人を探している人のほとんどは、行政書士事務所で実務を経験したいと思っています。

その経験が、その後の独立の下地になることを望んでいるでしょう。しかし、可能なら好待遇で月給が高く、社会保険完備、週休二日がいいな、などと考える方も多いでしょう。しかし、これらの条件は、すべて志望者側の希望です。

では、採用する側はどんな人材を求めているのでしょうか。事務所にどのようなメリットを与える人を雇いたいのか、考えてみましょう。

① 採用側は「優秀な人材」が欲しい

採用側の意向 欲しい人材 いらない人材
忙しくて研修はできない 上昇志向のある人 簡単なことでもいちいち質問してくる人
自分で勉強して仕事が出来る人
採用コストを抑えたい 事務所の安定した経営のために、長く勤務してくれる人 3年くらいで独立開業のために辞める人
事務作業を離れて経営に時間をあてたい 事務作業をマスターし、安心して任せることができる人 覚えが悪くていつまでも当てにならない人
事務所を留守にしても安心して任せられる人 ミスばかりする人
業務範囲を拡大したい 在留資格などの業務も請け負うことができる、外国語が堪能な人 受け身で向上心のない人
高単価の建設業に実務経験がある人
生産性向上したい 成果報酬型で結果を出し、多くの給料を受け取る人 当たり前のことしかできず給料が上がらない人
マニュアルの作成ができる人

 

上表の「欲しい人材」に挙げた要件は、いささかレベルが高すぎるかもしれません。

しかし、明らかなのは、すべての採用側の行政書士が望んでいるのは、「普通のことができるスタッフ」ではなく「優秀なスタッフ」です。

つまり、履歴書や面接の自己PRは、採用側のこういった視点に立脚していないと、アピール力が弱いといえます。

② 行政書士試験合格はスタートライン

行政書士は、試験内容と実務の間に開きがある資格だといわれています。

ですので、試験に合格したのはスタートラインに立ったというだけで、これから習得していくことが山ほどあります。それは他の応募者も同じです。

採用側は、少しでも事務所の発展に貢献する人材を雇いたいと思っています。採用側目線を意識して、就活に臨みましょう。

⑵ 忙しいことを覚悟しよう

行政書士事務所(法人も含む)は、かなり忙しい職場だと覚悟してください。

大手は、抱える顧客や業務範囲がより幅広いため、なおさらそうです。

下表は、行政書士事務所に就職したら任される仕事についてまとめたものです。そもそも行政書士事務所は、頻繁に採用をおこなわず最小限の人員で業務をこなそうとするところです。書類作成はオフィスワークというイメージが強いため、実際に就職して働き始めたら、あまりにも忙しくて驚くかもしれません。

 

窓口業務 顧客対応 電話は鳴りっぱなし
ネットからの大量の問い合わせ
来客対応(お茶出しも)
外回り 役所 申請業務
銀行・郵便局 送金、入金確認業務
顧客回り 顧客から押印してもらう、確認作業などをおこなう
事務手続き 書類作成 許認可申請、会社設立、相続・遺言、在留資格など
添付書類準備 必要書類をネットや電話問い合わせて調べるところから

① 新人研修はないと思え

会社に就職したら、一般的にはまず研修を受けてから部署に配属されます。

行政書士事務所では、これを期待しないようにしましょう。内容にもよりますが、おそらく「ぶっつけ本番」「叩き上げ」で、実地訓練で仕事を覚えさせられることになるからです。

事務所は、研修をおこなうほどの時間と人員の余裕がありません。「教えてくれるのが当たり前ですよね?」という気持ちでいると、次第に疎まれる存在になってしまうかもしれません。

② 何でもいちいち聞いてくる人材はいらない

厳しいようですが、何でもいちいち簡単に質問していると、「甘えている」と思われてしまうかもしれません。

これは行政書士事務所に限らず、税理士事務所など士業事務所に多い傾向のようです。

採用する側は、例えば申請書の作り方に関しても、ネットで調べるなり役所に問い合わせるなりして自分で勉強していって欲しいと思っています。全て教えていては本人の為にならず、場数を踏ませることが必要、と考える行政書士先生は多いはずです。ファイリングしてある控えを参照し、自分で勉強して仕事を進められる人、要は「仕事を盗んで覚える」人を求めているのです。 

所長である行政書士先生がコストをかけて人を雇う理由は、自分の時間を作りたいからです。その時間を新規顧客の開拓や業務拡大など、経営のために使いたいと思っているのです。ですので、依存体質が強すぎる人は、士業事務所で働くには向かないのかもしれません。

⑶ 行政書士と司法書士の兼業事務所はオススメしない

 

一か所で複数のサービスを受けられるワンストップサービスは、顧客視点に立ったサービスを提供できることから、増加傾向にあります。

司法書士・行政書士事務所の兼業事務所と聞くと、「仕事が多そう」「儲かっていそう」という印象があるかもしれません。

しかし、行政書士の実務をしっかり積める事務所で働きたいなら、両者の兼業事務所は辞めておいた方が良い場合もあります。 

兼業事務所が多い理由を挙げれば、行政書士と司法書士の兼業事務所に関しては、厳しく吟味した方が良いことが分かって頂けるでしょう。

① 公務員特認制度による開業が多いから

公務員

特認制度

行政書士 国家公務員や地方公務員で行政事務を17年以上経験
司法書士 裁判所事務官や法務局の職員などを10年以上経験
行政書士と司法書士 法務局の職員を17年以上経験

 

行政書士と司法書士、それぞれに公務員特認制度が許されていますが、なかでも法務局の職員は、17年以上勤めると行政書士と司法書士、ダブルの資格が無試験でもらえます。そのため、行政書士と司法書士の兼業事務所は、法務局OBが退職後に始めた所が多いのです。

公務員OBは、最も恵まれた退職金を得て公務員年金で生活が保障されている存在です。ですので頑張って事務所経営するというよりは、小遣い稼ぎ程度にやっているという人達が少なくないのです。こういうところに勤めても、伸びしろが限られてしまうことになりかねません。

② 行政書士=副業・司法書士=本業のパターンがほとんど

司法書士・行政書士事務所の兼業事務所だと、行政書士業務は副業的位置にあることがほとんどです。

司法書士の主軸業務は、ご存知の通り「登記」です。登記でも相続などの不動産登記、会社などの商業登記に、行政書士業務が必要なケースがあります。遺産分割協議書、定款などの書類作成といった行政書士業務が、派生的に発生します。そのため兼業としているケースが多く、両者の業務の比率は司法書士業務が80%、行政書士業務が10~20%といったところが一般的です。

司法書士との兼業事務所には、単価の高い建設業許可や、風俗営業許可などに力を入れている事務所はあまりありません。

どの事務所に勤めるかはあなたの伸びしろに関わりますので、兼業事務所の場合は、ホームページで取り扱い業務をよく確認しましょう。そして、行政書士業務に力を入れている兼業事務所を選ぶようにしましょう。

4 サマリー

行政書士の求人は少ないというのが定説ですが、どの事務所も多忙だということは、基本的には人手が足りないはずです。同業者の人脈を広げたり、「これは」という事務所があれば直接アプローチしてみたりするのも、求人に出会うチャンスに繋がるでしょう。

5 まとめ

  • 連合会名簿に行政書士登録した会員数は、令和2年10月1日現在で、50,000人を超えた。
  • 行政書士法人登録は50,000人の会員のうちわずか755のみで、個人事務所の割合が高い
  • 行政書士の求人が極めて少ない理由は「企業内行政書士」の登録区分がないことがある。
  • 行政書士法人や行政書士事務所に雇われたら「使用人行政書士」として登録する。
  • 未経験者、資格を取得していない人には、行政書士補助者として働く選択肢もある。
  • 採用側は「普通のことができるスタッフ」ではなく「優秀なスタッフ」が欲しい
  • 行政書士実務ができる事務所で働きたいなら、司法書士との兼業時事務所は辞めておいた方が良い場合もある。 
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