国家資格を取得したいと思う人は多いですが、中には「自分は高卒だから無理!」と尻込みしている人もいるのではないでしょうか。法律系国家資格の中には、確かに学歴を問うものもあります。では、行政書士試験は、高卒でも受験できる試験なのでしょうか。
「自分は高卒だけど、行政書士になりたい。」この記事では、そのような人のために、高卒の方が行政書士になるためにはどうすれば良いかを解説していきます!
1高卒の方に行政書士試験がおすすめの理由
行政書士試験の合格率は、例年10%程度です。これは社会保険労務士(社労士)の約6%、司法書士の約3%などに比べれば合格のチャンスが大きいですが、難関試験であることには変わりありません。また、行政書士試験は業務の親和性から、一定年数勤続した公務員に対して試験免除の制度を整えていることも特徴です。
⑴ 受験資格が設けられていない
そのような行政書士試験には「受験資格」が設けられておらず、誰でも受験できます。年齢、性別、国籍を問わず受験できるため、毎年17歳くらいの若い合格者も出ています。
⑵ 大幅な年収増加が見込める
行政書士資格を取れば、高卒者は大幅な収入の増加を期待することができます。
最終学歴 | 平均月給 | 平均年収 |
中卒 | 280,600円 | 3,805,900円 |
高卒 | 296,900円 | 4,236,500円 |
高専・短大卒 | 302,000円 | 4,399,400円 |
大学・大学院卒 | 398,900円 | 6,077,700円 |
平成29年賃金構造基本統計調査の資料を基に作表
上表は、厚生労働省による労働者の学歴による収入格差の調査結果です。ここまでの収入格差があるとは、正直驚きです。ちなみに高卒の平均年収は約423万円で、大卒と比較すると約180万円の開きがあることが分かります。一方、行政書士の平均年収は約600万円といわれており、上表が示す大卒の平均年収と同程度です。つまり、行政書士資格を取得すれば、高卒であっても大卒と同程度かそれ以上の年収を目指すことができるのです。
しかし、この年収600万円を達成できる行政書士は、独立開業した人達であることを付け加えておきます。行政書士事務所に勤務した場合の年収は、300~400万円程度だからです。行政書士になって年収600万以上に到達したければ、最終的には独立開業を果たすことです。
⑶ 就職や転職で有利になる
就職や転職の際、採用担当者の視線はどうしても、非常に分かりやすい指標である「学歴」に注がれます。この時、大卒の応募者と比較すると「高卒」の学歴は見劣りしてしまうことが多いでしょう。しかし、行政書士資格を取得すれば、その点に着目してもらえるようになります。行政書士も難関の法律系国家資格の一つですので、そのような試験に合格したという事実が評価に値します。
2 高卒者が行政書士試験に合格するには
高卒が行政書士資格を取得すると、様々なメリットが得られます。ここでは、特に高卒の方が行政書士試験に挑む上で、押さえておくべきポイントを挙げていきます。
⑴ 高卒でも合格できるレベル?
「高校しか出ていなくても行政書士試験に合格できるの?」この点が気になる人は多いと思われますが、結論からいえば高卒だから不利になるということはありません。
確かに、大学の法学部等で法律を履修した人などは多少有利ですが、行政書士試験受験者には法学部出身は意外と少なく、法律初学者がほとんどなのです。「高卒には解けない問題が出るだろう」などと考える人は多いでしょうが、実はスタートラインはほぼ一緒なのです。しかし、「試験に合格する」という観点からは、どんな試験においても学歴の高い人の方が、効率的な勉強の方法を心得ていることから有利になるでしょう。
⑵ 独学は避けるべき?
高卒で行政書士試験合格を目指すなら、独学はやめておいた方が良いでしょう。その理由を挙げていきます。
① 「合格に近付くための勉強」をしなければいけないから
勉強慣れしていないと、独りよがりな勉強法を強行してしまいがちです。
行政書士試験の対策には、「テキストはどれにするか」「勉強する順番はどうするか」「過去問はどうするか」といったポイントがあります。合格に近づくためのポイントを外さずに、効率的な勉強ができるかどうかは、勉強慣れしている人がどうしても有利です。
行政書士試験に限ったことではありませんが、一発合格する人と、非効率的な勉強を続けて何年も不合格が続く人の違いは、勉強法にあるのです。
② プロの指導を受けた方が良いから
独学の最大のメリットは低コストです。コスト面で見れば、独学<通信講座<予備校となりますが、高卒の方が行政書士を目指す場合は、独学はおすすめしません。
なぜなら、独学では効果的な勉強方法を理解し、勉強のコツを掴むことが難しいからです。実際、独学で1年目は不合格だった人が、次の年に通信講座を利用したら無事に合格した、というのはよく聞く話です。プロの視点で組まれたカリキュラムの方が、独学よりも効率的な学習を可能にするのは当然ですね。
通信講座、予備校は独学よりもキャッシュアウトが大きいですが、効率的な勉強法方法で一発合格できる方が、長い目で見ればコストパフォーマンスが良いといえるでしょう。
⑶ 通信講座を利用しよう
高卒の方の場合は、ほとんどが法律初学者であることから、余計に勉強時間が必要となると考えられます。すると、学習効率性が合否を分けるポイントになってきます。高卒者に独学がおすすめでないとなると、予備校に通学するか、通信講座を受講するかの2択になります。下表では、予備校、通信講座のメリット・デメリットを比較して見ました。
メリット | デメリット | |
予備校 | ・退勤後に通学することが可能 | ・費用が高額 ・学習の場所や時間の制約が大きい |
通信講座 | ・比較的リーズナブルな価格
・時間と場所を選ばず効率よく学習できる |
・質問回数が制限されている場合がある ・非対面で学習・質問をおこなわないといけない |
経済的な事情や、育児や介護などの家庭の事情を抱えている高卒者の受験生もいることでしょう。しかしそのような場合でも、完全な独学よりは、通信教育を利用したほうが良いでしょう。要点を押さえた効率的な学習が可能となり、より合格に近づきやすいからです。
通信講座は価格がリーズナブルな上に、最近はスマホ完結型の学習スタイルを採用したものが多く、いつでもどこでも効率よく学習ができるため、かなり人気があります。
行政書士の通信講座はどこがいい?おすすめ通信講座6選の特長
3 その他の注意点
学習方法以外にも、高卒者が行政書士試験に挑むにあたっての注意点があります。意外な落とし穴とならぬよう、ここに紹介しておきます。
⑴ 行政書士登録は20歳から
前述の通り、行政書士試験には受験資格に年齢的制限が無いため、何歳でも受験可能です。そのため現役高校生の受験者・合格者も存在します。
しかし、試験に合格したからといって、すぐに行政書士業務を請け負い報酬を得ることはできません。報酬を得るためには行政書士会への登録が必要なのですが、この登録は、実は未成年がおこなうことはできません。行政書士として働けるのは、最短でも20歳からであることに留意しておく必要があります。
行政書士試験に一度合格すれば、未登録でも資格が失効することはありません。ですので10代で行政書士試験に合格した場合は、「補助者」や事務員として行政書士事務所に入職し実務経験を積みながら、登録できる年齢に到達するのを待つことをおすすめします。
⑵ 資格取得後も勉強し続けなくてはならない
行政書士資格は、試験と実際の業務の間の開きが大きいといわれています。たとえ試験に合格できても、それはあくまでも入り口で、行政書士としての必要最低限の知識を身につけたにすぎないということです。また、行政書士の業務は許認可をはじめとする官公署への申請書類作成、在留資格、相続と多岐にわたり、働き始めるにあたっては自らの専門性についても考える必要があります。
法律には改正が伴うため、それらにキャッチアップするための勉強も常に求められます。
⑶ 自信を持って取り組もう!
そもそも行政書士試験には学歴は問われていません。ですので、高卒であることで自信を失う必要はないのです。また、行政書士に限らず、国家資格の受験勉強は長丁場です。早い人でも半年、1年で合格できる人は多くはありません。法律初学者であれば、はじめはまず専門用語に戸惑うはずで、法律学習の手引書から読み始める学習者も多いです。
そのように法律の学習はとっつきにくいものですが、高卒者の中には、理解できないことに直面したり過去問の点数が伸び悩んだりすると、「自分は高卒だから」と自信喪失し、受験勉強を放棄してしまう人がいます。このように考える必要は全くありません。
大卒と比べて勉強慣れしているかどうかの差はありますが、法律初学者のスタート地点は一緒です。そもそも、行政書士試験は受験資格が設けられていない試験です。あなたの頑張り次第で合格することができます。
4 サマリー
高卒者でも行政書士試験に十分に合格できることが、お分かり頂けたでしょうか。本資格は、高卒者の可能性を広げてくれる資格でもあります。この記事を参考に、行政書士資格の取得をご検討頂けると幸いです。
5 まとめ
- 行政書士試験には「受験資格」が設けられていないので誰でも受験できる。
- 高卒の平均年収は約423万円だが、開業行政書士の平均年収は約600万円といわれる。
- 行政書士資格を取得すれば、就活の時に学歴以上にその点を評価してもらえる。
- 高卒には試験問題が解けないと考える人は多いが、実はスタートラインはほぼ一緒である。
- 一発合格する人と何年も不合格が続く人の違いは、勉強法にあることに留意すべき。
- 独学でなく通信教育を利用すれば効率的な学習が可能となる。価格がリーズナブルな上、最近はスマホ完結型の学習スタイルが多く人気がある。