行政書士になっても就職できない? 週末行政書士って何? 行政書士法が規定する働き方を詳しく解説!

行政書士

「街の法律家」「書類のプロ」と親しまれる行政書士は、取り扱うことができる書類作成業務が10,000件以上。幅広い業務の中から、自分の強みを活かして働くことができる資格です。しかし、行政書士になっても「就職できない」という話を聞きます。果たして本当なのでしょうか?

この記事では行政書士の就職事情の実態について、詳細にまとめていきます!

1 行政書士は基本的に独立開業して働く資格

行政書士は、基本的には「独立開業」して働くスタイルがメインの資格です。結論からいえば、行政書士は勤務先で行政書士の独占業務をおこなうことはできません。

しかし、企業に勤務しながら、行政書士として働くことはできます。それはどういう意味なのか説明していきます。

(1)勤務社労士はあれど、勤務行政書士は無い

社会保険労務士(社労士)の場合は、「勤務社労士」として社労士登録をおこない、勤務先の専従社労士になることができます。しかし、行政書士の場合「勤務行政書士」として登録をおこなうことはできません。

そのことが、行政書士の求人が少ないことの理由の一つになっています。また、企業の採用担当としても、行政書士資格保有者に対しては「雇ってもいずれは独立してしまうのではないか」という懸念から、採用に抵抗を感じる場合もあります。

(2)行政書士事務所は人を雇いにくい

行政書士事務所自体に、あまり求人を出さない体質があります。そもそも行政書士の業務自体が分業しにくく、一人でこなせてしまうことが多いため、人を新たに採用する必要が生じないといった事情もあります。

▼こちらの記事も合わせてご覧ください。
行政書士の独占業務は幅広い!

2 行政書士の働き方の種類

それでも、行政書士として就職するケースは存在し、大きく以下の3つに大別されます。

行政書士事務所などの法務事務所

(弁護士以外の法務関係者の事務所)

「使用人行政書士」として働く。

・行政書士会への登録はおこなう。
・事務所に雇用されて働く。
・メリットは、開業行政書士とは異なり、事務所の経営状況を気にすることなくのびのび行政書士としての業務をおこなうことができる点。

弁護士事務所

(パラリーガルとして働く)

パラリーガルは「法律を扱う能力」にある程度習熟していることが求められる。

仕事の内容:
・弁護士の指示のもとで事件の関係法令や判例の調査
・契約書や書証など各種法律文書の作成や校閲業務

※パラリーガルは法令や判例に触れる仕事であるため、著名判例や条文を暗記し理解している行政書士は有利。

企業の法務部 行政書士には、インハウス(企業内)行政書士は認められていない。
勤務先の会社名では、行政書士業務をおこなうことはできない。

(1)行政書士事務所など法務事務所

法務事務所とは、弁護士事務所以外の法律系士業の事務所を指します。厳密には、「法律事務所」の名称は弁護士資格の独占です。行政書士や司法書士の事務所はこのように名乗ることはできません。

行政書士事務所に雇用されて働く「使用人行政書士」は、連合会に行政書士登録をおこなう必要があります。現役行政書士のもとで働けるので、将来独立開業するためのノウハウを身に付けることができます。

行政書士事務所が取り扱う業務には、許認可申請、在留資格、相続、帰化申請、車庫証明、会社設立などがあり、どの事務所もいくつかに特化しています。どうせ働くなら自分がやりたい分野に強い事務所がよいので、よく探してみましょう。

(2)弁護士事務所

弁護士事務所で、いわゆるパラリーガル(法律事務員)としての勤務する働き方です。

普通の法律事務所職員(スタッフ)が、主に電話応対や裁判所への書類提出などおつかい業務を中心として働くのに対し、パラリーガルは法的知識を持つことから判例や法令を調べるなどの業務をおこないます。

(3)企業の法務部

詳しくは後述しますが、行政書士には副業が許されています。

そのため、行政書士として登録して自宅に事務所をかまえ、一般企業に勤めながら、勤め先から受注した行政書士案件を、帰宅後に代理申請するといった働き方ができます。

もし、建設会社社員と兼業する行政書士であれば、勤め先から建設業許可申請を個人で請け負って代理申請することができます。そして月給とは別に、行政書士業務の報酬を受け取ることが可能です。

社労士であれば、「勤務社労士」という働き方が許されているので、勤務先の専従社労士になって働くことができます。しかし行政書士の場合は、行政書士として企業に雇われ、企業内(インハウス)で行政書士として働くことはできないのです。

行政書士が一般企業に勤める場合は、社内ではその会社の一般業務に就くことになります。

法的知識のある行政書士資格者に対してニーズのある業界には、以下のものがあります。

① 建設業界
② 不動産関連業界
③ 金融業界

不動産業界や建築業界では、行政書士としての知識を活かした、営業許認可の手続きや公共事業の入札に関する業務に配属される可能性があります。しかし、いずれの場合も社内で行政書士の独占業務をおこなうことはできず、あくまでも知識・スキルを活かして働くスタイルにとどまります。

3 行政書士は副業できる?

繰り返しますが、行政書士は勤務先の一般企業で行政書士業務をおこなうことはできません。しかし、勤務先から依頼を受けて行政書士独占業務を持ち帰って、自分の事務所で取り扱うことは可能です。

つまり、行政書士は副業ができるのです。

(1)行政書士には「依頼に応ずる義務」がある

行政書士として登録後は、行政書士法を遵守しなければなりません。すると、独特の定めである行政書士法11条「依頼に応ずる義務」にも従わなければなりません。これは何を定めたものかというと、「正当な事由がなければ、顧客からの仕事のオファーを拒否することはできない」という、行政書士の基本姿勢を定めたものです。

つまり、行政書士名簿に登録した行政書士は「すみません、私は会社勤めをしているので、その時間は行政書士の仕事はできません」とオファーを断ることは、「正当な事由」にあたらないため、できないのです。

(2)仕事を無償で受ければよい?

では、行政書士として仕事を依頼されたら、無報酬で受けてやればよいと思われるかもしれません。しかし、その場合は独占禁止法の「不当廉売」に該当するおそれがあります。

「不当廉売」とは「他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがあること」を指しますが、確かに無償奉仕で行政書士業務を請け負ってしまうと、同業者に迷惑をかける恐れが生じます。

(3)行政書士には副業が許される

行政書士法には「副業」を禁止する規定はありません。つまり、行政書士業務はサラリーマンとの兼業が認められています。

しかし、司法書士は事情が異なります。法務省も同様の見解を示していますが、司法書士にはサラリーマンとの兼業は認められていません。

ただ、サラリーマンとの兼業の場合、問題は勤務先です。勤務先が副業NGであれば、当然行政書士との二足のわらじは履けません。

4 行政書士の就職先が少ない理由

行政書士に対する求人はなぜ少ないのでしょうか。最後にその理由を考えてみましょう。

(1)行政書士は「独立開業型」の資格であるため

これまで解説してきたように、行政書士は就職には不向きな資格です。その理由として行政書士業務には、他の士業と比べて、従業員を雇いにくいという性質があります。

より詳しくいうと、行政書士業務には書士本人がやらなければならない仕事が多いのです。例えば、主軸業務である許認可業務は実に幅が広く、内容も煩雑で、業務をテンプレ化して分業することが難しいのです。

 (2)コスパが悪いから

行政書士試験は難関国家資格のひとつに数えられます。

そのため、受験生は合格までにかなりの時間と労力を犠牲にします。そうなると、合格後はその対価を回収しようとするのが自然です。報酬という形で回収しようとするなら、使用人行政書士では給料が安いため、とても長い道のりになってしまいます。

そういった観点からも、行政書士になったら一日も早く独立開業を選び、報酬を自由設定して稼いでいく方がコスパが良いといえるでしょう。

5 サマリー

行政書士の就職先がなかなか見つからない理由について、解説しました。行政書士は行政書士法により兼業を許されているのですから、資格取得後は週末だけでも行政書士として稼働を始めた方が良さそうです。

6 まとめ

  • 行政書士は「独立開業」する資格で、一般企業に就職して行政書士の独占業務をおこなうことはできない。
  • 主な就職先には、法務事務所、弁護士事務所、企業の法務部がある。
  • 行政書士事務所で働く「使用人行政書士」は、将来独立開業するためのノウハウを得られる。
  • 一般企業で行政書士のニーズがあるのは、建設業界、不動産関連業界、金融業界である。
  • 行政書士法には「副業」禁止規定はなく、行政書士業務はサラリーマンとの兼業が認められる。
タイトルとURLをコピーしました