行政書士試験で出題される行政法では、行政作用について定めています。
1. 行政罰とは
行政上の義務違反に対して科される制裁として、行政罰というものがあります。行政強制の執行罰は将来に向かって義務の実現を図るものですが、行政罰は過去の義務違反を対象としています。
行政罰は、懲戒罰とも違います。懲戒罰は公務員関係など、公法上における特別の法律関係の規律維持のため、その義務違反者に対して科す制裁です。しかし行政罰は一般統治権に基づく、つまり一般国民に対して科される制裁なのです。
反社会的・反道徳的行為に対する道義的責任追及、または犯人の教育のために科される刑事罰とも異なります。刑事罰は行政上の義務違反に対し、主として取り締まりを目的として原則自然人を対象に科されるのですが、行政罰では自然人のみならず法人も処罰の対象です。
また、自然人と法人をともに罰する両罰規定もあり、行政刑罰と秩序罰に分かれています。
2. 行政刑罰
行政上の義務違反者に対して科される、刑法上刑名がついている刑罰を『行政刑罰』といいます。
交通違反をした人に罰金を払わせたりするような場合で、刑法で刑名のついている刑罰は、監獄内で絞首する「死刑」、1月以上15年以下、無期の「懲役・禁錮」、1万円以下の「罰金」、1日以上30日未満の「拘留」、1,000円以上10,000円未満の「科料」です。
行政刑罰も「刑罰」であるため、罪刑法定主義にのっとり法律・条令の根拠を必要とします。また、憲法39条の二重処罰の禁止の原則も適用されます。行政刑罰には刑法総則が適用され、刑事訴訟法の手続に従い、裁判所によって刑罰が科されることになります。
3. 秩序罰
行政上では義務違反でも、刑罰を科すほどではない軽微な形式的違反に対し、行政秩序維持を目的として科される過料の制裁を『秩序罰』といいます。
その例の1つが戸籍法135条です。
「正当な理由がなく期間内にすべき届出又は申請をしない者は、5万円以下の過料に処する。」
出生届をしない、転居届・転入届・転出届・世帯変更届を行った場合などがこれにあたります。
軽い制裁にあたる過料は刑罰ではなく、実質は行政処分になるため、刑法総則・刑事訴訟法の適用はありません。
しかし秩序罰として過料を科す場合には、法律・条令の根拠が必要になります。法令に基づいて科される過料は非訟事件手続法に基づき裁判所が科すことになりますが、地方自治法に基づき地方公共団体が科す過料は、地方公共団体の長の行政処分(行政行為)としてのものになります。
4. 行政罰の併科
同じ義務違反行為に対し、複数の行政処罰を両方科すこと、つまり『併科』は不可能です。行政刑罰も刑罰にあたるため、行政処罰を複数科すことは憲法が定める二重処罰の禁止に抵触します。
ただ、過料である秩序罰と行政刑罰の併科、行政罰と執行罰の併科、行政罰と懲戒罰の併科は可能です。
また、所得税法などの税法上の加算税も刑罰にはあたらず、税法上の義務違反に対する行政上の措置にすぎません。そのため、行政刑罰と加算税の併科も二重処罰の禁止には抵触しないのです。
5. 行政立法
行政機関が定める一般的抽象的法規範を『行政立法』といいます。
日本では憲法41条により、国の法律は国会が作るものとされています。しかし、行政上必要となる法律をすべて国会だけで制定するというのは現実不可能な話であり、「法律」で実施すべき行政施策の目標や要件、内容などを大体定めておき、細部を専門家集団である行政が定めるということになりました。これが行政立法です。
行政立法は、命令をした制定機関による分類がされます。内閣によるものを『政令』、内閣総理大臣によるものを『内閣府令』、各省大臣によるものを『省令』、委員会や庁の長官によるものを『外局規制』、独立行政機関によるものを『独立行政機関規制』といいます。