行政書士試験で出題される憲法の三大原則の1つ、「基本的人権の尊重」の中には自由権の保障が含まれています。
自由権をさらに分化すると「精神の自由」「身体の自由」「経済の自由」となります。
このうち、「経済の自由」は「職業選択の自由」「居住移転の自由」「財産権の保障」から成り立っています。
1. 職業選択の自由
職業選択の自由には、「自分の職業を決定する自由」と「その職業に実際に就いて活動をする自由」という意味があります。
後者は「営業の自由」でもあり、最高裁による名言でも22条第1項『職業選択の自由』の「何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。」によって営業の自由が保障されているとしています。
2. 職業選択の自由の規制
経済的自由は弱者保護の観点から制約を受けます。
制約には2種類あり、「無制限な職業活動による公共の安全への危険」と「社会国家実現のための政策的配慮」に分類されています。
前者は消極目的規制で、主に国民の生命・健康に対する危険を防止、除去、緩和するための消極的・警察的規制とされ、理容業等の届出制、風俗業や貸金業等の許可制、医師免許や行政書士等の資格制があります。
後者は積極目的規制にあたり、社会国家の理念に基づき、社会的・経済的弱者を保護するための社会政策・経済政策的規制で、旧郵便事業等の国家独占、電気ガス等の公益事業等の特許性あります。
消極目的規制は、その職に誰でも就けたり、またホイホイ開業されては困るという場合にかける規制です。
理容業は衛生的な環境下での経営が求められますから、それを保つための届出制がありますし、貸金業や風俗業の開業を緩くしすぎると社会秩序の崩壊が危ぶまれるため許可制にしているのです。
また、誰でも医者になれたら怖くて病院にいけませんから、基準を設けて信頼性を保っています。
一方、積極目的規制は、社会的弱者、ひいては国民の利益を守るための規制です。
手紙の集配や電気、ガスの供給自体は誰がやっても迷惑がかかるものではありませんが、国民皆が使うものであるため、価格高騰がなされないよう国が関わっているのです。
この2つは違憲審査基準が異なります。
規制目的と違憲審査基準の組み合わせは行政書士試験において非常に重要なので、絶対に覚えておきましょう。
消極目的規制は厳格な合理性の基準により判定され、規制の必要性・合理性があり、かつ同じ目的が達成出来る緩やかな規制が他にあるかどうかを審査し、あれば違憲、ないなら合憲とします。
積極目的の規制立法の違憲審査は「明白原則」を用います。その規制が著しく不合理であることが明白だと違憲にされますが、そんな法律は普通無いため、ほとんどが合憲になります。
違憲になった例としては薬局距離制限事件、合憲の例は公衆浴場距離制限事件などがあります。
薬局距離制限事件では、薬局を作る際には他の薬局と一定の距離を開けなければならない(一定の範囲内に他の薬局があったら作れない)という、当時の薬事法の違憲性が問われました(現在、薬事法による適正配置規制は廃止になっています)。
供給の多さまたは医薬品濫用の助長になると考えられていたのですが、合理性と必要性に欠けていると消極目的から判断されたため、違憲となりました。
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しかし合憲とされた公衆浴場距離制限事件は、消極目的と積極目的が併有され、国民保健及び環境衛生の確保という消極目的規制と、家に風呂を持たない国民にとって不可欠な厚生施設たる公衆浴場の確保(積極目的規制)という二重の基準の下で判断されました。
同じく合憲となった小売市場距離制限事件(過当競争防止等の目的から知事の許可が求められている)では、国が社会経済の調和的発展を企図するという観点から中小企業保護法の一方策としてとった措置である、という積極目的規制の観点から判断が下されています。