弁理士試験合格者の出身大学はどこ?各大学の志願者数と合格率について分析!

弁理士

弁理士試験といえば、難関国家試験というイメージを持たれる方も少なくないのではないでしょうか?

「弁理士試験は、高学歴の人しか合格できないのでは?」

「弁理士試験の合格者の出身大学はどこなのだろう?」

確かに一般的には、高学歴の方が合格しているイメージですが、実際にはどのような方が合格を果たしているのでしょうか。

 

そこで、本記事では、弁理士試験の合格者の出身大学などを特許庁のデータから紐解いて解説していきたいと思います。ぜひ最後までご覧ください。

1 そもそも弁理士試験とは?

弁理士試験は、弁理士になろうとする方が弁理士として必要な学識及びその応用力を有するかどうかを判定することを目的とした試験であり、弁理士試験に合格しなければ弁理士資格を取得することはできません。

日本弁理士協会によれば、弁理士は〝知的財産に関する専門家〟です。弁理士法に以下のように定められています。

(弁理士の使命)

第1条 弁理士は、知的財産に関する専門家として、知的財産権の適正な保護及び利用の促進その他の知的財産に係る制度の適正な運用に寄与し、もって経済及び産業の発展に資することを使命とする。

弁理士業務は、特許や商標をはじめ、意匠の登録及び申請を行う業務ですので、特許法、実用新案法、意匠法、商標法が出題範囲となり難易度の高い試験です。

(1) 弁理士試験の概要

弁理士試験の受験資格はなく、学歴や年齢、国籍等による制限は一切ありません。

また、弁理士試験は、筆記試験と口述試験の3段階で実施されます。

筆記試験では、短答式試験(1次試験)に合格しなければ論文式試験(2次試験)を受験することができず、論文式試験に合格しなければ口述試験(3次試験)を受験することができないという大変厳しい試験です。

また、弁理士試験に合格した後に「実務修習」を修了してはじめて「弁理士となる資格」が付与されます。

以下で、それぞれの試験形式について詳しくみていきましょう。

① 短答式試験

短答式試験では、弁理士の業務において基礎的な知識を有しているかが問われます。主に条文知識の正確性が問われます。

試験日:例年5月中旬~下旬(令和4年は5月22日(日))

試験科目:特許法・実用新案法、意匠法、商標法、条約、著作権法、不正競争防止法

試験形式:五肢択一、マークシート

出題数:60問

試験時間:3時間30分

場所:東京、大阪、仙台、名古屋、福岡

合格発表(短答式):例年6月上旬頃(令和4年は6月13日(月)予定))

※(注)短答式試験に合格しなければ論文式試験を受験することが出来ません。

※短答式試験免除制度あり(後述)

② 論文式試験

論文式試験では、「必須科目」と「選択科目」に分かれており基礎的な法律や条例の解釈力や理解力、判断力などが問われます。

【必須科目】

試験日:例年6月下旬〜7月上旬(令和4年は7月3日(日))

試験科目:特許法・実用新案法、意匠法、商標法

試験形式:論文式

試験時間:4時間(特許法・実用新案法1時間、意匠法1.5時間、商標法1.5時間)

場所:東京、大阪

合格発表(論文式):例年9月中旬(令和4年は9月26日(月)予定))

 

【選択科目】受験願書提出時にいずれか1科目を選択。

試験日:例年6月下旬〜7月上旬(令和4年は7月24日(日))

試験科目:理工Ⅰ(機械・応用力学)、理工Ⅱ(数学・物理)、理工Ⅲ(化学)、理工Ⅳ(生物)、理工Ⅴ(情報)、法律

試験形式:論文式

試験時間:1時間30分

場所:東京、大阪

合格発表(論文式):例年9月中旬頃(令和4年は9月26日(月)予定)

※(注)論文式筆記試験は必須科目と選択科目のどちらか一方のみでも受験可能です。ただし、両科目に合格しなければ口述試験を受験することができません。

③ 口述試験

口述試験では、弁理士として働いていくうえで必要な思考力があるかどうかを口頭試問により判定する試験です。

試験日:例年10月中旬〜下旬

(令和4年は10月22日(土)から令和4年10月24日(月)のうちいずれかの日で実施予定。

試験科目:特許法・実用新案法、意匠法、商標法

試験形式:口述

試験時間:各科目10分ほど

場所:東京

最終合格発表(口述):例年11月上旬頃(令和4年は11月10日(木)予定)

※具体的な各試験期日については、毎年1月中旬頃に特許庁のHPで公開されますので確認してください。

参照:特許庁「令和4年度弁理士試験公告」「弁理士試験の案内」

④ 願書交付、受験料など

弁理士試験に関して、その他おさえておきたい情報(令和4年版)は以下のとおりです。

願書交付期間:令和4年3月1日(火)〜令和4年4月8日(金)

インターネットによる願書請求:令和4年2月1日(火)〜令和4年3月22日(火)までに、特許庁ウェブサイトから請求

郵送による願書請求:令和4年3月1日(火)〜令和4年4月8日(金)必着

願書受付期間:令和4年3月18日(金)から令和4年4月8日(金)まで(消印有効)

受験手数料:12,000円

(2) 弁理士試験の難易度

直近、過去5年間の合格者や合格率の推移についてみてみましょう。

 

参照:特許庁:過去の試験統計より

受験者数(人) 合格者数(人) 合格率
平成29年 3,912 255 6.52%
平成30年 3,587 260 7.25%
令和元年 3,488 284 8.14%
令和2年 2,947 287 9.74%
令和3年 3,248 199 6.13%

過去5年のデータをみてみると、合格率は6~9%を推移しており、難易度が高い試験であることがうかがえます。

次に、合格者の属性についてもみていきましょう。一体そのような方が合格しているのでしょうか?

【合格者の属性(職業別内訳)】

職種 令和元年 令和2年 令和3年
人数(人) 割合 人数(人) 割合 人数(人) 割合
会社員 131 46.13% 148 51.57% 97 48.74%
特許事務所 98 34.51% 80 27.87% 54 27.14%
公務員 13 4.58% 16 5.57% 13 6.53%
教員 2 0.70% 0 0.00% 0 0.00%
法律事務所 2 0.70% 5 1.74% 2 1.01%
学生 8 2.82% 9 3.14% 7 3.52%
自営業 0 0.00% 3 1.05% 5 2.51%
無職 25 8.80% 19 6.62% 15 7.54%
その他 5 1.76% 7 2.44% 6 3.02%
284 100.00% 287 100.00% 199 100.00%

会社員及び特許事務所と回答している方が合格者の凡そ8割です。

【合格者の属性(平均年齢)】

職種 令和元年 令和2年 令和3年
平均年齢 37.8歳 37.9歳 36.9歳
最年少 20歳 22歳 20歳
最年長 76歳 70歳 67歳

合格者の平均年齢は30代半ばであることがわかります。先の職業別と合わせると働きながら弁理士を目指す方が多いということが考えられます。

2 弁理士試験合格者の出身大学はどこ?

弁理士試験の合格者の出身大学に関するデータは以下のとおりです。

(1) 弁理士試験の出身大学別合格率

以下は、弁理士試験合格者の出身大学別合格率を2年分(令和2年、令和3年)まとめたものです。

上位をキープしているのは東京大学、京都大学、大阪大学です。上位3校は、合格者数が前年度と比較するとその差がわずかであることが見て取れます。また、4位以下の順位については、前年度との差が比較的大きく、必ずしも順位が安定していないということがわかります。

※各内訳の令和3年()内の数値は昨年度の数値。

出身校 人数 %
1 東京大学 21(26) 10.50%
2 京都大学 15(25) 7.50%
3 大阪大学 12(20) 6.00%
4 早稲田大学 9(12) 4.50%
5 東京工業大学 8(13) 4.00%
6 九州大学 8(4) 4.00%
7 日本大学 8(2) 4.00%
8 慶應義塾大学 7(0) 3.50%
9 東京理科大学 7(7) 3.50%
10 東北大学 6(12) 3.00%
11 名古屋大学 6(9) 3.00%
12 上智大学 5(2) 2.50%
13 神戸大学 4(9) 2.00%
14 中央大学 4(5) 2.00%
15 立命館大学 4(4) 2.00%
16 一橋大学 3(3) 1.50%
17 筑波大学 2(8) 1.00%
18 同志社大学 2(6) 1.00%
19 東京農工大学 2(5) 1.00%
20 明治大学 2(5) 1.00%

(2) 比較したデータからわかること

公的なデータから紐解き過去の合格者などを比較していくと次のような特徴があることがわかりました。

① 偏差値が高い大学の方が受かりやすい傾向にある

データを比較してみると、偏差値の高い大学(東京大学、京都大学、大阪大学など)の出身者が弁理士試験に合格しやすい傾向にあることがおわかりいただけたのではないでしょうか。

また、上位以下の合格者ランキングを見ると、理系大学の出身者が多いという結果となりました。

② 偏差値が高くない大学でも勉強すれば受かる

一方で、偏差値の高い大学出身者に限らず、弁理士試験に合格することはできます。実際に令和3年ではその他大学から37名が合格しています。令和3年弁理士試験合格者統計

また、合格者の中には、短大卒や専門学校卒、高卒の方もいらっしゃるのが実情ですので、学歴を理由に諦める必要はなく、誰でも合格できる可能性は十分にあります。

そして、偏差値の高い大学出身の合格者だからといって簡単に弁理士試験に合格できるというわけではありません。弁理士試験に合格するためには、弁理士試験の特性を理解し正しい勉強法で対策を遂行することが功を奏します。

なお、弁理士試験には、免除制度がいくつかありますので偏差値に関係なく自分の保有している資格などが有利に働くことが期待できます。

 

「短答式試験免除制度」

短答式試験の一部もしくは全てが免除となります。

・短答式試験合格者

・工業所有権に関する科目の単位を修得し大学院を修了した方で工業所有権審議会の認定を受けた方

・特許庁において審判または審査事務に5年以上従事した方

※免除を受けるためには、受験願書提出の際に免除申請を行う必要がありますので、詳しくは免除要件と併せて、特許庁のホームページでご確認ください。

 

「他資格からの免除科目」その他免除について

弁理士試験の「論文式試験(必須科目)」には、免除制度があります。

・論文式筆記試験選択科目合格者(平成20年度合格者から適用)

・修士・博士・専門職学位に基づく選択科目免除資格認定を受けた方

特許庁が指定する他の公的資格を有する方(司法試験合格者、司法書士、行政書士、一級建築士、薬剤師など)

その他弁理士試験の「論文式試験(必須科目)」には、免除制度があります。

・論文式試験(必須科目)合格者

・特許庁において審判または審査事務に5年以上従事した方

※免除を受けるためには、受験願書提出の際に、所定の手続きや必要書類を添付しなければなりません。詳しくは免除要件と併せて、特許庁のホームページでご確認ください。

3 弁理士試験に合格すると?

弁理士として働けるようになると、実務においてさまざまなことを学びながら、お客様にとても感謝されるような仕事ができるようになります。ここでは、弁理士試験に合格した後のことについて解説していきます。

(1) 弁理士試験合格後に弁理士として働くまで

先にも触れましたが、弁理士試験に合格したからといって直ぐに有資格者として働くことができるわけではありません。弁理士試験に合格した後は、「実務修習」と呼ばれる研修を修了しなければなりません。実務修習は、その名のとおり試験に合格するためだけの勉強ではなく実践的な実例を学びます。

(2) 弁理士の勤務先

弁理士としての資格が付与されると、さまざまな勤務先で弁理士として勤務できるようになります。

特許事務所(企業規模問わず企業から個人の発明家までさまざまな特許申請を行う)

企業内弁理士(自社製品の特許申請など)

法律事務所(侵害訴訟やライセンス契約などさまざまな業務に対応する)

技術移転機関(大学や研究機関の成果を企業に移す など)

これら一定の経験を積んだ後、独立開業する人も珍しいことではなく、幅広く活躍することができる魅力ある資格です。

(3) 弁理士のやりがい・魅力

弁理士には、大きなやりがいや魅力があります。例えば、以下のような例が挙げられます。

お客様と二人三脚で仕事をする

スキルが成果につながりやすい

お客様の英知の結晶である知的財産を守るために、お客様とコミュニケーションをとりながら綿密に連携をとり申請に至ります。専門性の高い情報を漏れなく言語化し、どうすれば権利化できるのかなどプロ目線からサポートしたうえで申請しなければなりません。

高度な知識と努力を重ねた結果、特許が認められたケースでお客様から感謝の言葉をいただけた時は、弁理士冥利に尽きるといえます。

また、弁理士の仕事は、これまで身につけてきた経験や知識(スキル)が武器となり成果に繋がりやすくなります。最新技術や法改正などが行われれば常にキャッチアップする姿勢も怠ってはなりません。苦労して得た日々の実務経験や知識が特許申請の際に役に立つこともありますので、目に見えて成果を感じることができる点はモチベーションアップにも繋がります。

(4) 弁理士の大変な点

弁理士の大変な点とはどのようなことなのでしょうか?

勉強し続けなければならない

納期に追われる

先にも少し触れましたが、弁理士という仕事は常に研鑽を積まなくてはなりません。時代の流れと共にさまざまな物事が進化を遂げます。それらに対応していかなければなりませんので、大変な点の一つといえるかもしれません。

また、納期に追われるという点も弁理士ならではの大変な点といえるかもしれません。弁理士という仕事の特性上、他者よりも早く申請をしなければ追い越されてしまう危険性があるからです。もし、先を越されてしまった場合は、お客様にとって大きな損失に繋がりかねません。特許申請の際に作成する書面作成にも一定のテクニックを要しますので、習得するまでにはそれなりの時間を要することを覚悟しておかなければなりません。

(5) 弁理士業務の将来性

弁理士業務の将来性はますます高まっていくといえるでしょう。以下にその理由を挙げました。

海外へ特許出願をする企業の増加

地方企業の需要が増加

特許申請以外の付加価値のある弁理士

 近年、特許の申請先は日本国内のみならず海外への特許数が増加傾向にあります。これは、海外進出する企業が増えているためです。海外へ特許を申請する際に英語力は不可欠ですので語学を身につけておくことで仕事の幅が広がり、受任数増加が期待できます。

また、都市部に特許事務所が集中していることから地方で埋もれている企業の知的財産権が権利化・産業化できていないという実情があります。このため、地方で特許事務所の需要が増加していますので、地方で開業し地域に貢献していく方法もあります。

そして、特許申請以外にも弁理士の活躍の場は広がっています。

クライアントのニーズに合った弁理士として、例えばコンサルタント業務などが挙げられます。他士業に抵触しない範囲で活躍できるフィールドは多岐に渡りますので、自分の強みを活かした業務展開をしていく楽しみもあります。

4 サマリー

本記事では、弁理士試験合格者の出身大学についてみてきました。偏差値の高い大学に限らず、見事合格を果たし活躍している方はたくさんいらっしゃいます。弁理士試験に合格するためには、弁理士試験の特性を理解し正しい勉強法で対策を遂行することが功を奏しますので、早速予備校のリサーチをはじめてみてはいかがでしょうか。

5 まとめ

  • 弁理士試験は、弁理士になろうとする方が弁理士として必要な学識及びその応用力を有するかどうかを判定することを目的とした試験(短答式、論文式、口述)である。
  • 令和2年〜3年の弁理士試験合格者の出身大学別合格率において、上位をキープしているのは東京大学、京都大学、大阪大学である。
  • 弁理士試験に合格するためには、必ずしも学歴は関係ない。
  • 弁理士試験に合格した後に「実務修習」を修了しはじめて弁理士資格が付与される。
  • 弁理士の未来は明るい!自分の経験や知識を活かしてさまざまなフィールドで活躍しよう。
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