弁理士試験の試験科目とは?攻略方法や特徴を徹底解説!

弁理士

弁理士は、

  • 「人のためになる仕事をしたい。」
  • 「自分の可能性を試したい。」
  • 「難関の試験にクリアして初めてなることができる資格にチャレンジしたい。」

といった向上心たっぷりな人にはピッタリな資格です!しかし、弁理士になるためにはとても難しい試験である弁理士試験に合格しなくてはなりません。弁理士試験とはいったいどんな試験なのでしょうか?本記事では、弁理士試験の科目などの特徴を分析したうえで最適な攻略法を紹介します。

1 難関国家資格:弁理士

そもそも弁理士とは一体どのような資格なのでしょうか。弁理士とは、一言で言うと「知的財産に関する専門家」の事を指しますとは言っても知的財産がよくわからないですよね。詳しく見ていきましょう。

(1) 知的財産とは

例えば自分で商品を設計した場合、その商品については他人の知的財産を犯してはならず、特許などの情報をチェックしながら設計しなければなりません。逆に、自分が作り出したものが特殊で、他に誇れるものであれば特許を取得しておかないと、他人に容易に用いられてしまいます。特許を取得した以降で、仮にそれを犯すようなデザインが生まれれば特許権侵害として訴える必要があります。

この例で言えば、自分が知的財産を守る必要があり、自分が作り出したものを守る必要があるのですが、法律が絡む内容なので簡単に対応できるものではありません。そこで登場するのが、知的財産に関わるエキスパートである弁理士というわけです。

(2) 弁理士の仕事

では弁理士という存在がどういったものなのかは分かったとして、どんな仕事をしているのでしょうか。弁理士の仕事は弁理士法の中で以下のように定義づけられています。

弁理士は、知的財産に関する専門家として、知的財産権の適正な保護及び利用の促進その他の知的財産に係る制度の適正な運用に寄与し、もって経済及び産業の発展に資することを使命とする。

つまり、弁理士の仕事は、特許出願の代理、実用新案出願の代理、意匠出願の代理、商標出願の代理、そして知財相談のパートナーなどの役割を果たすことといえます。よって、知的財産に関わるあらゆる知識を持ち合わせていなければならず、また各種審査に向けての交渉力にも長けている必要があります。そしてそのスキルを身につける、また証明するために弁理士という資格があるというわけです。

2 2020年度(令和2年度)弁理士試験概要

弁理士資格を取得するためには、弁理士試験に合格することが必須となります。ここでは2020年度(令和2年度)の弁理士試験の概要を見ていきます。

※2020年度の弁理士試験については、特許庁から2020年1月14日に公告されています。

(1) 受験資格

特に制限はなく、国籍や年齢、学歴に問わず誰でも受けることができます。

(2) 合格率の推移

2019年

2018年

2017年

2016年

2015年

受験者数

3,862名

3,977名

3,912名

4,211名

4,798名

合格率

8.1%

7.2%

6.5%

7.0%

6.6%

合格率は概ね7%前後となっていて、非常に難しい試験であると言えます。また、受験者数は減少傾向にあります。

(3)試験内容

試験は大きく分けて筆記試験と口述試験によって行われ、試験に見事クリアすると日本弁理士会の実施する登録前研修を受けることができますこの研修を合格して、初めて弁理士としての資格を得ることができます。

(4)受験手続き

工業所有権審議会が定める受験願書に必要事項を記入して行います。そこには、写真と受験費用として12,000円の特許印紙、そして試験を免除することができる要件に当てはまる場合は、それを証明する書類を添付します。

(5)願書

願書は2020年3月2日から4月3日までの間に特許庁などに出向くか、郵送、インターネットによって入手します(郵送、インターネットの場合、願書の請求は3月23日まで)。受け付けられると、受験票が送付されるのでそれを持って試験を受ける必要があります。

(6)試験日程

筆記試験として短答式試験と論文式試験がありますが、短答式試験は5月17日に東京、大阪、仙台、名古屋及び福岡で行われます。合格すると、6月28日に論文式試験の必須科目、7月19日に選択科目の試験が東京、大阪で行われます。論文式試験にクリアすると、10月17日~19日のうちの一日の間で、口述試験が東京で行われます

2020年度(令和2年度)の試験日程は以下の表にまとめることができます。

受験日

合格発表予定日

試験会場

短答式試験

5月17日

6月9日

東京、大阪、仙台、名古屋、福岡

論文式試験

必須:6月28日

選択:7月19日

9月24日

東京、大阪

口述試験

10月17日~19日

のうち、いずれか

11月5日

東京

3.弁理士試験の試験科目と特徴

弁理士試験には

  • (1)短答式試験
  • (2)論文式試験
  • (3)口述試験

の3つがありました。ここではこの3つの試験の試験科目と特徴を見ていきます。

(1) 短答式試験

ここでは弁理士試験の第一関門である短答式筆記試験についてその傾向と特徴を見ていきます。

① 出題形式

5枝の択一式でマークシートにて解答していきます。

② 試験科目と問題数

試験科目

問題数

-特許法

-実用新案法

-意匠法

-商標法

-条約

-著作権法

-不正競争防止法

17問

3問

10問

10問

10問

5問

5問

※2016年の試験から工業所有権に関する法令の科目について、特許・実用新案に関する法令、意匠に関する法令及び商標に関する法令の3つに分離して試験が行われるようになりました。

③ 試験時間

3.5時間

④ 合格基準

満点に対して 65%の得点

ただ、論文式筆記試験及び口述試験を適正に行えるという観点で工業所有権審議会が相当と認めた得点以上であれば合格とみなされます。

⑤ 免除制度

以下に該当する場合は試験免除もしくは一部免除となります。

  1. 短答式筆記試験合格者は、短答式筆記試験の合格発表の日から2年間、短答式筆記試験の全ての試験科目が免除される
  2. 工業所有権に関する科目の単位を取得し、大学院を修了した者は、大学院の課程を修了した日から2年間、工業所有権に関する法令及び工業所有権に関する条約の試験科目が免除される
  3. 特許庁において審判又は審査の事務に5年以上従事した者は、工業所有権に関する法令、工業所有権に関する条約の試験科目が免除される

出願時に証明する資料を忘れずに添付して、免除を受けることで試験を有利に進めましょう。

⑥ 合格率

短答式試験合格率推移

2020年 2019年 2018年 2017年 2016年
受験者数 2,259名 2,895名 3,078名 3,213名 3,586名
合格率 18.2% 18.3% 20.1% 8.9% 15.5%

(2) 論文式筆記試験

短答式試験の合格率には非常にばらつきがあるのが特徴です。短答式試験を合格すると、論文式試験に進むことができます。論文式試験は、必須科目と選択科目の2つがあります。それぞれ見ていきましょう。

① 必須科目

工業所有権(特許・実用新案、意匠、商標の3科目)に関する法令から出題されます。出題範囲には工業所有権に関する条約に関する規定も含まれていて、工業所有権法令の範囲内で条約の解釈・判断を考査されて合否が判定されます。試験時間については、特許・実用新案が2時間、意匠で1.5 時間、商標は1.5 時間の配分となっています。

免除制度があって、以下の場合は免除されます。

  1. 論文式筆記試験(必須科目)合格者は、論文式筆記試験の合格発表の日から2年間、論文式筆記試験(必須科目)が免除される
  2. 特許庁において審判又は審査の事務に5年以上従事した者は、試験を免除される

② 選択科目

出願時点で理工Ⅰ、理工Ⅱ、理工Ⅲ、理工Ⅳ、理工Ⅴ、法律の中から一つ選択して、受験することになります。試験時間は1.5時間となっています。

選択科目にも免除制度があり、以下の要件を満たす場合は試験が一部免除になる、もしくは免除されることになります。

  1. 論文式筆記試験(選択科目)合格者は、論文式筆記試験の合格発表の日から永続的に、論文式筆記試験(選択科目)が免除される
  2. 選択科目に関する研究により学校教育法第104条に規定する修士又は博士の学位を有する者のうち、学位授与に係る論文の審査に合格した者は免除される
  3. 選択科目に関する研究により学校教育法第104条第1項に規定する文部科学大臣が定める学位を有する者のうち、専門職大学院が修了要件として定める論文の審査に合格した者は免除される
  4. 技術士、一級建築士、第一種電気主任技術者、第二種電気主任技術者、薬剤師、情報処理技術者、電気通信主任技術者、司法試験合格者、司法書士、行政書士などの公的資格所有者は免除される

気になる論文式試験の合格率は、以下となっています。

論文式試験合格率推移

2019年

2018年

2017年

2016年

2015年

受験者数

1,070名

1,070名

917名

1,103名

960名

合格率

25.5%

23.9%

24.2%

26.1%

25.8%

概ね25%程度の合格率となっていて、しっかりと知識を活かすことができればさほど難しい試験ではありません。

(3) 口述試験

筆記試験合格者に対し、工業所有権(特許・実用新案、意匠、商標の3科目)に関する法令に関する試験を面接方式で行います。

① 出題範囲

工業所有権に関する条約に関する規定が含まれており、工業所有権法令の範囲内で条約の解釈・判断を考査されることになります。ここまで厳しい試験を合格してきた方であれば、さほど難しい試験ではなくしっかりと自分の意見を述べることができることが要求されます。

② 試験の流れ

各科目で部屋が別れていて、各部屋に試験管は2名いて15分程度が行われます。

③ 合格基準

各部屋でA(良)、B(普通)、C(不十分)の3段階で評価されることになり、合格基準としてはC評価の科目が3科目中で2科目以上ないことが必須となります。

4.弁理士試験の攻略法

ここでは弁理士試験の3つの試験それぞれについて攻略法を解説していきます。

  1. 短答式試験の攻略法
  2. 論文式試験の攻略法
  3. 口述試験の攻略法

(1)短答式筆記試験の攻略法

短答式試験は、特許法・実用新案法、意匠法、商標法、条約、著作権法、不正競争防止法の中から出題されるわけですが、各科目別である程度ポイントが決まっていてポイントを掴むことで効率よく勉強することができます。

短答式筆記試験攻略のポイントは大きく下の2つです。

  1. 主要4科目に比重を集める
  2. コツコツやるな!まずは全体像をつかめ!

① 主要4科目に比重を集める

短答式試験では、主要四科目と呼ばれている特許・実用新案法、意匠法、商標法について特に重視して勉強することが重要です。主要四科目で約80%の出題となり、これをすべて正解すれば合格はほぼ間違いありません。その点で、しっかりとメリハリを付けて勉強することが重要となります。但し、2016年の試験からは各科目で一定の点数が取れないと合格とみなされませんので、イメージとしては4:1の割合を意識してスケジューリングしましょう。

② コツコツやるな!まずは全体像をつかめ!

勉強を進める上で、コツコツと積み上げて勉強していくよりも、逆算式でゴールを明確にして、それに向けてスケジューリングすることが重要です。弁理士試験は、難易度が高く3,000時間程度の学習時間が必要と言われていますこれは、短答式試験だけでなくすべての試験についてのトータル時間ですが、それでも短答式試験に多くの時間を割くのが一般的なやり方です。

勉強方法は、細かく知識を積み上げていくよりも、まずは全体的なイメージを掴んで、その後過去問題などにチャレンジしてわからない部分を重点的に学習していくほうが効率的な勉強を進めるために重要なやり方です。

(2) 論文式筆記試験の攻略法

論文式試験は、基礎的な法条の解釈及び理解力、判断力、論理的展開力と言った、思考力を問うことを目的としています。ですので、知識だけあっても点数は稼げません。しっかりと自分の知識を正しく相手に伝える技術も養っていく必要があります。その点で、基本的に論文試験に必要な知識としては以下の3つがあります

  1. 趣旨
  2. 要件
  3. 効果

この3つを意識して勉強を進めるとよいでしょう。そしてまずは、過去問題を何度も解いていく必要があります。特に、論文式試験は独特な言い回しや記述方法が求められるので、その点で過去問題にチャレンジして何度も演習を重ねるという方法が有効となります。律などの独特な表現は非常に難しいので、過去問を通して慣れていきましょう。

また、判例をしっかりと見ていく必要もあり、その中から見えてくるものも多数あります。例えば、判例の解釈とその根拠を理解することで、その流れを理解できますよ。

(3) 口述試験の攻略法

口述試験は、特許・実用新案、意匠、商標から出題されます。書面に書くのではなく、相手との会話によって回答していくことになりますので、コミュニケーション能力が必須となります。よって、相手としゃべる練習はしっかり積む必要がありますが、口述試験だけの必須知識はなく、あくまでも筆記試験で問われるレベルの知識があればよいのです。

よって、極端な事を言えば論文式試験の合格が決定してから準備すればよいのです。また、以下のテーマについて出題が多いという傾向があります。

  1. 特許・実用新案科目…「特許無効審判」
  2. 意匠科目…「侵害」「意匠権侵害」「権利侵害」
  3. 商標科目…「マドリッド協定の議定書(及びそれに)に基づく特例」

試験時には、絶対に黙ることなく何かを回答することが重要です。ただ、的はずれな事を回答しても意味がなく、質問された内容を端的に回答することが求められます。この会話術を中心として、短時間で効率よくトレーニングを進めてください。

5 サマリー

弁理士試験は非常に難しいものですが、勉強を重ねていけば絶対に合格できる試験です。構えすぎず、モチベーションを高く保ちながら、勉強に励みましょう。また、弁理士試験にかかわらず、何かのテストに挑むときはまずは敵の分析をすることが必須です。

どういった科目がどのくらいの量出るのか、難易度はどれくらいか、などをはじめに分析したうえで自分の生活に合った勉強スケジュールを組んでいくことが重要です。年々受験者数が減少しており、更に試験スタイルも変化していますので、その点を加味して準備を怠らず本番に臨んでください。

6 まとめ

  • 弁理士は知的財産に関するエキスパートであり、その知識を持っていることの証明として弁理士資格がある
  • 2019年度の弁理士試験のスケジュールは既に決定している
  • 短答式試験は主要四科目がメインで出題されて、重点的に勉強するが、各科目でまんべんなく得点する必要がある
  • 論文式試験は独特な試験であり、過去問題などを問いてなれていくことが重要
  • 口述試験はコミュニケーション力が問われるので、トレーニングを重ねることが重要
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