非常に難しい国家資格であることで有名な弁理士試験。
「社会人として働きながら弁理士試験に合格したい!」と考えている方は多いのではないでしょうか。
他方で、多忙な現代の社会人。思うように時間を作れないという悩みにすぐに直面することでしょう。
果たして、どれくらいの時間を弁理士試験の勉強に費やせば合格できるのでしょうか?
結論からいうと、ズバリ「約3000時間」です。多いと感じますか?少ないと感じますか?
いずれにせよ、「正しい勉強方法×約3000時間」で合格を勝ち取ることは可能です。
本記事では、弁理士試験の学習時間にフォーカスして詳しく解説していきます。弁理士試験に合格したい方は是非とも目を通してくださいね!
1 そもそも独学で弁理士試験に合格することは可能なのか?
難関国家資格試験として知られる弁理士試験ですが、そもそも独学で合格することは可能なのでしょうか?
「可能です。」
しかし、それには条件があります。参考書を買いあさり、やみくもに勉強したのでは合格できるものもできません。実は、弁理士試験にいつまでたっても合格できない人の特徴は、以下の2つに類型されることが多いです。
・自分の生活に合った勉強スケジュールを立てられていない。
・勉強法が正しくない。
逆に言えば、この2つに気を付ければ、独学でも合格できます。社会人として働いていると、なかなか勉強に割く時間がないのは事実です。特に、毎日残業がある会社ですと、夜帰宅してから勉強する時間もなく、体力的にもなかなか厳しいものがあるでしょう。
具体的な勉強法は後述しますが、まずは、弁理士試験の特徴から見ていきましょう!
(1) 実は弁理士試験は独学で挑戦しやすい
実は、弁理士試験には独学で挑戦しやすい2つの特徴があります。
1つ目の特徴は、受験資格に制限がなく、誰でも受験できるということです。
例えば、超難関国家資格の代表格である司法試験を受験するには、法科大学院を卒業する、もしくは司法試験予備試験に合格しなくてはなりません。
それに比べて弁理士試験は、年齢や国籍、学歴は一切問わず、誰でもチャレンジできますので自分の学歴などを気にする必要がないのです。ただ、これはあくまでも受験までの要件であって、決して簡単な試験でないということは念頭に置いておきましょう。
2つ目の特徴は、弁理士は人気資格であり、その分参考書が豊富であるということです。
家の近くの本屋さんに行けば、弁理士試験の対策用のテキストがいくつもあるはずです。また、過去問題の情報含め、勉強する上で必要になるであろう情報源がネット上にもたくさん溢れています。資格試験によっては、ニッチ過ぎてテキストもあまり多くなく、過去問も公開されていないものが多数あります。その点では、参考書も豊富で過去問の情報も入手可能である弁理士試験は、社会人にとってもチャレンジしやすい試験と言えます。
(2) 弁理士試験は3つの試験形式がある!
難しい資格である弁理士試験ですので、それを攻略するための方法は多く研究されています。
弁理士試験は、大きく筆記試験と口述試験に分けられます。
さらに、筆記試験の中には短答式試験と論文式試験があります。
ここでは、①短答式試験 ②論文式試験 ③口述試験 の3つの試験の特徴と攻略法をざっくりと見ていきます。
① 短答式試験
短答式試験は、マークシート式で5つの選択肢の中から正解を選ぶだけなのですが、当てずっぽうでクリアできるレベルの試験ではありません。
ただ、出題範囲が決まっていますし、主要4科目と呼ばれる特許・実用新案法、意匠法、商標法で点数を稼げば、ある程度合格への道筋が見えてきます。
以下のような攻略法に従って勉強すれば良いのです。
四法はあまりに広範囲すぎて、すべてを暗記するのはまず不可能です。このような理由から、「要点を掴む」という学習法が重要なのです。
② 論文式試験
論文式試験は、日本人が苦手とする自分の考えを明確にし論述しなければならない試験です。法律の独特な言い回しの表現が苦手な方にとっては、苦痛な試験とも言えます。
また、答えはこれ!というものがなく、自分なりの表現で解答しなければならない点が難しいポイントです。
ただ、この試験も過去問題と解答が公開されていますし、攻略法も存在していますので、絶対にクリアできない試験ではありません!
③ 口述試験
口述試験は、面接方式で行われるためコミュニケーション能力も問われます。実際に弁理士になった時に、クライアントとの会話をはじめ、申請代行を請け負う場合や特許庁などとの交渉も行わなければなりません。
こればかりは知識だけではどうしようもないので、トレーニングなどによって養っていく必要があります。
このように、ある程度試験をクリアするための攻略法があるので、その要点をしっかりと把握してから勉強を進めていけば、絶対にクリアできない資格というわけではありません!
2 弁理士試験の合格に必要な勉強時間はどれくらい?理想の勉強スケジュールはこれ!
弁理士試験に合格するためには、一般的には3,000時間以上の学習が必要とされています。
しかし、それは一般論であって効率よく勉強を進めていけば、より短時間でも合格するレベルに到達することが可能です。
(1) 自分に合った勉強スケジュールを立てよう
まずは、合格までのスケジュールを明確にすることからスタートしてください。その上で、必要な勉強時間として3,000時間を確保しなければなりません。
自分が1日どの程度勉強できるかを抽出して、1週あたりどの程度勉強時間を確保できるかを計算し、勉強をスタートさせるタイミングを決定します。
例年、弁理士試験の短答式試験は5月から行われる事が多いので、1年前からスタートさせるのが一般的です。
イメージとしては、基本的に毎日勉強する事が重要で、平日は3時間程度、休日は8時間程度の勉強時間をとりましょう。
社会人の方でなかなか時間が取れない!という方も、後述する捻出法によって時間確保をすることができますよ。
(2) 参考書を読み弁理士試験とは何かを学べ
最初は、参考書などを一通り読んで、弁理士試験のいろはを学ぶことが重要です。
ここで注意したいのは、いきなりスタートからコツコツと一つずつ学んでいくよりも、ざっくりと概念だけを習得していくほうが良いという点です。
コツコツ型の場合、全体の流れを理解できずに、どこが要点であるかがわかりにくいのですが、ざっと一通り見ていく方法ですとポイントをつかみやすくなってより効率よく学習を進めることができますよ。
(3) 過去問を使え
一通り読んだら、過去問題を問いてみてください。
最初は点数的にも決して芳しくありませんが、ざっとしか読んでいないのでわからなくて当たり前です。
不正解部分は、参考書をメインとしてきっちりと知識を習得して、再度過去問題を問いて正解できるようにしましょう。
ある程度短答式試験の過去問題を解けるようになったら、いきなりでも論文式試験にチャレンジするといったイメージで進めましょう。
概ね、1問1時間程度じっくりとかけて行うと良いでしょう。
まずは必須科目から手を付けて、一通りこなしたら選択科目の問題も行ってみてください。
(4) 短答式試験対策は試験の4か月前から
短答式試験の4ヶ月前となったら、論文式試験対策は一旦一休みして、短答式試験の準備に取り掛かります。
短答式試験では、主要4科目は完全に正解できるようになっておくことが重要ですが、他の科目も合格最低ラインがあるので、邪険にせず確実に点数を取れるように学習しましょう。
その上で、まずは条文を一通り読むことをおすすめします。
ある程度の知識が習得されている時期ですが、テキストなどでは出てこないものなどがあり、新たな発見が多くあるものです。
そして、短答式の過去問題にチャレンジして、間違った部分をフィードバックして行くという作業をひたすら続けます。
また、過去問題を問いていく中である程度のポイントが見えてくるので、そのポイントをメモなどしておくと良いでしょう。
また、何度も間違ってしまう苦手な問題があれば、その科目に特に力を入れて学習することも重要です。
試験が近くなっても間違えてしまう問題があれば、試験前日に最終確認しておくことをおすすめします。
(5) 論文式試験攻略に向けて
短答式試験が終了したら、論文式試験対策に注力します。
短答式試験から論文式の必須科目までの期間は1ヶ月程度しかありません。この時点で、知識はある程度習得しているので、ひたすら論文を作成するトレーニングを重ねます。
過去問題と練習問題を問いていき、間違った場合はその部分を再度学習し直すというのは、短答式試験と同様です。
必須科目が終わったら選択科目の勉強に取り掛かります。
基本的に、選択科目は得意分野を選択しているので、過去問題を解くことに集中してください。
(6) 口述試験も侮るべからず
最後の関門である口述試験は、四法と条約をある程度繰り返して知識のブラッシュアップを重ねると同時に、話す練習をすることも重要です。
流石に、一人でトレーニングするのは難しいので、家族や友人、同僚などに手伝ってもらうのも良いですし、普段の会話の中でも端的に要点を伝えるというトレーニングをするのも有効です。
3 忙しい人のための時間捻出法
社会人として毎日働いている方の場合、なかなか勉強時間が取れないという悩みはつきものです。
しかし、弁理士試験に合格するためには社会人だからと言い訳せず、しっかりと勉強時間を捻出して勉強に臨むことが重要となるのです。
(1) まとまった時間を取ろうと思うな
時間が取れないと嘆いている方の多くは、まとまった勉強時間が必要と感じている方が多いのが実情です。
例えば、毎日2時間以上の勉強時間を計画していて、2時間連続で勉強したほうが確かに効率よく学習できるのですが、社会人でまとめて時間をとること自体が困難であるケースがほとんどです。
よって、1日のトータルで2時間以上の学習をするという考え方に方向転換する方が良いのです。
例えば、電車で通勤されている方の場合は、通勤時間を活用すれば有意義に勉強することが可能です。
通勤時間は毎日ほぼ同じですので、勉強時間に組み込む習慣を作りやすいからです。
ただ、立ったままでの勉強を強いられる可能性もあるので、コンパクトなテキストを用意したりするという工夫は必要です。
通勤時間以外では、会社のお昼休みなどもちょっとした勉強時間の確保においては便利ですね。
(2) 朝勉強のすすめ
残業も多く仕事で疲れてしまって、帰宅してから結局勉強できなかった。などという経験はありませんか?そのような方には、朝勉強するという方法がおすすめです。
朝は、睡眠したことによって脳がリセットされて、フレッシュな状態なので知識を習得するには最適な時間帯です。
脳のゴールデンタイムとも評されていますので、勉強する上では、朝を活用することが望まれます。
また、朝学習のメリットとして、言い訳ができないという点もあります。夜は残業が忙しくて…というケースでも、朝は仕事の連絡も届かないことがほとんどですので、集中しやすいのも魅力的です。子どもがいるご家庭においては、まだ子どもが寝ている早朝の時間帯を活用するというのもメリットとなります。
早起きするのは大変かもしれませんが、数日間続けることで自然と体が慣れてきます。
また、自然と夜も寝るのが早くなり睡眠時間も変わりませんし、朝活は健康にも良いので、是非オススメしたい勉強方法です。どんなに忙しい方でも、少しでも勉強に時間を割いたり、習慣づけを行うことで、弁理士試験を通して人としても一段と成長できます。
是非とも言い訳せずに勉強時間を捻出しましょう!
4 継続は力なり!挫折しない方法とは?
1年近く勉強を進めていくと、本当にこの方法で大丈夫なのか?と疑心暗鬼になることもあります。
また、途中で挫折してしまうことも考えられるので、如何にモチベーションを維持して勉強を続けることができるかが重要となります。
(1) 自分ルールを守れ!
まずは、自分で決めたルールを絶対に遵守することが重要です。
明日に持ち越してやれば良いやと妥協してしまうと、ズルズルと怠け心が生まれて結局スケジュール通り進めることができなくなります。
毎日少しでも良いので、勉強をするという習慣を身につけてください。
その意味でも、勉強時間を確実に確保できやすい朝勉強がおすすめです。
また、自分ルールを守れなくなってくると自己嫌悪からモチベーションの急低下につながりやすいです。
その対策として、自分ルールにはある程度ゆとりを持たせましょう。
例えば、1日最低3時間は勉強すると決めるのではなく、3時間を基準として、2〜4時間勉強するという風にするのです。
その日の仕事が長引いて、いつもより勉強時間が確保できないという時もあるでしょう。
逆に、いつもは3時間で疲れてしまうけれど、調子が良くてもっと集中できるぞ!という日もあるかもしれません。
そういったその日の自分の状態やスケジュールに合わせて柔軟に対応できるようなルールが理想です。
ちなみにこれは、勉強時間だけでなく、ページ数においても応用できます。
このテキストは、1日15ページ進めると決めていたとしたら、それを10〜20ページに変えるというだけです。
ルールができたら、ぜひ身近な方にルールを開示してください。合格に近づくための1つの要素として「監視」という要素があります。
(2) 自分の集中できる環境を見つけよ
毎日勉強していると、徐々にマンネリ化が生まれてくるのは事実なので、稀に環境を変えて勉強するというのも有効な手段です。
例えば、家の中でも普段勉強しているエリアとは違う場所で勉強することで、新鮮な気分で勉強することができます。
また、喫茶店などでコーヒーなどを飲みながら勉強するのも有効です。
ただ、周囲がうるさい環境ですと、集中力が削がれてしまう可能性もあるので、あくまでも静かな環境で勉強することが重要です。
周囲に気をつける意味では、スマートフォンなどの集中力を阻害する要因は排除して、遠ざけておくという点も効果があります。
音楽を聞きながらの勉強は一長一短があって、人によっては効果がないこともあるので注意してください。
(3) ご褒美をうまく使え
勉強のモチベーションアップとして、自分へご褒美を与えるという方法もあります。
何かの習慣を増やしたいというとき、あめを与えるというのはとてもいい手段です。
ここまで勉強したら自分自身へのご褒美を与えるというものを設定することで、しゃかりきになって勉強することができます。別にものなどではなく、お気に入りの音楽を聞くなどの些細なもので構いません。
また、大きな節目ではなく日々の勉強においてのご褒美でも良いでしょう。なるべくモチベーション維持に繋がるように、ご褒美自体もマンネリ化せず、変化させるのも重要です。
(4) 頑張りすぎない
最後に、張り詰めて勉強ばかりするのも逆効果となるので、休日には息抜きすることも重要です。勉強しなければならない…と思っていても、オンとオフをしっかりと切り替えて勉強したほうがより高い効果を発揮します。家族旅行などで遠出をするなどの場合は、思い切ってその日は勉強しない!という方法も良いでしょう。
ただ、それが癖ついてしまうのは問題ですので、あくまでも稀なケースとして活用してください。
5 サマリー
いかがだったでしょうか?
弁理士試験は非常に難易度が高く、少し勉強した程度で合格できるほど甘くはありません。
しかし、きちんと計画を立て、正しい勉強法を実践できれば独学でも弁理士試験に合格することは可能です。1日にどのくらい勉強時間が取れるのか計算し、そこから逆算して、勉強スケジュールを立てましょう。忙しいなかにも意外と時間はあるものです。
また、どうすれば継続できるのか考えなくてはいけません。計画にゆとりを持たせたり、頑張った自分にご褒美を与えるのはとても効果的な手段です。
しっかりと目的意識を持って勉強し、モチベーションを維持してコツコツと学習を積み重ねて合格を勝ち取りましょう!
6 まとめ
- 会社員として働きながらでも弁理士試験に合格することは可能。
- 合格に必要な勉強時間としては概ね3,000時間は見込んでおく。
- 試験の1年前には勉強をスタートさせる。
- 最初にテキストのインプットを一通り進めた後に論文式試験の勉強を重ね、試験日の半年 前から短答式試験の勉強に切り替える。
- 勉強方法としては連続勉強が理想であるが、スキマ時間に勉強することも重要。
- 朝勉強すると脳が活性化されて効率よく勉強できる。
- モチベーション維持のために自分にご褒美を与える方法も有効。