予備試験では、司法試験では出題されない「法律実務基礎科目」という科目が出題されます。憲法や行政法などの法律基本科目に比べると、法律実務基礎科目という科目を初めて聞いても、どのような科目でどういった出題がされるのか、全く分からないですよね。この記事では、法律実務基礎科目の概要や、試験対策について、詳しくご紹介します。これから予備試験を受けようと思っている方は、是非参考にしてみてくださいね。
1 予備試験の法律実務基礎科目とは?
(1) 法律実務基礎科目の概要
予備試験では、短答式試験、論文式試験、口述式試験の3段階の試験を全て突破する必要があります。そのうち、法律実務基礎科目は、予備試験の論文式試験と口述式試験で出題されます。
また、法律実務基礎科目には、民事と刑事の2種類の分野からそれぞれ出題されます。
2 予備試験論文式試験における法律実務基礎科目の対策
法律実務基礎科目は、簡単にいえば、裁判実務についての学習が中心となります。裁判官、検察官、弁護士それぞれの立場に立った裁判実務を勉強していきます。
試験本番で問われることも、この3者の立場に立った問題が出題されます。
まさに「実務」でどのようなことをすべきかといったことが問われるのですね。
具体的に民事実務基礎科目、刑事実務基礎科目それぞれどのような対策をすべきなのか、ご紹介します。
(1) 民事実務基礎科目について
実務といっても、何のことを書けば良いのか分からないと思います。
民事実務基礎科目に関していえば、実務について学習する前に、実体法である民法と手続法である民事訴訟法の理解が必須になります。
これから学習する方には難しいかもしれませんが、法律実務基礎科目を理解するためには、民法と民事訴訟法の理解が前提となるので、順番としては先に民法と民事訴訟法を学習する必要があります。
その上で、民事実務基礎科目では、要件事実からの出題が多いので、要件事実を中心とした学習をすることがとても重要になります。要件事実は、民法を学習する途上でも勉強しますが、民事訴訟法とも密接関連しているので、相互理解が必須となります。
そして、これらを理解する上では、過去問を解くことが最も有効なので、一定程度インプットが終わった段階で、過去問や演習問題を解いてみましょう。その際に重視して欲しいのは、必ず条文を参照するということです。条文の要件と効果は何なのか、それを要件事実とてどのように現れるのかを意識して学習をしてみましょう。
(2) 刑事実務基礎科目について
刑事実務基礎科目においては、実体法である刑法と手続法である刑事訴訟法の理解が必須となります。刑事では、刑法・刑事訴訟法の理解を前提としながら、法曹三者それぞれの観点からの活動について問われるので、事実認定だけでなく、手続きの流れを理解しておくことも重要になります。
民事実務基礎科目と同様に、実体法・手続法との相互理解が不可欠といえますが、実際に実務基礎科目の学習をしていくと、実体法・手続法の理解が更に深まると思います。相乗効果にも繋がるので、これらを意識した学習を進めていきましょう。
3 予備試験口述式試験における法律実務基礎科目の対策
法律実務基礎科目は論文式試験の他に口述式試験でも出題されます。
口述式試験は法的推論力、分析力、構成力、それらを総合して相手に訴えかける弁論能力を審査することが目的です。まず試験官から事例が提示され、それに関する質問が始まります。
民事実務基礎科目では、基本的に論文式試験までに問われる民法といった実体法をベースにしつつ、手続法なども含めて質問されます。実務に沿った質問となるため、民事執行法や民事保全法などの知識を前提で質疑応答が繰り替えされることになり、よりきめ細やかな知識の肉付けが必要です。面接試験のため試験官の投げかける質問を理解し、その場で判断して答えるという現場即応力が非常に重要となります。
従って、口述式試験の対策としては、予備校が行っている模試などを受けて、実際に実践することが重要になります。必要な知識を持っていたとしても、焦って試験官に伝えられないということがあっては勿体ないので、本番のトレーニングをしてみましょう。
刑事実務基礎科目においては、刑法や刑事訴訟法は、まず改めて判例や実務を確認して実際の運用に沿った流れになっているかをチェックするようにしましょう。論文試験対策で使った論証ノートなどで固めるのもおすすめです。
刑法分野の質問で試験官から説明を強く求められるのは、構成要件との関係です。口述試験では犯罪類型の構成要件と各定義をしっかり理解しているか繰り返し質問が飛んできます。もし穴がありそうな部分があれば確実にカバーするように仕上げてください。刑事手続きは基本的な流れを頭に入れておくこと、ポイントとなる手続きは条文や要件を暗唱できるぐらいにさらっておくようにしましょう。
口述式試験では、法曹倫理からの出題もあります(論文式試験でも出題されます)。
法曹倫理は職務基本規定を一通りチェックしておきましょう。試験官から与えられた事例の問題点を指摘できれば、常識的な感覚での回答で乗り切ることができます。
この分野はリアルに日々変化している法曹界の現場の問題なので、あまり肩を張らず受け答えすればクリアできるはずです。
4 サマリー
法律実務基礎科目は、これまでご紹介してきたように、実体法・手続法と相互に関連しているので、一見して難しいと思われがちですが、実務の視点で立った場合の問題が出題されるので、出題される問題も面白いものが多いです。いつか実務家になったことを想像しながら勉強に取り組んでみるのも良いかもしれません。
5 まとめ
・法律実務基礎科目からは、民事実務基礎科目と刑事実務基礎科目が出題される
・法律実務基礎科目は、論文式試験と口述式試験で出題される
・民事・刑事両科目において、実体法と手続法の理解が必須
・口述式試験の対策としては、模試を受けて実際に口頭で試験官に伝える練習をするのがおすすめ