司法試験を目指している方であれば、司法試験対策には過去問が大事!ということは何度も聞いたことがあるのではないでしょうか。もちろん司法試験対策には過去問が大事であることはいうまでもありません。
しかし、実は過去問だけ勉強しておけば大丈夫というわけでもないのです。司法試験に効率よく合格するためには、知識のインプットや知識の一元化、問題演習も過去問と同じくらい重要です。
そこで、本記事では、司法試験における過去問の重要性とそのつぶし方、そして過去問以外にやるべきことについて解説します。司法試験に向けてどのような方法でどのような勉強をしたらいいのかわからないという方はぜひ参考にしてみてください。
1 司法試験には過去問が大事
司法試験合格のためには、まず何よりも過去問が大事です。
時間が限られているからといって過去問対策をしないまま司法試験に臨むのはおすすめできません。また、過去問は最後の実力試しのためにとっておこうと全く過去問に手をつけていないという人も要注意です。
過去問には司法試験合格に欠かせない大事なヒントが盛り沢山です。そのため、司法試験を受験すると決めたらまず過去問研究から始めることをおすすめします。
では、なぜ過去問が大事なのでしょうか?過去問が大事な理由としては、3つあります。
(1)司法試験の傾向と対策がわかる
もっとも重要な理由は、司法試験の過去問を分析することで司法試験の傾向と対策がわかるということです。
司法試験合格を目指すのであれば、まずは司法試験で何が求められているのかを知るということがもっとも重要です。
そして、司法試験の過去問については、司法試験を作成している司法試験委員会が出題趣旨と採点実感で詳細に問題の解説を出してくれています。つまり、この出題趣旨と採点実感を読んで過去問を分析することで、司法試験で何が求められているかわかるのです。
(2)質の高い問題で思考力を鍛えられる
司法試験の問題は、裁判官、弁護士、大学教授など、その分野の専門家で構成される司法試験委員会が作成しています。このような専門家が練りに練って作成した司法試験の問題はとても質が高く、考えさせられる問題ばかりが揃っています。
初めて司法試験の問題をみると何を問われているのか全くわからないということもあるかもしれません。しかし、最初は全く歯がたたなくても、このような司法試験の過去問を解いていくことで、徐々に法的思考力が鍛えられていくことでしょう。
(3)合格する受験生はみんなやっている
司法試験は相対評価です。つまり、周りの受験生ができていることができなければ相対的に不合格のラインに近づいてしまうことになります。
そして、大半の司法試験受験生は過去問を研究して司法試験対策をとってきています。そのため、過去問対策をしていなければ、周りの受験生と比べて大きなハンデを負ってしまうことになるのです。
司法試験に合格する人は、必ずといっていいほど過去問対策をしっかり行なっています。こういった意味でも、過去問対策は司法試験の対策として必須だといえるでしょう。
2 司法試験過去問のつぶし方
このように、司法試験において過去問はとても重要です。もちろん最初は誰しも合格レベルの答案を書くことはできません。
しかし、過去問は実力をつけてから解いてみようと直前期まで全く手を出さないというのは、ゴールがどこかもわからずにやみくもに走っているようなものです。司法試験合格のためには、ゴールがどこにあるのか知った上で、そのゴールに到達するには何が必要かを見極めることが重要です。
つまり、過去問こそ直前期ではなく早期に対策を講じる必要があるのです。
また、司法試験の問題傾向は予備試験とは異なるため、予備試験とは異なる対策が必要となります。そのため、予備試験経由の人も、司法試験の過去問を分析して司法試験の特徴を把握するようにしましょう。
とはいえ、司法試験の過去問対策をするといっても実際にどのようにつぶしていけばいいのかわからないという方も多いのではないでしょうか。そこで、ここでは具体的な過去問研究の方法をご紹介します。
(1)問題文と出題趣旨・採点実感、答案例を読む
いきなり過去問を解いてみてもいいのですが、最初から答案を書くのはなかなかハードです。そこで、まずは問題文を読んでみて、それから出題趣旨と採点実感、答案例を読んで司法試験の問題の雰囲気をつかみましょう。
出題趣旨と採点実感は法務省のサイトに掲載されていて誰でも入手することができます。また、答案例については、司法試験合格者が書いた答案例が載っている書籍などが販売されていますので、それらを参考にしてみるとよいでしょう。
問題文と出題趣旨や採点実感、そして実際に合格した答案を読んでみることで、どんな問題が出るのか、司法試験委員会としてはどのような答案を求めているのか、そしてそれに対してどのような答案を書けば合格するのかといったことがみえてきます。
また、答案例を読んでみると、どのような構成で規範とあてはめにはどのくらい分量を割けばいいのか、どのくらいの枚数を書けばいいのかということもみえてきます。
(2)時間を計って答案用紙に書いてみる
司法試験でどのような問題が出てどのような回答が求められるのかイメージができたら、次は実際に時間を計って答案を書いてみます。
こうすることで、どのくらいのスピードと時間配分で答案を作成すれば実際の試験時間内に答案を完成させることができるかということが体感としてわかってきます。
司法試験は時間との戦いでもあります。試験時間内に問題文を読み、答案構成を考えて答案を書き終えなければならず、想像以上に時間制限がタイトです。
そのため、自分の書くスピードから逆算して何分までに答案構成まで終わらせて答案作成に入らなければならないということをあらかじめ把握しておくことが重要です。
(3)答案例と比べてどこが欠けているかチェックする
答案が書けたら、まずは合格した答案と比べてどこが足りないのかチェックしてみましょう。
チェックするポイントとしては、規範の方向性が合っているか、あてはめで適切な事実を拾うことができているか、拾った事実の評価ができているかということが挙げられます。そして、できなかったポイントについては、なぜできなかったのかという原因も合わせてチェックしておきましょう。
たとえば、問題文の読解は完璧で規範の方向性も合っていたのに、時間が足りずにあてはめで事実を拾いきることができなかったのであれば、とにかく問題をこなして早く解く練習が必要ですし、知識があいまいで規範を導き出すところでつまずいている場合は知識のインプットが必要です。
つまり、ここで自分が現時点でどこが足りていないのか、どこを補強する必要があるのかを分析することで、その後の司法試験対策の方向性も決まってくるのです。
(4)友人・先輩などに見てもらう
友人や先輩など第三者から客観的に答案を見てもらうと、自分では気がつかなかったクセを指摘されたり、有益なアドバイスをもらったりすることができるので、より答案をブラッシュアップすることができます。
自分ではちゃんと書けているつもりでも、第三者が読んだ際にいまいち意味が伝わっていないということもよくあります。自分の答案のクセを見直して、採点者にわかりやすく伝わる答案を目指しましょう。
(5)知らなかった論点はまとめノートに書いておく
司法試験の過去問では、重要な論点が数多く出題されています。そのため、もし自分が答案にスムーズに書くことができなかった論点があれば自分のまとめノートにまとめておきましょう。
3 司法試験には過去問だけでは不十分
ここまでみてきたように、司法試験には過去問が重要なので、その対策はしっかり講じる必要があります。
しかし、司法試験に効率よく合格するためには、過去問だけ勉強すればいいというわけでもありません。司法試験には過去問だけでは不十分といえる理由としては、以下の3つがあります。
(1)過去問は出題論点が限られている
まず1つ目の理由としては、過去問だけでは出題されている論点が限られているということです。新司法試験が実施されるようになってから10年以上は経過していますが、それでも膨大な論点をすべて網羅できているわけではありません。
司法試験ではみんなが知らないような応用論点も出題されることはありますが、基礎的な論点も多く出題されます。
このような基礎的な問題で取りこぼさないためにも、司法試験の勉強では過去問で出題された論点だけではなく幅広く論点をおさえておく必要があります。
(2)初見の問題に対応する能力をつけるのが難しい
2つ目の理由は、過去問だけだとどうしても一度見たことがある問題が多くなってしまうので、初見の問題に対応する能力を身につけるのが難しいというものです。
当然ながら本番の司法試験ではまっさらな状態で問題を解いていかなければなりません。そのため、普段から初見の問題をみて、論点がわからない場合は自分が知っている知識を総動員して規範を導き出す練習をしておく必要があります。
自分の中で知っている知識が多ければ多いほどヒントも増えますし、知識が体系的に整理されて頭の中に入っていれば、それをうまく組み合わせて規範を導き出すこともできます。
つまり、司法試験対策としては、あらゆる論点を体系的に整理してインプットしておく必要があるのですが、過去問だけではそれができないのです。
(3)問題処理能力を鍛えるのが難しい
3つ目の理由は、問題処理能力を鍛えるのが難しいというものです。
司法試験では2時間という限られた時間内に問題を読んで答案まで書き切る必要があるため、知識や思考力のほかに問題処理能力が求められます。
問題処理をすばやく行うためには、最低限みんなが知っているような論点については問題文を見ただけで何も考えずとも答案に規範を書き出すことができ、あてはめでどのような事実を拾って評価すべきかということまでイメージできる状態にしておく必要があります。
この状態にするには、あらゆる論点を体系的に整理してインプットした上で、問題演習をこなしていく必要があり、問題演習量としては過去問だけでは不十分ということになります。
4 過去問以外に司法試験合格のためにすべきこと
では、具体的に過去問以外に何をしていけばいいのでしょうか?
ここでは、過去問以外に司法試験合格のためにしておくべきこと3つをご紹介します。
(1)知識のインプット
まず、あらゆる論点に対応できるよう知識をインプットしておく必要があります。
基礎知識が十分にあれば、司法試験のひねりがきいた応用問題にも対応することができるようになります。そのため、最低限基礎知識については網羅的におさえておくようにしましょう。
(2)インプットした知識の一元化
知識をインプットしただけではそれをうまく使いこなすことはできません。
司法試験の本番でインプットした知識を最大限活かすためには、それを体系的に理解してすぐに答案に書き出せるよう暗記しておく必要があります。
体系的な理解と暗記に役立つのが知識の一元化です。まとめノートなどに分野ごと、テーマごとに論点を整理し、関連する知識をメモしておくことで理解が深まり、復習する際にも効率よく復習することができます。
知識を一元化しておくと、直前期にすべての範囲を総ざらいして理解や暗記が不十分なところを重点的に見直すことにも役立ちます。
(3)問題演習
知識のインプットと一元化と並行して、問題演習もこなしていく必要があります。
問題演習をこなしていく中で自分が理解、暗記できていない論点があれば適宜まとめノートに追加しながら確認していくのがおすすめです。
5 サマリー
司法試験には過去問が何よりも重要です。まずは過去問を解いてみてゴールと自分の現在地を知ることからスタートしましょう。
そして、ゴールと自分の現在地を把握したら、知識のインプットとインプットした知識の一元化、そして問題演習を積み重ねていくことで着実にゴールに近づくことができるでしょう。
6 まとめ
- 司法試験の過去問を研究することで司法試験の傾向と対策がわかる
- 実際に司法試験を解いてみて何が求められているか、今の自分に何が足りないか分析する
- とはいえ司法試験過去問だけでは不十分
- 過去問だけではなく知識のインプットと一元化、問題演習を積み重ねる