『 勝ちに不思議の勝ちあり。負けに不思議の負けなし。』
プロ野球の故野村克也監督も上記の言葉を座右の銘にしていました。
試合に負ける時は、何の理由もなく負けるわけではく、必ず何か原因がある、ということを意味しています。
司法試験も同じです。
残念ながら不合格になってしまう人には共通の原因があります。
本記事では、司法試験に合格する人と不合格になってしまう人の勉強法を比較して、『絶対にやってはならない勉強法』をご紹介します。
1 受かる人は『ゴールから逆算する』落ちる人は『今日できることから考える』
(1)来年の合格のために、今、何を勉強すべきか?
まず、司法試験に合格する人は司法試験本番の日から逆算して勉強することができる人です。
司法試験に合格する人は以下のような思考フローで今日何を勉強するかを決めています。
来年の7月の司法試験に合格したい! ↓ そのために試験の3ヶ月前に過去問を2周はしておきたい。 ↓ そのために半年前には一通りの知識を習得したい。 ↓ そのために、今月は憲法のインプットと問題集を終わらせよう。 ↓ そのために、今週は憲法の人権分野のインプットと問題集をやろう ↓ そのために、今日はこの問題集の◯頁から◯頁まで終わらせよう! |
このように司法試験に合格する人は司法試験の合格のために何が必要かを考え、そこから逆算して今何を勉強すべきかを考えています。
まず、「司法試験に合格したい」という大きな目標を掲げます。
そして、その目標を達成するため『試験の3ヶ月前に過去問を2周はしておきたい。』という中間目標を立てます。このように『その目標を達成するためにはどうしたら良いのか』を繰り返して、最終的には『今日はこの問題集の◯頁から◯頁まで終わらせよう』
と言う非常に小さな目標を立てています。
『司法試験に合格する!』と言うのは夢みたいに大きな目標ですが、『今日問題集を◯頁から◯頁まで終わらせよう』と言う目標は簡単に達成できそうですよね。
ところが、司法試験に合格する人は、このゴールから逆算した小さな目標を日々達成した人なのです。
果てしないゴールに一歩ずつ、けれど着実に近づいたからこそ、大きな目標を達成することができたのです。
また、このように、ゴールから逆算する勉強法は、勉強を進める上で以下のようなメリットもあります。
|
(2) 落ちる人はとりあえず目の前の教材に取り組みがち。
一方で、司法試験に落ちてしまう人には、あまり計画を立てず『とりあえず』で勉強をしている人が多いです。
『今日はバイト休みだし、いっぱい勉強できるな〜。とりあえず、刑法のテキストでも復習しますか』
『友達がこの参考書使ってるから、自分もこの参考書使って勉強するか〜』
「先月までに憲法の問題集を終わらせるつもりだったけど終わらなかったな〜。じゃあ、今月も憲法の問題集やるか」
「この判例の意味が理解できないな〜。よし、今日は一日時間取れるし、丸一日使ってこの判例を理解できるように頑張るぞ!」
以上のように、ゴールを意識せず、漫然と勉強を進めていると、『気がつけば司法試験直前、それなのに試験範囲は全然終わっていない!』なんてことになりかねません。
このようにゴールを意識せずに勉強をすると『たくさんの勉強時間を確保したのに司法試験に落ちてしまった……。』と言う悲惨な事態になりかねません。
2 受かる人の勉強法は『70点を取ろう!』、落ちる人は『100点満点を取ろう!』
(1) 難しい問題に直面した時の対応が明暗を分ける。
司法試験の勉強をしていれば、必ず自分には理解できない難しい問題に直面することがあります。
中には、解説を読んでも、その解説が何を言っているのかわからないという問題もあります。
そんな時にどうするか?
意外なことに司法試験に合格する人はこの手の問題を飛ばしてしまいます。
「え、難しい問題から逃げてもいいの?」
と、戸惑われる方もいるかもしれません。
ところが、「難しい問題からは逃げた方が良い」のです。
まず、法律の勉強はテキストを1周しただけで理解出来るほど甘くはありません。
理解する難易度が高い論点もありますし、複数の分野の知識を総合しないと解答を導けない問題もあります。
そんな難問を、学習初期段階の受験生が理解しようとすると、どうなるでしょうか?
まだまだ、基礎も覚束ない段階ですから、完全に理解しようとすると途方もなく時間がかかってしまいますよね。
合格者は自分の理解が及ばない問題に出会うと、一旦飛ばし、他の問題を解いて自分の実力をつけてから再チャレンジします。
こちらの方が余計な時間がかからないので効率的ですね。
また、「難問は飛ばす」という方法は、司法試験の合格点との関係でも効率が良いといえます。
意外なことに、司法試験に合格するには、それほど高い点数は要求されないのです。
例えば、令和3年の司法試験の短答式試験ならば各科目において満点の40%以上の点をとり、3科目の合計点が175点満点中99点以上得点することができれば合格となります。
(参照:法務省『令和3年司法試験(短答式試験)の結果』)
すなわち、満点の6割に達しなくても司法試験の短答式試験を突破することができるのです。
このため、全ての問題を完璧にこなす必要はないのです。
合格する人はこの点を理解していて
「試験本番で70点を取れる勉強をしよう」と考えて勉強しているのです。
だからこそ、自分の理解できない難問は一旦保留にして他の重要な問題を確実に解けるような学習をしているのです。
(2) 完璧主義者はコスパが悪い。
一方、司法試験に不合格になってしまう人の方が「100点満点を取ろう!」という勉強をしていることが多いです。
すなわち、難しい問題に直面したら理解出来るまで、とことん調べる、といった勉強をする傾向にあります。
試験までに無限の時間があればこの勉強法でもいいのですが、残念ながら現実はそうもいきません。
また、前述した通り司法試験は満点を目指さなくても合格することができる試験なのに、100点満点をとることにこだわりすぎると学習の効率は著しく下がります。
まずは合格することを第一に考えて、難しい問題を保留する勇気も大切です。
3 受かる人は『過去問を先にやる』、落ちる人は『過去問を後回しにする』
有名な兵法書である「孫子」には『彼を知り己を知れば百戦殆うからず』という一節があります。
これは敵の長所と弱点、自分の長所と弱点を知り尽くしていればたとえ100回戦ったとしても負けることはない、という意味です。
司法試験も同じです。
試験本番でどんな問題が出題されるのか、逆にあまり聞かれない知識は何か、自分はどんな分野はしっかりと理解していて、どんな分野の理解が曖昧なのか、知る必要があります。
これらを知る一番効率の良い方法が司法試験の過去問を解くことです。
司法試験受験生の目標は本番の試験で合格点をとることですから、実際に本番で出題された過去問を解いて自分の実力と目標との距離を知ることは学習を進める上で重要です。
そのため、司法試験の合格者は、ある程度の基本知識が出来たらすぐに司法試験の過去問をチェックしていた人が多いです。
(2) 過去問から、逃げてはいけない。
反対に司法試験に落ちる人は過去問を後回しにするという特徴があります。
「基礎知識があやふやな自分が過去問なんか解いていいのだろうか」
「どうせ今過去問を解いたって解けやしない」
「自分の実力を知るのが怖い」
「もっと実力をつけてから過去問を解こう」
などなど、司法試験に落ちる人は様々な理由をつけて過去問を後回しにする人が多いのが特徴です。
しかし、このように実際にどんな問題が出題されるのかわからない状態で勉強をするのは非常に効率が悪いです。
例えば、「明日英語の試験をやります」と先生に言われたとしましょう。
もし、翌日の英語の試験で英作文の問題だけが出題されると分かっていれば英作文に絞って勉強出来るので効率的です。
しかし、明日の英語の試験でどんな問題が出題されるのか、分からない場合はどうしたらいいでしょう?
リスニングの問題が出るかもしれないし、長文読解の問題が出るかもしれません。もしかしたらスピーキングの問題かもしれません。
あらゆる問題を想定した対策をせざるを得ない以上、英作文に絞って勉強した人に比べて非効率であるのは明らかです。
司法試験も同じです。
早い時期から過去問の傾向を分析した人と、過去問に取り組むのを後回しにした人では大きな差がつきます。
そのため、出来るだけ早期に過去問に取り組む必要があるのです。
確かに、過去問に取り組んで、合格のレベルと自分の実力との差に絶望してしまうかもしれません。
しかし、その絶望は合格への確かな一歩になります。
過去問から逃げてはいけません。
4 受かる人は『アウトプットを重視する』、落ちる人は『インプットを重視する』
(1)『アウトプットこそ最強のインプットである。』
司法試験の合格者は、基本書を読んだり、講義を聴いたりするインプットの勉強よりも、過去問や答練などアウトプットの勉強を重視する傾向にあります。
司法試験は法律知識を使いこなして具体的な問題に対処出来る力があるかどうかを試す試験です。
そのため、問題文を読んで法的な問題を発見する力や、自分のもっている法律知識を読み手に伝わる形で表現する力などが司法試験の合格には必要になります。
これらの力は実際に過去問を解くなどのアウトプットの勉強をしないと身につきません。
また、法律の知識は抽象的なものが多く、理解することが難しいことが多々あります。
そんな時、実際に問題を解いてみることで、具体的なイメージが湧き抽象的知識を理解しやすくなることがあります。
数学の授業で、公式を習っただけではいまいちピンと来なかったけど、その公式を使って問題をたくさん解くうちにいつの間にかその公式が使いこなせるようになっていた、という経験がある方もいるのではないでしょうか?
法律の勉強も同じです。
抽象的な知識も、アウトプットの勉強の中で使いこなすことで自然と身につきます。
だからこそ、『アウトプットこそ最強のインプット』と言えるわけです。
(2)『基本書は問題の解き方を教えてはくれない。』
逆に司法試験に落ちてしまう人は基本書を読んだり講義を聞いたりなどのインプットの勉強法を重視する傾向があります。
確かに、基本書を読んで基礎知識を習得することももちろん大切ですが、基本書を読んだだけでは法律の問題に対する解決策を導く力を養うことはできません。
また、司法試験は試験時間にシビアな試験でもあります。
日頃から答案を書く練習をしておかないと本番で途中答案になる危険もあります。
インプットの勉強法もアウトプットの勉強法もバランスよく両立したいですね。
5 受かる人は『教材を絞る』、落ちる人は『教材をいたずらに広げる』
(1)一つの教材を使いこなせるまでやり込む。
司法試験に合格する人は試験本番までに使用する教材を絞ると言う特徴があります。
司法試験は8科目の法律を勉強しなくてはなりません。
試験範囲を一周するだけでも膨大な時間がかかります。
そして、司法試験は試験範囲を一周しただけで、試験範囲の知識を全て理解し、試験本番で使いこなせるようになれるほど甘いものではありません。
司法試験に合格する人は同じ教材を何周も何周もして、着実に自分の使える知識を増やしていくのです。
同じ教材を司法試験までの限られた準備期間で何周もしなくてはならないので、司法試験に合格する人は教材を絞るのです。
『そんなに教材を絞って、もし司法試験本番で自分の問題集に乗っていない問題がでたら不安だな……。』と感じて教材を絞ることをためらう方もいるかもしれません。
ところが、一つの教材をやり込むことで知識を使いこなせるようになれば、自然と見たことのない問題に対応することができるようになります。
また、司法試験は法律の知識を使いこなして具体的な問題に対処できる力を試す試験です。そのため、毎年、受験生が事前に対策したことのないような問題が出題されて、受験生の現場での思考力を試す問題が出されます。
事前にこうした問題に対して準備することはどれだけ多くの教材を使ったとしても不可能でしょう。
むしろ、そのような応用問題にも対応できるように、自分が自信をもって使いこなせる知識を一つでも増やしておくことが重要です。
(2)中途半端な知識はたくさんあっても役に立たない。
一方、司法試験に落ちる人は教材をいたずらに増やしてしまう傾向があります。
『みんなが使ってるあの教材を使った方が良いのかな?』
『友達がおすすめしていたあの教材もやった方が良いのかな?』
と言った安易な理由で教材を増やしてしまうのはおすすめできません。
新しい教材に取り組んで、その教材から得られる知識を使いこなせるレベルで習得するまでにはかなりの時間がかかります。
その期間中に、今まで取り組んでいた元の教材で得た知識が抜けてしまうかもしれません。
結局、今までやっていた教材も、新しく始めた教材もどっちも中途半端なまま、試験本番を迎えることになりかねません。
前述した通り、司法試験は法律の知識を使いこなして具体的な問題に対処できる力を試す試験です。法律の知識を使いこなすにはその分野に対する深い理解が前提になります。
教材をいたずらに広げて中途半端な知識がいくらあっても、問題を解く上ではあまり役に立たないのです。
確かに、問題の解説が難解すぎるなどの場合は教材を変える必要があるかもしれません。
しかし、教材を広げると言うことは上記のようなリスクを伴うので、安易に教材を広げないことをおすすめします。
6 サマリー
いかがだったでしょうか?
司法試験に合格する人と言っても、教材を絞ったり、アウトプットを重視して勉強をしたりするだけで、そこまで特別なことをしていたわけではありません。
しかし、そんな『些細なこと』の積み重ねが司法試験に合格する人と落ちる人の明暗を分けます。
まず、『自分は司法試験に落ちる人の勉強法をしていないかな?』と自身の勉強法を振り返ることが大切かもしれませんね。
7 まとめ
- 司法試験に落ちる人は『とりあえず』で勉強する。
- 司法試験に落ちる人は完璧主義に陥ってタイムオーバーになりがち。
- 過去問から逃げてはいけない。
- 基本書は問題の解き方までは教えてくれない。
- 教材をいたずらに広げてはいけない。