行政書士試験においては、一般法と特別法の関係について問われることがあります。
この記事では、具体例をあげながら一般法と特別法の関係とは何か解説していきます。
行政書士試験受験生は、確実に点が取れるようこの記事を参考に勉強を進めてください。また、行政書士試験以外の法律系資格の受験生にも役に立つ内容になっています。
是非、具体例を頭に入れて、各自の試験対策に活かしてください。
1 一般法とは
一般法とは、一般的な定めをした法律や規定のことを言います。
具体的には、民法や刑法が一般法にあたります。
例えば、スーパーで食品を購入する場合を想定してみましょう。
レジでお会計をする際には、その時点で、スーパー側は商品を売り、消費者側はお金を払う必要があります。これを法律的にみると、お会計の時点で、消費者側とスーパーとの間で、売買契約(民法555条)が成立したといえます。
この売買契約を定めた民法555条は、企業間の取引から一般の人々が日常生活で行う「売る・買う」という行為まで幅広く適用されます。
このように、民法は、一般的な定めをした法律や規定といえ、一般法の例といえます。
2 特別法とは
特別法は、特定の人や地域、事柄などについてのみ適用する場合の法律をいいます。
そして、一般法と特別法では、特別法が優先して適用されます。
たとえば、民法に対する特別法として会社法があります。
民法は、上記で説明したように、日本国内のすべての人に適用される法律です。しかし、迅速な取引が要求されるビジネスの世界で、すべての場面で民法を適用すると、取引が迅速に行うことができず不都合が生じます。そこで、一般法である民法を修正するべく、ビジネスの世界では、特別法である会社法が一般法である民法に優先して適用されます。
3 一般法と特別法の具体例
一般法と特別法の区別は、相対的に決まります。
以下では、一般法と特別法の具体例を紹介していきます。
⑴ 民法と商法・会社法
① 売買契約の成立
民法上の規定によると、売買を含めた契約が成立するためには、申し込みと承諾が必要と規定されています(民法522条1項)。
しかし、商法509条1項では、「商人が平常取引をする者からその営業の部類に属する契約の申込みを受けたときは、遅滞なく、契約の申込みに対する諾否の通知を発しなければならない。」と定められ、2項では、「商人が前項の通知を発することを怠ったときは、その商人は、同項の契約の申込みを承諾したものとみなす。」と規定されています。
これらの規定は、売買契約の申込みに対して、商人が諾否の通知をしない場合、つまり承諾の意思表示がない場合でも売買契約が成立することを意味します。
ビジネスの世界において、いちいち相手方の反応を要求していたのでは、迅速な取引が出来ないという趣旨から、この規定は設けられています。
そのため、商法509条は、民法522条との関係では、特別法にあたるといえます。
② 利息
例えば、商品の売買を考えてみましょう。
売主が買主に対して、商品Aを100万円で売る契約を締結しました。そして、買主は、売主に対し、商品Aを引き渡しました。
しかし、買主は、売主に対し、決められた代金支払日にお金を払わず、売主は訴訟を提起することにしました。
この場合、売主は、商品Aの代金である100万円を請求できるだけでなく、遅延損害金を併せて請求することができます。
では、この遅延損害金はいくら請求できるのでしょうか。
民法では、現在3%と定められています(改正前民法では5%)。一方で、旧商法では、6%と定められていました。
そのため、遅延損害金の計算にあたっては、民法と旧商法が一般法と特別法の関係にあったといえます。
もっとも、民法改正とともに、旧商法のこの規定も削除されました。
そのため、現行法の下では、ビジネスの世界においても、遅延損害金は3%となりますので、注意が必要です。
⑵ 民法と労働法
労働法では、民法の規定を修正しており、民法に優先して適用されます。
例えば、解雇について見てみましょう。
使用者としては、労働者を解雇したいと考えた場合、いつでも解雇できるのでしょうか。
民法627条1項には、「当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から2週間を経過することによって修了する。」と定められています。
つまり、民法によると、使用者は、雇用期間が定められていない場合には、いつでも自由に労働者を解雇することができることになります。
しかし、民法の規定をそのまま適用すると、労働者としては、突然、何の前触れもなく、クビを言い渡されることになります。そうすると、労働者としては、いつクビになるかわからないという不安定な環境で働かなければなりません。
そこで、労働契約法16条では、使用者が労働者を自由に解雇できないよう制限する規定を設けています。この労働契約法16条が民法よりも優先されるため、一般法と特別法の関係にあるといえます。
⑶ 刑法・刑事訴訟法と少年法
刑法・刑事訴訟法は、広く一般的に適用されます。例えば、万引きをした場合、刑法235条に定められた窃盗罪を犯したことになり、刑事訴訟法の規定によって刑事手続が進んでいきます。
一方で、少年の場合、少年法の規定により、刑事訴訟法とは異なった手続で進んでいきます。
そのため、少年の場合、刑事訴訟法ではなく、少年法が優先して適用されることになるため、一般法と特別法の関係にあるといえます。
5 サマリー
一般法は、特別法を破ることについて、具体例をあげて説明してきました。行政書士試験対策としては、最低限として、一般法と特別法では、特別法が優先して適用されることは覚えておきましょう。また、一般法と特別法の関係を意識して法律を勉強すると、理解が深まるはずです。勉強する際には、一般法と特別法の関係も意識してみてください!
6 まとめ
- 一般法とは、一般的な定めをした法律や規定である。
- 特別法は、特定の人や地域、事柄などについてのみ適用する場合の法律である。
- 一般法と特別法では、特別法が優先して適用される。