この記事では予備試験の論文式試験の試験科目の1つである「実務基礎科目」について、どのようなことを勉強し、試験の対策はどのように行えばよいのかという点について詳しく解説していきます。民法や刑法などの実定法や民事訴訟法・刑事訴訟法等の手続法は大学や予備校で勉強している人も多いと思いますが、実務基礎科目についてはあまり知らない人も多いと思います。予備試験の受験を考えている方はぜひ今回の記事を参考にしてくださいね!
1法律実務基礎科目とは
法律実務基礎科目では、民法・刑法で学んだ知識と民事訴訟法・刑事訴訟法で学んだ手続法の知識を実際の裁判でどう扱うのかというという点が扱われており、実体法と手続法の中間的な科目であるといえます。
予備試験では論文式試験と口述試験のそれぞれで試験科目になっており、論文式試験では、法律実務基礎科目には他の基本7法や選択科目と同様に50点が配点されており、他の科目同様重要な科目となっています。
法律実務基礎科目は大まかに言えば民事裁判に関する①民事実務基礎と、刑事裁判に関する②刑事実務基礎に分かれています。以下では、主な出題範囲について説明します。
(1) 民事実務基礎科目
民事実務基礎では、民事訴訟実務や法曹倫理が出題範囲となっています。具体的には民事実務基礎の中で最も重要である要件事実に加えて、事実認定、弁護士倫理・民事保全法・民事執行法などが出題範囲に含まれています。
(2) 刑事実務基礎科目
刑事実務基礎では、刑事訴訟実務と法曹倫理が出題範囲となっています。具体的には、事実認定や勾留や公判前整理手続などにおける刑事手続、弁護士倫理、証拠手続きや伝聞証拠などが出題範囲に含まれています。
2 法律実務基礎科目の重要性
法律実務基礎科目の試験形式について理解したところで、法律実務基礎科目を学ぶことでの試験上でのメリットはどれほどあるのでしょうか。
(1) 論文式試験では比較的高得点を取りやすい
1つ目のメリットは、法律実務基礎科目は論文式試験において他の科目と比べて高得点を取りやすいという点です。というのも法律実務基礎科目は出題範囲が他の科目と比べて狭いかつ過去問の焼き直しが多いために、過去問をしっかりと対策すれば高得点を取るのは他の科目と比べれば容易だといえます。法律実務基礎科目は対策が後回しにされがちですが、試験合格のためには非常にコストパフォーマンスが良く、お得な科目です。
(2) 民法・民事訴訟法の理解に役立つ
2つ目のメリットは、法律実務基礎科目のうち民事実務基礎の勉強は民法や民事訴訟法の理解に役立つという点です。民事実務基礎の中心となる「要件事実」は、民法の事例問題等で主張・反論を考えたり、民事訴訟法の弁論主義の適用場面などで主要事実を特定したりする場面などで用いたりする際に有効な知識となります。
3 論文式・口述試験の対策
(1) 民事実務基礎
論文式試験の民事実務基礎では要件事実が勉強の中心となります。勉強する際には過去問を通しながら訴訟物や請求の趣旨のパターンを抑えるとよいでしょう。
また、証拠は二段の推定を用いた私文書の成立の真正を中心に過去問を検討しましょう。民事執行法・民事保全法についてはあまり深い知識や論点は問われないので、予備校の実務基礎対策講座や市販の対策本を見た上で過去問を解いて慣れていきましょう。
口述試験については、論文式試験と出題範囲は同様です。論文式試験の合格発表から口述試験までは約2週間と短く、かつ過去問題は公表されていないので、合格者らの再現問答を利用しながら論文式試験での出題範囲を復習しましょう。
(2) 刑事実務基礎
論文式試験の刑事実務基礎については、以前は事実認定の出題が多かったものの、近年は伝聞証拠の該当性判断を含めた刑事手続からの出題が高まっているのもあり、刑法・刑事訴訟法の勉強が応用できます。その他弁護士倫理などは出題頻度が低く、過去問を通しての学習で足りるでしょう。また、事実認定は犯人性や構成要件該当性が問われますが、これらも過去問を通して考慮要素や認定のポイントを学習しましょう。
刑事実務基礎の口述試験については、上述の民事実務基礎と同様です。
4 サマリー
いかがだったでしょうか。論文式試験の対策も含めれば予備試験の学習量は基本7法だけでも非常に多いため、実務基礎科目まで手が回らないという人も多くいると思います。しかし、今回説明したように実務基礎科目は短時間で高得点が取りやすい上、実務基礎科目のうち民事実務基礎科目では、民事訴訟法や民法などの理解に活きてくる「要件事実」が試験範囲に含まれているため、科目間の相乗効果の観点からみても非常にお得な科目といえます。みなさんもぜひ実務基礎科目を得意にして予備試験合格を目指しましょう!
5 まとめ
- 実務基礎科目では「要件事実」や「事実認定」など実際の訴訟で用いる能力の基礎的な部分が問われる
- 高得点を得やすく、特に民事実務基礎科目は他の民事系科目との相乗効果が期待できる
- 対策には予備試験の過去問題や口述試験の再現問答を参考にする