この記事では司法試験・予備試験の試験科目のうち、民訴勉強法の勉強法について、予備試験の各試験形式にまで踏み込んで詳しく解説しています。「民訴は眠素」といわれるように、民事訴訟法は抽象的で難しいかつつまらないと思われがちであるため苦手な人も多いと思います。現在予備試験の勉強をしているが民事訴訟法の理解が進まない、どうやったら得意にすることができるのかなどを知りたい方はこの記事を参考に勉強を進めていってください!
1民事訴訟法はなぜ難しいのか
民事訴訟法の対策について解説する前に、その前提として民事訴訟法は一般的になぜ難しいと思われがちなのかという点を説明していきます。
(1) 重要な概念が明文で規定されていない
まず1つ目に挙げられる原因は民事訴訟法上の重要な概念が条文に明文として規定されていないことです。民事訴訟法では、「弁論主義」等の重要な概念が多数あります。しかし、これらの重要概念が必ずしも民事訴訟法の条文に規定されているわけではありません。例えば上記の弁論主義は弁論主義第1テーゼ、第2テーゼ、第3テーゼと分かれますが、そのいずれも条文に根拠があるものではありません。そのため、条文の文言を解釈する他の科目と異なり、やや論点の理解が空中戦になりがちになってしまいます。
また、民事訴訟法では「処分権主義」や「既判力」など条文上に一応の根拠があるものでも、条文だけで解決できず、論点も1つの概念あたりの量や深さで言えば他の科目よりも多いかつ深い傾向にあります。これが民事訴訟法の難しさの1つといえます。
(2) 円環構造を持っている
手続法の中でも特に民事訴訟法は、前の手続きが後の手続きに影響し、その一方、後の手続きが前の手続きに影響するというような前後の手続きが相互に関連し合う「円環構造」という構造になっています。
そのため、勉強をしていく中では、ある論点を理解するには前の手続きについて知らないと十分に理解することが難しいという点があります。この「円環構造」も、民事訴訟法が難しい1つの原因となっています。
(3) 抽象的な議論になりがち
民事訴訟法は刑法や民法などの科目と異なり、抽象的な議論になりがちです。前に説明した重要概念の明文の規定がないという点も含め、民事訴訟法自体を学んだことのない人には取っ付きにくい上、議論も馴染みのない用語がたくさんでてきます。
2 民事訴訟法の勉強法
以上のように民事訴訟法は一般的に難しく、苦手意識を持つ人も多くいます。それでは、民事訴訟法はどのように勉強すればよいのか、詳しくみていきましょう。
(1) 民事訴訟法の試験では何が問われているか
民事訴訟法では「弁論主義」・「処分権主義」・「既判力」をはじめとする重要な概念が多数あります。そしてこれらの理解こそが試験で問われています。これらの概念は正確な理解も難しいために試験で狙われやすく、同じ概念に関わる問題でも角度を変えて問われて再度問われることが多くあります。
そのため、民事訴訟法、特に論文式試験ではこれらの概念を定義も含めて正確かつ深く理解することが求められています。その際には訴訟物レベルでは処分権主義、主張レベルでは弁論主義、立証レベルでは自由心証主義というように、民事訴訟の段階構造をもとにどのステージでの議論なのかを整理しながら概念を理解していくとよいでしょう。
また、民事訴訟法の抽象的な議論だけで終わらせるのではなく、あくまで問題文など具体的な事例に即して考え、解答することも重要です。
(2) 短答式試験
民事訴訟法の短答式試験では、他の科目同様、条文と判例が非常に大切になります。また、短答式試験では論文式試験ではあまり問われないような民事裁判の細かな手続きなどについても多く問われます。そこで、民事裁判の訴え提起から終局判決、上訴などの一連の民事裁判手続きを大まかに把握することが非常に有効となります。そのうえで、個々の手続きの制度趣旨を考えながら条文を素読することも条文の理解には役立つでしょう。
また、論文式試験等の勉強をしていると通常の手続きから外れた状態における不服申立て等の手続きが目に入ることがあると思います。しかし、あくまで基本の軸となるのは正常な裁判手続きです。勉強の際にはこの基本的な一連の手続きを軸に勉強するようにしましょう。
なお、判例については、論文式試験の勉強と重なるので、判例の結論だけを丸暗記しようとするのはやめましょう。結論だけではなく、なぜその結論に至ったのかという理由付け等も抑えることが大切です。
(3) 論文式試験
論文式試験では、前述の通り、民事訴訟法の重要概念の理解が問われることが多くなっています。そこで、インプットの際からこれらの概念の定義を正確に抑え、暗記することが非常に大切です。ただし、ただの定義の丸暗記ではなく、なぜそのような定義になるのかという点について制度趣旨を考えたり、他の制度などと比較したりしながら体系的に考えてみましょう。特に複雑訴訟では様々な訴訟形態の中から問題文の事案において有効な訴訟形態を選択して論じなければいけない場面もあるので、どのような利益・目的のためにこの手続があるのかという点を簡単な事例を元にまとめるのも勉強になります。
また、論文式試験では触れたことのない現場思考の論点も出題されますが、民事訴訟法の抽象的な議論だけに終わらせず、具体的な事案の下で解答するようにするとよいでしょう。
そして、民事訴訟法の勉強では民事実務基礎科目の試験範囲である要件事実や、実体法である民法の勉強をしっかりと進めることも有効です。特に要件事実は弁論主義などの適用範囲である主要事実を見定めるのに不可欠となります。民事実務基礎科目の勉強も民法と民事訴訟法のインプットが終わり次第すすめるようにしましょう。
3 サマリー
いかがだったでしょうか?民事訴訟法は司法試験・予備試験の試験科目のなかでも特に理論面で難しい科目ではありますが、きちんとした方針に基づいて対策すれば少なくとも苦手から抜け出すことは可能です。今回説明した勉強法を参考にして、今後も予備試験の勉強を頑張っていきましょう!
4 まとめ
- 民事訴訟法は重要概念が明文に規定されていない点などによりとっつきにくい
- 重要概念の理解、定義の暗記を大切にする!
- 要件事実や民法をしっかり勉強すると民事訴訟法の理解が進む
- 短答式試験では条文と判例を重視し、基本的な手続の流れを抑える
- 論文式試験でも重要概念の理解を大切に