令和3年に17歳の高校生が、最年少合格者として予備試験の合格を果たし大きな話題となりました。同世代で法曹に興味を持たれている方にとっては大きな刺激となったのではないでしょうか。
一般的には、司法試験(予備試験)の勉強を始めるのに適した年齢は大学生頃をイメージされる方が多くいらっしゃいますし、例年20〜24歳が最も合格者の多い年齢層となっていることは事実です(法務省データより)。
しかしながら、合格者の年齢層は幅広く、毎年、多くの方が文系最高峰といわれる難関試験にチャレンジし未来を切り拓いています。
高校生の皆さんが、自分の進路に悩むことは当然のことです。「難関試験だから自分には絶対無理・・・。」と思わずに、今のうちにたくさん情報収集をしてみてくださいね。
この記事は、司法試験(予備試験)に興味をお持ちの高校生と親御様の「はじめの一歩」となるべく、ご参考になれば幸いです。
1 司法試験(予備試験)学習を高校生からフライングスタートするメリットとは?
一般的には、「大学に行ってからでも遅くないのでは・・・。」と思われる方が少なくありません。
果たして、大学入学後の時期は、司法試験(予備試験)学習をするのに適した時期といえるのでしょうか?
大学入学後は、さまざまな環境の変化に適応することで精一杯になる方が殆どです。授業や行事もたくさんあり、場合によってはアルバイトやサークル活動で忙しくなります。せっかくの大学生活ですから、さまざまな経験を積んでおきたいという気持ちはごく自然なことでもあります。
このような理由から、入学後しばらくは、とても司法試験(予備試験)の勉強に余裕を持って取り組める環境ではありません。
では、無理なく司法試験(予備試験)の学習を始めるにはどうしたら良いのでしょうか?
結論からいえば、高校生のうちから少しずつ勉強を始めていれば、無理なく大学生活と両立できるでしょう。
ここでは、司法試験(予備試験)の学習を高校生からフライングスタートするメリットを3つのポイントに絞り、みていきましょう。
(1) 司法試験(予備試験)の学習が予習機能を果たす
大学入学前から司法試験(予備試験)の学習を始めることによって、大学の授業をより深く学べるというメリットがあります。
例えば、法学部進学であれば、法律学習を先取りしていることによって、入学した時点で自分の得手不得手を把握できるレベルに到達しているでしょう。このため、苦手部分に関しては重点的に学習し、得意部分に関してはより発展的な学びを習得できるでしょう。
他学部進学の場合でも、自分の専攻分野に加えて法学という専門的な分野の学習を習得できるのですから、法学に限らず幅広い専門知識を持った優秀な人材として、後の就職に有利となることが期待できます。
在学中に予備試験に合格しておけば、『司法試験受験資格』『就職に有利』の2つが担保できますので、安心してサークル活動や留学など、充実した大学生活を送れるのではないでしょうか。
(2) 将来の選択肢が広がる
予備試験の勉強を早めに行うことで得られるメリットは多くありますが、法曹の世界だけではなく、予備試験学習で得た知識の転用が効くという点も心強いのではないでしょうか。
例えば、公務員試験や他資格受験(弁理士、司法書士、社会保険労務士、行政書士、宅建など)などが挙げられます。英語が得意であれば、士業・一般企業問わずグローバルに活躍できるチャンスが広がります。
また、先述のとおり、試験科目が大部分重複しているため、最終目標である司法試験までのゴールが射程距離として見えてきます。「あとこれだけやったら合格できる!」という感覚を持つことができ、その分さまざまな予定を立てやすくなるでしょう。
例えば、留学や他分野の勉強をする、プライベートで遊びの予定を計画的に立てる、力試しに他資格へチャレンジするなど、大学生のうちにしかできないことも存分に楽しめるチャンスが広がります。
(3) ライバルと差をつけられる
冒頭でも触れたように、令和3年度は、高校生(最年少)の予備試験合格者が誕生しましたが、それだけに留まらず、司法試験においても高校生(最年少)の合格者が誕生し話題を呼びました。(※出願時の情報に基づく)
『受験生=ライバル』とするならば、法務省のデータからも大学在学中の学生(ライバル)が最も多いことがわかります。忙しい大学生に比べ、比較的時間的余裕のある高校生のうちにスタートダッシュを切ることでライバルと差を付けられるという点もメリットといえるのではないでしょうか。
【令和3年度司法試験(予備試験ルート)最終合格者 職種別】
職種 | 最終合格者(人) |
公務員 | 18 |
教職員 | 0 |
会社員 | 31 |
法律事務所事務員 | 3 |
塾教師 | 0 |
自営業 | 9 |
法科大学院生 | 105 |
大学生 | 153 |
無職 | 44 |
大学院生 | 1 |
その他 | 10 |
また、大学進学後、仮に法学部入学であれば、先に法律知識を習得していますので、理解度も増し同級生に比べ一つ頭が抜きんでる存在となることが期待できます。
また、学校により一概にはいえませんが、既に附属高校などに在学中のケースであれば、大学受験の必要がありませんので、高校在学中に予備試験合格・司法試験合格も夢ではありません。大学で留学をしたり、その他学びたい分野やさまざまな活動を存分に経験することができます。
法科大学院を否定するわけではありませんが、法科大学院に行ったからといってそれだけで必ず司法試験に合格できるというわけではなく、現実には多くの学生が法科大学院に通いながら予備校で司法試験(予備試験)対策を行っています。そのため、合格時の年齢は早くても20代半ばとなるケースが多いのが実情です。
高校生のうちは、まだ完全に自立する事が叶わない年齢です。親元に居て経済的な援助や生活のサポートをしてもらえるうちに効率良く勉強して合格しておけば、本人だけではなく支える家族にとっても負担が少なく済みます。
2 将来は法曹三者(裁判官・検察官・弁護士)志望?その流れとは
テレビや映画で目にする裁判官や検事、弁護士の活躍はとても格好良いですよね。人の人生を左右する法曹三者の担う職責は非常に大きいですし、故に非常に高い壁を乗り越えなくてはならないこともまた事実です。早くても合格するまでに数年かかる難関試験をクリアしなければなりませんが、成功の果てには、一握りの人にしか見えない世界が広がっています。
ここでは、法曹三者になるまでの流れを見ていきましょう。
(1) 司法試験の受験資格を取得する
【司法試験受験資格を得るためには2つのルートがある!】
◆法科大学院修了者ルート(大学の法学部からだと既習コース2年でOK)
◆予備試験合格者ルート
※注:文部科学省「法科大学院の教育と司法試験等との連携等に関する法律等の一部を改正する法律案」によれば、令和5年より一定の条件を満たすことにより、法科大学院在学中においても司法試験を受験することが可能となります。詳細については、随時チェックされることをおすすめします。
司法試験の受験資格を得るためには、上記のとおりどちらかのルートを経る必要があります。
(2) 司法試験の合格を果たす
司法試験(予備試験)の概要を簡単にまとめてみましたので、ご参考になさってください。
試験科目については、大部分が重複していることがおわかりいただけるかと思います。
司法試験合格者の合格率を見てみると、予備試験合格者の司法試験合格率は93.5%という驚きの合格率です。
つまり、予備試験に合格すれば、ほぼ司法試験に合格できる力が備わっているといえます。そのため、近年では大学在学中に予備試験合格を果たし更には司法試験合格さえもクリアするという快挙を遂げている学生が多いことも事実です。法科大学院に進学しなくても司法試験に合格しているため経済的・時間的メリットが大きく人気があるのも頷けます。就職する時期も従来に比べて(法科大学院修了までに2〜3年かかり、その後に司法試験受験)早期に就職活動ができるため選択肢も広がり安心なのではないでしょうか。
【司法試験・予備試験 概要】
予備試験科目 | 司法試験科目 | |
試験日(例年) | ・短答式試験 5月頃
・論文式試験 7月頃 ・口述試験 11月頃 |
・短答式試験及び論文式試験
5月中旬に中1日を挟み5日間 |
合格率(例年) | 4%ほどを推移 | 30%ほどを推移
〈参考:令和3年度〉 ・予備試験合格者の合格率93.5% ・法科大学院修了者の合格率34.6% |
短答 | 憲法 | 憲法 |
民法 | 民法 | |
刑法 | 刑法 | |
商法 | ー | |
民事訴訟法 | ー | |
刑事訴訟法 | ー | |
行政法 | ー | |
一般教養 | ー | |
論文 | 憲法 | 憲法 |
民法 | 民法 | |
刑法 | 刑法 | |
商法 | 商法 | |
民事訴訟法 | 民事訴訟法 | |
刑事訴訟法 | 刑事訴訟法 | |
行政法 | 行政法 | |
選択科目【倒産法・ 租税法・ 経済法・ 知的財産法・ 労働法・ 環境法・ 国際関係法(公法系)・ 国際関係法(私法系)】※いずれか1科目を選択 | 選択科目【倒産法・ 租税法・ 経済法・ 知的財産法・ 労働法・ 環境法・ 国際関係法(公法系)・ 国際関係法(私法系)】※いずれか1科目を選択 | |
法律実務基礎科目(民事・刑事) | ー | |
口述 | 法律実務基礎科目(民事・刑事) | ー |
参照:法務省「司法試験」・「司法試験予備試験」
(3) 司法修習を経て二回試験に合格する
司法試験に合格すると、司法修習と呼ばれる約1年間研修を受け、最終関門である司法修習考試(いわゆる二回試験)に合格しなければ法曹三者の資格が付与されません。裁判所のHPによれば、司法修習とは以下の通りです。
“司法修習は,法科大学院で学んだ法理論教育及び実務の基礎的素養を前提として,法律実務に関する汎用的な知識や技法と,高い職業意識や倫理観を備えた法曹を養成することを目的としており,法曹養成に必須の課程として置かれています。司法修習の最終試験(司法修習生考試)に合格して司法修習を終えることにより,判事補,検事又は弁護士となる資格が与えられます。”
裁判官になるには?!司法試験に合格した後のステップについても紹介!
司法試験に合格して憧れの検察官を目指す!予備試験ルートのススメ
司法試験とは?合格した後弁護士になるまでの流れをご紹介!
3 高校生で「司法試験(予備試験)学習フライングスタート」を決めたらすべきこと
最終的に司法試験合格を目指そうと思われたら、まずは予備試験学習からスタートされることをおすすめします。理由は、これまでも見てきた通りですが、司法試験の合格率が高いことや時間的・経済的メリットが大きいことなどが挙げられます。
★予備校の受講期限と大学受験期間の学習スケジュールの調整が重要★
〜逆算思考でスケジューリングをしよう!!〜
① 大学受験の勉強期間の把握
② 予備試験の学習スタート時期の検討
③ 予備校のリサーチ(費用、受講期限、受講形態など)
「予備試験に合格するためには、1日12時間くらい毎日勉強しなければならないのでは・・・。」と思われる方が多くいらっしゃいますが、そのようなことはありません。受験生の置かれている状況により千差万別であるというのが答えです。
試験の直前期は、ある程度の勉強量が必要になることは否めませんが、それでも高校生のうちから効率的に勉強すれば、予備試験当日直前に焦って1日何十時間も勉強漬けになってしまうことは回避できます。
そして、合否を大きく左右するのが予備校です。ここでは、上記のポイントを元に予備校選びにおいて大切にしていただきたいことについて解説して参ります。
① 大学受験の勉強期間の把握
まず、大前提として、予備試験の勉強を始める時期が試験本番から逆算して短期間であればある程、直前期の負担は大きくなります。
したがって、目指される大学の受験勉強期間の把握は必須です。「いつからいつまで」なのかをしっかり把握しましょう。
希望する大学の受験勉強期間の妨げとなるような時期に、予備試験の学習をスタートすることはおすすめではありません。
② 予備試験の学習スタート時期の検討
大学受験と予備試験の学習時期が重なり大きな負担となることを心配されるのではないでしょうか。確かに、大学受験期に予備試験の勉強に夢中になるあまり、肝心の大学受験勉強が疎かになってしまえば、元も子もありません。
これについては、スケジュール調整を含めたメンタル面のサポートなど、ある程度の親御様のご協力は必要となるでしょう。
したがって、予備試験の学習スタート時期の検討は、①と併せて、慎重に行なわれることをおすすめします。これを誤ってしまうと「二兎を追う者は一兎をも得ず」となり兼ねませんので、親子揃って無理のないスケジュールではないかどうか慎重に検討してください。
また、予備校のカリキュラムは微妙に異なりますので、気になる予備校があれば説明会や相談会(個別がマスト)に積極的に参加して、疑問点や不明点などを納得のいくまでしっかりと確認されることをおすすめします。
個別スケジュール作成や調整のアドバイスがもらえる予備校であるか、且つ、自分に合ったスケジュールで無理なく予備試験の勉強が行えるカリキュラムが備わっている予備校かどうかしっかりと見極める必要があります。
つまり、受講生フォローが充実しているかどうかは大きなポイントとなります。
③ 予備校のリサーチ(費用、受講期限、受講形態など)
次に、予備校選びを行う際は以下のような点をチェックしてみてください。
◆合格に必要な講義内容がコンパクトにまとまっている
◆論文演習量(添削あり)が豊富
◆受講期限が短すぎない(2年以上がマスト)
◆受講形態はオンラインが可能
◆講師の解説がわかりやすい(無料講義を活用しチェック!)
◆受講生フォローの充実
大手予備校などでは、講義内容が重厚すぎて消化しきれず挫折してしまう受験生も少なくありません。ただでさえ難しい学問ですから、合格に必要なものだけをコンパクトにまとめた内容の講義や教材をぐるぐる回していくという方法が司法試験(予備試験)対策では有効です。
また、他の試験対策においても常識となりつつある勉強法ですが、いわゆる『過去問演習の反復』は、司法試験(予備試験)の論文式試験において最も重要ですので、添削数の多い予備校を選ばれることをおすすめします。
高校生のうちは学校の授業や大学受験に向けての勉強との兼ね合いもありますので、スキマ時間を活用した学習が功を奏するでしょう。1講義30分ほどの講義を通学中に受講するなど工夫次第で前へ進むことが可能ですので、スマホ1つあれば受講できるようなオンラインシステムが充実した予備校をおすすめします。
盲点となりがちな受講期限についてですが、「予備校での受講が始まったけれど受験期と重なり受講期限が過ぎてしまった。」などということにならないように、オプションも含め料金形態についてもしっかりと確認しておきましょう。
親御様から見れば、「本当に継続できるのだろうか・・・。」などと思われるのは当然ですし、年齢的にもまだまだ心配は尽きないことと思います。しかしながら、子どもが何かに興味を持って取り組んだ時の集中力や、知的好奇心が満たされた時の様子など、成長を感じる様子は十分ご存知なのではないでしょうか。
意外かと思われるかもしれませんが、法律の勉強はとても面白く、例えば「家族や友達がトラブルに巻き込まれたけれどこのケースは罪に問われるの?」」「パート・アルバイトは有給が取れないの?」など身近な疑問について学ぶことができます。また、高校生のうちは学習習慣が定着しており、スムーズに予備試験の学習に取り組めることもメリットの1つです。
4 サマリー
予備試験の受験資格に年齢制限はなく高校生も受験可能です。「時期尚早では?」と思われるのも無理もありませんが、高校生から司法試験(予備試験)学習のスタートダッシュを切ることで、一歩一歩確実に無理なく未来の選択肢を広げる準備を進めることができます。子どもから大人への階段を登る発展途上の年齢でもありますので、大切に向き合っていきたいですよね。
この機会に是非、親子で予備校の無料説明会などに参加されてみてはいかがでしょうか。
5 まとめ
・司法試験(予備試験)学習を高校生からフライングスタートするメリットとは?|① 司法試験(予備試験)の学習が予習機能を果たす② 将来の選択肢が広がる③ ライバルと差をつけられる
・法曹三者になるためには|① 司法試験の受験資格を取得する② 司法試験に合格する③ 司法修習を経て二回試験に合格する
・高校生で「司法試験(予備試験)学習フライングスタート」を決めたらすべきこと|① 大学受験の勉強期間の把握 ② 予備試験の学習スタート時期の検討 ③ 予備校のリサーチ(費用、受講期限、受講形態など)