この記事では司法試験の2種類の試験形式のうち、短答式試験について、そもそもどのような試験なのかという試験概要やどのような問題が問われているのかという試験形式を詳しく解説しています。現在、法曹を目指して司法試験の受験を考えている方だけではなくそもそも法曹を目指そうかどうか迷っているけど司法試験がどのような試験なのかよく分からないという方もぜひこの記事をご覧ください。
1司法試験の全体像
司法試験の短答式試験について理解するには、まず司法試験という試験の全体像をみて、その中における短答式試験の位置づけを理解する必要があります。そこで、まずは司法試験の全体像について確認していきましょう。
司法試験の受験資格は法科大学院課程の修了者と司法試験予備試験の合格者となっています。後者の司法試験予備試験には年齢等の受験資格は無いので、予備試験合格者としてでは誰でも司法試験を受験することができます。尚、令和5年より法科大学院在学中においても一定の条件のもと司法試験の受験が可能となります。
そして、司法試験は2段階の試験によって構成されています。マークシート式の「短答式試験」と記述式の「論文式試験」です。両試験は毎年5月中旬頃の4日間において行われ、合否は、両試験の点数を合計した総合点に基づく総合評価で決まることとなっています。ただし、両者の合計点が合格最低点を上回ればよいというわけではなく、最低ラインなどの制度があるのでその点は注意が必要となります(後述)。
2 司法試験の短答式試験とは
(1) 試験形式
科目 | 問題数 | 試験時間 | 配点 |
民法 | 37問 | 1時間15分 | 75点 |
憲法 | 20問 | 50分 | 50点 |
刑法 | 20問 | 50分 | 50点 |
上記は令和3年のデータとなります。
「短答式試験」は用意された複数の選択肢のうち、正しいものや間違っているものを選択し、マークするといったマークシート式の試験となっています。各科目ではそれぞれの法律の条文や判例等の知識、法的な推論の能力が主に問われることとなります。
各科目の試験時間は民法が1時間15分、憲法・刑法がそれぞれ50分ずつとなっており、問題数は民法が36問程度、憲法・刑法がそれぞれ20問程度とされています。また、満点は民法が75点、憲法・刑法がそれぞれ50点の合計175点となっています。
(2) 試験科目
試験科目 | 試験時間 |
選択科目
(倒産法・租税法 ・経済法・知的財産法 ・労働法・環境法・ 国際関係法(公法系) ・国際関係法(私法系) |
3時間 |
憲法 | 2時間 |
行政法 | 2時間 |
民法 | 2時間 |
商法 | 2時間 |
民事訴訟法 | 2時間 |
刑法 | 2時間 |
刑事訴訟法 | 2時間 |
短答式試験の試験科目は憲法・民法・刑法の3科目となっています。
なお、短答式試験に続く論文式試験の試験科目は公法系(憲法・行政法)、民事系(民法・民事訴訟法・商法)、刑事系(刑法・刑事訴訟法)に加え、倒産法・租税法・経済法・知的財産法・労働法・環境法・国際関係法(公法系)・国際関係法(私法系)から1科目選択する選択科目の計8科目となっています。
以上のように、司法試験の短答式試験の試験科目は3科目と、論文式試験の8科目と比べて少なくなっています。また、司法試験の受験資格を得るための司法試験予備試験の短答式試験の試験科目は司法試験の論文式試験の科目から選択科目を除いて、一般教養科目を加えた8科目となっているため、予備試験の短答式試験に比べれば司法試験の短答式試験の負担は小さくなっています。
(3) 足切りについて
(1)で説明したように、司法試験の合否は短答式試験の得点と論文式試験の得点を合計した総合点に基づく総合評価によって決まります。しかし、注意しなければいけない点が1つあります。短答式試験・論文式試験で最低ラインと一定の得点を下回ることによって不合格とならないようにするということです。
まずは最低ラインについてみていきます。最低ラインとは、仮に総合点がどれだけ高かったとしても、1科目でも短答式試験や論文式試験で最低ラインに満たなければその時点で論文式試験の採点もなされず、不合格となる制度におけるその基準のことです。短答式試験の各科目の最低ラインは 、短答式試験では満点の40%となっています。つまり、得点でみれば民法では30点未満、憲法・刑法では20点未満となると最低ラインを下回り、不合格となってしまいます。
続いて、以上の3科目ともに最低ラインを上回ったとしても、3科目の合計点が「一定の得点」を下回った場合にも不合格となってしまいます。この得点は相対的に決まるものなので毎年上下しますが、過去の「一定の得点」は満点175点のうち令和3年度が99点、令和2年度93点、令和元年では108点となっているため、おおむね7割ほどを得点していれば「一定の得点」を下回ることはないといえます。
以上のように、司法試験に合格するには、まず短答式試験において、
① 3科目ともに最低ラインを上回る
② 3科目の合計点が一定の得点を上回る
ことが必要となります。
司法試験の合否はあくまで総合点に基づいて決定されるとはいえ、以上のように、最低限は短答式試験で不合格にならないように注意してしっかりと勉強しなければなりません。
また、短答式試験の成績が良ければ、論文式試験での失敗を一部とはいえカバーできる面もあるので、短答式試験の勉強する際は最低ラインや一定の得点を超えることだけを目標にするのではなく、上位の成績を得ること目標にするとよいでしょう。
(4) 合格率
司法試験短答式試験の合格率(ここでいう合格とは前述の最低ラインと一定の得点を上回ったこと)は、
・令和4年が、78.8%(短答合格者数:2,494人 / 採点対象者数:3,060人)
・令和3年が、78.8%(短答合格者数:2,672人 / 採点対象者数:3,392人)
・令和2年が76.2%(短答合格者数:2,793人 / 採点対象者数:3,664人)
となっています。概ね7~8割ほどの合格率ですが、それなりに不合格者がうまれる試験であるので、科目数の少ないかつマーク式の短答式試験だからといって油断をすることは禁物です。
3 サマリー
司法試験の試験形式の1つである短答式試験。マークシート式の試験であったり、科目数が論文式試験と比べて少なかったりするため司法試験の勉強では論文式試験がついつい中心となりがちですが、短答式試験の勉強を怠ると足切り制度によって足元をすくわれることになってしまうおそれがあります。今回の記事を参考に司法試験の受験をぜひ考えてみてください。
4 まとめ
- 司法試験には「短答式試験」と「論文式試験」の2種類の試験がある。
- 短答式試験はマークシート式の試験で、憲法・民法・刑法の3科目!
- 司法試験では足切りに注意!。
- 短答式試験の合格率は7~8割ほど。
- 高得点を取れば論文式試験のミスを埋められる!