司法試験合格のためには、論文式試験が天王山ともいえ、多くの受験生が悪戦苦闘する試験ともいえます。また、論文式試験の学習において「論証」をマスターしなければ合格は遠のいてしまいます。
これは、司法試験のみならず予備試験においても変わりありません。
「論証」の勉強方法にはさまざまな意見がありますが、そもそも論証とはいったいどのようなものなのでしょうか?その活用方法とは?!
この記事では、司法試験対策の1つでもある「論証」の活用法と合格レベルの答案を目指すためにするべきことなどを解説していきます。
是非、ご参考になさってくださいね。
1 論証とは
司法試験の論文式試験における「論証」とは、ある論点についての結論に至るまでの過程を論拠を挙げ推論することをいいます。
法律の条文は、抽象的でわかりづらく解釈に相互矛盾が起きることがあります。この部分を「論点」とし解決(結論)に導くためには論拠が必要です。また、解決(結論)までの道筋を論理的に示さなければなりません。
しかしながら、論証を書くためには、法律の基本的知識や論点の理解を前提に、 それらを使いこなして法的問題を解決する能力と解決のすじ道を説得的に表現できる文章力が不可欠です。論文式試験で試されている部分といっても過言ではありません。
2 論証集とは
「論証集」とは、典型的な論点について論証の書き方をまとめたものです。
予備校や市販でも「論証集」が販売されていますが、これらは司法試験対策に必要なのでしょうか?
さまざまな意見がありますが、限られた試験時間の中で効率良く答案を書き上げるためには、日頃の勉強においても論証集を活用した方が良いでしょう。
なぜなら、試験対策で覚えなければならない基本的な論点は数え切れないほどあり、予め論証の書き方を決めておいた方が試験対策上効率が良いからです。
論証ごとに一言一句暗記する必要はありませんが、ある程度の論証パターンをマスターしておけば、試験当日に時間短縮につながり途中答案などを回避することが期待できますので、論証集を活用されることをおすすめします。
【参考】
論証を書き上げるためには、問題解決のための基本となる「思考の枠組み」をマスターしなければなりません。司法試験対策においては、『 法的三段論法』を用います。 ex.『法的三段論法』=法規に事実をあてはめて結論を導く 法規:人を殺した者には殺人罪が成立する(刑法199条) 事実:XはYという人を殺した 結論:Xに殺人罪が成立する |
3 効果的な論証集の使い方
司法試験の論文式試験は本番特有の緊張感の中での時間との戦いでもあります。「事務処理能力が試されているのでは?」と感じることもあるかもしません。
論証集を活用すると以下のような効果が期待できます。
〈論証集の活用で期待できる効果の一例〉
◆試験時間内に合格レベルの答案を書き切る ◆現場対応型の問いに充てる時間を少しでも多く確保する ◆論点の抜け漏れを防ぐ(周りはできているのに自分だけできていないということにならないようにするため) |
合格レベルの答案を目指すためにするべきこととはいったいどのようなものなのでしょうか?
司法試験の採点方式は相対評価となります。つまり合格するには他の受験生が出来る問題については自分もできていなくてはなりません。
また、合格者は皆かなりの量の論文演習量をこなしています。ここでは、論文式試験をクリアするために不可欠である論文演習の際におさえていただきたいポイントを「効果的な論証集の使い方」と称してお伝えしていきます。
司法試験を突破するためにも欠かせない勉強法の1つといえますので、是非ご参考になさってくださいね。
(1) 論証パターンに含まれているキーワードを覚える
◆論証は理解を先行させ、文章ではなくキーワードを覚える
「問題は試験委員からのラブレター」ともいわれています。論証で覚えたキーワードを使い試験委員からのラブレターをどのように解釈するのかに尽きるともいえます。
例えば、このような方法が一例として挙げられますので、ご参考になさってください。
・1回目 → キーワードについてざっと見る(習熟度20%)
・2回目 → キーワードを覚えてみる(習熟度40%)
・3回目 → キーワードを再度覚える(習熟度60%)
・4回目 → キーワードを再度復習した上で論証の流れを頭に入れる(習熟度80%ほど)
・5回目 → キーワードと論証の流れを再度頭に入れる(習熟度100%)
※あくまでも一例であり、習熟度はイメージです。
(2) 論証の展開パターンを覚える
論証の展開パターンを覚えようとしてもなかなか簡単にはいきません。頭では理解していても、それを答案に適切に落とし込み合格レベルに至るには、やはり演習量の多さがものをいいます。
【論証パターン展開イメージ】=答案の基本構造
①問題提起(Issue) ↓ ②規範定立(Rule) ↓ ③あてはめ(Application) ↓ ④結論(Conclusion) |
また、問題に書かれている事例から論点となる部分を漏れなく抽出する能力なども必要ですので、論文式試験を攻略するには高い分析能力も必要であるといえるでしょう。
(3) 論証集を使い短時間で知識を定着化
論証集を使うメリットは、日々の勉強において知識の定着化にも一役買ってくれますので、ご参考になさってください。
◆「論証集」を使い短時間で重要な論点や定義を確認・復習できる
◆問題を解き新たな論点と出会う度に加筆・修正し「オリジナル論証集」を作り活用
論証集に加筆やマーキングなどをすることにより、使い込めば使い込むほど、頻出論点がどこかがわかるようになり、自分の引き出しを増やすことにも繋がります。
また、スキマ時間に重要論点を確認したり、あやふやな知識の整理にも有効ですので、司法試験対策には欠かせないツールの1つといえます。
4 こんな使い方はNG!「論証集の丸暗記」
勘違いされることも少なくないのですが、論証集はそのまま丸暗記するものではありません。そもそもこれだけ長い文章を膨大な論点ごとに暗記することは不可能ですし、仮に丸暗記できたとしても、理解が伴っていれば直ぐに忘れてしまいます。
論証集は、あくまでも書き方の一例に過ぎませんのでキーワードが適切に記載されていれば、書き方はある程度許容されます。
具体例で見ていきましょう。
【ex.憲法の人権享有主体性】
「人権の前国家的性格(11条)、憲法の国際協調主義(前文3項、98条2項)に鑑み、外国人にも人権の保障が及ぶ。もっとも、人権の性質は様々であるから、その性質に応じて個別具体的に考えるべきである。そこで、権利の性質上日本国民のみをその対象としていると解されるものを除き、人権規定の適用があると考える。」
とありますが、答案条では以下のように書いても許容されます。
「人権の前国家的性格(11条)、憲法の国際協調主義(前文3項、98条2項)から、外国人にも権利の性質上日本国民のみをその対象としていると解されるもの以外は人権が保障される。」
5 サマリー
司法試験対策の論証についてご理解いただけたでしょうか?多岐にわたる論証をマスターする近道は、論証集を効果的に活用することです。オリジナル論証集で自分の引き出しを増やし、重要論点・頻出論点の知識の整理や定着化に欠かせないツールとなりますので、論文が苦手な方はトライしてみてはいかがでしょうか。
6 まとめ
- 「論証」とは、ある論点についての結論に至るまでの過程を論拠を挙げ推論することをいう
- 「論証集」とは、典型的な論点について論証の書き方をまとめたもの
- 効果的な論証集の使い方|①論証パターンに含まれているキーワードを覚える②論証の展 開パターンを覚える③論証集を使い短時間で知識を定着化
- 論証集の丸暗記はNG!|①そもそも膨大な論証を覚えるのは不可能であり、覚えたとしても直ぐに忘れてしまう②丸暗記ではなく理解を先行させることが肝心